東京国立近代美術館フィルムセンター(以下「フィルムセンター」)では、近年、映画フィルムのデジタル化やデジタル修復等の研究事業をすすめています。
平成28年度、BDCプロジェクトではそれらの作業行程で生成される各種デジタルデータの長期保存のための調査研究を、株式会社エヌ・ティ・ティ・データに委託研究という形で実施しました。
本ブログでは、調査研究の内容を概観するとともに、調査研究にて作成された報告書の本編を紹介したいと思います。 続きを読む
東京国立近代美術館フィルムセンター(以下「フィルムセンター」)では、近年、映画フィルムのデジタル化やデジタル修復等の研究事業をすすめています。
平成28年度、BDCプロジェクトではそれらの作業行程で生成される各種デジタルデータの長期保存のための調査研究を、株式会社エヌ・ティ・ティ・データに委託研究という形で実施しました。
本ブログでは、調査研究の内容を概観するとともに、調査研究にて作成された報告書の本編を紹介したいと思います。 続きを読む
EuropeanaやDPLA、Troveなど、オンラインの世界には、新たな知的インフラとしての大規模な文化遺産情報ポータルサイトが次々に現れ、さまざまな文化資源に関する情報へのアクセスが飛躍的に向上しました。この背景にはもちろん、ICTの発展やデジタル化による文化遺産のさらなる資源化に対する国家的あるいは戦略的な支援があり、また著作権法等の改正など法整備も不可欠であったと言えます。
業務用のビデオテープには、ケースの内部に「記録票」と呼ばれる紙が同梱されています。
この記録票には、収録時間、タイトルといった作品に関する情報、さらにフレームレートや使用機材といった技術的な情報など、収録されている映像を理解する上で役に立つ、様々な情報が記載されています。
一方で、HDDやLTOなど、昨今利用が進んでいるデジタルメディアには、これに相当する紙が同梱されていない場合があり、また同梱されていたとしても、その記載内容には大きなばらつきがあるような状況です。
BDCプロジェクトレポート第5回:映画の長期保存と活用を目的としたシステムの可能性とコミュニティの重要性、を更新致しました。
今回のプロジェクトレポートは、BDCプロジェクトにて「持続可能なデジタルアーカイブシステム」の構築にむけた調査研究を実施し、見えてきた課題と「コミュニティ」の重要性をご報告するものになります。
関連するご報告として以下のブログ記事もご覧ください。
『映画に関する映像データの長期保存と活用を目的とした自由度の高い持続可能なシステム構築のための調査研究』について
今回は、長期に情報を維持する仕組みとして考えられた概念モデルについてお話したいと思います。
デジタル情報はビット情報を維持するだけでは不十分であり「将来にわたって保存対象の意味を理解できること」を保証してこそ長期的な保存が実現します。
1.OAIS参照モデル
OAIS参照モデル(註1)をご存じでしょうか?
OAIS参照モデル(Reference Model for an Open Archival Information System)とは情報の長期保存システムの構築に対して有力なモデルとされ、国際標準規格(ISO 14271:2003、改訂版はISO 14721:2012)になっている仕組みです。
今回は情報セキュリティに関する内容です。
1.一般的な情報セキュリティ
一般的に、情報セキュリティにおいては「情報の機密性、完全性、可用性を維持する(ISO/IEC 27002)」ために、様々な脅威から情報資産を守ることが基本となります。
これには、技術的、物理的、人的、組織的に様々な対策を講じることが必要になります(注1)。
現実的な対処を行えるよう、情報セキュリティを体系的かつ系統立てて捉えたのが、情報セキュリティマネジメントシステム(Information Security Management System、以下ISMS)です。
情報セキュリティの対応には費用とリソースが必要になるため、ISMSではその配分を決定できる『経営層を頂点とした体制で組織的に』情報セキュリティに取り組みます。
今回は、フィルム映画のデジタル復元に関する話題です。
フィルムセンターでは2002年以来、デジタル技術を活用した映画の復元について取り組んでいます。
フィルムの劣化によって生じる画面の揺れや傷を取り除き、激しい褪色を補正するなど、従来のアナログ的な手法では不可能であったことが、デジタル技術の進化により実現されるようになっています。
この技術進化はもちろん現在も続いており、ハードウェア・ソフトウェアの進化、さらにそれを扱う技術者の技の進化とも相まって、これまでは除去できなかった映像的な瑕疵にも対応できるようになっています。
さて、今回ご報告させていただくのは、国内では極めて稀な二色式カラーを採用した作品『千人針』(1937年)のデジタル復元事例になります。
フォーマットに関する話題の2回目です。
現在、映画上映の大半はフィルムではなく、デジタルで行われています。
このデジタル上映で用いられるデータのフォーマットとしては、DCP(デジタルシネマパッケージ)と呼ばれる、画像、音声、字幕等のデータをひとまとめにしたものが標準的に用いられています。
デジタルシネマの黎明期には、メーカー毎に異なるフォーマットが乱立していましたが、このDCPの形でフォーマットが確定しスタンダードとなったことが、その後のデジタルシネマの大きな発展につながりました。
以前お伝えした通り、沢山あるフォーマットからどれか1つを選択することは容易ではないのですが、劇場での上映用フォーマットに関しては、このDCPというフォーマットで確定されており、これはアーカイブにとっては非常にありがたい状況とも言えます。
一方で、現在流通しているDCPはInteropDCPと呼ばれるもので、この仕様の一部は十分な標準化がなされていないということが指摘されています。
今回はファイルフォーマットに関する話題です。
デジタル映画の制作・流通の過程においては、どのようなフォーマットのファイルが発生しているのでしょうか。
例えば、撮影の段階で使用されるのは、汎用的なQuickTimeかもしれませんし、Canon Cinema RAWなど、カメラメーカー独自のRAWフォーマットかもしれません。
編集や特殊効果を加える段階では、MXFやOpenEXRが使われているかもしれませんし、完成データとしては、画はDPX、音はWAVといった、画と音がばらばらな形になっているかもしれません。
さらに流通の段階では、公開先に合わせてMXFやQuickTimeが作られたり、場合によってはそれらのファイルを作るために、TIFFやAVIが中間ファイルとして作られるかもしれません。
制作ワークフローの多様化だけでなく、劇場上映から種々のデバイスに向けたデジタル配信など、公開方法もまた多様化しており、1作品に対して作成されるファイルフォーマットは実に様々です。
(各ファイルフォーマットについては、記事最後にある報告書を参照下さい)
このような状況に対し、ワークフロー上のどのタイミングで発生したデータを、どういったスペックのどのようなフォーマットで保存しておくべきなのか、といった課題は、常に議論の的となっています。