◆にごリえ
(1953年 新世紀映画社=文学座 白黒 スタンダード 130分)
1937年に創設された文学座が、戦後その全盛期を迎えるにあたって発案・製作された作品。夭折した明治の女流作家・樋口一葉の晩年の短篇小説「十三夜」「大つごもり」「にごりえ」を原作に三話構成のオムニバス形式を採り、当時新鮮な現代劇で注目されていた今井正監督が、京都映画撮影所(旧松竹下賀茂撮影所)で完成させた。役者の緊張を強いる簡潔なセットの中で徹底したリハーサルが繰り返され、微妙な計算により作り出された明治の光と闇の中に、過酷な状況を生きざるをえない女たちの一瞬が捉えられている。この年、今井監督は大ヒット作『ひめゆりの塔』も演出しているが、「キネマ旬報」ベストテンでは『にごりえ』が第1位、『ひめゆりの塔』が第7位に選出されている。
[スタッフ]
(原作) 樋口一葉
(脚色) 水木洋子
(〃) 井手俊郎
(脚本監修) 久保田万太郎
(監督) 今井正
(製作) 伊藤武郎
(撮影) 中尾駿一郎
(照明) 田畑正一
(録音) 安恵重遠
(音楽) 団伊玖磨
(美術) 平川透徹
[役名(キャスト)]
第一話「十三夜」
斎藤もよ (田村秋子)
娘 原田せき (丹阿弥谷津子)
父 主計 (三津田健)
俥夫 高坂録之助 (芥川比呂志)
第二話「大つごもり」
みね (久我美子)
叔父 安兵衛 (中村伸郎)
山村あや (長岡輝子)
安兵衛の妻 しん (荒木道子)
山村石之助 (仲谷昇)
第三話「にごりえ」
お力 (淡島千景)
源七の妻 お初 (杉村春子)
結城朝之助 (山村聡)
源七 (宮口精二)