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-平成19年度優秀映画鑑賞推進事業-

Rプログラム

純情と獰猛さが入り混じった青春の一瞬を、気鋭の監督たちが鮮やかに収めた青春映画の秀作を紹介いたします。

◆キューポラのある街
 (1962年 日活 白黒 シネマスコープ 99分)

石原裕次郎や小林旭などのスターを配したアクション映画が全盛だった日活に、もう一つの流れとして生まれたのがリアリズムを基調とした青春映画である。その路線を象徴するコンビが吉永小百合と浜田光夫で、この映画の他にも『愛と死をみつめて』(1964)などで主演している。この作品は、鋳物工場が立ち並ぶ埼玉県川口市を舞台に、解雇された鋳物職人の父親を心配しながら、健気に生きようとする娘と若い工員を描いた早船ちよ原作の映画化。保守的な父親を演じる東野英治郎の好演もさることながら、娘を演じた吉永小百合はこの映画でブルーリボン賞を受賞し、本格的に女優への道を歩み出した。今村昌平監督門下の新人浦山桐郎の第1回監督作品で、今村が脚本を共同執筆した。『大人は判ってくれない』(1959)などで知られるフランスのフランソワ・トリュフォー監督もこの映画のみずみずしい感覚を見抜き、激賞したという。「キネマ旬報」ベストテン第2位。

[スタッフ]
(原作) 早船ちよ
(脚本) 今村昌平
(脚本・監督) 浦山桐郎
(撮影) 姫田真佐久
(照明) 岩木保夫
(録音) 古山恒夫
(音楽) 黛敏郎
(美術) 中村公彦

[役名(キャスト)]
ジュン (吉永小百合)
塚本克己 (浜田光夫)
ジュンの父 石黒辰五郎 (東野英治郎)
ジュンの母 (杉山徳子)
ジュンの弟 タカユキ (市川好郎)
サンキチ (森坂秀樹)
サンキチの母 (菅井きん)
サンキチの父 (浜村純)
サンキチの姉 ヨシエ (鈴木光子)
野田先生 (加藤武)
女工員 (吉行和子)

◆けんかえれじい
 (1966年 日活 白黒 シネマスコープ 86分)

昭和初期、岡山から会津若松に移り住んだ暴れ者の硬派学生が、喧嘩に明け暮れながらも成長してゆく様を活写したおおらかな青春映画。若き高橋英樹が主人公を熱演しているが、爽快なアクションや乾いたユーモアの中に、ふと恋愛感情を覚えた主人公を通して豊かな叙情性が表現されている。山本直純による硬軟のメリハリが効いた音楽も、主人公の揺れ動く心理を的確に表していると言えるだろう。近年、白い髭の老人役で映画やテレビへの出演も多い鈴木清順監督は、もともと日活撮影所に属し、低予算、短い撮影期間による娯楽作品の量産体制、いわゆる「プログラム・ピクチャー」の中で独特のシャープな作風を完成させていった監督である。ラストシーン近くに、やがて2・26事件で処刑される国家主義者北一輝が登場し、戦争に突き進む日本の姿を暗示しているが、原作にはなかったこの設定は鈴木監督が発案したものだという。

[スタッフ]
(原作) 鈴木隆
(脚本) 新藤兼人
(監督) 鈴木清順
(企画) 大塚和
(撮影) 萩原憲治
(照明) 熊谷秀夫
(録音) 秋野能伸
(音楽) 山本直純
(美術) 木村威夫

[役名(キャスト)]
南部麒六 (高橋英樹)
道子 (浅野順子)
スッポン (川津祐介)
カフェーの女給 (松尾嘉代)
団長 タクアン (片岡光雄)
金田 (野呂圭介)
麒六の父 (恩田清二郎)
道子の母 ヨシノ (宮城千賀子)
マンモス先生 (加藤武)
アヒル先生 (浜村純)
近藤大尉 (佐野浅夫)

◆八月の濡れた砂
 (1971年 日活 カラー シネマスコープ 91分)

揺れ動く若者の行動と心理を硬質なタッチで瑞々しく描いた青春映画の名作であり、藤田敏八監督の初期の代表作である。主人公たちの〈大人〉に対する不信と反抗の姿勢は、この種の映画に特有なものであると同時に、学生運動などで大きく揺れ動いた1960年代後半の時代の気分を色濃く宿したものと言えるだろう。ただその描写が反抗礼讃、青春万歳の紋切り型ではなく、優しさと残酷さの入り混じった、青春という名の一季節を、静かに見つめている点にこの監督の特徴がある。1950年代の『太陽の季節』とはまた別の、湘南の眩しく気怠い夏がスクリーンに溢れている。製作会社の日活はこの年をもって一般劇映画の製作を中止し、ロマンポルノへと移行したが、本作は青春映画を看板としてきた同社の光芒を放つ一本として「キネマ旬報」ベストテン第10位に選ばれた。

[スタッフ]
(脚本) 峰尾基三
(〃) 大和屋竺
(脚本・監督) 藤田敏八
(企画) 大塚和
(撮影) 萩原憲治
(照明) 大西美津男
(録音) 古山恒夫
(音楽) むつひろし
(〃) ペペ
(美術) 千葉和彦

[役名(キャスト)]
野上健一郎 (村野武範)
西本清 (広瀬昌助)
川西修司 (中沢治夫)
稲垣和子 (隅田和世)
三原早苗 (テレサ野田)
  真紀 (藤田みどり)
亀井 (渡辺文雄)
井手 (地井武男)
五郎 (山谷初男)
神父 (原田芳雄)

◆伊豆の踊子
 (1974年 東宝映画=ホリプロ カラー シネマスコープ 82分)

青春小説の名作として知られる川端康成の同名作の映画化。田中絹代と大日方伝が主演した、五所平之助監督の松竹作品(1933)を第1回として、これまでに全部で6回映画化されている。踊り子を演じたのは、美空ひばり、鰐淵晴子、吉永小百合、内藤洋子らで、いずれもその時代の青春スターであった。本作の特徴は、五所作品と同じく、旅芸人たちの社会的な位置を明確にしている点にある。その視点はラストの印象的なストップモーションからも見てとることができるだろう。西河克己監督にとっては、1963年の吉永小百合主演作品に次いで2度目の映画化であった。山口百恵は1970年代のアイドル歌手で、絶大な人気を誇っていた。相手役となる一高生役は公募され、まだ無名だった三浦友和が抜擢された。この後二人は「百恵=友和」のゴールデンコンビとして12本の作品で共演し数々のヒット作を放ち、1970年代青春映画に大きな足跡を残すが、1980年に結婚。山口百恵は芸能界を引退した。

[スタッフ]
(原作) 川端康成
(脚本) 若杉光夫
(監督) 西河克己
(製作) 堀威夫
(〃) 笹井英男
(撮影) 萩原憲治
(照明) 高島正博
(録音) 木村暎二
(音楽) 高田弘
(美術) 佐谷晃能
(ナレーター) 宇野重吉

[役名(キャスト)]
かおる (山口百恵)
川島 (三浦友和)
栄吉 (中山仁)
千代子 (佐藤友美)
のぶ (一の宮敦子)
百合子 (四方正美)
おきみ (石川さゆり)
よし子 (宗方奈美)
島屋 (江戸家猫八)
福田屋の板前 (鈴木ヒロミツ)
茶屋の老婆 (浦辺粂子)

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