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平成24年度
Oプログラム

見るものを惹きつけて止まない異端のヒーローたち。シリーズ化やリメイクにより、時代を超越するイコンとなった主人公を描く作品群を紹介いたします。
◆不知火検校
(1960年 大映(京都) 白黒 シネマスコープ 91分)


盲目の按摩・杉の市が、悪行の限りを尽くして地位と富を手にした末に、縛に就くまでを過激に描いた時代劇。主演の勝新太郎は、1954年に端正な顔立ちの二枚目役者としてデビューしたが、大きなヒット作に恵まれずに不遇をかこっていた。しかし本作において、勝は容赦のない悪漢を見事に演じきってみずからのスターイメージの転換に成功し、日本映画に新しい「異端のヒーロー」像を生み出した。本作における勝のヒーロー像は、2年後からはじまる「座頭市」シリーズに引き継がれて勝の生涯の当たり役となったほか、田宮二郎とのコンビで人気を博した「悪名」シリーズや、「兵隊やくざ」シリーズへと発展してゆく。本作で共演した中村玉緒は1962年に勝と結婚した。

[スタッフ]
(原作)宇野信夫
(脚本)犬塚稔
(監督)森一生
(製作)武田一義
(撮影)相坂操一
(照明)中岡源権
(録音)大谷巖
(音楽)斉藤一郎
(美術)太田誠一

[役名(キャスト)]
杉の市(勝新太郎)
浪江(中村玉緒)
おはん(近藤美恵)子
岩井藤十郎(丹羽又三郎)
房五郎(鶴見丈二)
おしん(倉田マユミ)
鳥羽屋丹治(安部徹)
生首の倉吉(須賀不二男)
鳥羽屋玉太郎(伊沢一郎)
不知火検校(荒木忍)

◆次郎長三国志
(1963年 東映(京都) カラー シネマスコープ 102分)


講談や浪曲など大衆芸能の世界で広く知られている幕末の博徒、遠州清水港の次郎長とその子分たちの活躍を描いた痛快時代劇。監督のマキノ雅弘は1952年から54年にかけて『次郎長三国志』(東宝)9部作を作っており、次郎長ものの決定版との評価が高い。東映のこの作品はそのリメイク版にあたり、4部作として製作されている。1920年代半ばに監督デビューしたベテラン、マキノ監督にとっては手慣れた素材であり、流れるような巧みな演出で男意気の世界を作り出している。東映が時代劇から任侠映画へと比重を移しつつあった時期でもあり、次郎長(鶴田浩二)、大政(大木実)、法印大五郎(田中春男)、関東綱五郎(松方弘樹)、桶屋の鬼吉(山城新伍)、増川仙右衛門(津川雅彦)、森の石松(長門裕之)という布陣は、そのまま大正時代劇ともいえる任侠映画の中核をなしていく。

[スタッフ]
(原作)村上元三
(脚本)山内鉄也
(脚本・監督)マキノ雅弘
(企画)小倉浩一郎
( 〃 )俊藤浩滋
(撮影)三木滋人
(照明)中山治雄
(録音)東城絹児郎
(音楽)鈴木静一
(美術)鈴木孝俊

[役名(キャスト)]
清水の次郎長(鶴田浩二)
関東綱五郎(松方弘樹)
お蝶(佐久間良子)
桶屋の鬼吉(山城新伍)
大政(大木実)
法印大五郎(田中春男)
増川仙右衛門(津川雅彦)
お千(藤純子)
森の石松(長門裕之)
投げ節お仲(丘さとみ)

◆網走番外地
(1965年 東映(東京) 白黒 シネマスコープ 91分)


日本における映画観客数は1958年をピークに下降線をたどってゆき、時代劇映画の人気も徐々に陰りが見えはじめた。1963年、時代劇王国を築いていた東映は、時代劇からやくざ映画への転換を試み、やくざの意地や義侠心を描いたヒット作を次々と生み出して全国の若者たちを熱狂させた。なかでも高倉健は、「日本侠客伝」シリーズや「昭和残侠伝」シリーズをはじめ、数々のヒット・シリーズに主演して時代の寵児となる。本作は1965年から1972年の間に計18作が製作された「網走番外地」シリーズの第1作。極寒の網走刑務所に収監中の橘(高倉)は、妹や病身の母に再会することを夢見ながらまじめに服役しているが、悪辣な囚人仲間にそそのかされて脱獄計画に巻き込まれてしまう。橘の更正を手助けする保護司役の丹波哲郎、「アラカン」の愛称で人気を博した時代劇の大御所・嵐寛寿郎、そして個性的な演技で脇を支える田中邦衛など、魅力的な俳優たちの競演も見所。

[スタッフ]
(原作)伊藤一
(脚色・監督)石井輝男
(企画)大賀義文
(撮影)山沢義一
(照明)大野忠三郎
(録音)加瀬寿士
(音楽)八木正生
(美術)藤田博

[役名(キャスト)]
橘真一(高倉健)
権田権三(南原宏治)
妻木(丹波哲郎)
阿久田(嵐寛寿郎)
依田(安部徹)
夏目(待田京介)
大槻(田中邦衛)
真一の義父(沢彰謙)
真一の母 秀子(風見章子)
真一の妹 美千子(石川エリ)子

◆人生劇場 飛車角と吉良常
(1968年 東映(東京) カラ- シネマスコープ 109分)


尾崎士郎の名作として知られる「人生劇場」のうち、特に「残侠篇」に焦点を絞って、巨匠内田吐夢監督が演出した作品である。青春の悩み、男女の愛憎、男の侠気、巡り会いなどを描いたこの小説は、きわめて映画的な題材であり、これまでにも14回にわたり映画化されている。 内田自身もすでに1936年に『人生劇場・青春篇』を発表、評価を得て、その年の「キネマ旬報」ベストテン第2位を獲得している。題材としては2回目の挑戦であったが、中心となるのは青成瓢吉や彼をとり囲む文学の世界の人間たちではなく、飛車角や宮川、吉良常といった侠客たち、おとよ、お袖といった底辺を生きる女たちである。本作の製作された時期、「任侠映画」と呼ばれる一連の作品群が量産され、大衆的な人気を集めており、この作品もその一本として企画されたものである。とはいえ、個々の演出は力感と格調にあふれており、ラストシーンに立ちのぼる霧などに付加されたイメージは内田作品以外の何ものでもない。今からふりかえれば、鶴田浩二、若山富三郎、藤純子、高倉健などこのジャンルにおいて一時代を画した俳優たちが、そろって出演している点も意義深い。「キネマ旬報」ベストテン第9位。

[スタッフ]
(原作)尾崎士郎
(脚本)棚田吾郎
(監督)内田吐夢
(製作)大川博
(企画)俊藤浩滋
(撮影)仲沢半次郎
(照明)梅谷茂
(録音)小松忠之
(音楽)佐藤勝
(美術)藤田博

[役名(キャスト)]
飛車角(鶴田浩二)
宮川(高倉健)
小金(若山富三郎)
おとよ(藤純子)
青成瓢太郎(中村竹弥)
寺兼(大木実)
丈徳(天津敏)
大横田(遠藤辰雄)
青成瓢吉(松方弘樹)
お袖(左幸子)
吉良常(辰巳柳太郎)

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