令和2年度 インターンシップ生のことば

令和2年度インターンシップ生 Hさん

国立映画アーカイブのインターンシップでは、自分の指先で映画に触れる重要性を知った。期間中は、教育・発信室、上映室、展示・資料室、映画室の4室をまわり、各室では主に、上映イベントの運営、今後予定されている上映企画に関する調査、寄贈されたコレクションの整理、資料の精読に励んだ。

これらを経験し、映画は触れることができるのだと新たに気づいた。私は大学で映画について学んできたが、そこで対象になるのは、もっぱら歴史や理論としての、いってみれば想像上の映画である。しかし、インターンシップで扱った映画は、現実に存在する映画だ。それは、教室や映画館で知る映画ではなく、来場者の応対をすることや、愛でるように無数のポスターを繰っていくことを指す。映画は人からできている。当たり前といえば当たり前すぎる、だが忘れてはならないこの事実は、これまで座学でしか映画を見てこなかった身に、大きな驚きと喜びを与えてくれた。

インターンシップを志望する時点で、フィルムアーカイブに対する漠たる知識はあったが、頭で理解するのと肌で知るのとではわけが違う。奇しくも容易に他者に触れることさえ躊躇われるようになってしまった今、触覚の重要性があらためて浮き上がるといってはできすぎだろうか。いずれにせよ、この体験を終えて、映画との新たな関わり方が垣間見えた気がする。