過去の展示

  • 企画展
    2020.9.12 - 2020.12.6
  • 展示企画

公開70周年記念 映画『羅生門』展

Rashomon at the 70th Anniversary

●新型コロナウイルス感染拡大防止のため混雑状況により入室を制限することがあります。
●当館の感染症予防の対策およびご来館の皆様へのお願いにつきましては、「ご来館にあたってのお願い」をご覧ください。

概要

会場:
国立映画アーカイブ 展示室(7階)
会期:
2020年9月12日(土)-2020年12月6日(日)
開室時間:
11:00am-6:30pm(入室は6:00pmまで)
*毎月末金曜日は11:00am-8:00pm(入室は7:30pmまで)
*毎月末金曜日の夜間開館は、当面の間中止いたします。
休室日:
月曜日は休室です。

観覧料:
一般250円/大学生130円/シニア・高校生以下及び18歳未満、障害者(付添者は原則1名まで)、国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズは無料
*料金は常設の「日本映画の歴史」の入場料を含みます。
*学生、シニア(65歳以上)、障害者、キャンパスメンバーズの方はそれぞれ入室の際、証明できるものをご提示ください。
*国立映画アーカイブの上映観覧券(観覧後の半券可)をご提示いただくと、1回に限り一般は200円、大学生は60円になります。
※2020年11月3日(火・祝)「文化の日」は、展示を無料でご覧いただけます。
主催:
国立映画アーカイブ、京都府京都文化博物館、映像産業振興機構
協力:
文化庁、株式会社KADOKAWA、株式会社アイ・ティー・ワン
本事業は文化庁「文化芸術収益力強化事業」の支援を受けています。

巡回先 2021年2月6日(土)~3月14日(日) 京都府京都文化博物館 総合展示室 ※展示内容は一部変更になる場合があります。

撮影現場、宣伝公開から映画祭受賞、世界への影響まで――日本映画史上の傑作を徹底解剖!

1950年8月26日に劇場公開された映画『羅生門』は、国内では大ヒットにはならなかったものの、監督黒澤明の芸術的な野心が認められ、1951年9月にヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を受賞、さらに1952年3月に米国アカデミー賞名誉賞を受けることで国際的な評価を確立し、黒澤の、ひいては日本映画の水準の高さを世界に知らしめ、戦後復興のひとつの象徴にもなりました。

『羅生門』は、黒澤の卓越した演出力だけでなく、それまでの日本映画の作り方を革新した数々のスタッフワークに支えられています。登場人物のそれぞれ食い違う証言が真実を覆い隠してしまう橋本忍の脚本術、ロケーションを活かしあえて太陽にキャメラを向けた宮川一夫の斬新な撮影、巨大な羅生門をオープンセットとして造形した松山崇ら美術スタッフの功績、日本の中世の物語にボレロ調の旋律を大胆に組み込んだ早坂文雄の音楽、そのような職能のアンサンブルがこの映画の醍醐味となっています。

この展覧会では、世界初展示の品も含めてこうした名スタッフの功績の実際をデジタル展示も用いて紹介するほか、それぞれくっきりした人物像を創造した三船敏郎・京マチ子・森雅之・志村喬といった名優にも注目、さらにはヴェネチアでの受賞をめぐる当時の資料やこの映画が世界に与えた影響についても触れます。

『羅生門』の上映も行われる関連上映企画「生誕100年 映画俳優 三船敏郎」とともにお楽しみください。

 

<展覧会公式図録>公開70周年記念 映画『羅生門』展
[監修]国立映画アーカイブ・映像産業振興機構
[発行]国書刊行会
ISBN:978-4-336-07060-9 A4変型判・並製・128頁
定価2,400円+税

※全国の書店・各ネット書店で販売。当館では1階受付でお買い求めいただけます。(当館では2021年3月28日(日)まで販売いたします。)

   

 

「羅生門」セットと雨 ©KADOKAWA 1950

スタジオ撮影スチル写真 ©KADOKAWA 1950

劇場公開オリジナルポスター ©KADOKAWA 1950

西ドイツ リバイバル公開版ポスター
[ハンス・ヒルマン作]

『羅生門』企画シナリオ

野上照代の撮影台本

「DAIEI AD BOOK」No.231 ©KADOKAWA 1950

展覧会の構成

黒澤明と日本映画の実力を世界に知らしめた『羅生門』を、企画から撮影、公開、世界展開にいたるまで各種の資料によって多角的に迫り、本作を彩る様々なエピソードを再検証するとともに、デジタル技術を使った新しい資料展示の可能性にも取り組みます。

 

第1章 企画と脚本

のちに名脚本家となる橋本忍がデビュー前に書いたシナリオが、映画『羅生門』になるまでには多くの変転がありました。本章では、芥川龍之介作品への着目から始まったアイディアが映画の企画となり、ひとつの映画シナリオへと結実するまでをご紹介します。

 

第2章 美術

『羅生門』は、2つだけのセットとロケーションという一見安上がりな企画でしたが、羅生門のセットは撮影準備中に黒澤のイメージが膨らんで、通常の予算を上回る巨大なものとなりました。本章では製作時から話題となっていた映画美術に焦点を当てています。

 

第3章 撮影と録音

太陽に向けられたキャメラや近隣の水道を止まらせるほど大量の水を使った雨のシーンなど、『羅生門』の撮影は多くのエピソードに彩られています。本章では、撮影の宮川一夫、スクリプターの野上照代の撮影台本を使った新しいデジタル展示の試みや関係者のインタビューを交えながら、『羅生門』の撮影の秘密に迫ります。

 

第4章 音楽

『羅生門』前後の黒澤作品の音楽を手掛けた早坂文雄は、優れた作曲家というだけではなく、黒澤監督の創作活動にも影響を与えた盟友でした。有名なボレロ形式のテーマの楽譜スケッチなど、早世した天才作曲家が残した貴重な資料を通じて、映画の構成を活かした早坂独自の創作術をかいま見ることができます。

 

第5章 演技

本章では三船敏郎と志村喬の撮影台本を中心に、限られた登場人物と複雑な構成を持つ『羅生門』を成功させた俳優たちの多大な貢献に着目いたします。

 

第6章 宣伝と公開

本章では、初公開からヴェネチア国際映画祭受賞後の凱旋上映やリバイバル公開など、国内上映の軌跡をご紹介します。特に劇場公開オリジナルポスターや公開直前に開催された特別試写会など、金獅子賞受賞前の『羅生門』を伝える貴重な資料にご注目ください。

 

第7章 評価と世界への影響

1951年のヴェネチア国際映画祭金獅子賞受賞は、世界が日本映画を“発見”したと同時に、日本映画界が世界に通用する自らの実力に気づくきっかけになりました。本章では、ヴェネチア映画祭出品の経緯とともに、受賞後の反響と影響をアメリカを中心に多角的にご紹介します。

 

特別コーナー 旅する羅生門

このコーナーでは各国のポスターや宣伝材料を中心にご覧いただきながら、『羅生門』の卓越した国際性に光を当てます。

 

出品リスト

凡例:

・出品内容はやむを得ず変更される場合があります。
・所蔵元が特記された展示品以外は当館所蔵です。
・本リストの通番と会場内での配列順序は一致していない場合があります。

 

第1章 企画と脚本

1 書籍:芥川龍之介「藪の中」[『将軍』(1922年)所収]   日本近代文学館所蔵

2 書籍:芥川龍之介「羅生門」[『羅生門』(1917年)所収]   日本近代文学館所蔵

3 写真:羅城門(羅生門)復元模型   京都府京都文化博物館協力

4 橋本忍「羅生門物語」[デジタル展示]   株式会社黒澤プロダクション協力

5 「羅生門物語」黒澤監督のメモ[デジタル展示]   株式会社黒澤プロダクション協力

6 黒澤明『羅生門』創作ノート[デジタル展示]   株式会社黒澤プロダクション協力

7 『羅生門』企画シナリオ   東映太秦映画村・映画図書室所蔵

8 本木荘二郎旧蔵『羅生門』台本   国立映画アーカイブ所蔵(本木荘二郎コレクション)

9 「中日映画新聞」1950年7月15日号 「『羅生門』製作前記」   槙田寿文氏所蔵

10 書籍:『シナリオ 羅生門』(1952年)   槙田寿文氏所蔵

 

第2章 美術

11 『羅生門』扁額の再現画   山崎背景制作/日本映画・テレビ美術監督協会提供

12 松山崇旧蔵『羅生門』写真アルバム   玉川大学教育学術情報図書館所蔵

13 「大映京都撮影所通信」(1950年)   槙田寿文氏所蔵

14 大映京都撮影所 マップと各施設写真[複製]   国立映画アーカイブ所蔵

15 雑誌:「毎日グラフ」1950年8月1日号 「再建『羅生門』」   槙田寿文氏所蔵

16 雑誌:「アサヒグラフ」1950年8月2日号 「ごらく地帯 映画 羅生門」   槙田寿文氏所蔵

 

第3章 撮影と録音

17 写真[2点]:ロケーション現場の現在

18 宮川一夫の撮影台本[デジタル展示]   宮川一郎氏所蔵

19 野上照代の撮影台本[デジタル展示+原本]   野上照代氏所蔵

20 製作資料:野上照代による画コンテ   宮川一郎氏所蔵

21 黒澤明から宮川一夫への手紙(1952年)   宮川一郎氏所蔵

22 ビデオ:野上照代インタビュー(2020年)    株式会社KADOKAWA制作

23 ビデオ:紅谷愃一インタビュー(2020年)    株式会社KADOKAWA制作

24 写真:撮影スナップ 「羅生門」セットと雨   国立映画アーカイブ所蔵

25 写真:撮影スナップ 「羅生門」セットと雨   株式会社KADOKAWA所蔵

26 ビデオ:カット尻フィルム 森のシーン   宮川一郎氏所蔵/提供 株式会社KADOKAWA

27 『羅生門』写真アルバム   株式会社KADOKAWA所蔵

28 写真[5点]:撮影スナップ   株式会社KADOKAWA、国立映画アーカイブ所蔵

29 写真:クランクアップ記念   株式会社KADOKAWA所蔵

30 スナップ写真スクラップ帖   槙田寿文氏所蔵

31 雑誌:「ラッキー 映画と読物」1950年10月号 「カメラ『羅生門』ロケを追う」   槙田寿文氏所蔵

 

第4章 音楽

32 早坂文雄による音楽構成表   明治学院大学 日本近代音楽館所蔵(北浦絃子氏旧蔵)

33 早坂文雄による楽譜   明治学院大学 日本近代音楽館所蔵(北浦絃子氏旧蔵)

34 早坂文雄自筆ノート「入洛記」   明治学院大学 日本近代音楽館所蔵(北浦絃子氏旧蔵)

35 「オリジナル・スコアによる 七人の侍/羅生門」LPレコード(1978年)   槙田寿文氏所蔵

 

第5章 演技

36 三船敏郎の撮影台本   株式会社三船プロダクション所蔵

37 志村喬の撮影台本   国立映画アーカイブ所蔵(志村喬コレクション)

38 京マチ子旧蔵写真アルバム   早稲田大学坪内博士記念演劇博物館所蔵

39 写真[4点]:スタジオ撮影スチル   国立映画アーカイブ所蔵

40 雑誌:「映画ファン」1950年9月号 「特集グラフ 『羅生門』への道」   国立映画アーカイブ所蔵

 

第6章 宣伝と公開

41 ポスター:劇場公開オリジナル版(1950年)   田部信和氏所蔵

42 ポスター[2点]:ヴェネチア国際映画祭受賞 凱旋上映用(1951年)谷田部信和氏、国立映画アーカイブ所蔵

43 プログラム:帝国劇場 特別有料試写会(1950年)   槙田寿文氏所蔵

44 プレス資料:「DAIEI AD BOOK」No.231(1950年)   槙田寿文氏所蔵

45 パンフレット:「大映ニュース」①(1950年)   槙田寿文氏所蔵

46 パンフレット:梅田映画劇場「Umeda」33号(1951年)   槙田寿文氏所蔵

47 プレス資料:「大映縮刷版シナリオNo.17 羅生門」   槙田寿文氏所蔵

48 パンフレット:スバル座 凱旋上映用 「SUBARU」71号(1951年)   槙田寿文氏所蔵

49 ポスター:リバイバル公開用(1965年)   国立映画アーカイブ所蔵

50 プレスシート:リバイバル公開用(1965年)   国立映画アーカイブ所蔵

51 パンフレット:みゆき座 リバイバル公開用(1965年)   槙田寿文氏所蔵

52 ポスター:「デジタル完全版」(2008年)   国立映画アーカイブ所蔵

53 プレスシート:「デジタル完全版」(2008年)   国立映画アーカイブ所蔵

54 プログラム:歌舞伎座「八月興行大歌舞伎」(1951年)   槙田寿文氏所蔵

 

第7章 評価と世界への影響

〈ヴェネチア国際映画祭での受賞〉

55 本木荘二郎旧蔵 ヴェネチア国際映画祭金獅子賞トロフィ[複製]   国立映画アーカイブ所蔵(本木荘二郎コレクション)

56 松山崇旧蔵 金獅子賞トロフィ 複製品贈呈時の書状   玉川大学教育学術情報図書館所蔵

57 雑誌:「アサヒグラフ」1950年9月6日号記事「日本語御堪能の方々」   槙田寿文氏所蔵

58 ジュリアナ・ストラミジョリ旧蔵 ヴェネチア映画祭出品関係書簡・電報[7点]   濵野けい子氏所蔵

59 ジュリアナ・ストラミジョリ旧蔵 ヴェネチア映画祭出品関係覚書[3点]   濵野けい子氏所蔵

60 ヴェネチア国際映画祭参加証   株式会社KADOKAWA所蔵

61 ビデオ:『文化ニュース』No.230(1951年)抜粋   国立映画アーカイブ所蔵

62 「ニューヨーク・タイムズ」1951年10月21日号記事   槙田寿文氏所蔵

63 写真[2点]:受賞記念祝賀会にて   国立映画アーカイブ所蔵

 

〈アメリカにおける評価〉   槙田寿文氏所蔵

64 「ニューヨーク・タイムズ」1951年12月27日号記事

65 写真[2点]:ブロードウェイ版『羅生門』宣伝用

66 書籍:フェイ&マイケル・ケニン作 ブロードウェイ版『羅生門』原作(1959年)

67 雑誌:「シアター・アーツ」1959年2月号

68 雑誌:「プレイビル」1959年1月26日号 ブロードウェイ版『羅生門』記事

69 雑誌:「プレイビル」1988年4月号 ブロードウェイ版再上演『羅生門』記事

70 ブロードウェイ版『羅生門』 オリジナル音楽LPレコード(1959年)

71 ポスター:『暴行』オリジナル版(1964年)

72 チラシ:『暴行』日本版(1964年)

 

〈世界が探求する『羅生門』〉   79、82以外は槙田寿文氏所蔵

73 書籍:Donald Richie (ed.), Rashomon: a film by Akira Kurosawa(1969年)

74 書籍:Donald Richie (ed.), Focus on Rashomon(1972年)

75 書籍:Donald Richie (ed.), Rashomon: Akira Kurosawa, director(1987年)

76 書籍:Patrick Rieder, Akira Kurosawas “Rashomon”(2009年)

77 書籍:Marco Dalla Gassa, Kurosawa Akira: Rashōmon(2012年)

78 書籍:Paul Anderer, Kurosawa’s Rashomon(2016年)

79 書籍:ポール・アンドラ著『黒澤明の羅生門』(2019年)   国立映画アーカイブ所蔵

80 書籍:Blair Davis, Robert Anderson and Jan Walls (ed.), Rashomon Effects: Kurosawa, Rashomon and their legacies(2016年)

81 書籍:Allan Mazur, A Hazardous Inquiry: The Rashomon Effect at Love Canal(1998年)

82 ビデオ:「ロバート・アルトマン監督『羅生門』を語る」   ジャヌス・フィルムとクライテリオン・コレクション提供

 

特別コーナー 旅する羅生門槙田寿文氏所蔵

〈外国版ポスター〉

83 アメリカ初公開版(1952年)

84 アメリカ初公開版[レヴュー版](1952年)

85 西ドイツ初公開版(1952年)

86 西ドイツ リバイバル公開版(1959年)ハンス・ヒルマン作

87 スウェーデン初公開版(1953年)

88 ポーランド初公開版(1958年)ヴォイチェフ・ファンゴル作

89 チェコスロヴァキア初公開版(1970年)ベドジヒ・ドロウヒー作

90 イタリア リバイバル公開版

91 イタリア版写真ポスター(フォトブスタ)

92 アメリカ デジタル復元版(2009年)ケント・ウィリアムズ作

93 イギリス デジタル復元版(2009年)

 

〈さまざまな外国版刊行物〉

94 プレス資料:ユーゴスラヴィア[セルビア]版

95 プレスシート:西ドイツ版

96 プレスシート:東ドイツ版

97 キャンペーンブック:アメリカ版(1957年)

98 ロビーカード:アメリカ オリジナル版

99 プログラム:アメリカ デジタル版完成記念上映会

100 プログラム:アイスランド版

101 雑誌:西ドイツ「フランクフルター・イルストリールテ」1952年8月10日号

102 雑誌:ユーゴスラヴィア「ドゥガ」1953年4月号


 103 黒澤明直筆 ファン宛書簡(1952年)   槙田寿文氏所蔵


《特別展示》

・「羅生門」セット再現模型[10月20日より12月27日まで1階ロビーにて展示] 日本映画・テレビ美術監督協会制作・提供

・ビデオ:映画『羅生門』紹介アニメーション    大賀しょうこ制作・提供

・ビデオ:《四人》の視点から見た『羅生門』    株式会社KADOKAWA制作・協力

 

映画『羅生門』上映

2020年10月2日(金)~10月22日(木)開催の上映企画 「生誕100年 映画俳優 三船敏郎」で『羅生門』を上映します。

『羅生門』[デジタル復元版](88分・35mm・白黒)

10月3日(土)11:00am

10月22日(木)12:30pm

会場:国立映画アーカイブ 長瀬記念ホール OZU[2階]

※詳細はこちらをご覧ください。