過去の上映
- 2023.11.28 - 12.24
- 上映企画
返還映画コレクション(1)
――第一次・劇映画篇
Repatriated Film Collection [Part 1] : Fiction Films, 1930-1945
会 期 2023年11月28日(火)-12月24日(日)※会期中の休館日:月曜日
会 場 長瀬記念ホール OZU(2階)
定 員 310名(各回入替制・全席指定席)
概要
東京国立近代美術館が1968年に「返還映画」を冠した特集上映を組んで以来、55年ぶりに「返還映画コレクション(1)――第一次・劇映画篇」を開催します。アメリカ議会図書館に約1,400本におよぶ戦前・戦中期の日本映画が残存している事実が判明したのは、1964年のことです。日米双方による事前調査と折衝を経て、1967年11月8日に「交換協定文書」が調印され、日本側が返還を希望した可燃性フィルム群が里帰りを果たしました。その後、国立映画アーカイブの基盤となるコレクションを形成した「返還映画」の中には、戦前・戦中期に心理・情報戦の資料として、米国内外の各地で収集されてきたものや、戦後に民間情報教育局(CIE)の覚書「非民主的映画の排除」によって上映を禁止された劇映画の一部等が含まれていました。第一次返還時点の内訳は、劇映画59本、文化・記録映画52本、ニュース映画372本、計483本でしたが、一部欠落のある作品や、劣化や損傷の見られる可燃性フィルムも多く、その後の整理・不燃化作業は困難を極めました。このたび当館では、1967年の第一次から1990年代の第四次にかけて返還された可燃性フィルムの収蔵時の経緯等について再調査を実施し、収蔵時期の明確になったコレクションから順次(再)公開する運びとなりました。
本企画は、第一次返還映画のうち『進軍』(1930)から『乙女のゐる基地』(1945)までの劇映画31本と、当初から返還を希望したにも拘わらず、唯一後送された劇映画『鴛鴦歌合戰』(1939)を加えた計32本を27プログラムに組んで上映する回顧特集です。無声映画の上映に際しては伴奏付きの上映回を、また近年、映画史的に再評価の進んだ『月夜鴉』(1939)と『かくて神風は吹く』(1944)に関しては、研究者による講演付きの上映回を設けており、戦前・戦中期に公開された映画の光と影に新たな視線を注ぐ機会となれば幸いです。皆様のご来場をお待ちしております。
■(監)=監督・演出 (原)=原作・原案 (脚)=脚本・脚色 (撮)=撮影 (美)=美術 (音)=音楽 (出)=出演
■スタッフ、キャスト欄の人名は原則として公開当時の表記を記載しています。
■上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。
■返還された可燃性フィルムの状態や現像処理時の不具合等により、音声レベルが極端に変動するなど、音声の聞き取りづらい作品が多く含まれています。
■不完全なプリントや状態の悪いプリントが含まれていることがあります。
■NEWとある作品はニュープリントでの上映です。
人肌觀音 第一編 (58分・1937・松竹京都・監・脚:衣笠貞之助)
8.五人の斥候兵 (72分・1938・日活多摩川・監:田坂具隆) 9.東洋平和の道 (101分・1938・東和商事映画部・監・脚:鈴木重吉、張迷生) 10.奴銀平 (65分・1938・松竹京都・監:大曾根辰夫)
新編 丹下左膳 隻眼の卷 (62分・1939・東宝東京・監:中川信夫)
11.亜細亜の娘 (98分・1938・新興キネマ・監:田中重雄) 12.月夜鴉 (100分・1939・松竹京都・監:井上金太郎) 14.上海陸戰隊 (89分・1939・東宝東京・監:熊谷久虎) 13.兄とその妹 (101分・1939・松竹大船・監・脚:島津保次郎) 15.殘菊物語 (143分・1939・松竹京都・監:溝口健二) 16.鴛鴦歌合戰 (69分・1939・日活京都・監:マキノ正博) 17.沃土萬里 (85分・1940・日活多摩川・監・脚:倉田文人) 18.冬木博士の家族 (70分・1940・松竹大船・監:大庭秀雄) 19.西住戰車長傳 (126分・1940・松竹大船・監:吉村公三郎) 20.上海の月 (53分・1941・東宝東京=中華電影・監:成瀬巳喜男)
四つの結婚 (63分・1944・東宝・監:青柳信雄)
21.名人長次彫 (84分・1943・東宝・監:萩原遼) 22.北方に鐘が鳴る (67分・1943・松竹京都・監・脚:大曾根辰夫)
日本人 明治篇・昭和篇 (58分・1938・松竹大船・監:島津保次郎)
23.成吉思汗 (82分・1943・大映京都・監:牛原虚彦、松田定次) 24.我が家の風 (71分・1943・大映東京・監:田中重雄) 25.三尺左吾平 (73分・1944・東宝・監:石田民三) 26.乙女のゐる基地 (52分・1945・松竹大船・監:佐々木康)
激流 (66分・1944・松竹大船・監:家城巳代治)
27.かくて神風は吹く (92分・1944・大映・監:丸根賛太郎)
上映作品詳細
1進軍(142分・20fps・35mm・無声・白黒)
- 2023年12月16日(土) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月20日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
飛行士を夢見る田舎の青年(鈴木)はやがて航空兵となり出征するが…。牛原=傳明=絹代の黄金トリオによる蒲田撮影所創設10周年記念映画。日露戦争終結25周年を機に起こった戦争映画ブームのなかで公開された。青年の愛とヒロイズムが、日本映画として初めて空中撮影を伴い演出されたスペクタクルな戦闘シーンを交えて綴られる。
12月16日(土) 1:00 PM ♪伴奏付上映
伴奏:神﨑えり
*伴奏付きの回は途中に約10分の休憩時間を設けます。
2上陸㐧一歩(88分・35mm・白黒)
- 2023年12月7日(木) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月10日(日) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
港に着いた船員(岡)は、身投げしようとした女(水谷)を救う。J・V・スタンバーグの『紐育の波止場』(1928)に着想を得たメロドラマ。戦前の松竹の代表的監督である島津保次郎のトーキー第1作で、無声映画的演出を基調としながらも音を効果的に扱っている。キネマ旬報ベスト・テン第8位など高く評価された。
4霧笛(94分・24fps・35mm・白黒・無声)
- 2023年12月7日(木) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月17日(日) 4:30 PM@長瀬記念ホール OZU
明治期の異国情緒あふれる横浜居留地を舞台に、西洋人クウパー(菅井)に卑屈な態度で接していた千代吉(中野)が、お花(志賀)との三角関係を乗り越え、白人コンプレックスを克服する。物語の進行に説得力をもたらす美術や照明、映画空間を立体的に造形するカット割りなど、後期無声映画として高い完成度を誇る。脚本の国広周禄は村田実の筆名である。
12月17日(日) 4:30 PM ♪伴奏付上映
伴奏:上屋安由美
3警察官(121分・18fps・35mm・無声・白黒)
- 2023年12月5日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月15日(金) 6:50 PM@長瀬記念ホール OZU
伊丹(小杉)は銀行強盗事件を捜査するうち非情な現実に直面する。共産党による「赤色テロ」として世間を騒がせた「赤色ギャング事件」(1932)が下敷きになったサイレント期のノワール作品。国策に沿って製作されたが、東京の街並みを捉える荒々しいキャメラワークや明暗差の激しい画面構成によって、追う者と追われる者の苦悩と緊張感を鮮やかに描き出している。
12月15日(金) 6:50 PM ♪伴奏付上映
伴奏:長谷川慶岳
5母を恋はずや(71分・24fps・35mm・無声・白黒・不完全)
- 2023年12月17日(日) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
父親の死後、没落してゆく一家の物語に異母兄弟の設定を重ね合わせ、複雑な母子間に生まれる感情の機微を捉えたメロドラマ。アメリカ議会図書館から返還されたのは冒頭とラストの巻が欠落した不完全版で、オリジナルは93分。ラストの欠落部分では、母(吉川)の背後に映り込んだ十字架に導かれるように、改心した兄(大日方)が帰宅して親子三人が幸せに暮らすことになる。原作の小宮周太郎は小津のペンネーム。
12月17日(日) 1:00 PM ♪伴奏付上映
伴奏:天池穂高
6花形選手(64分・35mm・白黒)
- 2023年12月2日(土) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月13日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
大学陸上部の花形選手(佐野)を中心に、軍事教練の行軍演習に励む学生たちと彼らを取り巻く人々の姿を見つめた作品。鯨屋当兵衛のペンネームで脚本も手がけた清水宏の演出は、繰り返し挟まれる行軍の様子など戦時体制を反映した描写のなかにも個々の生活者への伸びやかなまなざしを忍ばせている。
7忍術三妖傳[『自來也』改題版] 他(計114分)
- 2023年11月29日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月9日(土) 6:20 PM@長瀬記念ホール OZU
忍術三妖傳[『自來也』改題版](56分・35mm・白黒)
野武士・佐久間正盛(河部)一味によって滅ぼされた地頭の遺児が、ガマを操る忍術使いの自来也(片岡)として成長、同じ境遇の網手姫(星)と力を合わせて復讐を遂げる。アメリカ議会図書館から第四次と併せて2度にわたり返還を受けた作品だが、ともに公開時の『自來也』ではなく、戦後改題版であった。トリック撮影の数々に創意を凝らした忍術映画である。
人肌觀音 第一編(58分・35mm・白黒)
五代将軍・徳川綱吉の家督継承の祭典に供えられた家宝の名笛をめぐり、旗本くずれの悪徳武士(堀)や神出鬼没の夜盗(高田)、美しい笛師の娘(伏見)、切支丹の絵師(坂東)らが入り乱れ奮闘する。松竹時代劇陣オールキャストの顔ぶれがにぎやかな正月向けの娯楽活劇だが、続篇は作られなかった。
8五人の斥候兵(72分・35mm・白黒・不完全)
- 2023年12月5日(火) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月16日(土) 4:30 PM@長瀬記念ホール OZU
激戦が繰り広げられる中国戦線。五人の兵士が敵情偵察のための斥候として派遣される。田坂具隆は高重屋四郎というペンネームで戦況記事の数々から一篇の物語を編み上げ、移動撮影を駆使して緊迫感に満ちた戦闘シーンを演出した。キネマ旬報ベスト・テン第1位に選ばれたほか、ヴェネツィア国際映画祭で受賞し、日本映画初の海外映画祭受賞作となった。オリジナルは78分。
9東洋平和の道(101分・35mm・白黒・日本語字幕付)
- 2023年12月1日(金) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月3日(日) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
1937年7月の盧溝橋事件勃発を機に、東和商事が日独合作映画『新しき土』(1937、アーノルド・ファンク、伊丹万作)に続き製作した初の日中合作映画。中国北部の農民夫婦が戦禍を避ける途上、日本兵による庇護を受けて生命と財産の危機を救われる。大規模な中国ロケを敢行するとともに、日本人の表象を排除して、民衆心理の宥和を狙った大陸映画である。
10奴銀平 他(計127分)
- 2023年12月14日(木) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月22日(金) 3:20 PM@長瀬記念ホール OZU
奴銀平(65分・35mm・白黒)
先代藩主の法事を執り行うにあたって妨害を受けた幟甚左衛門(堀)の無念をはらすため、銀平(川浪)は仇討ちをする。添え物企画ながらも、巧妙な美術や手際よい演出に当時のプログラム・ピクチャーの高い水準が見て取れる。大曾根辰夫は衣笠貞之助に師事して1934年に監督デビューし、1962年まで松竹の時代劇の主軸として貢献した。
新編 丹下左膳 隻眼の卷(62分・35mm・白黒・不完全)
4部作からなるシリーズ第3作で、中川信夫が「僕のチャンバラの一番うまいもの」「もう一ぺんみたい」と語った思い入れの一作。「新編」と冠された本シリーズは隻眼隻手の由来をたどるが、第2作『隻手の卷』(1939、山本薩夫)で右腕を失った丹下左市が、本作で右目を潰され、丹下左膳と名を変える。大河内傳次郎が伊藤大輔監督の日活作品に続き当たり役を演じる。オリジナルは67分。
11亜細亜の娘(98分・35mm・白黒)
- 2023年12月8日(金) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月23日(土) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
日中男女の恋愛を劇映画で扱う先駆けとなった作品。現地撮影で全て日本人キャストにより、中国人女性を主軸に上海の混乱を描く。盧溝橋事件後、留学生・呉徳煕(河津)と妹・素琴(逢初)は大アジア主義者の父・徳明(岩田)の待つ上海に帰国し、徳煕は保安隊に身を投じる。一方で素琴は、従軍記者として上海に派遣された橘(新田)と再会する。そして、范少尉(菅井)は親日派を取り締まるが…。
12月夜鴉(100分・35mm・白黒・英語字幕付 with English subtitles)
- 2023年11月30日(木) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月9日(土) 3:30 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月22日(金) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
三味線の女師匠(飯塚)が弟子(高田)を育てる芸道物として、勝気な年上女性と小心な年下男性の恋愛をスクリューボール・コメディタッチで描いた傑作。井上金太郎は無声映画期に監督昇進後、阪東妻三郎や月形龍之介らと組んで活躍した名匠で、筆名・秋篠珊次郎により脚本も手がけた。「芸道3部作」以前の依田義賢執筆作という点でも興味深い。
11月30日(木) 3:00 PM ★講演付上映
上映後に木下千花氏(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)による講演(約40分)があります。
14上海陸戰隊(89分・35mm・白黒)
- 2023年12月8日(金) 4:10 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月21日(木) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
盧溝橋事件に端を発する第二次上海事変での海軍陸戦隊の戦闘の様子を描いた戦争映画。海軍省の後援のもと、海軍軍事普及部の指導を得て製作され、実際の戦車や銃火器が使用された。熊谷久虎監督の義妹にあたる原節子が中国人少女を演じている。
13兄とその妹(101分・35mm・白黒)
- 2023年12月3日(日) 4:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月12日(火) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
妻(三宅)と妹(桑野)と同居する青年社員(佐分利)がいわれなき中傷にさらされながらも実直に生きていく姿を描いた「小市民映画」の名作。自身のオリジナル脚本をもとに、人物の機微を丁寧に映し出す島津保次郎の手腕がいかんなく発揮され、彼の松竹最後の作品にして最高作との評価も高い。
15殘菊物語(143分・35mm・白黒・英語字幕付 with English subtitles)
- 2023年11月28日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月1日(金) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
自らの芸に慢心した二代目尾上菊之助(花柳)と、歌舞伎役者として立ち直らせようと献身的に支え続けるお徳(森)の悲恋を描く。新派で舞台化され評判になった村松梢風の同名実録小説を依田義賢が脚色。フィルムの現存しない『浪花女』(1940)や『芸道一代男』(1941)と合わせて「芸道3部作」と呼ばれ、長廻しの撮影も完成度を極めている。第一次返還映画の中で最初に単独上映された、「返還映画」を象徴する作品である。
16鴛鴦歌合戰(69分・35mm・白黒)
- 2023年12月1日(金) 4:30 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月2日(土) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
長屋暮らしの浪人を慕う町娘たちの恋の駆け引きと骨董品をめぐる騒動を描いた時代劇ミュージカル。片岡千恵蔵の急病による企画変更で急きょ撮られたが、筆名で脚本を担当したマキノ正博が敏腕を振い娯楽映画の真骨頂を発揮した。1967年の返還希望リストに挙げられていたが、第一次返還時に未着となった唯一の劇映画で、第二次で改めて送付を依頼した作品である。
17沃土萬里(85分・35mm・白黒・不完全)
- 2023年12月19日(火) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月24日(日) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
『開拓画報』の出版で知られる大陸建設社との共同企画で、集団移民をテーマに製作された大陸映画。満蒙開拓団・信州村の団員は、小海(江川)を中心に沃野を水田に開墾するという大事業に取り組んでいる。小海の妹・糸子(風見)らの斡旋で海を渡ってきた「大陸の花嫁」とともに、団員達は待望の日を迎える。オリジナルは97分だが、第1巻が欠落している。
18冬木博士の家族(70分・35mm・白黒)
- 2023年12月13日(水) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月22日(金) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
軍医として召集令状を受けた冬木(高倉)の妻(川崎)が、新築したばかりの病院を模様替えしてアパート経営に乗り出す。時局柄、好ましくない職業とされたダンサーから、飲酒に溺れがちな画家にしつけの悪い犬まで、平穏な生活を脅かす異質な他者を「家族」として包摂することに心を砕いたホームドラマ。
19西住戰車長傳(126分・35mm・白黒)
- 2023年12月12日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月20日(水) 6:50 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月23日(土) 3:50 PM@長瀬記念ホール OZU
NEW
日中戦争における西住小次郎中尉の活躍を描いた、いわゆる「軍神」ものの一つ。菊池寛による原作の新聞連載と並行して企画され、3ヶ月に及ぶ中国各地でのロケーション撮影を経て製作された。吉村公三郎は、本作を監督することが松竹を退社する島津保次郎に代わって『暖流』を監督するための交換条件だったと自ら述懐している。1967年に不燃化された35mmデュープネガをもとに新たにニュープリントを作製した。
20上海の月 他(計116分)
- 2023年12月8日(金) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月23日(土) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
上海の月(53分・35mm・白黒・部分)
原案はプロデューサーである松崎啓次による上海での活動を回想した「上海人文記」。上海で親日工作のためのラジオ放送を行う日本人チームに潜入した中国人諜報員を山田五十鈴が演じる。中華電影股份有限公司との共同で製作され、上海でロケーション撮影が行われたほか一部は現地のスタジオでも撮影された。オリジナルは114分の大作だが、現存するプリントは約半分の長さである。
四つの結婚(63分・35mm・白黒)
小説「佳日」をもとに、緊迫する戦況下でも明るく振る舞おうとする銃後の生活を描いたメロドラマ。退職司法官には四人の娘があり、長女(入江)の夫は戦死し、次女(山田)の夫は出征中。航空研究所に勤める三島(河野)は、友人(江川)の婚約者である三女(山根)を四女(高峰)と取り違えて笑いを取るが、やがて自身にも召集令状が届く。
21名人長次彫(84分・35mm・白黒)
- 2023年11月30日(木) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月9日(土) 1:00 PM@長瀬記念ホール OZU
名人気質の彫刻師(長谷川)は、勤皇の志士に感化され、護国鎮守の仏像作りに真摯に打ち込む。長谷川一夫と山田五十鈴の名コンビに豪華な配役を加えて江戸の長屋暮らしを描いた、戦時の娯楽作品。萩原遼は脚本集団「鳴滝組」の最年少メンバーとして山中貞雄に大きな影響を受け、時代劇を中心に1970年まで息長く活躍した。
22北方に鐘が鳴る 他(計125分)
- 2023年12月10日(日) 3:40 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月19日(火) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
北方に鐘が鳴る(67分・35mm・白黒・不完全)
明治初期、北海道に渡って父親の仇討ちを果たした三人兄妹は、その場にいたアイヌの酋長も殺してしまい、アイヌと開拓使の役人の両方に追われる身になる。伊藤大輔が映画化を試みながら撮影直前に頓挫した企画に大曾根辰夫が再挑戦し、北海道の広大な雪原を舞台に迫力あるアクションシーンを演出する。オリジナルは83分。
日本人 明治篇・昭和篇(58分・35mm・白黒・部分)
50年にわたる時代を扱った戦争大作。『明治篇』では、西南戦争で父を亡くした日下部恭助(上原)は軍人となり、日清および日露戦争に息子とともに出征した。『昭和篇』で展開される日中戦争では孫たちが従軍する。三世代を上原謙が三役で演じた。オリジナルは『明治篇』8巻(60分)、『昭和篇』9巻(78分)だが、返還されたのは『明治篇』第3-7巻と『昭和篇』第6-8巻のみ。
23成吉思汗(82分・35mm・白黒)
- 2023年12月14日(木) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月24日(日) 3:30 PM@長瀬記念ホール OZU
モンゴル帝国の創始者である成吉思汗の若き日を描いた日蒙合作の伝記映画。首長・テムジン(戸上)は、許嫁の娘ブルテ(最上)の父デイ・セチエン(藤川)を殺めた宿敵ダイル・ウスン(寺島)に対し復讐を誓う。約二千騎もの騎馬隊のエキストラを集めた大戦闘場面では、現地の列車線路を利用して移動撮影が行われた。
24我が家の風(71分・35mm・白黒・不完全)
- 2023年11月28日(火) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月6日(水) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
幕末の歌人・橘曙覧の歌「一日生かば一日心を大君の御為に尽す我が家の風」に想を得て製作された、戦時色を濃厚に帯びたメロドラマ。退役海軍中将の息子(中田)による割腹自殺のため妹(月丘)の縁談は危機を迎えるが、婚約者(宇佐美)は再会を約して出征してゆく。退役軍人を演じた高山は、新劇俳優・薄田研二が戦時中に用いた本名である。オリジナルは84分。
25三尺左吾平(73分・35mm・白黒)
- 2023年11月29日(水) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月15日(金) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
伊達騒動を背景に、権力争いに巻き込まれた足軽・左吾平(榎本)が奮闘する時代劇。太平洋戦争末期の状況下、喜劇王エノケンの特徴である荒唐無稽さが抑制され、淡々とした風情が漂う。1930年代を中心に女性を描いた作品で評価された石田民三の戦中最後の監督作となった。空襲で焼失する以前の仙台城が撮られているのも見どころ。
26激流 他(計118分)
- 2023年12月16日(土) 6:50 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月21日(木) 3:00 PM@長瀬記念ホール OZU
乙女のゐる基地(52分・35mm・白黒・不完全)
太平洋に面した飛行場。整備員として働くひで(川村)は挺身隊の満期を控え、仕事と結婚の間で揺れる。軍需工場が舞台の『一番美しく』(1944、黒澤明)などとは一味違って、兵士とともに軍属の形で働く少女が、激戦下における女性のあるべき姿について悩み、女性の「美徳」を失わず未来へ進む姿を清々しいタッチで描く。オリジナルは全9巻。
激流(66分・35mm・白黒・不完全)
東宝の『熱風』(1943、山本薩夫)、大映の『血の爪文字』(1944、千葉泰樹)と同時に企画された増産映画3部作の一本で、家城巳代治の監督デビュー作。鉱山会社に勤める謙介(小沢)は、恋人が戦死した斐子(高峰)の心を癒やし、現場の労働者とともに出炭増加と抗道開発に尽力する。オリジナル長は不詳だが全10巻で製作された。
27かくて神風は吹く(92分・35mm・白黒)
- 2023年12月2日(土) 3:30 PM@長瀬記念ホール OZU
- 2023年12月6日(水) 7:00 PM@長瀬記念ホール OZU
敗戦色が濃くなった太平洋戦争末期に情報局の企画、陸海軍の後援により製作された国策映画で、時代劇の看板スターが競演した大作。当初は五所平之助が監督の予定だったが、資質に合わないとのことで丸根賛太郎が登板した。元寇の海戦を映像化するにあたり、円谷英二率いる東宝特殊技術部を招聘し、終盤の暴風雨シーンなど迫力ある画面を作り上げている。
12月2日(土) 3:30 PM ★講演付上映
上映後に加藤厚子氏(茅ヶ崎ゆかりの人物館運営アドバイザー)による講演(約50分)があります。
■チケットのオンライン発売は各上映日の3日前正午からとなります。
■チケットのオンライン完売情報は、公式チケットサイトにてご確認ください。
■各回の開映後の入場はできません。予告篇はなく、本篇から上映します。
2023年11月28日(火)
11:00 AM 開館
2023年11月29日(水)
11:00 AM 開館
2023年11月30日(木)
11:00 AM 開館
2023年12月1日(金)
11:00 AM 開館
2023年12月2日(土)
11:00 AM 開館
★講演:加藤厚子 27かくて神風は吹く
2023年12月3日(日)
11:00 AM 開館
2023年12月5日(火)
11:00 AM 開館
2023年12月6日(水)
11:00 AM 開館
2023年12月7日(木)
11:00 AM 開館
2023年12月8日(金)
11:00 AM 開館
2023年12月9日(土)
11:00 AM 開館
2023年12月10日(日)
11:00 AM 開館
2023年12月12日(火)
11:00 AM 開館
2023年12月13日(水)
11:00 AM 開館
2023年12月14日(木)
11:00 AM 開館
2023年12月15日(金)
11:00 AM 開館
2023年12月16日(土)
11:00 AM 開館
♪伴奏:神﨑えり
/途中休憩あり 1進軍
2023年12月17日(日)
11:00 AM 開館
2023年12月19日(火)
11:00 AM 開館
2023年12月20日(水)
11:00 AM 開館
2023年12月21日(木)
11:00 AM 開館
2023年12月22日(金)
11:00 AM 開館
2023年12月23日(土)
11:00 AM 開館
2023年12月24日(日)
11:00 AM 開館
講演付上映登壇者
★11月30日(木) 3:00 PM 『月夜鴉』上映後(約40分)
木下千花(京都大学大学院人間・環境学研究科教授)
★12月2日(土) 3:30 PM『かくて神風は吹く』上映後(約50分)
加藤厚子(茅ヶ崎ゆかりの人物館運営アドバイザー)
*講演のみの参加はできません。
伴奏付上映出演者
♪12月15日(金) 6:50 PM『警察官』
長谷川慶岳(はせがわ・よしたか)/作曲、ピアノ
東京藝術大学音楽学部作曲科を経て、同大学院修士課程作曲専攻を修了。その後フランスに留学し、パリ・エコール・ノルマル音楽院作曲科にてディプロム・スュペリウールを首席で取得。現在、静岡大学教育学部准教授。作曲や音楽理論を担当している。
♪12月16日(土) 1:00 PM『進軍』
神﨑えり(こうざき・えり)/作曲、ピアノ
国立音楽大学作曲学科、パリ国立高等音楽院ピアノ即興演奏科卒業。作曲家・即興演奏家・ピアニストとして国内外で活躍し、即興演奏による映画伴奏にも力を入れている。ポルデノーネ無声映画祭、京都国際映画祭などの国際映画祭にて招待演奏を行い、高い評価を得ている。
♪12月17日(日) 1:00 PM『母を恋はずや』
天池穂高(あまいけ・ほだか)/作曲、ピアノ
東京藝術大学音楽学部作曲科卒業、同大学院修了。2003年、フィルムセンター(現・国立映画アーカイブ)の特集「小津安二郎の藝術」にて、初めてサイレント映画の伴奏を担当。作編曲活動に加えて、バレエのレッスンピアニストとしても活動している。
♪12月17日(日) 4:30 PM『霧笛』
上屋安由美(かみや・あゆみ)/作曲、ピアノ
愛知県名古屋市出身。桐朋学園大学音楽学部作曲専攻卒業、同大学研究科修了。同大学音楽学部附属子供のための音楽教室ソルフェージュ講師。これまでポルデノーネ無声映画祭、東京国際映画祭等に出演。ピアノを故・松岡晴子、三輪郁、作曲を三瀬和朗、大家百子の各氏に師事。
一般 | 高校・大学生・ 65歳以上 |
小・中学生 | 障害者手帳をお持ちの方(付添者は原則1名まで) | キャンパスメンバーズ(教職員) | キャンパスメンバーズ(学生) | |
通常料金 | 520円 | 310円 | 100円 | 無料 | ||
特別料金 (♪印の回) |
1,050円 | 840円 | 600円 | 無料 | 500円 | 400円 |
オンライン販売 | 各上映日の3日前正午から各上映回の開映15分前まで |
|||||
窓口販売 (1F) |
各上映回の開映1時間前から5分前まで若干数販売(座席選択不可) |
♪印の回は伴奏付上映です。
電子チケット購入方法
1. 本ホームページの上映日時(チケット購入)からご覧になりたい上映日時の「チケット購入」ボタンを選択。
2. 座席と券種を選択。
3. メールアドレスやクレジットカードまたはd払いの情報等必要事項を入力。
4. 申込が完了しますと、3. で入力したメールアドレスにQRコード付きのチケットが届きます。
・etix.comからのメールを受信できるよう予め設定をお願いします。
・申込済みチケットの照会はこちらの「申込済みチケット照会」を選択ください。
・詳しい購入手順の説明はこちら(PDF)をご参照ください。
・チケット購入方法についての「よくあるご質問」はこちらをご覧ください。
・未就学児、優待の方は「障害者手帳をお持ちの方または付添者等券」をお求めください。
入場方法
・チケットのQRコードをスマホ画面、または印刷紙面でご提示ください。
・学生、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方、国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズ、優待の方は証明できるものをご提示ください。ご提示のない方はご入場できません。
・料金区分の違うチケットでは入場できません。差額のお支払で観覧することはできません。
・各回の開映後の入場はできません。予告篇はございません。
・開場は開映30分前です。
ご注意ください!
・特集名、作品名は電子チケットに表示されませんので、お間違いないようご購入、ご提示ください。
・窓口でご購入いただける当日券は各回1名につき1枚のみです。
・チケットのオンライン完売情報は、公式チケットサイトにてご確認ください。