この2006年度、ジャンルや数々のテーマに沿って映画大国日本が生み出した遺産への多彩な切り口を提供する新シリーズ「日本映画史横断」が、先の第1回企画「日活アクション映画の世界」とともに幕を開けました。それに引き続き、第2回の企画としてお送りするのがこの「歌謡・ミュージカル映画名作選」です。
レコードが普及して以来、日本でも数々の歌謡曲が時代ごとに国民の間で人気を博し、世相を彩ってきました。それは、20 世紀最大の大衆娯楽となった映画産業の隆盛とも密接なつながりを持ち、トーキー・システムが導入されて以来、映画作品が流行歌を巷に送り出すだけでなく、歌の大ヒットが一本の映画を生み出すという幸せな関係に恵まれてきました。また、アメリカから流れ込んだ華麗なミュージカル映画に刺激されて、日本でも独自の音楽文化を踏まえたミュージカル作品の製作が試みられたことも特筆されるでしょう。
この特集では、榎本健一主演の音楽喜劇に代表されるトーキー黎明期を皮切りに、美空ひばりなどの国民的歌手が映画スターとしても人気を獲得した1950年代、クレージーキャッツを主人公にしたコミカルな歌謡喜劇が大ヒットし、西洋のポップスを巧みに取り入れたグループ・サウンズ(GS)が映画に溶け込んだ1960年代を経由して、アイドル歌謡が本格的に成立した1970年代まで、日本の音楽映画の歴史の中から選ばれた27 作品をお見せいたします。メロディとスクリーンが織りなす、時に情緒に満ちた、また時に華やかで心躍るコラボレーションの数々を心ゆくまでお楽しみいただければ幸いです。
■(監)=監督 (原)=原作 (脚)=脚本・作 (撮)=撮影 (美)=美術・舞台装置 (音)=音楽 (出)=出演
■記載した上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。