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平成20年度
Mプログラム

池部良、中村錦之助、鶴田浩二、田宮二郎──情熱あふれる男性スターの魅力が全開した作品を紹介いたします。
◆暁の脱走
(1950年 新東宝 白黒 スタンダード 110分)


肉体派文学を提唱し、一世を風靡した田村泰次郎による人気小説「春婦伝」を、監督デビュー3作目の谷口千吉が映画化した戦後反戦映画の代表作。敗戦間近の中国戦線で激しい恋に落ちた上等兵の三上(池部良)と慰問団の歌手・春美(山口淑子)は、敵の捕虜となって送り還されてくる。二人を迎えたのは数々の汚名と上官の嫉妬。軍曹の助けを借り、部隊からの脱走を試みる二人に、残酷な結末が待ち受けていた。谷口と黒澤明が共同で執筆した初稿シナリオは占領軍の検閲官により何度も書き直しを命じられ、難産のうえに完成を見た作品であったが、満洲映画協会のスター「李香蘭」として活躍していた山口をはじめ、中国で捕虜になった谷口、中国戦線に従軍していた池部、田村と、外地での体験を持つスタッフ・キャストの結集により、日本軍の非人道的な階級制度を激しく糾弾する野心作となった。1950年度『キネマ旬報』ベストテン第3位。翌年のカンヌ映画祭へ日本からの正式作品として出品されるとともに、香港および東南アジア諸国に輸出された戦後初の日本映画である。

[スタッフ]
(原作)  田村泰次郎
(脚本)  黒澤明
(脚本・監督) 谷口千吉
(製作)  田中友幸
(撮影)  三村明
(照明)  大沼正喜
(録音)  神谷正和
(音楽)  早坂文雄
(美術)  松山崇

[役名(キャスト)]
三上上等兵 (池部良)
副官  (小沢栄)
春美 (山口淑子)
小田軍曹 (伊豆肇)
野呂軍曹 (田中春男)
山本上等兵 (柳谷寛)
中隊長 (清川荘司)
薫 (若山セツコ)
恵子 (立花満枝)
伸枝 (安隻三枝)
百合 (利根はるえ)

◆反逆児
 (1961年 東映[京都] カラー シネマスコープ 110分)


戦国時代を制し天下を統一、江戸幕府を開いた徳川家康には悲運の長男があった。名前は三郎信康。母は桶狭間の戦いで織田信長の奇襲を受け落命した遠江の雄、今川義元の娘(築山殿)である。父、家康が母にとっては仇敵にあたる信長の旗下にくだったことに彼の悲劇の源があった。本作は、この史実をもとにした大佛次郎の原作「築山殿始末」を、時代劇の巨匠伊藤大輔が格調高く演出した作品である。原作では、信康を死に追いこんだ家康の側に比重が置かれていたが、映画では内部に矛盾をかかえた信康に焦点を当て、死を自らの運命として受け入れて切腹していく悲運のヒーローに造形している。大河内伝次郎、阪東妻三郎など優れた男優との出会いの中で、数々の名作を作りつづけてきた伊藤監督にとっては、自分のイメージを投影することができる俳優、中村錦之助を得たことが大きく、彼もエネルギッシュな演技でその要請に応えている。「キネマ旬報」ベストテン第6位。

[スタッフ]
(原作) 大佛次郎
(脚本・監督) 伊藤大輔
(撮影) 坪井誠
(照明) 和多田弘
(録音) 中山茂二
(音楽) 伊福部昭
(美術) 桂長四郎

[役名(キャスト)]
三郎信康 (中村錦之助)
しの (桜町弘子)
徳姫 (岩崎加根子)
天方山城 (安井昌二)
小金吾 (河原崎長一郎)
減敬 (河野秋武)
大久保忠世 (香川良介)
徳川家康 (佐野周二)
築山御前 (杉村春子)
服部半蔵 (東千代之介)
織田信長 (月形龍之介)

◆次郎長三国志
 (1963年 東映[京都] カラー シネマスコープ 102分)


講談や浪曲など大衆芸能の世界で広く知られている幕末の博徒、遠州清水港の次郎長とその子分たちの活躍を描いた痛快時代劇。監督のマキノ雅弘は 1952年から54年にかけて『次郎長三国志』(東宝)9部作を作っており、次郎長ものの決定版との評価が高い。東映のこの作品はそのリメイク版にあたり、4部作として製作されている。1920年代半ばに監督デビューしたベテラン、マキノ監督にとっては手慣れた素材であり、流れるような巧みな演出で男意気の世界を作り出している。東映が時代劇から任侠映画へと比重を移しつつあった時期でもあり、次郎長(鶴田浩二)、大政(大木実)、法印大五郎(田中春男)、関東綱五郎(松方弘樹)、桶屋の鬼吉(山城新伍)、増川仙右衛門(津川雅彦)、森の石松(長門裕之)という布陣は、そのまま大衆時代劇ともいえる任侠映画の中核をなしていく。

[スタッフ]
(原作) 村上元三
(脚本) 山内鉄也
(脚本・監督) マキノ雅弘
(企画) 小倉浩一郎
(〃) 俊藤浩滋
(撮影) 三木滋人
(照明) 中山治雄
(録音) 東城絹児郎
(音楽) 鈴木静一
(美術) 鈴木孝俊

[役名(キャスト)]
清水の次郎長 (鶴田浩二)
関東綱五郎 (松方弘樹)
お蝶 (佐久間良子)
桶屋の鬼吉 (山城新伍)
大政 (大木実)
法印大五郎 (田中春男)
増川仙右衛門 (津川雅彦)
お千 (藤純子)
森の石松 (長門裕之)
投げ節お仲 (丘さとみ)

◆白い巨塔
 (1966年 大映[東京] 白黒 シネマスコープ 150分)


一人の医学部助教授の教授昇進をめぐって展開される、大学内部の権謀術数の世界を大胆に描いた、山崎豊子の同名小説の映画化作品。発表当時、医学界に波紋を投じた小説であり、近年テレビドラマ化もされ、ふたたび話題を集めた。この映画化では脚本を橋本忍が担当し、1950年代独立プロダクション運動などの活躍で社会派として知られる、山本薩夫が監督にあたっている。「白い巨塔」=「大学医学部」の欺瞞性が、山本監督一流の巧みな語り口で小気味よく暴かれ、痛快な作品となっている。野心に燃える助教授を演じた田宮二郎の魅力も、この作品の成功を支えており、俳優として記念すべき作品となった。山崎豊子原作、山本薩夫監督の同系列の作品に『華麗なる一族』(1974)、『不毛地帯』(1976)がある。

[スタッフ]
(原作) 山崎豊子
(脚本) 橋本忍
(監督) 山本薩夫
(製作) 永田雅一
(撮影) 宗川信夫
(照明) 柴田恒吉
(録音) 奥村幸雄
(音楽) 池野成
(美術) 間野重雄

[役名(キャスト)]
財前五郎 (田宮二郎)
東教授 (東野英治郎)
里見助教授 (田村高廣)
鵜飼教授 (小沢栄太郎)
菊川教授 (船越英二)
船尾教授 (滝沢修)
大河内教授 (加藤嘉)
今津教授 (下条正巳)
財前又一 (石山健二郎)
佐枝子 (藤村志保)
ケイ子 (小川真由美)

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