◆青春残酷物語
(1960年 松竹[大船] カラー シネマスコープ 96分)
1950年代末、日本映画を変革しようとした松竹所属の一連の新人監督は「松竹ヌーべルバーグ」と呼ばれた。本作品はその新人たちの筆頭にいた大島渚監督の初期の代表作で、中年男から金を巻き上げる犯罪を重ねて破滅に向かってゆく若い男女の欲望と行動を、旧世代の人間たちの生き様と対比させながらストレートに描写した。性と暴力を重要なテーマとしたこの作品は1960年の安保闘争のさなかに公開されたが、鬱積した心情ややりきれなさを感じていた若年層の強い共感を呼び、当時の社会状況に対する新しい世代の「怒り」を叩きつける形で興行的にも成功している。それは若さの明るい側面のみを売り物としてきた従来の「青春映画」に対するアンチテーゼとも言えるだろう。とりわけ主人公の川津祐介が音をたててリンゴをかじるシーンは、そうした青春の焦燥を優れて表現したシーンとして有名になった。
[スタッフ]
(脚本・監督) 大島渚
(製作) 池田富雄
(撮影) 川又
(照明) 佐藤勇
(録音) 栗田周十郎
(音楽) 真鍋理一郎
(美術) 宇野耕司
[役名(キャスト)]
新庄真琴 (桑野みゆき)
藤井清 (川津祐介)
真琴の姉 由紀 (久我美子)
由紀の恋人 秋本 (渡辺文雄)
真琴の担任 下西 (小林トシ子)
ベンツの紳士 堀尾 (二本柳寛)
パッカードの紳士 (山茶花究)
マーキュリーの紳士 (森川信)
真琴の父 (浜村純)
刑事 (佐野浅夫)
松本明 (佐藤慶)