◆八月の濡れた砂
(1971年 日活 カラー シネマスコープ 91分)
揺れ動く若者の行動と心理を硬質なタッチで瑞々しく描いた青春映画の名作であり、藤田敏八監督の初期の代表作である。主人公たちの〈大人〉に対する不信と反抗の姿勢は、この種の映画に特有なものであると同時に、学生運動などで大きく揺れ動いた1960年代後半の時代の気分を色濃く宿したものと言えるだろう。ただその描写が反抗礼讃、青春万歳の紋切り型ではなく、優しさと残酷さの入り混じった、青春という名の一季節を、静かに見つめている点にこの監督の特徴がある。1950年代の『太陽の季節』とはまた別の、湘南の眩しく気怠い夏がスクリーンに溢れている。製作会社の日活はこの年をもって一般劇映画の製作を中止し、ロマンポルノへと移行したが、本作は青春映画を看板としてきた同社の光芒を放つ一本として「キネマ旬報」ベストテン第10位に選ばれた。
[スタッフ]
(脚本) 峰尾基三
(〃) 大和屋竺
(脚本・監督) 藤田敏八
(企画) 大塚和
(撮影) 萩原憲治
(照明) 大西美津男
(録音) 古山恒夫
(音楽) むつひろし
(〃) ペペ
(美術) 千葉和彦
[役名(キャスト)]
野上健一郎 (村野武範)
西本清 (広瀬昌助)
川西修司 (中沢治夫)
稲垣和子 (隅田和世)
三原早苗 (テレサ野田)
真紀 (藤田みどり)
亀井 (渡辺文雄)
井手 (地井武男)
五郎 (山谷初男)
神父 (原田芳雄)