◆煙突の見える場所
(1953年 新東宝=スタジオ8プロ 白黒 スタンダード 108分)
東京・千住にある、見る場所によっては四本にも一本にも見えるという巨大な「お化け煙突」。この界隈を舞台に、戦後の日本を生きる庶民の悲喜こもごもを描き出した五所平之助監督の代表作。足袋問屋に勤める実直な中年男・緒方隆吉は、戦災未亡人であった妻弘子とつつましく暮らしている。生活の足しにと二階を税務署員の久保健三と、街頭広告のアナウンス嬢、東仙子に間貸しているが、そこに見も知らぬ赤ん坊が置去りにされていたことから一騒動がもちあがる。実存主義的な作風で知られる椎名麟三の短編「無邪気な人々」を中心に、黒澤明作品で知られる小国英雄が脚本を書き、五所監督自らが主宰する独立プロダクションで製作した「不思議な笑い」を醸し出す一篇となった。
[スタッフ]
(原作) 椎名麟三
(脚本) 小国英雄
(監督) 五所平之助
(製作) 内山義重
(撮影) 三浦光雄
(照明) 河野愛三
(録音) 道源勇二
(音楽) 芥川也寸志
(美術) 下河原友雄
[役名(キャスト)]
緒方弘子 (田中絹代)
夫 隆吉 (上原謙)
東仙子 (高峰秀子)
久保健三 (芥川比呂志)
池田雪子 (関千恵子)
石橋勝子 (花井蘭子)
河村徳治 (坂本武)
弘子の前夫 塚原忠二郎 (田中春男)
灘らん子 (三好栄子)
夫 勇 (中村是好)
野島加代 (浦辺粂子)
北清作 (星ひかる)
医師 金子大助 (小倉繁)