NFAJ Digital Gallery – No.19
公開日:2020年2月22日
第19回 無声期日本映画のスチル写真(9)─マキノプロダクション①
「無声期日本映画のスチル写真」第9回は、マキノプロダクションを取り上げます。今回は特に、マキノプロダクション創立者の牧野省三の長男、マキノ正博(後に雅弘、雅裕、雅広と改名)の作品に焦点を当てます。いずれの作品もフィルムが現存しないか、又は一部しか現存しないものです。写真は、みそのコレクション、国会図書館旧蔵資料から選定しました。
※解説・あらすじは文献に基づく。
『青い眼の人形』(1926年) Aoi me no ningyo
写真/Photo
1926年10月22日公開 浅草 千代田館 First release: Dec. 22, 1926
監督:マキノ正博+富沢進郎 Director: Masahiro Makino, Shinro Tomizawa
公開当時は富沢進郎監督作品として発表された。童謡「青い眼の人形」(1921年発表)の異国情緒が盛り込まれた探偵活劇。妻に去られ、一人息子の和夫(都賀一司)とともに放浪の旅を続ける男やもめの内田幸吉(荒木忍)が行き着いた花街で、刑務所を出所したばかりの青年・英謙二(鹿島陽之助)と出会う。父子との交流で改心した謙二は、探偵の沖(東郷久義)と協力し、今や不幸の底で生きる幸吉の元妻・敬子(時岡八千代)を救い、父子と再会させる。
『愛しき彼』(1928年) Kanashiki Kare
写真/Photo
1928年1月10日公開 京都 マキノキネマ First release: Jan. 10, 1928
監督:マキノ正博 Director: Masahiro Makino
本作のために大セットを組んで撮影した「支那劇」。親を失い大道芸人として苦労の日々を送る主人公(杉狂児)は、唯一人の肉親である妹(都賀静子)が、兄妹が身を寄せている縁者の男(津村博)に穢されたことを知って復讐を誓う。しかし産まれてくる子供のために男が悪党たちと戦う姿をみた主人公は、彼を庇い刺される。
『浪人街 第一話 美しき獲物』(1928年) Roningai dai'ichiwa: Utsukushiki emono
写真/Photo
1928年10月13日公開 京都 マキノキネマ First release: Dec. 13, 1928
監督:マキノ正博 Director: Masahiro Makino
原作・脚色は山上伊太郎。本作を含め三話(四篇)つくられたシリーズ作品。無声期のマキノ正博監督作品の代表作として知られる1本。マキノ自身によって2度、黒木和雄監督によって1度、リメイクされている。浪人生活における虚無と退廃が、母衣権兵衛(南光明)、荒牧源内(谷崎十郎)、赤牛弥五右衛門(根岸東一郎)の三人の生き様によって描かれる。
『運命線上に躍る人々』(1930年) Unmeisenjo ni odoru hitobito
写真/Photo
1930年2月14日公開 京都 マキノキネマ First release: Feb 14, 1930
監督:マキノ正博+久保為義 Director: Masahiro Makino, Tameyoshi Kubo
久保為義監督第一回作品として発表された作品。マキノ正博が「補導」(雑誌広告の表記)として演出に関わった。今崎荘平(横澤四郎)、小暮鴻(大貫憲)、遠田軍次郎(孫孝雄)の三人組は、彼らが害悪とみなした人物の邸宅に怪盗の如く忍び入り、金品を奪わずに恐怖だけを与えて去るという行為を繰り返しては快楽を得ていた。やがて彼らは薄幸の娘くみ子(三好絹江)と出会い、職工である彼女の父を苦しめる悪徳社長を懲らしめようと画策する。
『泥だらけの天使』(1931年) Dorodarake no tenshi
写真/Photo
1931年3月13日公開 京都 マキノキネマ、大阪 芦辺劇場 First release: Mar. 13, 1931
監督:マキノ正博 Director: Masahiro Makino
併映作品:『紅蝙蝠』(1931年、マキノプロダクション、監督:勝見正義)
Released with: Beni Komori (1931, Makino Pro, dir. Masayoshi Katsumi)
原作・脚色は中川信夫。封切館の芦辺劇場では、『戻橋』(1929年、監督:マキノ正博)の実演版が澤村国太郎と市川米十郎によって演じられた。「ルンペン」として生きる“煙突の健”(孫孝雄)と“スパイクの敏”(仙石寿)は孤児の和美(林喜美枝)と知り合い、行動を共にするようになる。日雇仕事で負傷した敏が困窮したのを見兼ねた和美は悩んだ末に、身を売る決意をする。