NFAJ Digital Gallery – No.1

公開日:2013年4月26日

第1回
戦前期日本の映画ポスター(1)

活動写真は、20世紀の日本にとってモダニズムの最先端をなす文化でした。そのことは少数ながら現存する当時の映画からも読み取れますが、それを最も如実に示しているのが宣伝用のポスターでしょう。旧劇から発展した時代劇の成立、近代の風俗を捉えた現代劇の登場といった映画史の流れはもちろん、ポスター・グラフィックの革新からも時代の変化を見ることができます。稀代の映画資料コレクター故・御園京平氏(本名・月村吉治)によってフィルムセンターに寄贈された貴重な戦前期のポスター・コレクションを数回にわたって紹介します。

『江戸の花 血染の纏』(1916年)
Edo no hana: Chizome no matoi (1916)

『江戸の花 血染の纏』(1916年)
Edo no hana: Chizome no matoi (1916)

「尾上松之助一派」出演を謳った一枚。図柄は講談本の挿絵を思わせる。
月村吉治氏寄贈(みそのコレクション)

Donated by Yoshiharu Tsukimura (Kyohei Misono)
106.5×85.1cm


『岩見重太郎』(1917年)
Iwami Jutaro (1917)

『岩見重太郎』(1917年)
Iwami Jutaro (1917)

尾上松之助の狒々退治が売り物だった武勇伝もの。松之助の八面六臂の活躍がポスター上でも表現されている。
月村吉治氏寄贈(みそのコレクション)

Donated by Yoshiharu Tsukimura (Kyohei Misono)
72.9×54.1cm


『カチューシャ』(1919年)
Kachusha [Katusha] (1919)

『カチューシャ』(1919年)
Kachusha [Katusha] (1919)

1914年の初映画化以来、『カチューシャ』は日活向島撮影所の新派映画の隆盛を象徴する作品である。後の巨匠監督衣笠貞之助が女形として出演。田中栄三監督作品。
月村吉治氏寄贈(みそのコレクション)

Film directed by Eizo Tanaka
Donated by Yoshiharu Tsukimura (Kyohei Misono)
151.8×73.5cm


『真珠夫人』(1927年)
Shinju fujin (1927)

『真珠夫人』(1927年)
Shinju fujin (1927)

日本最初のスター女優栗島すみ子が不幸な男爵令嬢を演じた菊池寛文学の映画化で、原作とともに大ヒットを記録した。監督は栗島の夫である池田義信。
月村吉治氏寄贈(みそのコレクション)

Film directed by Yoshinobu Ikeda
Donated by Yoshiharu Tsukimura (Kyohei Misono)
78.7×36.4cm


『忠次旅日記 御用篇』(1927年)
Chuji tabi nikki [Diary of Chuji’s Travels] (1927)

『忠次旅日記 御用篇』(1927年)
Chuji tabi nikki [Diary of Chuji’s Travels] (1927)

1991年にフィルムが発掘された伊藤大輔監督による大河内傳次郎主演の名篇。この「御用篇」は三部作の最終部で、反逆者忠次の悲劇的な転落が描かれる。
月村吉治氏寄贈(みそのコレクション)

Film directed by Daisuke Ito
Donated by Yoshiharu Tsukimura (Kyohei Misono)
96.2×61.0cm


『秋はアパートの窓に』(1930年)
Aki wa apato no mado ni (1930)

『秋はアパートの窓に』(1930年)
Aki wa apato no mado ni (1930)

戦後は大映の専務も務めた大衆文学作家川口松太郎が、帝国キネマで手がけた最初の監督作。
月村吉治氏寄贈(みそのコレクション)

Film directed by Matsutaro Kawaguchi
Donated by Yoshiharu Tsukimura (Kyohei Misono)
53.8×38.2cm


『何が彼女をそうさせたか』(1930年)
Nani ga kanojo o so sasetaka [What Made Her Do It?] (1930)

『何が彼女をそうさせたか』(1930年)
Nani ga kanojo o so sasetaka [What Made Her Do It?] (1930)

貧しい少女の受難を左翼的な社会批判を交えて描いた、鈴木重吉監督による「傾向映画」の代表作。当時はこの題名が流行語にもなった。
月村吉治氏寄贈(みそのコレクション)

Film directed by Shigeyoshi Suzuki
Donated by Yoshiharu Tsukimura (Kyohei Misono)
76.0×27.5cm


『堀田隼人』(1933年)
Hotta Hayato (1933)

『堀田隼人』(1933年)
Hotta Hayato (1933)

架空のキャラクター堀田隼人を主人公にした大佛次郎「赤穂浪士」を伊藤大輔が翻案・演出。モダンな市松模様を背景に片岡千恵蔵が映える。
月村吉治氏寄贈(みそのコレクション)

Film directed by Daisuke Ito
Donated by Yoshiharu Tsukimura (Kyohei Misono)
79.8×55.4cm