◆遠雷
(1981年 にっかつ撮影所=ニュー・センチュリー・プロデューサーズ=ATG カラー スタンダード 135分)
宇都宮でビニールハウスのトマト栽培を職業としている青年とその親友の、明暗分かれる青春を鮮烈に描いた立松和平の同名小説の映画化である。 1970年代以降の日本は、この映画でビニールハウスの隣に団地が建つように、各地の都市近郊で風景が変貌し、旧来の「都市と農村」の対立だけでは描けない複雑な社会が形成された。またこの時期の日本映画界は産業としては低迷していたが、その中にあって日活撮影所は最も多くの映画を量産し、次々と新しい才能を送り出し続けた。この映画の監督根岸吉太郎と脚本家荒井晴彦はともに日活を経由しており、そうした現代的な風景、またその中で育った多様な価値観で揺れる青年像を描くことで、この作品をリアルな生活感覚あふれる新世代の青春映画に結実させた。主人公の青年はトントン拍子に結婚式を挙げ、その親友は不幸な殺人を犯してしまう。長々と続く幸せな披露宴の最中に親友が罪を告白するという印象的なシーンは原作にはなく、脚本における創作であった。「キネマ旬報」ベストテン第2位。
[スタッフ]
(原作) 立松和平
(脚本) 荒井晴彦
(監督) 根岸吉太郎
(撮影) 安藤庄平
(照明) 加藤松作
(録音) 飛田喜美雄
(音楽) 井上堯之
(美術) 徳田博
[役名(キャスト)]
和田満夫 (永島敏行)
中森広次 (ジョニー大倉)
花村あや子 (石田えり)
カエデ (横山リエ)
満夫の父 (ケーシー高峰)
満夫の母 (七尾伶子)
満夫の祖母 (原泉)
チイ (藤田弓子)
和田哲夫 (森本レオ)
農協職員 (立松和平)