本年11月29日は映画女優・田中絹代(1909-77)生誕百年の記念日にあたります。絹代が弱冠14歳で松竹キネマに入社したのは、日本映画に本格的な職業女優が現れて間もない1924年のこと。可憐な娘役で人気を集め、スター第1号・栗島すみ子に次ぐ同社の看板女優へと急成長した彼女は、以来常に第一線で50年以上に及ぶキャリアを積み上げることになります。国産の土橋式トーキー第1作『マダムと女房』(1931年)や空前のヒット作『愛染かつら』(1938-39年)、戦中の『陸軍』(1944年)、戦後の『西鶴一代女』(1952年)など、歴史的名画の数々に彩られた田中絹代のフィルモグラフィーは、そのまま日本映画の歩みと重なり合うものといっても過言ではありません。
本企画では全体をこの第1部と、11月17日から12月27日までの第2部に分けて、現存する初期の無声映画から、晩年の64歳でベルリン映画祭主演女優賞を受賞した『サンダカン八番娼館 望郷』(1974年)まで、さらには『恋文』(1953年)など6本の監督作品を含む90本以上の上映を通してその偉大な足跡をたどります。
9月4日より開催中の展覧会「生誕百年 映画女優 田中絹代」とともにお楽しみください。
------------------------------------【弁士紹介】------------------------------------
澤登翠(さわと・みどり)
故松田春翠門下。「伝統話芸・活弁」の継承者として“活弁”を現代のエンターテインメントへと甦らせ、「無声映画鑑賞会」「活弁 in 学士会座」の定期公演、全国各地の映画祭への出演に加え、フランス、イタリア、ドイツ、アメリカなど海外でも多数の公演を行っている。日本映画ペンクラブ賞、文化庁芸術祭優秀賞他数々の賞を受賞。これまでに手がけた無声映画は500本を越える。昨年より失われた映画を現存する写真画像と音楽や語りで再構築する”ロスト・フィルム・プロジェクト”を始める。
----------------------------【伴奏者紹介】(50音順)----------------------------
鈴木真紀子(すずき・まきこ)/フルート
桐朋学園大学音楽学部卒。フルートを峰岸壮一氏に師事。1994年オーストリアとスイスで国際フルートセミナーに参加、ファイナルコンサートに出演。現在、楽団「カラード・モノトーン」や芹洋子のアコースティックバンドのメンバーとして活動。また、NHK放送博物館の室内楽シリーズにレギュラー出演中。
新垣隆(にいがき・たかし)/作曲・編曲、ピアノ
桐朋学園大学音楽学部作曲科卒。作曲を南聡、中川俊郎、三善晃の各氏に師事。楽団「カラード・モノトーン」のメンバーとして澤登翠とともに日本各地をまわる。自身の音楽作品としてはアンサンブル・ジェネシスのための「夏の庭」などがある。桐朋学園大学非常勤講師。
柳下美恵(やなした・みえ)/作曲・編曲、ピアノ
無声映画伴奏者。武蔵野音楽大学器楽科(ピアノ専攻)卒業。1995年、朝日新聞社主催の映画生誕100年記念上映会でデビュー以来、国内外の映画祭などで公演。弁士との共演も多数。紀伊國屋書店クリティカル・エディション・シリーズ『裁かるるジャンヌ』『魔女』の音楽を担当。2006年度日本映画ペンクラブ奨励賞受賞。「ロスト・フィルム・プロジェクト」「フィルム救済プロジェクト」「活動倶楽部」に参加。
湯浅ジョウイチ(ゆあさ・じょういち)/作曲・編曲、ギター
1987年東京国際映画祭でD・W・グリフィスの『国民の創生』の音楽制作・演奏を行って以来、無声映画用の楽団版音楽の復刻と制作に尽力している。楽団「カラード・モノトーン」を結成し、澤登翠をはじめとする弁士とともに全国で公演。又、「ロックギタリストのためのJ・S・バッハ曲集」を出版している。ESPミュージカルアカデミー講師。
◆お知らせ
第10回東京フィルメックス
ニッポン★モダン1930 ~もう一つの映画黄金期~
主催:松竹株式会社、特定非営利活動法人東京フィルメックス実行委員会
11月21日(土)-11月29日(日)
会場:東劇
東京都中央区築地4-1-1 東劇ビル3F(地下鉄東銀座駅6番出口)
料金:1,000円均一
お問い合わせ:東京フィルメックス Info. 03-3560-6394
東京フィルメックス ホームページはこちら
松竹「田中絹代生誕100年」オフィシャルサイトはこちら
無声映画からトーキーへ――1930年代松竹作品の上映を通して日本のモダニズムを回顧する特集。あわせて、11月29日(日)に生誕百年を迎える田中絹代の主演作8本(下記)を上映します。
『マダムと女房』(1931年、五所平之助監督)
『東京の女』(1933年、小津安二郎監督)
『春琴抄 お琴と佐助』(1935年、島津保次郎監督)
『人生のお荷物』(1935年、五所平之助監督)
『お加代の覚悟』(1936年、島津保次郎監督)
『愛染かつら』新版総集篇(1938年、野村浩将監督)
『おぼろ駕籠』(1951年、伊藤大輔監督)
『西鶴一代女』(1952年、溝口健二監督)
※タイムテーブルなど詳細は当該チラシ、東京フィルメックスのホームページをご覧ください。
※上記作品は『西鶴一代女』を除き、フィルムセンターの「生誕百年 映画女優 田中絹代」では上映しません。