◆弁天小僧
(1958年 大映[京都] カラー シネマスコープ 86分)
伊藤大輔監督は、時代劇映画のパイオニアとでも呼ぶべき巨匠である。移動撮影を巧みに用いたダイナミックな描写で多くの観客を魅了し、伊藤大輔に憧れて映画の道を志したと公言する監督は数知れない。本作はその伊藤の円熟期の作品で、河竹黙阿弥の「青砥稿花虹彩画」(あおとぞうしはなのにしきえ)、通称「白波五人男」の映画化。歌舞伎などでよく知られた物語の一つである。弁天小僧は、日本左衛門らとともに徒党を組み、金持ちをゆすり、たかりで脅す凄腕のやくざとして勇名を馳せていた。ふとしたことから助けた娘お半の清純さに打たれた弁天小僧は、江戸を離れる最後の大仕事にと、呉服商の浜松屋に目を付ける。重厚なセットをバックに、伊藤監督は市川雷蔵や勝新太郎ら気鋭のスターと中堅俳優を見事に配し、ツボを心得た演出で江戸情緒を豊かに再現した。雷蔵の艶やかな女装姿、御用提灯の火の海がシネスコ画面を埋め尽くすクライマックスも見逃せない。
[スタッフ]
(原作) 河竹黙阿弥
(脚本) 八尋不二
(監督) 伊藤大輔
(製作) 酒井威
(企画) 高桑義生
(撮影) 宮川一夫
(照明) 中岡源権
(録音) 林土太郎
(音楽) 斉藤一郎
(美術) 西岡善信
[役名(キャスト)]
弁天小僧菊之助 (市川雷蔵)
お半 (青山京子)
お吉 (阿井美千子)
日本左衛門 (黒川弥太郎)
赤星十三 (島田竜三)
遠山左衛門尉 (勝新太郎)
鯉沼伊織 (河津清三郎)
三池要人 (小堀明男)
横地帯刀 (伊沢一郎)
南郷力丸 (田崎潤)
松平左近持監 (中村鴈治郎)