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伝説の映画コレクション 早稲田大学演劇博物館所蔵フィルム特別上映会

明治期の活動写真から南方占領地の宣伝映画まで
演劇博物館の珠玉のコレクションがスクリーンによみがえる


 早稲田大学演劇博物館は、坪内逍遙博士の古稀と「シェークスピヤ全集」40巻の翻訳完成を記念して1928年に開館して以来、80余年もの歴史を誇る演劇資料の宝庫として知られていますが、一方、この演劇博物館が早くから映画フィルムの収集にも取り組み、ユニークなコレクションを構築してきたことは特筆に価します。特に、1970年にフィルムセンターが開館する以前の日本の映画保存に演劇博物館が果たした役割は大きく、こうして奇跡的に散逸を免れた映像には、演劇史的にも映画史的にも目をみはるべき内容のものが数多く含まれています。
 本特別上映会は、それらの中から明治、大正期に作られた初期日本映画や海外の無声映画、日本映画社が戦中にインドネシアで製作した宣伝映画など、特に重要なコレクションを精選し、フィルム上映で紹介する貴重な機会となります。
 このイベントが、文化遺産として歴史資料としての映画保存の大切さを考える一助となれば幸いです。

主催:東京国立近代美術館フィルムセンター、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館
定員=310名(各回入替制)
料金=一般500円/高校・大学生・シニア300円/小・中学生100円/障害者(付添者は原則1名まで)、キャンパスメンバーズは無料

開映後の入場はできません。
発券=2階受付
・発券・開場は開映の30分前から行い、定員に達し次第締切ります。
・学生、シニア(65歳以上)、障害者、キャンパスメンバーズの方は、証明できるものをご提示ください。
・発券は各回1名につき1枚のみです。
・観覧券は当日・当該回のみ有効です。

■各プログラムの日程はこちら(以下)から■
⇒ ■11月2日(土)11:30am 日本映画の起源 ※各作品の映写速度(fps)と上映時間が変更になりました。
⇒★11月2日(土) 2:00pm 《関連企画》研究講演会
⇒ ■11月2日(土) 5:00pm 日本映画の起源 ※各作品の映写速度(fps)と上映時間が変更になりました。
⇒ ■11月3日(日)11:30am 外国無声映画の魅惑
⇒ ■11月3日(日) 2:00pm 外国無声映画の魅惑
⇒ ■11月3日(日) 5:00pm 知られざる映画史

明治大正期の映画会社が製作した新派、旧劇映画の数々。『櫻田血染ノ雪』は鴻池善右衛門氏、それ以外は北海道の九島興行社長九島勝太郎氏旧蔵のコレクションで、その一部を紹介した1963年の上映会は「国宝的活動写真」の発掘として話題を呼んだ。

《上映作品》
櫻田血染ノ雪
4分・12fps →3分・15fps・35mm・無声・白黒)
横浜開港五十年祭を記念して製作された作品。全七場のうち、尊攘過激派の浪士に井伊直弼が襲撃される「桜田門外要撃ノ場」と、浪士が井伊の首を隠して捕縛される「龍ノ口待舟ノ場」のみが現存している。
‘09(吉澤商店)(出)中野信近一座

松王下屋敷(まつおうしもやしき)
14分・12fps →11分・15fps・35mm・無声・白黒)
浄瑠璃「菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)」の四段目切「寺子屋」にいたる挿話を描いた増補作の映画化。菅丞相が流罪となった後、若君・菅秀才の命を救うため、松王丸は息子・小太郎の心根を試し、妻・千代とともに悲嘆しつつも小太郎を身代わりとして送り出す
‘10(吉澤商店)

朝顔日記
11分・12fps →8分・15fps・35mm・無声・白黒)
浄瑠璃「生写朝顔話(しょううつしあさがおばなし)」の映画化。出演は女芝居の中村歌扇一座。本来は二幕ものとして製作されたが、盲目の朝顔と、許嫁の駒沢次郎左衛門が偶然に出会う「宿屋の段」の一部のみ現存している。
‘09(Mパテー商会)(出)中村歌扇、中村歌江

生さぬ仲
16分・12fps →13分・15fps・35mm・無声・白黒)
原作は柳川春葉の新聞連載小説。後妻の真砂子(木下)と夫の俊策(井上)、そして息子の滋の、運命的な別れと再会を描いた新派映画。小林商会は、映画興行界の風雲児、小林喜三郎が設立した映画会社で、自動車のチェイスシーンや特徴的なワイプなどに、野心的な映像表現を見いだせる
‘16(小林商会)(監)(出)井上正夫(監)賀古残夢(原)柳川春葉(撮)長井信一(出)木下吉之助、秋元菊弥、栗島狭衣、武田清子、小林利之

雷門大火 血染の纏
45分・12fps →36分・15fps・35mm・無声・白黒)
尾上松之助主演の数少ない現存作品の一つ。鳶よ組の仙太(松之助)が、橘組との抗争や遠島の島破り、義父の仇討などに活躍する物語。様式的な殺陣など旧劇映画の特徴をみせつつも、ロケ撮影の豊かな映像美は、新たな「時代劇」の登場を予感させるものである。
‘16(日活京都)(出)尾上松之助、大谷鬼若、嵐橘楽、市川壽美之亟、片岡長正

『櫻田血染ノ雪』
『櫻田血染ノ雪』
『雷門大火 血染の纏』
『雷門大火 血染の纏』

心中天網島 紙治内の場
16分・12fps →13分・15fps・35mm・無声・白黒)
浄瑠璃「心中天網島」の改作「天網島時雨炬燵(てんのあみじましぐれのこたつ)」の映画化。紙屋治兵衛が妻・おさんや幼子と別れ、遊女・小春と心中へ向かうに至るまでが描かれる。タイトルは「心中天綱【ママ】島 紙治内の場」だが、内容は小春をめぐって恋敵と争う「時雨炬燵」の挿話が含まれる。
製作年不詳(日活)

うき世
67分・12fps →53分・15fps・35mm・無声・白黒)
柳川春葉の新聞連載小説を映画化した新派映画で、女形随一のスター立花貞二郎の美しき魅力あふれる作品。真木原早苗(立花)が、次々と訪れる不幸な運命に翻弄されながらも、最後は兄・増穂(大村)に救われる。フレームを活かしたドリー・ショットなど、意欲的な映像表現にも注目。
‘16(日活向島)(原)柳川春葉(出)立花貞二郎、関根達発、横山運平、五月操、大村正雄、土方勝三郎

『心中天網島 紙治内の場』
『心中天網島 紙治内の場』
『うき世』
『うき世』

弁士の草分け、駒田好洋が創立したセカイフイルム社旧蔵のドイツ無声映画。駒田没後の1938年、セカイフイルム社からは、現存最古の和製映写機や初期映画のポスター等、貴重な資料群が寄贈され、演劇博物館の映画コレクションが形づくられる最初の基盤となった。

闇の力
Die Macht der Finsternis

(83分・16fps・35mm・無声・白黒・英語インタータイトル・日本語字幕付き)
『カリガリ博士』(1920)等で有名なローベルト・ヴィーネが脚本を書き、弟のコンラートが監督を務めた作品。放蕩息子ニキータ(ウィルボフ)が嬰児殺しまで手を染めるが、最後は悔心に至る。ソ連から亡命したモスクワ芸術座の俳優が出演し、検閲のためフィルムの一部に切除があるとされる。
‘24(ドイツ)(監)(脚)コンラート・ヴィーネ(原) L・N・トルストイ(脚)ローベルト・ヴィーネ(出) アレクサンドル・ウィルボフ、マリヤ・ゲルマノワ、ピョートル・シャロフ

『闇の力』
『闇の力』

野鴨
Die Wildente / Das Haus der Lüge

(101分・16fps・35mm・無声・白黒・英語インタータイトル・日本語字幕付き)
写真師ヤルマー(クラウス)は、妻・ギーナ(ヘーフリヒ)や盲目の愛娘・ヘドヴィック(ヨーンゾン)らと幸せな家庭を築いていた。ある日、旧友・グレーゲルス(ヤンセン)の来訪とともに、家庭の虚偽があばかれていく・・・。冒頭で捕えられた飛べない野鴨が、陰鬱な結末を暗示している。
‘26(監)(脚)ループー・ピック(原) ヘンリック・イプセン(脚) F・カールセン(撮) カール・ドレーウス(出)ヴェルナー・クラウス、マリー・ヨーンゾン、ヴァルター・ヤンセン、ルツィー・ヘーフリヒ

『野鴨』
『野鴨』

太平洋戦争末期に日本映画社ジャカルタ製作所が製作した宣伝映画。同製作所で企画部長を務めた小林勝氏寄贈のフィルムで、今回上映する2本は、当時のフィルムのほとんどを接収したオランダのフィルム・アーカイブにも所蔵の無い貴重な作品である。

蒔かざれば
Djatoeh Berkait

(43分・16mm・白黒・日本語字幕付き)
1944年4月完成。富裕層の生活を題材に、浪費を戒めるとともに盗難や火災に遭っても現金を失うことのない郵便貯金の意義を説く。日映ジャカルタで監督倉田文人の指導下にあったインドネシア映画部(プルサフィ)の製作で、物語は日本人スタッフが書き、軍宣伝部の諒承を経て脚本化された。
‘44(日本映画社ジャカルタ製作所)(監)R・クスマ(脚)R・S・パリンディ(撮)ウォン・シー・ファ(美)H・B・アンギン(音)G・R・W・シンス(出)アスタマン、ダリア、カルトロ、スリップ、D・イスマイル、ジェシー、フシン、スティナ、エンジェ、エペン

驟雨
Hoedjan

(32分・16mm・白黒・日本語字幕付き)
1944年8月完成。かつて不良者だったという息子を郊外から訪ねてきた両親が、良き労働者となって心がけの良い妻と結ばれ、隣組活動にも熱心に参加する息子を見て不信の心を改める。日本軍への忠誠を謳いつつ、にわか雨のもたらす情緒や松竹大船調を思わせる柔らかなタッチも特徴的。
‘44(日本映画社ジャカルタ製作所)(監)(脚)R・L・プルバタ・サリ(撮)アジット(美)H・B・アンギン(出)アブ・バカル、E・T・エフェンディ、ダリア、ガルキア、アニ

『蒔かざれば』
『蒔かざれば』
『驟雨』
『驟雨』

■(監)=監督 (原)=原作 (脚)=脚本 (撮)=撮影 (美)=美術 (音)=音楽 (出)=出演
■特集には不完全なプリントが含まれています。
■記載した上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。

主催:東京国立近代美術館フィルムセンター、早稲田大学演劇映像学連携研究拠点
東京国立近代美術館フィルムセンター 大ホール
入場無料(1:40pm開場)

早稲田大学演劇映像学連携研究拠点「演劇博物館所蔵映画フィルムの調査、目録整備と保存活用」(平成21~25年度)の調査メンバーが、演劇博物館の映画収集の軌跡や主要なコレクションについて論じます。

プログラム(予定)
演劇映像学連携研究拠点について 
 ・・・竹本幹夫(早稲田大学文学学術院教授)
調査研究プロジェクト「演劇博物館所蔵映画フィルムの調査、目録整備と保存活用」について 
 ・・・入江良郎(フィルムセンター主任研究員)
演劇博物館所蔵の無声映画コレクション 
 ・・・上田学(日本学術振興会特別研究員PD)
初期日本映画と歌舞伎、および女役者たち 
 ・・・児玉竜一(早稲田大学文学学術院教授)
「旧劇」映画における物語叙述のスタイル再考――『雷門大火 血染の纏』(1916)を分析する 
 ・・・板倉史明(神戸大学大学院国際文化学研究科准教授)
日本映画社ジャカルタ製作所の活動について 
 ・・・岡田秀則(フィルムセンター主任研究員)
六世中村歌右衛門旧蔵記録フィルムについて 
 ・・・金子健(文化庁文化財部伝統文化課芸能部門文部科学技官)

ユネスコ「世界視聴覚遺産の日」(10月27日)
映画フィルム、テレビ番組、様々な録音・録画物などの視聴覚遺産を保存し安全保護する事業や活動を推進し、その重要さを啓蒙するために、ユネスコが2006年に定めた国際記念日。ユネスコに属する視聴覚保存機関連絡協議会(CCAAA)での決定を受けて2007年から世界で実施されている。なお、10月27日は、1980年ベオグラードで「映像の保護及び保存に関するユネスコ勧告」が採択された日。フィルムセンターが加盟している国際フィルム・アーカイブ連盟(FIAF)でも、連盟をあげてこの日を祝うことを決定し、世界中の会員機関が記念イベントなどの事業に取り組んでいる。

Saving Our Heritage for the Next Generation
次世代のために守る私たちの映画遺産
*ユネスコの視聴覚保存機関連絡協議会(CCAAA)による世界視聴覚遺産の日2013年の標語。

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The National Museum of Modern Art, Tokyo