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海外のフィルムアーカイブ 韓国 第1回(全2回)

 

技術的な話題がしばらく続いているので、海外ではこのデジタル保存問題にどう対処しているの?というところを少し、俯瞰的に見てみましょう。

 

わたしたちの調査では、世界のフィルムアーカイブ活動を牽引する米国、英国、フランス、北欧諸国から、欧米以外の映画保存先進国オーストラリア、メキシコ、韓国、比較的大規模な国立フィルムアーカイブを擁する欧州の旧社会主義国など、最新技術に偏らず、歴史や制度の面も考慮しながら多角的に、デジタル映画の収集と保存、そして活用に関する実際の取り組み状況を見せてもらうため、多くの機関を訪問しました。

 

順を追って、各国の様子をお伝えしていこうとおもっていますが、まずは身近なところ、韓国の状況からご紹介します。

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KOFA:Korean Film Archive

 

訪問されたことのある方も多いかもしれませんが、韓国の国立フィルムアーカイブといえば、韓国映像資料院(Korean Film Archive、以下KOFA)です。今回はKOFA収集部部長の張光憲氏にお話をうかがいました。

 

KOFAは韓国映画の保管機関として1974年に設立。ソウル市内、北西に位置するサンアム地区に作られたIT・メディア企業密集地『デジタルメディアシティ(DMC)』のなかにあります。同ビル内に映画図書館、展示室、シネマ(2スクリーン)があり、利用や鑑賞は無料です。今年5月には、ソウル郊外のパジュ市に建設していた大規模なコンサベーションセンターが完成し、アナログフィルムの複製もアーカイブ内で行うことができるようになるなど、映画保存活動のさらなる充実も見込まれます。

 

デジタル映画の保存体制について触れる前に、現在どのくらいのデジタル映画が保存されているのか、KOFAのウェブサイト(英語ページ)で確認してみましょう。

2016年10月更新の数値によると、デジタル映画 1,433タイトルが収蔵されています。フィルムも含めた収集率でいえば、2000年代に製作された作品は99.5%をカバー、2010年代は83.7%となっています。1960年代以前の収集率は低くなっています。

 

韓国では、製作者に対し、「映画」を国に納めることを法的に義務付ける、いわゆる法定納入が実施されています。それまでの映画法に代って制定された『映画振興法(1995.12.30制定、法律第5129号)』とその改正(2002.1.26施行)により、KOFAを指定機関とする法定納入の制度が完成し、同法24条の3に「韓国映像資料院の設置」、25条に「映画フィルム等の提出」が定められました。なお、社会の変化に伴い、名称と共にこの法律の内容は改められ、現在は、『映画及びビデオ物の振興に関する法律(2006.4.28制定、法律第7943号)』が、KOFAの設置根拠(第34条)ならびに映画の提出(第35条)を定めています(注1)

なお、日本では、国立国会図書館法第24条に、同館へ納入する義務のある出版物として「映画フィルム」が記されていますが、附則(平成一二年四月七日法律第三七号)抄により「当分の間、館長の定めるところにより、同条から第二十五条までの規定にかかわらず、その納入を免ずることができる」とされ、現在まで実際の納本対象となったことはありません。

 

ここでちょっと注意したいのは、韓国において何を「映画」として提出すべきであるのか、それを決めているのはKOFAとは別の政府機関(映像物等級員会)であることです。国の映画保存機関に収蔵されるためには、この映像物等級員会によって「映画」の認定を受ける必要があります。しかしながら、その「映画」の定義は市場との関係が強く曖昧なところがあり、今回の調査で聞いたところによれば、その審査はやや形式化しているとのこと。とくに近年、「映画」認定を受けるIPTV向け番組(もともと劇場公開を意図して作られていないものや、音楽ライブ・オペラ公演等のステージ記録など)が激増しており、この背景には、「映画」となることによる流通可能性や収益の拡大、提出時に受ける報償額の違いなどがあると言います。

 

韓国では、映画の提出は無償ではなく、提出者には定額の報償金が支払われます。KOFAはこれを毎年予算化する必要があり、その元となる年間の「映画」受け入れ本数は、映像物等級委員会によって発行される映画年鑑(前年12月までの「映画」を1月にまとめ、2月に発行)を参照します。また、ボーンデジタル映画1件の提出に係る報償額はというと、複数のポストプロダクションに提出物の製作費に関する見積もりを依頼し、それを参考に一定の額(10分を単価とする)を決めて計上しています。

 

「映画」認定を受けた作品が、半ば自動的にKOFAに収蔵され、その長期的な保存が保証される一方で、実験映画やアニメーション、劇場公開に至らない個人映画など、そこからもれてしまう作品が失われることへの懸念があり、対策としてKOFAは2003年から、独立映画データベース構築事業を行っています。このデータベースには、ナショナルフィルモグラフィーを構成する「映画」には分類されない「芸術映画」等が登録され、射程範囲の定まらないという困難を持ちながらも、映画祭での受賞作品に関する情報を優先的に集めつつ、映画祭へ足を運び、作家と直接話し合って作品の収蔵に結びつけるなどといった積極的な活動によって、この事業を進めています。

 

KOFAにおけるボーンデジタル映画の収集は、先述の法律(第7943号)を受けて、2007年に着手、2012年から本格化しますが、2007年の時点で時すでに遅く、デジタル技術の導入が一般化しつつあった2000年代初頭の作品は、データが上書きされていたり、上映用フィルムだけが残っていたりと、オリジナルと呼べる素材が集まらない状況であったそうです。

 

張氏には、これまでのご経験を交えて具体的にお話しいただき、この場を借りてお礼申し上げます。

 

次回は、収集物がどのように保存されているのか、その現状をお伝えします。

(HM)

■本文中の注

現行法「영화 및 비디오물의 진흥에 관한 법률(映画及びビデオ物の振興に関する法律)」は原文および英語でインターネット公開されています。


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「映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究」は文化庁の美術館・歴史博物館重点分野推進支援事業です。

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BDCプロジェクトはNational Research Project
for the Sustainability of Born-Digital Cinema
の略称です。

事業名は「映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究」です。