◆風の又三郎 ガラスのマント
(1989年 朝日新聞社=東急エージェンシー=日本ヘラルド映画 カラー ビスタ 107分)
宮沢賢治の同名原作は、1940年に島耕二監督の手で映画化されている。良質の叙情をたたえ、印象的な音楽もあいまって、その年度の「キネマ旬報」ベストテンの第3位にランクされた名作である。伊藤俊也監督のこの作品は、そのリメイクではあるが、随所に新しい創作がなされており、見事に平成版の〈又三郎〉となっている。母と二人暮らしの少女、かりんの前にあらわれた高田三郎は、二百十日の風の日に転校してきたために「風の又三郎」と呼ばれる。実際、彼が来てからは不思議なことの連続だった。東北地方の豊かな自然を背景にした、子供たちのより自然な演技は長期合宿による交流の成果である。冒頭のカメラの大胆な動きは、観客を一気にファンタジーの世界へと誘い込む魅力に満ちており、独自の視点で物語性に富んだ映像世界をつくりあげる伊藤監督の本領が発揮されている。
[スタッフ]
(原作)宮沢賢治
(監修)入沢康夫
(脚本)筒井ともみ
(脚本・監督)伊藤俊也
(プロデューサー)原正人
(撮影)高間賢治
(照明)安河内央之
(録音)橋本泰夫
(音楽)冨田勲
(美術)村木忍
[役名(キャスト)]
かりん(早勢美里)
かりんの母(檀ふみ)
又三郎(小林悠)
又三郎の父/かりんの父(草刈正雄)
一郎(志賀淳二)
嘉助(雨笠利幸)
悦治(宇田川大)
おたね婆(樹木希林)
かりんの祖父(内田朝雄)
使いの男(岸部一徳)
タバコ専売局の男(すまけい)