国内では初の国立美術館となる「国立近代美術館」(現・東京国立近代美術館)が開館したのは1952年12月1日のこと。それはまた同時に、美術館の映画事業「フィルム・ライブラリー」(フィルムセンターの前身)が上映活動を開始した日にもあたります。上映会の会場には、当時京橋にあった美術館(1970年に竹橋に移転)の建物(旧・日活本社)に付属する80席の映写室が用いられ、開館記念として3本の美術映画――『桃山美術』『ピカソ訪問』『フランクリン・ワトキンズ』が、12月28日までの4週間にわたり上映されました。
以後、美術映画の他にも文化・記録映画、アニメーション映画などの短篇映画を幅広く紹介する「月例映写会」が継続的に開かれる一方、翌1953年には、再上映の機会が稀であった映画史上の古典作品を上映する「特別鑑賞会」が始まり、間もなく1週間のうち月例映写会を4日間、特別鑑賞会を2日間の割合で、各日1回の上映を行うスタイルが定着するようになります。
映画の渡来から55年目を迎え、1958年には国内の映画人口が11億人を超えるピークに達しようとしていた当時、古典映画の上映はもちろん、その前提となるフィルムの所在を明らかにすることも困難であった状況下で、国立のフィルム・アーカイブ/シネマテークはその第一歩を踏み出したのです。
この特集では、“フィルム・ライブラリー時代”(1952-1969年)の上映プログラムを再現しながら、国立美術館における映画の上映と、フィルムセンターの原点を振り返ります。
【訂正情報】
*『カリガリ博士』は、日本語字幕付きに訂正いたします。
↓↓↓↓↓PDF版でもご覧いただけます↓↓↓↓↓
京橋映画賞劇場No.25 「東京国立近代美術館60周年記念 美術館と映画:フィルムセンター以前の上映事業」