1『かぐや姫 』[短縮版]

- 33分
- 35mm・白黒
トーキー専用の貸スタジオとして設立された京都のJ.O.スタヂオによる、『百萬人の合唱』に続く自社製作の第2回作品。「竹取物語」を翻案した日本的題材を、作曲家・箏曲家の宮城道雄と日本画家の松岡映丘が参加した音楽と美術で独自性を見せた音楽映画。
映画初出演の新人北澤かず子が「かぐや姫」を演じ、『百萬人の合唱』にも出演した徳山璉と、同じくビクター専属だった藤山一郎が歌唱を担い、P.C.L.や東宝で活躍した汐見洋や、松竹蒲田出身の横尾泥海男などが脇を固めている。円谷英二は松竹下加茂時代から有名なローキー撮影を基調に、スモークによる雰囲気作り、自身が開発を手掛けたクレーンの活用、そしてスクリーン・プロセスなど合成技術の導入と、キャメラマンとして蓄積してきた多様な撮影技術を発揮している。
略筋
竹取翁と媼は竹やぶで見つけた赤ん坊をかぐや姫と名付け、息子の造麿と兄妹のように育て、成長した二人を娶わせようとしていた。しかし姫の美しさは都中の評判となって、宰相阿部は息子の細身か太麿のどちらかに嫁がせるよう翁に迫った。翁の様子に心を痛めたかぐや姫は、最高の宝物を持ち帰った人と結ばれると申し出た。細身たちの奸計によって海で遭難した造麿だったが、流れ着いた浜辺で陰陽師に助けられる。陰陽師は一計を案じ、月で生まれたかぐや姫が月蝕の夜に昇天するという噂を都に流して宰相たちを信じ込ませた。目を閉じて幻の天人の舞を見ている宰相と息子たちの前を、かぐや姫と造麿それに翁夫婦を乗せた牛車は去って行くのだった。
脚色:J.O.企画部/監督:田中喜次/撮影:円谷英二/録音:万宝圭介/美術:松岡映丘/音楽:宮城道雄/演技監督:青柳信雄/主題歌作詩:西條八十/ミニチュア制作・撮影:政岡憲三/アニメーション用人形制作:浅野孟府
出演:北澤かず子(かぐや姫)、藤山一郎(造麿)、徳山璉(太麿)、汐見洋(竹取翁)、東日出子(竹取嫗)、横尾泥海男(宰相阿部)、藤輪欣司(細身)、下田猛、上田吉二郎
演奏:宮城合奏団、ビクター管弦楽団・混声合唱団/舞踊:高田せい子按舞、高田舞踊団総出演
公開:1935 年11 月11 日(京都宝塚劇場)、11 月21 日(日本劇場)
オリジナル版上映時間:75 分(9 巻、2051m)
1936 年に国際映画協会の監修により英国への輸出向けに際編集された短縮版の上映時間:33 分(3 巻、908m)。