アンソロジー・フィルムアーカイブス――アメリカ実験映画の地平へ
Anthology Film Archives: Surveying American Experimental Cinema

概要

 アンソロジー・フィルムアーカイブス(以下アンソロジー)は、映像作家たちが中心となって設立したインディペンデントな組織として、“周縁の豊かさこそ文化を活気づける”という強い信念のもと、映画史において見落とされがちな個人映画や実験的な映像作品を軸に保存・研究・上映を行う、世界的に見ても非常にユニークなフィルムアーカイブです。
 第二次世界大戦後の米国では、16mmカメラの普及やスーパー8、シングル8などの登場により、個人や小規模のインディペンデントによる映画制作が加速し、欧州の前衛映画の影響を受けながら、独自の実験的試みが繰り広げられました。特に1960年代のニューヨークでは、映像作家、詩人、音楽家、美術家など分野を越えた交流が活発化し、フリージャズ、ポップアートなどの様々な文化的潮流と共鳴しながら、アンダーグラウンド映画のムーブメントが形成されました。既成概念に縛られないラディカルな作品が次々と誕生したのです。
 このような映画の重要性を誰よりも提唱し続けたのが、詩人で映像作家のジョナス・メカス(1922-2019)です。1949年、難民としてリトアニアから米国に渡ったメカスは、戦争で粉々になった希望を拾い集めるかのように、こうした作品を擁護する活動を仲間とともに展開しました。1955年に映画雑誌「フィルム・カルチャー」を創刊、1961年には作家団体による個人映画の配給組織として「フィルムメーカーズ・コーペラティブ」を始動。さらに、作品の保存・研究・上映を恒常的に行うことを目的としたフィルムアーカイブの設立に奔走します。そして1970年、メカス、ジェローム・ヒル、P・アダムス・シトニー、ペーター・クーベルカ、スタン・ブラッケージによってアンソロジーは創設されました。
 本企画では、ビート・ジェネレーションとアンダーグラウンドを繋ぐ重要人物でありながら29歳で夭折したロン・ライスによる作品や、再評価が期待されるマージョリー・ケラーによる詩情溢れる作品など、復元によって蘇った作品だけでなく、アンソロジーで展開されている映画の形式や概念を批評的に問い直す先鋭的なプログラムを中心に、アメリカ実験映画、個人映画、インディペンデント映画115本(23プログラム)を上映します。
 映像表現の可能性を模索する作品群の上映を通して、映像メディアに囲まれた現代に新たな視点をもたらす機会となれば幸いです。みなさまのご来場をお待ち申し上げます。

観客のみなさまへ

 1970年に設立されたアンソロジー・フィルムアーカイブスは、当時の文化が抱えていた大きな空白を埋める役割を果たしてきました。実験映画の保存と研究に特化したアーカイブやシネマテークはそれまで一つも存在していなかったのです。過去55 年にわたり、当館は滅失や忘却の脅威にさらされ続けている映画の意義を広め、その遺産を守るというミッションを堅持しています。この理念に基づき、私たちは近年の保存活動と上映プログラムから選りすぐりの実験映画を、日本の観客のみなさまにご紹介できることを大変嬉しく思います。

ジョン・クラックスマン
アンソロジー・フィルムアーカイブス アーキビスト

開催概要

会期
2026年1月15日(木)-2月8日(日)※会期中の休館日:月曜日
会場
長瀬記念ホール OZU(2階)
定員
310名(各回入替制・全席指定席)/各回の開映後の入場はできません。
主催
国立映画アーカイブ、アンソロジー・フィルムアーカイブズ
アンソロジー外観
「エッセンシャル・シネマ」選考委員たち

[NFAJプログラムNo.70 | 上映会番号 491]

プログラム

アンソロジー・フィルムアーカイブスキュレーションプログラム

1970年の設立以来、アンソロジーは「エッセンシャル・シネマ」に始まり、映画プログラムを活動の中心に据え、その内容を時代とともに進化させてきました。このセクションでは、長年アンソロジーの上映プログラムを担当してきたジェド・ラプフォーゲル氏のキュレーションにより、ニューヨークで特に話題を呼んだプログラムを厳選して紹介します。

  • (監)=監督・演出 (原)=原作・原案 (脚)=脚本・脚色 (撮)=撮影 (美)=美術 (音)=音楽 (出)=出演 (解)=解説・ナレーション
  • 特に表記のない場合、製作国は米国です。
  • 上映分数は当日のものと多少異なることがあります。
  • 不完全なプリントや状態の悪いプリントが含まれていることがあります。
  • NEWとある作品はニュープリントでの上映です。
  • 特記のないものは、他機関から提供された上映素材です。上映素材がアンソロジー所蔵の場合は、作品情報の横に🅰と付記しています。
  • の回はトークや講演がございます。

上映カレンダー

1/15(木)
詩篇23枝篇64分 長瀬記念ホール OZU
グリーサーズ・パレス91分 長瀬記念ホール OZU
1/16(金)
ロン・ライス作品集(2)計66分 長瀬記念ホール OZU
ストム・ソゴー作品集計79分 長瀬記念ホール OZU
1/17(土)
時を数えて、砂漠に立つ150分 トークあり 長瀬記念ホール OZU
構造映画作品集計91分 長瀬記念ホール OZU
1/18(日)
トム、トム、笛吹きの息子122分 トークあり 長瀬記念ホール OZU
詩篇23枝篇64分 長瀬記念ホール OZU
1/19(月) 休館日
1/20(火)
時を数えて、砂漠に立つ150分 長瀬記念ホール OZU
1/21(水)
ボーン・イン・フレイムズ85分 長瀬記念ホール OZU
リグルーピング80分 長瀬記念ホール OZU
1/22(木)
「ドキュメンタリー・フィードバック」75分 長瀬記念ホール OZU
トム、トム、笛吹きの息子122分 長瀬記念ホール OZU
1/23(金)
グリーサーズ・パレス91分 長瀬記念ホール OZU
構造映画作品集計91分 長瀬記念ホール OZU
1/24(土)
抽象アニメーション作品集計59分 トークあり 長瀬記念ホール OZU
ハリー・スミス作品集計54分 長瀬記念ホール OZU
「モーション(レス)・ピクチャーズ」計82分 トークあり 長瀬記念ホール OZU
1/25(日)
クッチャー兄弟作品集計70分 長瀬記念ホール OZU
グリーサーズ・パレス91分 長瀬記念ホール OZU
1/26(月) 休館日
1/27(火)
デイヴィッド・ブルックス作品集計53分 長瀬記念ホール OZU
ロン・ライス作品集(1)計65分 長瀬記念ホール OZU
1/28(水)
アンソロジー・フィルムアーカイブスの創設者たち計72分 トークあり 長瀬記念ホール OZU
1/29(木)
「オーディオビジュアル・フィードバック」計68分 長瀬記念ホール OZU
抽象アニメーション作品集計59分 長瀬記念ホール OZU
1/30(金)
「モーション(レス)・ピクチャーズ」計82分 長瀬記念ホール OZU
「ドキュメンタリー・フィードバック」75分 長瀬記念ホール OZU
1/31(土)
ロン・ライス作品集(2)計66分 トークあり 長瀬記念ホール OZU
ロン・ライス作品集(1)計65分 長瀬記念ホール OZU
クイック・ビリーほか計72分 長瀬記念ホール OZU
2/1(日)
デイヴィッド・ブルックス作品集計53分 長瀬記念ホール OZU
「アヴァンギャルド広告」計65分 トークあり 長瀬記念ホール OZU
2/2(月) 休館日
2/3(火)
ハリー・スミス作品集計54分 長瀬記念ホール OZU
「イメージレス・フィルムズ」約55分 長瀬記念ホール OZU
2/4(水)
ふたたび男が49分 長瀬記念ホール OZU
「オーディオビジュアル・フィードバック」計68分 長瀬記念ホール OZU
2/5(木)
クッチャー兄弟作品集計70分 長瀬記念ホール OZU
「イメージレス・フィルムズ」約55分 長瀬記念ホール OZU
2/6(金)
「アヴァンギャルド広告」計65分 長瀬記念ホール OZU
ボーン・イン・フレイムズ85分 長瀬記念ホール OZU
2/7(土)
リグルーピング80分 トークあり 長瀬記念ホール OZU
「ドキュメンタリー・フィードバック」75分 長瀬記念ホール OZU
ふたたび男が49分 長瀬記念ホール OZU
2/8(日)
クイック・ビリーほか計72分 長瀬記念ホール OZU
  • チケットのオンライン発売は各上映日の3日前正午からとなります。
  • チケットのオンライン完売情報は、公式チケットサイトにてご確認ください。
  • 各回の開映後の入場はできません。予告篇はなく、本篇から上映します。

トークのお知らせ

1月17日(土)12:00の回

時を数えて、砂漠に立つ

登壇者
一之瀬ちひろ氏(写真家・研究者)
上映後に約40分の講演があります。

1月24日(土)13:00の回

抽象アニメーション作品集

登壇者
山村浩二氏(東京藝術大学教授、アニメーション作家)
上映後に約50分の講演があります。

1月24日(土)19:00の回

モーション(レス)・ピクチャーズ

登壇者
伊藤高志氏(映像作家)、山下宏洋氏(イメージフォーラム・フェスティバルディレクター)
上映後に約30分のトークがあります。

1月31日(土)13:00の回

ロン・ライス作品集(2)

登壇者
ジョン・クラックスマン氏(アンソロジー・フィルムアーカイブス アーキビスト)
上映後に約40分(逐次通訳付き)の講演があります。

2月1日(日)13:00の回

アヴァンギャルド広告

登壇者
ジェド・ラプフォーゲル氏(アンソロジー・フィルムアーカイブス 番組編成主任)
上映後に約50分(逐次通訳付き)の講演があります。

2月7日(土)12:00の回

リグルーピング

登壇者
リジー・ボーデン氏(監督)
上映後に約40分(逐次通訳付き)のオンライントークがあります。
  • ゲストは予告なく変更となる場合がございます。予めご了承ください。
  • トークイベントのみの参加はできません。

巡回上映情報

福岡市総合図書館 映像ホール・シネラ

会期
2026年2月5日(木)~2月22日(日)

上映作品、上映スケジュール等の詳細はこちらをご覧ください。

京都文化博物館フィルムシアター

会期
2026年2月~3月(予定)

上映作品、上映スケジュール等の詳細はこちらをご覧ください。 

チケット案内

通常料金
1,300円
一般
1,100円
高校・大学生・65歳以上
700円
小・中学生
500円
障害者手帳をお持ちの方(付添者は原則1名まで)
キャンパスメンバーズ(教職員)
キャンパスメンバーズ(学生)
オンライン販売
各上映日の3日前正午から各上映回の開映15分前まで
窓口販売(1F)
各上映回の開映1時間前から5分前まで若干数販売、お支払いは現金のみ
電子チケット購入方法
  1. 本ホームページの上映カレンダーからご覧になりたい上映日時の「チケット購入」ボタンを選択。
  2. 座席と券種を選択。
  3. メールアドレスやクレジットカードまたはd払いの情報等必要事項を入力。
  4. 申込が完了しますと、3. で入力したメールアドレスにQRコード付きのチケットが届きます。
  • etix.comからのメールを受信できるよう予め設定をお願いします。
  • 申込済みチケットの照会はこちらの「申込済みチケット照会」を選択ください。
  • 詳しい購入手順の説明はこちら(PDF)をご参照ください。
  • チケット購入方法についての「よくあるご質問」はこちらをご覧ください。
  • 未就学児、優待の方は「障害者手帳をお持ちの方または付添者等券」をお求めください。
入場方法
  • チケットのQRコードをスマホ画面、または印刷紙面でご提示ください。
  • 学生、65歳以上、障害者手帳をお持ちの方、国立美術館のキャンパスメンバーズ、優待の方は証明できるものをご提示ください。ご提示のない方はご入場できません。
  • 料金区分の違うチケットでは入場できません。差額のお支払で観覧することはできません。
  • 各回の開映後の入場はできません。予告篇はございません。
  • 開場は開映30分前です。
注意事項
  • 特集名、作品名は電子チケットに表示されませんので、お間違いないようご購入、ご提示ください。
  • 窓口でご購入いただける当日券は各回1名につき1枚のみです。
  • チケットのオンライン完売情報は、公式チケットサイトにてご確認ください。