令和4年度 インターンシップ生のことば

令和4年度インターンシップ生 Mさん

 「映画アーカイブ」という言葉は、まだ一般に聞きなれない方も多い言葉の組み合わせかもしれません。私は研修を通して、映画とアーカイブはもはや切り離してはいけないものである、と考えるようになりました。 

 半年間の研修では、次の一連のプロセスを間近で学ばせていただきました。まず、手続きを経て送られてきたフィルムを検査し、情報を整理・リスト化します。次に、フィルムおよび資料を安全に保管するだけでなく、利活用されるように、修復して上映したり、展示やイベントを企画・実施します。そして、保存活動と映画文化に対し、人々の理解や関心がさらに得られるよう、多様な業務に取り組みます。
 例えば、研修期間中に『戦前日本の映画検閲 ─内務省切除フィルムからみる─』に携わった際は、雑誌やスチルといった所蔵資料を用いて、タイトルさえ不明となっている作品の正体を、研究員の皆様と調査しました。結果、最初は「数コマの切れ端」だったものが、これまでは静止画でしか確認できなかった作品の一部である可能性を持ったり、当時の検閲の詳細を理解するために役立ったりと、より重要な存在であると認識できるようになりました。そして、上映・講演の当日は、長い時間生き残った切れ端たちが日の目を浴び、観客の笑い声を誘う様子をみて、深く感激しました。このように、ストックするだけでなく、意味づけをし、公開することで、私たちは時代を超えて、様々な角度から映画を楽しめるのだと思います。

 映画を1本作るために多くの人々が携わっていることは、エンドロールから容易に理解できます。しかし、上映終了後も作品が残り続けるために、1本のフィルムが多くの人々の手を渡って守られてきたことは、本研修を通して初めて実感できたことです。さらに、作品に関する全てのフィルムが消失しても、様々な場所で語られてきたことで、人々の記憶に残り続けてきた作品もあると知りました。つまり、映画は記録媒体である一方で、人々に記録される側となることで継承されてきたといえます。研修を通して、長い時を経た実物のフィルム・ノンフィルム資料に触れたことで、映画は文化であることが、自分の中で具体化されました。

 以上の体験から、映画を育んできた先人の方々へ、改めて尊敬の念を抱きました。そして、国立映画アーカイブの皆様ひとりひとりが映画への愛を持って業務に励まれる姿をみて、映画を大切にしていきたいという思いを一層強くしました。
 最後に、本研修においてお世話になった全ての皆様へ、心より御礼を申し上げます。