デジタル映画の制作・流通に用いられるファイルフォーマット

 

今回はファイルフォーマットに関する話題です。

 

デジタル映画の制作・流通の過程においては、どのようなフォーマットのファイルが発生しているのでしょうか。

例えば、撮影の段階で使用されるのは、汎用的なQuickTimeかもしれませんし、Canon Cinema RAWなど、カメラメーカー独自のRAWフォーマットかもしれません。

編集や特殊効果を加える段階では、MXFやOpenEXRが使われているかもしれませんし、完成データとしては、画はDPX、音はWAVといった、画と音がばらばらな形になっているかもしれません。

さらに流通の段階では、公開先に合わせてMXFやQuickTimeが作られたり、場合によってはそれらのファイルを作るために、TIFFやAVIが中間ファイルとして作られるかもしれません。

制作ワークフローの多様化だけでなく、劇場上映から種々のデバイスに向けたデジタル配信など、公開方法もまた多様化しており、1作品に対して作成されるファイルフォーマットは実に様々です。

(各ファイルフォーマットについては、記事最後にある報告書を参照下さい)

 

このような状況に対し、ワークフロー上のどのタイミングで発生したデータを、どういったスペックのどのようなフォーマットで保存しておくべきなのか、といった課題は、常に議論の的となっています。

フォーマットを選択していく上で、米国議会図書館が公開している、フォーマットの永続性を考える上での7つの要素が参考になります。(※)

  1. Disclosure(フォーマットに関して情報が開示されているか)
  2. Adoption(広く用いられているか)
  3. Transparency(記述方法がシンプルで解読が容易であるか)
  4. Self-documentation(外部情報に頼らずに解読が可能か)
  5. External dependencies(特定のハードウェアやシステムに依存していないか)
  6. Impact of patents(特許の影響をどの程度受けているか)
  7. Technical protection mechanisms(暗号化などの処置がなされていないか)

一方で、これらの要素はお互いに影響しあう側面もあり、依然としてフォーマットの選択は容易なことではありません。

 

何れにせよ、取り扱うフォーマットについて、上記のような観点における詳細な情報把握は必須となるため、BDCプロジェクトではデジタル映画の制作や流通で用いられる様々なファイルフォーマットに関して、株式会社IMAGICAに委託し、調査を行いました。

 

平成26年度「デジタル映像の制作・流通に用いられるファイルフォーマットに関する調査」報告書

 

この調査では、デジタル映画の制作・流通に用いられているいくつかのフォーマットについて、その概要、背景、特徴やドキュメントの公開状況等について調査しています。

 

ご興味ある方、是非ご確認下さい。

 

(KM)

 

(※)Sustainability of Digital Formats Planning for Library of Congress Collections / Sustainability Factors

本文中の()内については、各要素が意図していると考えられる内容を、簡易的に日本語化したものです