東京国立近代美術館 フィルムセンター [NFCカレンダー 1998年12月号]

ロベール・ドードラン講演会

第1講「カナダの映画保存とシネマテーク・ケベッコワーズ」
第2講「世界のフィルム・アーカイヴ運動:1970年代以降の展開」

Lecture by Robert Daudelin

(Curator/Director-General, Cin*math*que Qu*b*coise):
Part 1 - "Film Preservation in Canada and the Cin*math*que Qu*b*coise"
Part 2 - "World Film Archive Movement from the 1970s to the Present"
期日:12月5日(土)午後1時~4時/会場:大ホール

ロベール・ドードラン氏は、シネマテーク・ケベッコワーズのキュレーターとして長年に わたりカナダにおける映画保存と上映事業をリードする一方、1989年から95年まで国際 フィルム・アーカイヴ連盟(FIAF)の会長を務めるなど、世界のフィルム・アーカイヴ運 動にも中心的な役割を果たしてきました。

フィルム・キュレーターとしての氏の豊かな経験に基づいて、カナダと世界のアーカイヴ /シネマテーク運動について考察する今回の講演会は、わが国の公的な映画文化事業の将 来にも多くの意義深い示唆を与えてくれることでしょう。 みなさまお誘い合わせの上、ご来場くださいますようお願い申し上げます。

・ 開場:午後12時30分
・ 入場無料(先着順、定員300名になり次第締切)
・ 使用言語:英語/日本語(同時通訳あり)
・ 映像素材の上映あり(詳細は当日の配布資料にて発表)

◎講師からのメッセージ

 私はシネマの子供です。外の世界をはじめて見せてくれたのは映画ですし、初恋の相手 もアメリカ映画の中の女優でした(それが誰なのかは、どうかお尋ねにならないでくださ い)。寿司が好きで俳句を少々かじり、1962年には北斎の展覧会を見るためアムステルダ ムを訪れたりしたことがあります。それでもやはり、私が日本について本当に知っている ことといえば、すべて溝口、小津、黒澤、今村、その他幾人かの映画作家たちの作品から 得たものだという気がしています(ただし、私は多くの偉大な陶芸家たちの作品にも尊敬 の念を抱いており、「すべて」とはいっても、これを「日本の心」に近づけてくれるもの として数えなければ、の話ですが)。

 全体として今回の講演は、紛れもなく、私が無知で、何かにつけて実践主義的でしかな いという基調に彩られることになるでしょう。

 私は1963年創立の頃からシネマテーク・ケベッコワーズと共に歩んできました。それゆ え、この自らのアーカイヴの歴史に対する私のアプローチは、時として文化社会学の世界 に遊ぶ趣きがあるにせよ、総体としては、組織の内部からの考察といったものになるはず です。すなわち、その使命にしろ成長の軌跡にしろ、そこで実際に働く者の視点として述 べられることになるでしょう。

 長らく、いわば「もう一つの仕事」であり続けた国際フィルム・アーカイヴ連盟(FIAF) についても、私はやはりインサイダーとしてしか発言することはできません。FIAFのアー カイヴ運動の歴史と将来に関して、私は確固たる考えをもってはいますが、それもまた内 側からのものにすぎません。日本の皆さんにお願いします。ここでも、もし私がまるで見 当違いなことを言うようでしたら、どうかそれを遠慮なく指摘してください。


ロベール・ドードラン氏の略歴

カナダのシネクラブ運動に関わることから映画の仕事を始めたロベール・ドードラン氏は、 1960年に映画誌「オブジェクティフ」を創刊、ここからはジャン=ピエール・ルフェーヴル、 ジャック・ルデュック、ピエール・エベール、ジャック・ベンシモン、 アンドレ・テベルジュといった、カナダ映画の新しい作家世代が輩出することになった。 1960年代を通じて、モントリオール国際映画祭のプログラマーとして活躍する一方、 新生シネマテーク・ケベッコワーズの仕事にも深く関わるようになり、 1972年には同シネマテークのキュレーター兼ディレクター・ジェネラルに就任して、 現在に至っている。

国際フィルム・アーカイヴ連盟(FIAF)の活動にも熱心で、 1974年から1997年まで同連盟実行委員会委員を務めた。 その間、79年から85年までは事務総長、また、89年から95年までは会長の職にあって、 世界の映画保存運動をリードした。

なお、1987年から88年にかけては、 アメリカのジャズ・サックス奏者リー・コニッツを描く長篇ドキュメンタリー 「コニッツ--サキソフォン・アーティストの肖像」 "Konitz - Portrait of the Artist as a Saxophonist"を監督した。

1939年生まれ。