◆雪之丞変化
(1963年 大映(京都) カラー シネマスコープ 113分)
1927年に『稚児の剣法』で林長二郎としてデビューした大スター・長谷川一夫の功績を祝するためにつくられた「長谷川一夫三百本記念作品」である。1935年に衣笠貞之助監督で空前の大ヒットを記録し、長谷川の代表作ともなった『雪之丞変化』を、同じ長谷川の主演で再映画化するという野心的な企画で、30年近い時を経て、妖艶な女形・雪之丞と無頼の侠盗・闇太郎の一人二役に挑んだ力演が注目される。脇役には市川雷蔵、山本富士子、若尾文子、勝新太郎といった当時の大映の若手スターが顔を揃え、大スターの記念作品に花を添えている。冤罪で両親を失い、歌舞伎役者に育てられ人気女形となった雪之丞が、闇太郎らの助けを得て復讐を遂げる「雪之丞変化」。原作は三上於菟吉の小説で、1934~35年に発表されて以降、たびたび映画化、舞台化されている。本作で初めて時代劇を手がけた市川崑監督は、光と闇が交錯する斬新な映像、ジャズを駆使した音楽など、様々な面で、時代劇の常識を打ち破る演出を試みている。この年の『江戸無情』が長谷川一夫の最後の映画作品となった。
[スタッフ]
(原作)三上於菟吉
(脚色)伊藤大輔
( 〃 )衣笠貞之助
(脚本)和田夏十
(監督)市川崑
(製作)永田雅一
(撮影)小林節雄
(照明)岡本健一
(録音)大谷巖
(音楽)芥川也寸志
( 〃 )八木正生
(美術)西岡善信
(解説)徳川夢声
[役名(キャスト)]
中村雪之丞、闇太郎(長谷川一夫)
お初(山本富士子)
浪路(若尾文子)
昼太郎(市川雷蔵)
島抜け法師(勝新太郎)
門倉平馬(船越英二)
土部三斎(中村鴈治郎)
ムクズ(林成年)
広海屋(柳永二郎)
川口屋(伊達三郎)
中村菊之丞(市川中車)
岡っ引き(大辻伺郎)