二色式カラー映画『千人針』の復元

 

今回は、フィルム映画のデジタル復元に関する話題です。

 

フィルムセンターでは2002年以来、デジタル技術を活用した映画の復元について取り組んでいます。

フィルムの劣化によって生じる画面の揺れや傷を取り除き、激しい褪色を補正するなど、従来のアナログ的な手法では不可能であったことが、デジタル技術の進化により実現されるようになっています。

この技術進化はもちろん現在も続いており、ハードウェア・ソフトウェアの進化、さらにそれを扱う技術者の技の進化とも相まって、これまでは除去できなかった映像的な瑕疵にも対応できるようになっています。

 

さて、今回ご報告させていただくのは、国内では極めて稀な二色式カラーを採用した作品『千人針』(1937年)のデジタル復元事例になります。

上記の通り、これまでの映画のデジタル復元では、画像や音声の劣化補正に注力してきましたが、今回は、この特殊なカラーシステムによる色彩を復元するため、二色式カラーで表現できる色の領域を明らかにした上で、その領域内でのみ色彩補正を行うという取り組みに注力しました。

つまり、技術的根拠に基づく復元を支援するために、デジタル技術を最大限活用する、というアプローチを採っています。

『千人針』の復元ワークフロー
参考:『千人針』の復元ワークフロー

 

デジタル技術の進化により、劣化補正の自由度が広がっている分、技術的な根拠に基づいた復元がいっそう求められるようになってきています。

 

詳細な報告は、以下からお読みいただけます。

東京国立近代美術館 研究紀要 20号(2016)

『千人針』(1937年)の復元―アナログ・デジタル技術を活用した二色式カラー映画の色再現

 

(KM)