◆あすなろ物語
(1955年 東宝 白黒 スタンダード 108分)
一人の少年が、複雑な人間関係の中で次第に成長していく様子を、桧(ひのき)に似ているが桧とは違い、明日は桧になろうと一生懸命になっている「あすなろう」という木に託して描いたものである。井上靖の自伝的要素の強い小説を映画化するにあたり、原作にある小学生と中学生時代のエピソードをそのままに、新たに高校生時代が加えられ、三話によるオムニバス構成になっている。これは長年黒澤明の助監督をつとめ、この後『裸の大将』(1958)や『黒い画集あるサラリーマンの証言』(1960)など秀作を発表した堀川弘道が監督に昇進するのを記念して、黒澤自身が脚色したものである。堀川監督の叙情性だけでなく、黒澤の資質をうかがえる点でも貴重な作品である。
[スタッフ]
(原作) 井上靖
(脚本) 黒澤明
(監督) 堀川弘道
(製作) 田中友幸
(撮影) 山崎一雄
(照明) 石井長四郎
(録音) 下永尚
(音楽) 早坂文雄
(美術) 河東安英
[役名(キャスト)]
鮎太(第一話) (久保賢)
鮎太(第二話) (鹿島信哉)
鮎太(第三話) (久保明)
冴子 (岡田茉莉子)
雪枝 (根岸明美)
玲子 (久我美子)
大学生 加島 (木村功)
住職 (小堀誠)
とみ (浦辺粂子)
玲子の母 (村瀬幸子)
鮎太の祖母 (三好栄子)
医大の助手 江見 (太刀川洋一)
竹内 (高原駿雄)
教師 佐山 (金子信雄)