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平成22年度
Uプログラム

軽やかなリズムと華やかな色彩にのせて、歌と笑いと夢にあふれた音楽・歌謡映画の決定版を紹介いたします。
◆エノケンの頑張り戦術
 (1939年 東宝[東京] 白黒 スタンダード 74分)


浅草オペラ出身で、「カジノフォーリー」の人気者として世に知られ、日本初の本格的レビュー映画『エノケンの青春酔虎伝』(1934)以来、戦後にまたがって数々の映画に主演した不世出の喜劇役者、榎本健一。この作品は、エノケンが最も脂の乗っていた時期のもので、防弾チョッキ製造会社で犬猿の仲である二人の社員が、何事にかけても張り合う姿を抱腹絶倒の喜劇に仕立てたもの。ライバル社員に榎本の実家のせんべい卸屋で使用人だったという経歴を持つ如月寛多、会社の課長に浅草オペラ時代の師匠だった柳田貞一という馴染み中の馴染みを配している。監督の中川信夫は主にマキノ正博監督門下で修業を積み、映像のリズム感に優れた時代劇を撮っていたが、この頃はエノケンの座付き監督とも言える位置にいた。戦後は『東海道四谷怪談』(1959)などの傑作を発表し、怪談映画の巨匠としても知られている。

[スタッフ]
(脚本) 小国英雄
(監督) 中川信夫
(製作) 氷室徹平
(撮影) 伊藤武夫
(照明) 佐藤快哉
(録音) 安恵重遠
(音楽) 栗原重一
(装置) 吉松英海

[役名(キャスト)]
稲田 (榎本健一)
  妻 文子 (宏川光子)
  倅 健二 (小高たかし)
三田 (如月寛多)
  妻 武子 (渋谷正代)
岩城課長 (柳田貞一)
  妻 初枝 (柳文代)
菊龍 (音羽久米子)
誘拐犯人 (金井俊夫)
ブローカー (北村武夫)

◆ジャンケン娘
 (1955年 東宝 カラー スタンダード 92分)


「平凡」連載の小説をもとに、当時人気沸騰のひばり・チエミ・いづみの三人娘が主演した明朗な娯楽作品。物語は、東京の高校生であるひばりとチエミが京都を訪れ、仲良しになった舞妓のいづみから恋人探しを頼まれるというもので、メロドラマの要素も織り交ぜながら、東宝の中堅である杉江敏男監督がそつなく演出した(映画ロケーションのシーンでは監督も顔を見せている)。この頃日本映画にはカラー映画が増え始め、スクリーンの大型化が始まるなど、技術的にも新しい時代が訪れていた。この作品では赤・青・黄の三色を効果的に散りばめた色彩の工夫が特徴的で、三人が劇中劇の形でそれぞれ歌や踊りを披露するシーンでも、衣装や舞台装置にこうした色彩効果が活かされている。この映画の後も、余勢を駆って同様の青春娯楽篇『ロマンス娘』(1956)が撮られ、ひばりを筆頭とする三人娘の人気の高さを示した。

[スタッフ]
(原作) 中野実
(脚本) 八田尚之
(監督) 杉江敏男
(製作) 杉原貞雄
(〃) 福島通人
(撮影) 完倉泰一
(照明) 石井長四郎
(録音) 宮崎正信
(音楽) 松井八郎
(美術) 村木忍

[役名(キャスト)]
阿佐見ルリ (美空ひばり)
千明由美 (江利チエミ)
雛菊 (雪村いづみ)
お信 (浪花千栄子)
北島 (高田稔)
公明 (小杉義男)
ルリの母 おいね (沢村貞子)
斎藤又兵衛 (山田真二)
森政治 (江原達怡)
亀沢先生 (岡村文子)

◆大学の若大将
 (1961年 東宝映画 カラー シネマスコープ 82分)


俳優加山雄三の代名詞とも言える東宝「若大将シリーズ」の第1作で、1971年までの11年間に17本が製作された。名優上原謙の長男という「芸能界のサラブレッド」としてデビューした加山は、明朗快活、スポーツ万能、歌や楽器もこなすというキャラクターで売り出された。流行のスポーツや音楽、若者風俗を取り入れたこのシリーズは彼を早速スターダムに押し上げ、挿入歌のレコードも軒並みヒットさせている。一方、そんな若大将にライバル意識を持ち、その恋路にいつも横槍を入れる登場人物「青大将」もこのシリーズの裏の人気者である。いつも若大将にみじめな敗北を喫するパターンではあるが、「青大将」を演じた田中邦衛に世の注目が集まるきっかけとなった。なおこのシリーズの原型は、昭和初期の松竹蒲田撮影所で、スポーツ万能スター鈴木伝明が主演した一連の「カレッジ物」であるとされている。

[スタッフ]
(脚本) 笠原良三
(〃) 田波靖男
(監督) 杉江敏男
(製作) 藤本真澄
(撮影) 鈴木斌
(照明) 猪原一郎
(録音) 矢野口文雄
(音楽) 広瀬健次郎
(美術) 村木忍

[役名(キャスト)]
田沼雄一 (加山雄三)
父 久太郎 (有島一郎)
祖母 りき (飯田蝶子)
妹 照子 (仲真千子)
中里澄子 (星由里子)
団野京子 (団令子)
多湖誠 (江原達怡)
滝沢 (土屋嘉男)
石山新次郎 (田中邦衛)
野村社長 (上原謙)
同 夫人 (久慈あさみ)
植木屋半七 (藤原釜足)

◆君も出世ができる
 (1964年 東宝 カラー シネマスコープ 100分)


東京オリンピックの時代を背景に、外国の観光団を自社に引き寄せようとする観光会社の争いをユーモラスに描いた本格的なミュージカル・コメディ映画。演劇の興行を母体とする東宝ならではのミュージカルだが、お得意のサラリーマン喜劇の要素も加味されているのは興味深い。監督の須川栄三は、出世の希望に燃えるフランキー堺といつも優柔不断な高島忠夫というコンビを軸に据え、さらに益田喜頓といった芸達者をからませながら、よどみのない、厚みのある物語世界を生み出した。ダンスの振付、音楽の構成、舞台装置、編集などあらゆる面で本場ハリウッドのミュージカル・コメディを研究した様が窺えるが、作曲面では登場人物のキャラクターごとに曲調をくっきり使い分けるなど、細かい工夫が随所になされている。とりわけ、雪村いづみ扮する社長令嬢に導かれて、オフィスで事務員たちが繰り広げるダンスのシーンは出色の出来映えであろう。

[スタッフ]
(脚本) 笠原良三
(〃) 井手俊郎
(監督) 須川栄三
(製作) 藤本真澄
(撮影) 内海正治
(照明) 高島利雄
(録音) 刀根紀雄
(音楽) 黛敏郎
(振付) 関矢幸雄
(作詞) 谷川俊太郎
(美術) 村木忍
(〃) 竹中和雄

[役名(キャスト)]
山川善太 (フランキー堺)
中井剛 (高島忠夫)
社長 片岡信吾 (益田喜頓)
娘 陽子 (雪村いづみ)
三田良子 (中尾ミエ)
服部紅子 (浜美枝)
大森課長 (有島一郎)
総務部長 (藤村有弘)

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