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平成22年度
Yプログラム

今や日本文化の顔となったアニメーション映画。日本アニメの歴史を画した劇場用長篇映画の代表作を紹介いたします。
◆西遊記
 (1960年 東映動画 カラー シネマスコープ 88分)


『白雪姫』(1962)の公開以降ディズニーの長篇アニメーションが国際的な市場を席巻するなか、世界有数の規模を誇る近代的な設備と大きな資本力でわが国の動画製作を刷新、アニメーション史上に一時代を築いた東映動画(1956年創立)初期の代表作の一つである。第1作『白蛇伝』(1958)、第 2作『少年猿飛佐助』(1959)に続き、ヴェネチア国際映画祭で連続受賞している。手塚治虫の漫画(「ぼくのそんごくう」)を原作としてとりあげた点で画期的な作品であり、黒澤明監督の『酔いどれ天使』(1948)などで知られる植草圭之助を脚本に招くなど野心的な試みがなされている。製作面にも大きく関与した手塚治虫は、後に自らのプロダクション「虫プロ」を設立、アニメーションの世界に積極的に乗り出すことになる。

[スタッフ]
(脚本) 植草圭之助
(演出) 薮下泰司
(〃) 手塚治虫
(企画) 高橋秀行
(〃) 渾大防五郎
(構成) 手塚治虫
(動画監修) 山本早苗
(原画) 森康二
(音楽) 服部良一

[声の出演]
孫悟空 (小宮山清)
憐々 (新道乃里子)
猪八戒 (木下秀雄)
沙悟浄 (篠田節夫)
三蔵法師 (関根信昭)
小竜 (白坂道子)
牛魔王 (巌金四郎)
金角大王 (川久保潔)
銀角大王 (風祭修一)

◆太陽の王子 ホルスの大冒険
 (1968年 東映動画 カラー シネマスコープ 82分)


メジャー・カンパニー=東映の参入は、わが国のアニメーションの製作に大きな変化をもたらした。長篇動画における初の色彩化、ワイド・スクリーンの導入などに連なるこの作品では、ゼログラフィ(原画をセルに直接転写するシステム)が全面的に採用された。もっとも、1965年頃から大量生産されたテレビ・アニメーションへと東映動画内における製作の比重が移りつつあるなかで、技術的な質の低下を懸念するスタッフの熱意もあり、企画から完成までに3年半が経過している。そのスタッフの一員である高畑勲(長篇初監督)宮崎駿(原画及び場面設計)は現在わが国を代表するアニメーション作家となっている。反体制的色彩の強いストーリー、少女ヒルダに見られる陰影あるキャラクターなど、このジャンルにおける物語の定型を大きく逸脱しており、ユーモアやギャグの希薄さをめぐる当時の批評からは、この作品が斬新な外観をまとって登場したことがうかがわれる。

[スタッフ]
(脚本) 深沢一夫
(演出) 高畑勲
(作画監督) 大塚康生
(美術) 浦田又治
(場面設計) 宮崎駿
(原画) 森康二
(音楽) 間宮芳生

[声の出演]
ホルス (大方斐紗子)
悪魔グルンワルド (平幹二朗)
悪魔の妹ヒルダ (市原悦子)
村の鍛冶屋ガンコ (東野英治郎)
村長 (三島雅夫)

◆長靴をはいた猫
 (1969年 東映動画 カラー シネマスコープ 80分)


東映動画製作の長篇アニメーション。シャルル・ペローの童話をもとに、井上ひさしと山元護久が脚本を書き、ギャグ監修に中原弓彦こと小林信彦を起用した豪華な布陣で製作された、東映動画の代表作の一つ。井上ひさしと小林信彦が後に作家として知られることは言うまでもない。その特徴は愉快なギャグとアクションの連続にあり、教訓めいたメッセージが排除されている点にある。猫のペローが家を追い出されたピエールを助けて、国王の娘ローザ姫の婿に売りこむが、魔王ルシファがローザ姫に目をつけて、彼女を奪って城に監禁する。この姫の救出場面が大きな見せ場となる。高い城、その上にそびえる塔、周り階段、吊り橋などを用いた戦いに次ぐ戦い、朝日に溶けていく魔王、その光のなかを落下していくローザ姫とペロー。その二人を鳩の群が救い上げるという場面の連続は、アニメーションならではの醍醐味である。

[スタッフ]
(原作) シャルル・ペロー
(脚色) 井上ひさし
(〃) 山元護久
(演出) 矢吹公郎
(作画監督) 森康二
(製作) 大川博
(音楽) 宇野誠一郎
(美術) 浦田又治
(〃) 土田勇

[声の出演]
ペロー (石川進)
ピエール (藤田淑子)
ローザ姫 (榊原ルミ)
殺し屋 (水森亜土)
ネズミのチビ (水垣洋子)
ネズミの首領 (熊倉一雄)
魔王 (小池朝雄)

◆火垂るの墓
 (1988年 新潮社 カラー ビスタ 89分)


1945年6月5日、アメリカ軍によって行われた神戸大空襲は、多くの犠牲者を生み出した。その中のある一家の物語。軍人の父は出征して不在、母と家を失った兄と妹は、親戚の家に身を寄せるが冷たく扱われる。やがて二人は防空壕を見つけ自分たちだけで暮らし始めるが…。野坂昭如の同名小説を原作に、高畑勲がリアルな描写と幻想的な場面とを融合させて作りあげたアニメーション映画の秀作。戦争の過酷さは二人にとっては食糧の欠乏としてあらわれ、それは幼い妹の衰弱へとつながっていく。克明に描写される戦時下の生活、衰えていく妹を見つめる厳しい視線と、夏の闇の中、光を放ちながら舞い飛ぶ蛍の場面の美しさは、残酷と美の両面を視野におさめたこの作家の目の深さを証している。最後の場面に現代の神戸の街が対比的に映しだされるが、1995年にその神戸の街が阪神淡路大震災に襲われた事実は、また別の感慨をもたらすかもしれない。「キネマ旬報」ベストテン第6位。

[スタッフ]
(原作) 野坂昭如
(脚本・監督) 高畑勲
(作画監督) 近藤喜文
(製作) 佐藤亮一
(撮影) 小山信夫
(音楽) 間宮芳生
(美術) 山本二三

[声の出演]
清太 (辰巳努)
妹 節子 (白石綾乃)
母 (志乃原良子)
未亡人 (山口朱美)

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