◆肉弾
(1968年 『肉弾』を作る会=ATG 白黒 スタンダード 116分)
日本が戦争に敗れたことも知らず、魚雷をしばりつけたドラム缶の中で、海に漂いながら敵船を待っている「あいつ」。この作品は、東宝所属の監督としてスピーディな現代活劇や喜劇に力を発揮していた岡本喜八監督が、あえて東宝を離れてアート・シアター・ギルド(ATG)製作で撮影したものである。当時ATGは低予算のいわゆる「1000万円映画」の製作を提唱し、多くの監督が、大手会社の撮影所では撮れない自前の企画を次々と映画化したが、中でもこの作品は資金的な制約にもかかわらず「キネマ旬報」ベストテン第2位など好評を得た。映画に描かれた「あいつ」の人物像や軍隊生活の愚かさは、戦争中の岡本監督自身の体験に基づくものと言われ、この活劇派の監督の背景となるもう一つの出自を明らかにした。寺田農の「あいつ」が出会う少女役の大谷直子が、初々しい魅力を放っている。
[スタッフ]
(脚本・監督)岡本喜八
(製作)馬場和夫
(撮影・照明)村井博
(録音)渡会伸
(音楽)佐藤勝
(美術)阿久根巌
(漫画)辻まこと
[役名(キャスト)]
あいつ(寺田農)
少女(大谷直子)
オワイ船の船長(伊藤雄之助)
軍曹(小沢昭一)
区隊長(田中邦衛)
古本屋のお爺さん(笠智衆)
古本屋のお婆さん(北林谷栄)
憲兵(中谷一郎)
父(天本英世)
前かけの小母さん(春川ますみ)
ナレーター(仲代達矢)