◆西鶴一代女
(1952年 新東宝=児井プロ 白黒 スタンダード 137分)
原作は井原西鶴の「好色一代女」である。原作の女主人公は、生来の好色から数奇な男性遍歴を重ね、封建制度の下で自由奔放な性を謳歌する女性として描かれている。映画化にあたって監督の溝口健二と脚本家の依田義賢は、女主人公の自己主張や被害者意識を極力排し、男性本位の都合で不思議な一生をたどってしまう女を、客観的に凝視する手法で描いている。社会の底辺で生きている女は、ふと入ったお寺の五百羅漢を見ているうちに、過去に出会った男達の顔を次々に思い浮かべる。そこで生まれた悲喜こもごもを静かに回想し終わると、女は何処ともなく闇の彼方へ去っていくのだった。国内では「キネマ旬報」ベストテン第9位の評価だったが、『羅生門』(1950)がグランプリを得た翌年のヴェネチア国際映画祭で国際賞を受賞、以後この作品は「お春の一生」の題で日本映画を代表するようになり、フランスをはじめとする欧米各国で溝口監督は神格化されることになった。
[スタッフ]
(原作) 井原西鶴
(脚本) 依田義賢
(構成・監督) 溝口健二
(製作) 児井英生
(監修) 吉井勇
(撮影) 平野好美
(照明) 藤林甲
(録音) 神谷正和
(音楽) 斉藤一郎
(美術) 水谷浩
[役名(キャスト)]
お春 (田中絹代)
奥方 (山根寿子)
勝之介 (三船敏郎)
扇屋弥吉 (宇野重吉)
お春の父 新左兵衛門 (菅井一郎)
笹屋嘉兵衛 (進藤英太郎)
笹屋番頭 文吉 (大泉滉)
菊小路 (清水将夫)
菱屋大三郎 (加東大介)
お春の母 とも (松浦築枝)
笹屋女房 お和佐 (沢村貞子)