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平成23年度
Lプログラム

山口百恵、松田聖子、原田知世、宮沢りえ――時代を彩るアイドルたちのみずみずしい魅力にあふれる作品を紹介いたします。
◆伊豆の踊子
(1974年 東宝映画=ホリプロ カラー シネマスコープ 82分)


青春小説の名作として知られる川端康成の同名作の映画化。田中絹代と大日方伝が主演した、五所平之助監督の松竹作品(1933)を第1回として、これまでに全部で6回映画化されている。踊り子を演じたのは、美空ひばり、鰐淵晴子、吉永小百合、内藤洋子らで、いずれもその時代の青春スターであった。本作の特徴は、五所作品と同じく、旅芸人たちの社会的な位置を明確にしている点にある。その視点はラストの印象的なストップモーションからも見てとることができるだろう。西河克己監督にとっては、1963年の吉永小百合主演作品に次いで2度目の映画化であった。山口百恵は1970年代のアイドル歌手で、絶大な人気を誇っていた。相手役となる一高生役は公募され、まだ無名だった三浦友和が抜擢された。この後二人は「百恵=友和」のゴールデンコンビとして12本の作品で共演し数々のヒット作を放ち、1970年代青春映画に大きな足跡を残すが、1980年に結婚。山口百恵は芸能界を引退した。

[スタッフ]
(原作)川端康成
(脚本)若杉光夫
(監督)西河克己
(製作)堀威夫
( 〃 )笹井英男
(撮影)萩原憲治
(照明)高島正博
(録音)木村暎二
(音楽)高田弘
(美術)佐谷晃能
(ナレーター)宇野重吉

[役名(キャスト)]
かおる(山口百恵)
川島(三浦友和)
栄吉(中山仁)
千代子(佐藤友美)
のぶ(一の宮敦子)
百合子(四方正美)
おきみ(石川さゆり)
よし子(宗方奈美)
島屋(江戸家猫八)
福田屋の板前(鈴木ヒロミツ)
茶屋の老婆(浦辺粂子)

◆野菊の墓
(1981年 東映=サンミュージック カラー ビスタ 91分)


歌人として知られる伊藤左千夫の原作小説を、詩情豊かに描いた澤井信一郎監督の第1回監督作品。旧家のいとこ同士である民子と政夫、若い二人のほのかな恋と周囲の無理解による別れ、そして民子の死と続く哀切なこの物語は、1955年に木下恵介監督が回想形式に工夫をこらしたユニークな手法で映画化した『野菊の如き君なりき』が有名である。本作はその3回目の映画化だが、澤井監督は当時人気絶頂の松田聖子から「アイドル歌手」の雰囲気を見事にぬぐいさり、彼女の素顔の魅力を導きだしている。新人とは思えぬ円熟した演出力は、黙って嫁いでいく民子に無言で花を捧げる政夫という、いわば運命を受け入れる二人の姿をとらえた印象的な場面にもあらわれている。マキノ雅広監督の助監督を長くつとめ、情緒を重んじた巧みな演出には定評がある。

[スタッフ]
(原作)伊藤左千夫
(脚本)宮内婦貴子
(監督)澤井信一郎
(製作)高岩淡
( 〃 )相澤秀禎
(撮影)森田富士郎
(照明)梅谷茂
(録音)林鉱一
(音楽)菊池俊輔
(美術)桑名忠之

[役名(キャスト)]
民子(松田聖子)
政夫(桑原正)
巡礼の老人(島田正吾)
斎藤きく(加藤治子)
長男 喜一郎(村井国夫)
妻 初子(赤座美代子)
お増(樹木希林)
常吉(湯原昌幸)
斎藤豪三郎(丹波哲郎)
戸村新吉(愛川欽也)
妻 せい(白川和子)

◆時をかける少女
(1983年 角川春樹事務所 カラー ビスタ 104分)


1970年代後半の日本映画界に起きた最大の変化の一つに、出版界の老舗角川書店の映画製作への進出が挙げられる。複数のメディアを駆使した同社の宣伝手法は日本映画に旋風を巻き起こした。この映画でスクリーン・デビューを果たした原田知世は、角川映画の新人募集で選ばれてテレビドラマで一躍人気を獲得、この作品により薬師丸ひろ子と並ぶ角川のトップ・スターとなった。映画は、筒井康隆が書いた少年少女向けのSF小説を原作に、ある日突然時間を超える能力を身につけてしまった女子高校生の恋愛を描いている。大林宣彦監督は登場人物が時間を巻きもどす際に「コマ落とし」などのテクニックを縦横に使い、8ミリ映画出身ならではの映像化を施している。ロケ地には、大林監督の出身地である広島県尾道市や竹原市の古い街並みが選ばれ、また上原謙、入江たか子といった往年のスターを起用しているのも監督らしい目配りといえよう。

[スタッフ]
(原作)筒井康隆
(脚本)剣持亘
(監督)大林宣彦
(製作)角川春樹
(撮影)阪本善尚
(照明)渡辺昭夫
(録音)稲村和巳
(音楽監督)松任谷正隆
(美術デザイン)薩谷和夫

[役名(キャスト)]
芳山和子(原田知世)
深町一夫(高柳良一)
深川吾朗(尾美としのり)
神谷真理子(津田ゆかり)
福島利男(岸部一徳)
立花尚子(根岸季依)
和子の父 哲夫(内藤誠)
   母 紀子(入江若葉)
深町正治(上原謙)
妻 たつ(入江たか子)
堀川貞子(きたむらあきこ)

◆ぼくらの七日間戦争
(1988年 角川春樹事務所 カラー ビスタ 94分)


宗田理の同名小説の映画化。厳しい校則に縛られ、窮屈な学校生活を強いられている中学生。今朝も遅刻しそうな生徒が走って登校していく。校門の前には教師が立って服装検査だ。朝礼では校長が長々と教訓話を続けている。これでは不満はたまるばかりだ。無断の持ち物検査に怒った1年生の男子グループがついに無断欠席、廃校場に立てこもった。差し入れに訪れた女生徒も参加し、ほとんどキャンプのような雰囲気のなかで、教師と親に対する反抗が始まった。テレビCMで人気を集めた、宮沢りえの映画デビュー作である。戦車が走り機動隊が出動する大騒動も、打ち上げられる花火のような幻かもしれないと暗示する場面が印象に残る。監督の菅原比呂志はカリフォルニア州立大学で映画製作と演出を学んだ後、角川映画の助監督、プロデューサーを経てこの作品で監督デビューした。

[スタッフ]
(原作)宗田理
(脚本)前田順之介
(脚本・監督)菅原比呂志
(製作)角川春樹
(撮影)河崎敏
(照明)長谷博
(録音)辻井一郎
(音楽)小室哲哉
(美術)小澤秀高

[役名(キャスト)]
中山ひとみ(宮沢りえ)
橋口純子(五十嵐美穂)
堀場久美子(安孫子里香)
菊地英治(菊池健一郎)
安永宏(鍋島利匡)
柿沼直樹(田中基)
中尾和人(大沢健)
宇野秀明(中野慎)
天野健二(石川英明)
日比野朗(金浜政武)
酒井先生(倉田保昭)
野沢先生(大地康雄)
西脇先生(賀来千香子)
瀬川(室田日出男)

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