「NFCシンポジウム:映画におけるデジタル保存と活用のためのシンポジウム」実施報告

「美術館・歴史博物館重点分野推進支援事業」として行っております、「映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究」(通称、BDCプロジェクト)について、これまでの取り組みを紹介するとともに、関係する方々のご講演を併せ、デジタル映画のこれからの保存と活用について考える機会とするため、2017年1月26日および27日に、「NFCシンポジウム:映画におけるデジタル保存と活用のためのシンポジウム」を開催しました。

 

フィルムセンター入口(シンポジウム当日)
フィルムセンター入口(シンポジウム当日)

 

来場者は第一日243名、第二日254名でした。

両日ともに大変多くの方にご来場いただきお礼申し上げます。

当日プログラムにつきましてはこちらをご覧ください

 

■第一日(現状と課題)の概要

東京国立近代美術館 馬淵明子館長の開会挨拶に始まり、フィルムセンター(NFC)岡島主幹による、基調講演「ポストアナログ時代のフィルムアーカイブ」の後、第一部では、「日本映画のデジタル化の変遷」というテーマで、撮影、VFX・DI、上映、アニメ・CG、音声について、技術史調査の結果が報告されました。

第二部では、「映画におけるデジタル化の現状」というテーマで、デジタル映画の保存に対する警鐘から国内外の取り組みおよび松竹映像センター、日本動画協会、福岡市総合図書館、NFCにおける取り組みについて、現場の状況が報告されました。

第三部では、「映画におけるデジタル保存と活用の課題」というテーマで、入力、処理、出力、管理等の技術的観点から保存に対する課題が整理されるとともに、国立国会図書館における、資料の長期保存への取り組みが紹介されました。また、映画の保存や活用において、デジタル化に伴い、多くの法的課題が新たに生じることや著作権処理等に関する法制度や課題がわかりやすく紹介されました。また、NFC所蔵作品について、映像文化製作者連盟の有する作品データベースとの著作権情報の照合結果が報告されました。

 

1日目の様子
1日目の様子

当日資料(右)と、好評のランチマップ(左)
当日資料(右)と、好評のランチマップ(左)

 

■第二日(対応と今後)の概要

第四部では、「映画におけるデジタルデータの保存対象」というテーマで、映画の製作過程で生じる様々なデジタルデータが整理、紹介され、保存すべきマスターについての考え方やフォーマット、ワークフロー等の技術内容とその動向等が報告されました。音声についても、ドルビーシステムの変遷と保存について講演が行われました。

第五部では、「映画におけるデジタルデータの保存方法」というテーマで、デジタルデータの保存をするうえで考慮しなければならない基本的な知識や方法が示されました。また、映画アーカイブとしての情報システム要件や保存対象データに付与すべきメタデータ等に関して報告されました。さらに、「持続可能性」や「コミュニティ」をキーワードに、デジタル映画の保存システムを考えるとともに、利活用も含め、デジタルアーカイブに求められる姿について講演が行われました。

第六部では「映画におけるデジタルコレクションの公開と活用」というテーマで、デジタル文化財の活用に関する事例、法的課題、国際的な政策の動向等が、ヨーロピアーナ等の事例を交えながら報告されました。また、様々なデータを繋ぎ、発見して活用してゆくための技術について講演が行われました。

第七部では「今後に向けて」というテーマで、デジタル化に対応できる人材の育成支援のためにBDCプロジェクトで行ったセミナーや海外での教育セミナーの例が紹介されました。また、「映画におけるデジタルシフトへの対応を誰が、どう担ってゆくか」というテーマで、パネルディスカッションが行われ、クリエーターも含めた、現場レベルでのコミュニティ作りや、言葉の共通化、目標の具体化と共有化が重要であること等が話し合われました。

 

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2日目の様子

パネルディスカッション
パネルディスカッション

 

■NFCシンポジウムを終えて

2日間の長丁場で、内容も多岐にわたっていましたが、最後まで熱心にご参加いただきました。また、アンケートでも「多岐にわたる課題について理解が深まった」、「継続的に開催して欲しい」あるいは「シンポジウムの内容を公開して欲しい」といったご意見を多数いただき、参加者の皆様の関心の高さを実感するとともに、少しでもお役に立てたのであれば幸いと思っております。ご要望に応えるべく、HP等でシンポジウム内容あるいはBDCプロジェクトについての情報を発信してゆきたいと考えております。

お忙しい中、ご参加された方々、ご講演いただいた方々およびシンポジウム実施を支えていただいたすべての方々に感謝申し上げます。

 

(KO)