令和3年度 インターンシップ生のことば

令和3年度インターンシップ生 Kさん

修士論文執筆のため文化政策や文化経営学という視点からフィルムアーカイブの運営や課題について学び、フィルムをはじめとする映画資料の保存の現場を実地に経験し今後のキャリアに活かすというのが、私のインターンへの志望動機であった。

映画室では米国からの返還映画に関する調査を行い、日米間の書簡や発送リストの同定を試みながら、タイムラインを作成することに注力した。相模原分館にてフィルム点検を体験したり、ニュープリント試写に同行したことも貴重な経験となった。上映室では、ある映画会社の社史や国立映画アーカイブでの上映データを基に、今後のプログラムで上映される、日本映画史の中で重要な作品を選定するための土台となるリストを作成した。参考文献の緻密な調査や権利者との調整など一本の作品を上映するためにも多くの準備が必要であることを知った。教育・発信室では「こども映画館」の設営準備や当日の案内に携わった。子供達の様子を見ながら、長時間スクリーンに集中し、他の観客と共に時間や感情を共有する映画鑑賞の喜びに改めて気付かされた。展示・資料室ではスチルやポスター、雑誌など多様な寄贈資料のリスト化に携わった。状態確認や簡易修復を行いながら時間をかけて多くの資料を登録するためには、スタッフの増員が必要であることなど課題も多いと感じた。

約7ヶ月間にわたる研修を通じて見えてきたのは、資料を守る人々の存在である。もちろん保存のためのハコや設備も不可欠であるが、何を経験し学んだ人材がいるか、それを活かすことのできる環境を整えられるかが、ミュージアムやアーカイブを利用者の利益に資するものとし、資料を後世に継承できるかに関わっているのではないだろうか。学芸課と総務課、そして映画会社、現像所、映画館、他のフィルムアーカイブ、行政など、多くの機関やそこにいる専門的なスタッフとの連携が各事業を魅力的なものにし、国内の映画保存を支えている。国立映画アーカイブでの経験を就職先である美術館でも活かしながら、「保存」と「活用」をより良く両立するための道を模索したい。