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大ホール・小ホール

第36回PFF

36th Pia Film Festival

※上映作品、上映日時によっては会場が小ホールのものもございます。

2014.9.13-9.25
作品詳細
AwardC 9/13(土) 6:00pm 9/17(水) 0:00pm  
小さな庭園
(12分/カラー)

安らかな安定と不安な自由。小さな主人公が、大きな決断を迫られる

学校で理科の教鞭を執っている者にとって、本作品は実に興味深く、隅々まで科学的好奇心を想起させられた。どこかで見覚えのある造形群は作者の映画体験の蓄積を物語っていると同時に、細胞分裂や地殻変動、エントロピーと不可逆性など、科学的素養の深さに思わず嫉妬する。しかし、その一方で想像と創造が入れ子のように連なり、生命誕生と宇宙創世を匂わせた曼荼羅的世界観は、秩序とは相反する混沌の渦の中に迷い込ませる。“カオス”の対義語を調べてみるとその答えは“コスモス”。この瞬間、主人公である片眼のハンプティ・ダンプティ(勝手にそう呼んでいる)は、まさにカオスとコスモスをつなぐ「LIFE」の存在証明であったと確信した。主人公が目を覚ますといつもの庭園があり、空を鳥がゆらりと泳いでいる。まるで全てを悟った者のように。 文:中山康人(教師)

監督:斎藤俊介(29歳/千葉県出身)

暁の石
(30分/カラー)

お金も携帯も家族も世間も置いてきて、少女たちは微熱のような夏とたわむれる

母が失踪して3か月の佳子は、干上がって水際に大量の魚の死体が浮かぶ不気味な沼で幼馴染みの光子と再会する。佳子は職にも学校にも付かず、光子は夏休みを迎えたばかりだった。かつてのように、沼地、図書館、「神殿」と呼ぶ廃屋、森などで無為の戯れに興じる2人。一方で母の部屋に籠り、母の実体を感じられなくなった佳子は、光子を伴ってある行為を行う決意をする。
この映画は通常想起されるような母の不在への閉塞に向かわず、少女たちの戯れを通じ、生活の何処にも属さぬ、あてどなき時間そのものを鮮やかに掬い取ってみせるという大胆な映画的挑戦に満ちている。しかしその感触は、戯れに興じる少女たち同様に殊の外軽やかで、フランス辺りの一連のバカンス映画をも彷彿とさせ、良い意味でどこか日本映画らしさを欠いている。文:江川太洋(フィルムラボスタッフ)

監督:清原 惟・飛田みちる(21歳/東京都・茨城県出身)

ガンバレとかうるせぇ
(70分/カラー)

爽やかでも健やかでもない。だから…簡単に、朗らかに、ガンバレとか言うな

映画(にかかわらず)において、「部活動のキャプテンと女子マネージャー」というのは割とよくあるシチュエーションなのだが、描写が丁寧であれば、無理して物語を作ろうとしなくても作品は成立するのだと改めて思う。
この作品の良さはまず、物語の中の人間にしっかりと実感があること。そして、その人間にほどよい色気が漂っていることだと思う。色気といってもそれは熟した男女の湿度の高さではなく、澄み切った空気に似た質感だ。全体的に抑えられた演出で、だからこそ匂い立つ人間の情なのだろうと思う。キャプテンとマネージャーの真剣な表情や物を見るときの視線は、ただ真っ直ぐなだけではない。情熱というのとも少し違う。それは静かな闘志のようなもので、青い炎のゆらめきに似ているな、と思う。しっかりと対象に向き合う者だけがする目つきだった。 文:森下くるみ(文筆家・女優)

監督:佐藤快磨(24歳/秋田県出身)

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The National Museum of Modern Art, Tokyo