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大ホール上映作品

映画女優 高峰秀子(2)

Hideko Takamine, Film Actress [Part 2]

10月12日(火)- 11月19日(金)
上映スケジュール

定員=310名(各回入替制)
発券=2階受付
料金=一般500円/高校・大学生・シニア300円/小・中学生100円
・観覧券は当日・当該回にのみ有効です。
・発券・開場は開映の30分前から行ない、定員に達し次第締切となります。
・シニア(65歳以上)の方は、必ず年齢を証明できるものをご提示下さい。

10-11月の休館日:月曜日および11月30日(火)

 昭和のただ中を半世紀にわたって駆け抜けた偉大なる映画女優――高峰秀子。

 無声末期に天才子役として松竹映画に登場した彼女は、移籍したPCLとそれに続く東宝にあってはデコちゃんの愛称で親しまれ、特に山本嘉次郎監督の『綴方教室』(1938年)と『馬』(1941年)では等身大の娘役を得て人気を高めました。

 戦後、新東宝時代を経てフリーとなる頃には、20代の輝くばかりの美しさによってスター女優としての地位を確固たるものとし、さらに、おりしも黄金時代を迎えつつあった日本映画界にあって一作ごとに大女優への歩みを進め、小津安二郎、五所平之助、豊田四郎、稲垣浩、野村芳太郎ら時代を代表する名監督の作品に主演を果たしました。

 とりわけ、わが国初の総天然色映画『カルメン故郷に帰る』(1951年)で出会った木下恵介監督の作品では、『二十四の瞳』(1954年)『喜びも悲しみも幾歳月』(1957年)などに主演、その大ヒットにより国民的スターの座を獲得、また、『稲妻』(1952年)で戦後初のコンビを組んだ成瀬巳喜男監督との仕事では、『浮雲』(1955年)、『乱れる』(1964年)などの傑作に、人生と映画の豊かな履歴によって深みを増した演技と存在感を刻印し、まさに稀代の“映画女優”となって、夫・松山善三監督作品への出演を加えつつ、そのさらなる活躍を1960年代以降へと継続していきました。

 今秋フィルムセンターは、日本映画史と昭和史を共に体現したこの不世出の女優を顕彰する大規模な特集を行います。全体を9月3日から10月10日までの第1部と、この第2部とに分け、160本を越える出演作の中から80本以上の作品を連続上映する本企画には、絢爛たる女優歴を彩る名作はもちろん、初公開以来フィルムで観ることのできなかった作品も多く含まれています。

 ある時は、明朗に快活に、またある時は、苦く切なく悲哀に満ちて、銀幕に女の一生を映し続けた“映画女優 高峰秀子”の芸と仕事の軌跡を存分にご堪能ください。

■(監)=監督・演出 (原)=原作・原案 (脚)=脚本・脚色・潤色 (撮)=撮影 (美)=美術・装置 (音)=音楽 (出)=出演

■クレジット中の紫字は高峰秀子の役名です。

■本特集には不完全なプリントが含まれています。

■記載した上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。

■高峰秀子出演の成瀬巳喜男監督作品については、来年度に実施予定の同監督生誕百年記念特集で上映されるため、本特集では上映しないものもあります。

1 10/12(火)3:00pm 10/31(日)2:00pm

与太者と海水浴(71分・35mm・白黒・無声・24fps)

人気の与太者トリオ(磯野・三井・阿部)が主演する蒲田撮影所の名物シリーズ第7作で、ここでの3人はひと儲けをたくらんで夏の海辺に店を出す。高峰はそこへ避暑に訪れる若様の役だが、彼女が男の子を演じたのはこの頃(9歳)までである。

’33(松竹蒲田)東山家の若様・敏行(監)野村浩将(原)(脚)柳井隆雄(撮)高橋与吉(出)磯野秋雄、三井秀男(弘次)、阿部正三郎、光川京子、加藤清一、井上雪子、日守新一

2 10/12(火)7:00pm 11/3(水・祝)11:00am

娘の願ひは唯一つ(71分・35mm・白黒)

貧乏な家に生まれたひで子は抜群の優等生。女学校への進学を勧められるが、高い教育費を知って家族は必死の不合格祈願…。ナンセンス・コメディからホームドラマへと移りゆく喜劇の名手・斎藤寅次郎の作品。今で言う中学受験の物語だが、実際の高峰は15歳になろうとしていた。

’39(東宝東京)田村ひで子(監)斎藤寅次郎(原)曾我廼家五郎(脚)小国英雄(撮)友成達雄(美)山崎醇之輔(音)鈴木静一(出)渡辺篤、清川虹子、澤井三郎、澤村貞子、ギャング坊や、川端珠恵、神田千鶴子、杉寛、三條利喜江、サトウ・ロクロー、轟美津子、永井柳太郎、榊田敬二、山田長正

3 10/13(水)3:00pm 10/31(日)5:00pm

花つみ日記(73分・35mm・白黒)

大阪の花街・宗右衛門町を舞台に、女学生(高峰)と東京からの転校生(清水)とが織りなす友情物語で、花柳界を描かせたら随一の石田民三が演出にあたった。宝塚少女歌劇のスター・葦原邦子が、みんなの憧れの教師役で特別出演しているのも注目に値する。

’39(東宝京都)芸妓屋の娘・篠原栄子(監)石田民三(原)吉屋信子(脚)鈴木紀子(撮)山崎一雄(美)河東安英(音)鈴木静一(出)清水美佐子、葦原邦子、進藤英太郎、伊達里子、大倉文雄、三条利喜枝、花沢徳衛、林喜美子、御舟京子、松岡綾子、三邦英子、三田進、山田好良、伊井吟子

4 10/13(水)7:00pm 11/6(土)2:00pm

秀子の応援団長(71分・35mm・白黒)

今日も巨人軍に負けてしまいそうな弱小球団・アトラス軍。それでもアトラスが大好きな秀子は球団の応援歌を作り、マスコット・ガールとして人気を呼ぶようになる。だが、彼女には野球嫌いのお父さん(小杉)がいた…。高峰のはつらつたる少女期を代表する一本。

’40(南旺映画)秀子(監)千葉泰樹(脚)高田保、山崎謙太(撮)中井朝一(美)小池一美(音)佐々木俊一(出)小杉義男、澤村貞子、清川玉枝、千田是也、伊達里子、若原春江、灰田勝彦、音羽久米子、加藤欣子、小高まさる

5 10/14(木)3:00pm 11/3(水・祝)2:00pm

ハナ子さん(71分・35mm・白黒)

原作は、戦時下の女性に歩むべき道を諭す「主婦の友」連載漫画だが、マキノ監督は映画化に際して軽快なレビュー調の味付けをしている。高峰の役は、ハナ子さん(轟)と結婚した五郎(灰田)の妹で、やがて足が不自由になった帰還兵(中村)と結ばれる。

’43(東宝映画)チヨ子さん(監)マキノ正博(原)杉浦幸雄(脚)山崎謙太、小森静男(撮)木塚誠一(美)北川恵司(音)鈴木静一(出)轟夕起子、山本礼三郎、英百合子、山根寿子、灰田勝彦、岸井明、中村彰、藤間房子、小島洋々、伊藤智子、橘薫、嵯峨善兵、伊達里子、澤井一郎、加納桂三

6 10/14(木)7:00pm 11/6(土)11:00am

幸福への招待(91分・35mm・白黒)

生徒の遭難事件の責任をとって職を辞した女学校の元校長(大河内)が、かつての教え子たちと集う。高峰の役は、未亡人でありながら妊娠したことを気に病んで自殺した卒業生。名匠・千葉泰樹の作品で、ロケーションは青森県の弘前で行われ、1947年のベストテンにも入った。

’47(新東宝映画)椎名ヒサ(監)千葉泰樹(原)(脚)八木隆一郎(撮)河崎喜久三(美)下河原友雄(音)伊福部昭(出)大河内傳次郎、入江たか子、河津清三郎、花井蘭子、野上千鶴子、中村彰、藤村昌子、春山葉子、中村哲、清川玉枝、島かづ子、三條利喜江、田中春男

7 10/15(金)3:00pm 11/3(水・祝)5:00pm

女といふ城 マリの巻(88分・35mm・白黒)

両親を喪い、自動車ブローカーとして弟(高島)との生活を支えるマリ(高峰)は、ある日九州の炭坑主・沖(上原)と知り合う。東京での新事業を目指す沖は、大利根(小沢)なる男に不良株をつかまされるが、マリはそのカラクリを知って沖に告げる…。2部作の前篇。

’53(新東宝)築地マリ(監)阿部豊(原)小島政二郎(脚)館岡謙之助(撮)横山実(美)加藤雅俊(音)斎藤一郎(出)上原謙、高島忠夫、乙羽信子、鳥羽陽之助、小沢栄、安部徹、小川虎之助、南寿美子、千明みゆき、冬木京三、十朱久雄、清川玉枝

8 10/15(金)7:00pm 11/6(土)5:00pm

女といふ城 夕子の巻(84分・35mm・白黒)

「マリの巻」に続く後篇。大利根は沖やマリを窮地に陥れようと画策、その戦いは沖の所有する九州の炭坑に飛び火する。物語の重心は炭坑労働者の娘・夕子(乙羽)に移る。ベテラン阿部豊が手がけた一種の経済サスペンス映画。

’53(新東宝)築地マリ(監)阿部豊(原)小島政二郎(脚)館岡謙之助(撮)横山実(美)加藤雅俊(音)斎藤一郎(出)上原謙、高島忠夫、乙羽信子、鳥羽陽之助、小沢栄、安部徹、小川虎之助、南寿美子、千明みゆき、冬木京三、十朱久雄、清川玉枝

9 10/16(土)11:00am

煙突の見える場所(108分・35mm・白黒)

東京・北千住の「お化け煙突」界隈に住み、戦争の影を引きずりつつも毎日の生活を助け合う人々の姿を温かく綴った五所平之助の名篇。同じ家の下宿人である町内放送のアナウンサー(高峰)と正義漢の税務署員(芥川)は、口争いの中にも互いの存在を認め合ってゆく。

’53(新東宝=スタジオエイトプロ)アナウンサー・東仙子(監)五所平之助(原)椎名麟三(脚)小國英雄(撮)三浦光雄(美)下河原友雄(音)芥川也寸志(出)田中絹代、上原謙、芥川比呂志、関千恵子、花井蘭子、坂本武、田中春男、三好榮子、浦邊粂子、星ひかる、中村是好、小倉繁、大原榮子、本間文子

10 10/16(土)2:00pm 11/2(火)3:00pm

(104分・35mm・白黒)

森鷗外の長篇小説を、溝口監督に師事した新進の成沢昌茂が脚色し、戦前から文芸ものを得意とした豊田四郎が映画化。原作に劣らぬ薫り高い秀作と評され興行的にも大ヒットとなった本作は、戦中から長いスランプに陥っていた豊田が戦後の名声を高めるきっかけとなった。

’53(大映東京)お玉(監)豊田四郎(原)森鷗外(脚)成澤昌茂(撮)三浦光雄(美)伊藤熹朔(音)團伊玖磨(出)芥川比呂志、宇野重吉、東野英治郎、飯田蝶子、田中榮子、浦邊粂子、小田切みき、三宅邦子、伊達正

11 10/16(土)5:00pm 11/4(木)3:00pm

女の園(141分・35mm・白黒)

フリーとなった高峰の、『カルメン故郷に帰る』『カルメン純情す』に次ぐ木下作品3作目。黒澤明とともに戦後の新進監督と目された木下は、本作では京都の名門女子大学を舞台にその封建制を鋭く批判した。高峰演じる芳江は自殺に追い込まれるが、その恋人を演じた田村高廣は、これがデビュー作。

’54(松竹大船)新入生・出石芳江(監)(脚)木下惠介(原)阿部知二(撮)楠田浩之(美)中村公彦(音)木下忠司(出)高峰三枝子、岸惠子、久我美子、田村高廣、田浦正己、三木隆、井川邦子、望月優子、東山千榮子、毛利菊枝、浪花千榮子、金子信雄、松本克平、山本和子、岡田和子

12 10/17(日)11:00am 11/2(火)7:00pm

この広い空のどこかに(109分・35mm・白黒)

東京近郊の酒屋の一家を舞台に、若き小林監督が清新な演出を見せるホームドラマ。ストーリーは新生活になかなかなじめない嫁(久我)を中心に展開するが、空襲で足を傷めて引きこもりがちな義妹を演じる高峰も、もう一人の主人公と言える。

’54(松竹大船)泰子(監)小林正樹(脚)楠田芳子、松山善太(善三)(撮)森田俊保(美)平高主計(音)木下忠司(出)佐田啓二、久我美子、石浜朗、大木実、小林トシ子、田浦正巳、浦辺粂子、中北千枝子、三好栄子、日守新一、内田良平、野辺かほる、岡田和子

13 10/17(日)2:00pm 11/4(木)7:00pm

浮雲(122分・35mm・白黒)

敗戦後の世情の中で転落してゆく一組の男女を描きつつも、メロドラマの枠を超えていまなお壮絶な光彩を放つ成瀬巳喜男不朽の傑作。現場での高峰は森雅之とともに厳しい食事制限を実行、時には貧血に悩まされつつも、人心すさんだ時代の人物像に挑んだという。

’55(東宝)幸田ゆき子(監)成瀬巳喜男(原)林芙美子(脚)水木洋子(撮)玉井正夫(美)中古智(音)齋藤一郎(出)森雅之、岡田茉莉子、山形勲、中北千枝子、加東大介、木匠マユリ、千石規子、村上冬樹、大川平八郎、金子信雄、ロイ・H・ジェームズ

14 10/17(日)5:00pm 11/5(金)3:00pm

渡り鳥いつ帰る(128分・35mm・白黒)

永井荷風の短篇3作を久保田万太郎が構成し、文芸映画に定評のある八住利雄が脚本化。売春禁止法の公布を翌年に控えた、ある娼家の経営者夫婦(森繁・田中)と娼婦たちとの人間模様を描く。チャッカリ屋の戦後派娘を演じている高峰にとって、結婚後初の作品である。

’55(東京映画)アプレ娘・街子(監)久松静児(原)永井荷風(脚)久保田万太郎、八住利雄(撮)髙橋通夫、玉井正夫(美)伊藤熹朔、小島基司(音)團伊玖磨(出)田中絹代、森繁久彌、久慈あさみ、淡路惠子、岡田茉莉子、水戸光子、太刀川洋一、桂木洋子、織田政雄、浦辺粂子、左卜全、藤原釜足

15 10/19(火)3:00pm 11/5(金)7:00pm

遠い雲(99分・35mm・白黒)

『浮雲』の公開後、高峰は『二十四の瞳』の助監督を務めた松山善三と結婚するが、その彼が恩師・木下恵介と共同で書いた脚本を映画化した木下監督作品。飛騨高山の旧家の未亡人に扮した高峰は、図らずも再会した初恋の人(田村)への想いとと日々のしがらみとの間で揺れ動く女心を繊細に演じた。

’55(松竹大船)冬子(監)(脚)木下惠介(脚)松山善三(撮)楠田浩之(美)平高主計(音)木下忠司(出)佐田啓二、高橋貞二、田村高廣、石濱朗、田浦正巳、桂木洋子、小林トシ子、井川邦子、中川弘子、柳永二郎、坂本武、夏川静江、明石潮

16 10/19(火)7:00pm 11/7(日)11:00am

子供の眼(85分・35mm・白黒)

妻に先立たれた勤め人の兄(芥川)と、その家庭の世話をしている妹(高峰秀子)、そして兄の許へ迎えられた歯科医の後妻(高峰三枝子)。先妻の子の視線から、移ろいゆく家族の姿を浮かび上がらせた佐多稲子文学の映画化。高峰三枝子とは『女の園』以来の顔合わせとなった。

’56(松竹大船)三田村喜世子(監)川頭義郎(原)佐多稲子(脚)松山善三(撮)楠田浩之(美)平高主計(音)木下忠司(出)高峰三枝子、芥川比呂志、設楽幸嗣、丹阿弥谷津子、大木実、笠智衆、滝花久子

17 10/20(水)3:00pm 11/7(日)2:00pm

新・平家物語 義仲をめぐる三人の女(121分・35mm・カラー)

「週刊朝日」連載の原作は吉川英治文学の代表作と言われ、映画化第2篇のこの作品は、反逆児・義仲に扮した長谷川をめぐってトップ女優3人が競演する。なお、平清盛の青年時代を描いた第1篇は溝口健二に、静御前と義経を題材にした第3篇は島耕二によって演出された。

’56(大映京都)冬姫(監)(脚)衣笠貞之助(原)吉川英治(脚)成澤昌茂、辻久一(撮)杉山公平(美)柴田篤二(音)斎藤一郎(出)長谷川一夫、京マチ子、山本富士子、大河内傳次郎、黒川彌太郎、柳永二郎、進藤英太郎、志村喬、夏目俊二、杉山昌三九、細川俊夫、山路義人、羅門光三郎

18 10/20(水)7:00pm 11/13(土)11:00am

流れる(116分・35mm・白黒)

幸田文による最初の本格的な小説を映画化した成瀬作品。原作は花柳界で生活した見聞がまとめられているが、映画ではその作者の分身を田中絹代が演じている。『泣蟲小僧』以来18年ぶりに銀幕に復帰した栗島すみ子を筆頭に、山田、杉村、高峰、岡田の競演は、まさに日本映画女優史を観る思いである。

’56(東宝)つた奴の娘・勝代(監)成瀬巳喜男(原)幸田文(脚)田中澄江、井手俊郎(撮)玉井正夫(美)中古智(音)齊藤一郎(出)田中絹代、山田五十鈴、岡田茉莉子、杉村春子、栗島すみ子、中北千枝子、賀原夏子、宮口精二、加東大介、中村伸郎、音羽久米子、南美江、上田吉二郎

19 10/21(木)3:00pm 11/7(日)5:00pm

「雲の墓標」より 空ゆかば(105分・35mm・白黒)

3人の学徒兵が特攻隊員として出撃するまでの日々に焦点を当てた作品で、高峰は隊員・坂井(渡辺)の姉を演じている。原作となった阿川弘之の戦記文学「雲の墓標」は書簡集の形をとっており、映画としてのドラマ構成は脚本の高橋治が行った。

’57(松竹大船)坂井さち(監)(脚)堀内真直(原)阿川弘之(脚)高橋治(撮)小原治夫(美)荻原重夫(音)池田正義(出)田村高廣、田浦正巳、渡辺文雄、大木実、岸恵子、笠智衆、滝花久子、諸角啓二郎、十朱久雄、永田靖、佐竹明夫、永井達郎、川喜多雄二、菅佐原英一、伊沢一郎、内田良平

20 10/21(木)7:00pm 11/9(火)3:00pm

喜びも悲しみも幾歳月(162分・35mm・カラー)

積年の風雪に耐え、波乱の中にもつつましく生き抜いた灯台員夫婦(佐田・高峰)の半生を綴り、テーマ曲とともに大ヒットを記録した大作。北海道から長崎・五島列島まで全国15の灯台にロケを敢行したが、撮影隊が塗った石狩灯台の紅白縞は、以後各地の灯台で正式採用されたという。

’57(松竹大船)灯台員の妻・有沢きよ子(監)(原)(脚)木下惠介(撮)楠田浩之(美)伊藤熹朔、梅田千代夫(音)木下忠司(出)佐田啓二、田村高広、中村賀津雄、桂木洋子、三井弘次、井川邦子、夏川靜江、有沢正子、伊藤弘子、仲谷昇、北龍二、三木隆、櫻むつ子、明石潮、坂本武

21 10/22(金)3:00pm 11/9(火)7:00pm

風前の灯(79分・35mm・白黒)

強欲な老婆(田村)の財産を狙う色とりどりの人間像を、木下恵介が遊び心たっぷりに描き出したコメディ。佐田と高峰は、『喜びも悲しみも幾歳月』の夫婦像からは考えもつかない、これまた強欲な夫婦を演じる。ほぼ全篇にわたって眼鏡をかけた役柄は珍しい。

’57(松竹大船)妻・佐藤百合子(監)(脚)木下惠介(撮)楠田浩之(美)梅田千代夫(音)木下忠司(出)佐田啓二、田村秋子、南原伸二、小林トシ子、田中晋二、伊藤弘子、有沢正子、小瀬朗、小野良、サトウ・サブロー、佐藤芳秀、佐田彰二、里見孝二

22 10/22(金)7:00pm 11/13(土)2:00pm

張込み(116分・35mm・白黒)

松本清張の短篇小説を記録映画的なリアリズムで映画化した秀作。佐賀を舞台に強盗殺人犯(田村)の立ち回り先を張り込む新旧2人の刑事を描いたもので、犯人の昔の恋人を無言で演じる高峰は不幸な日常生活と女の情念を見事に表現、野村演出の緻密な人間描写に貢献した。

’58(松竹大船)横川の後妻・さだ子(監)野村芳太郎(原)松本清張(脚)橋本忍(撮)井上晴二(美)逆井清一郎(音)黛敏郎(出)大木実、田村高広、宮口精二、高千穂ひづる、菅井きん、清水将夫、内田良平、藤原釜足、浦辺粂子、小田切みき、北林谷栄、芦田伸介、近衛敏明

23 10/23(土)11:00am 11/10(水)3:00pm

無法松の一生(104分・35mm・カラー)

阪東妻三郎主演による初の映画化(1943年)では、車夫の松五郎が陸軍大尉の未亡人に思いを告げる場面が大幅にカットされた。稲垣監督はこの無念を晴らすためリメイクを決意、本作はヴェネチア国際映画祭で金獅子賞を獲得した。以降、三国連太郎や勝新太郎の主演でも映画化されている。

’58(東宝)未亡人・吉岡良子(監)(脚)稲垣浩(原)岩下俊作(脚)伊丹万作(撮)山田一夫(美)植田寛(音)団伊玖磨(出)三船敏郎、芥川比呂志、飯田蝶子、笠智衆、田中春男、多々良純、中村伸郎、宮口精二、中北千枝子、有島一郎、左卜全、高堂国典、土屋嘉男、沢村いき雄、小杉義男、上田吉二郎

24 10/23(土)2:00pm 11/11(木)7:00pm

女が階段を上る時(111分・35mm・白黒)

戦後の成瀬作品は原作ものが多かったが、銀座の高級バーの雇われマダムを主人公にしたオリジナル脚本を得た本作では、人間のエゴや駆け引き、信頼と裏切りに満ちた風俗的な筋書きを、丁寧な心理描写によって佳作に仕上げた。主演の高峰は衣装も担当している。

’60(東宝)バーのマダム・矢代圭子(監)成瀬巳喜男(撮)玉井正夫(美)中古智(音)黛敏郎(出)森雅之、団令子、仲代達矢、加東大介、中村鴈治郎、小沢栄太郎、淡路惠子、山茶花究、多々良純、藤木悠、織田政雄、三津田健、細川ちか子、沢村貞子

25 10/23(土)5:00pm 11/10(水)7:00pm

笛吹川(117分・35mm・カラー)

農民の視線で川中島の合戦をみつめた深沢七郎の問題作を、モノクロームの部分着色という奇抜な発想で映画にした異色時代劇。高峰は18歳から85歳までの役を演じたが、老婆役のメイクでは、粘性のプラスチック材を顔に厚く塗られ、竹べらで皺を彫られたという。

’60(松竹大船)おけい(監)(脚)木下惠介(原)深沢七郎(撮)楠田浩之(美)伊藤熹朔、江崎孝坪(音)木下忠司(出)田村髙広、市川染五郎、岩下志麻、川津祐介、田中晋二、中村萬之助、渡辺文雄、加藤嘉、井川邦子、安部徹、小林トシ子、山岡久乃、市原悦子

26 10/24(日)11:00am 11/11(木)3:00pm

名もなく貧しく美しく(129分・35mm・白黒)

聾者同士で結婚した夫婦の戦中から戦後の労苦を描いた本作は、東京・有楽町界隈で知った聾者の靴磨き夫婦を素材にした松山善三のオリジナル脚本で、監督に予定していた木下恵介の都合が悪くなり、急遽松山自身が映画化した監督デビュー作。手話の字幕スーパー採用が話題になった。

’61(東京映画)秋子(監)(脚)松山善三(撮)玉井正夫(美)中古智、狩野健(音)林光(出)小林桂樹、原泉、荒木道子、根岸明美、草笛光子、加山雄三、高橋昌也、松本染升、沼田曜一、中北千枝子、南美江、一の宮あつ子、賀原夏子、河内桃子、藤原釜足、多々良純、織田政雄

27 10/24(日)2:00pm 11/12(金)3:00pm

永遠の人(103分・35mm・白黒)

激動の「昭和」という時代に生き、翻弄されつつも自分を見失うまいとする女の半生を通じ、人を愛し許すことの大切さを描いた木下監督得意の年代記もの。雄大な阿蘇山を舞台に繰り広げられる叙事詩に、悲痛で激情的なフラメンコ調の音楽が花を添える。

’61(松竹大船)小作人の娘・さだ子(監)(脚)木下惠介(撮)楠田浩之(美)梅田千代夫(音)木下忠司(出)佐田啓二、仲代達矢、乙羽信子、石浜朗、東野英治郎、藤由紀子、野々村潔、加藤嘉、永田靖、浜田寅彦、田村正和

28 10/24(日)5:00pm 11/16(火)3:00pm

山河あり(127分・35mm・白黒)

高峰・松山夫妻は長期休暇をハワイで過ごすことが多かったが、その地で得た題材を映画化した作品。ハワイに移住した2組の夫婦を中心に、人種的偏見や経済的苦労、そして太平洋戦争による家族の別離と悲劇が描かれる。師匠・木下恵介譲りの年代記ものの松山版。

’62(松竹大船)ハワイ移民・井上きしの(監)(脚)松山善三(脚)久板栄二郎(撮)楠田浩之(美)戸田重晶(重昌)(音)木下忠司(出)田村高広、桑野みゆき、久我美子、小林桂樹、石浜朗、早川保、ミッキー・カーチス、三井弘次、加藤嘉、清水将夫、河野秋武、千之赫子、桂小金治

29 10/26(火)3:00pm 11/13(土)5:00pm

二人で歩いた幾春秋(102分・35mm・白黒)

歌集「道路工夫の歌」を木下恵介が構成・脚色・監督した作品。高峰=佐田コンビによる夫婦の半生記物といえば、この5年前にヒットした『喜びも悲しみも幾歳月』が思い出されるが、ここでは戦後の日本の歩みを背景に、一人息子を大学生に育て上げるまでの苦労が描かれる。

’62(松竹大船)野中とら江(監)(脚)木下惠介(原)河野道工(撮)楠田浩之(美)浦山芳郎(音)木下忠司(出)佐田啓二、久我美子、倍賞千恵子、山本豊三、野々村潔、菅井きん、小川虎之助、岸輝子、浜田寅彦、三崎千恵子、左右田一平、河野秋武

30 10/26(火)7:00pm 11/18(木)3:00pm

放浪記(123分・35mm・白黒)

高峰は、成瀬作品では『浮雲』と本作に最も愛着を持っていた。無名時代の林芙美子を演じるにあたって、彼女は実際の作家像には拘泥せず、その精神を示すため「デフォルメされた強引な演技」に徹したという。高峰はその演技への批判に対して、生涯でただ一度反論のペンを執った。

’62(宝塚映画)林ふみ子(監)成瀬巳喜男(原)林芙美子、菊田一夫(脚)井手俊郎、田中澄江(撮)安本淳(美)中古智(音)古関裕爾(出)田中絹代、宝田明、加東大介、小林桂樹、草笛光子、仲谷昇、伊藤雄之助、多々良純、織田政雄、加藤武、文野朋子、賀原夏子、飯田蝶子

31 10/27(水)3:00pm 11/12(金)7:00pm

乱れる(98分・35mm・白黒)

不振の酒屋を守る未亡人(高峰)は、姑や小姑に気を遣い、仕事をやめて帰郷した義弟(加山)の存在も気が重い。義弟に恋心を打ち明けられた彼女は家を出るが、彼はそれを追った…。2人の感情の微妙な揺れ動きと緊張感が、同じ成瀬監督の『浮雲』の道行の場面をも思わせる晩年の秀作。

’64(東宝)酒屋店主・森田礼子(監)成瀬巳喜男(脚)松山善三(撮)安本淳(美)中古智(音)斉藤一郎(出)加山雄三、草笛光子、白川由美、浜美枝、三益愛子、藤木悠、北村和夫、十朱久雄、浦辺粂子、柳谷寛、佐田豊、中山豊、矢吹寿子、中北千枝子

32 10/27(水)7:00pm 11/14(日)11:00am

われ一粒の麦なれど(108分・35mm・白黒)

一本の間違い電話から、小児麻痺(ポリオ)根絶運動の先頭に立つことになり、猛烈な勢いでキャンペーンを展開する役人(小林)。さらに、屈折した感情をあらわにする患者(大辻)など、印象的な熱演に満ちた松山善三作品。高峰は、生ワクチンの投与実験に協力する医師の役。

’64(東京映画)女医・根本倫子(監)(脚)松山善三(撮)村井博(美)狩野健(音)佐藤勝(出)小林桂樹、大村崑、水谷良重、大辻伺郎、木村功、田崎潤、田中春男、菅井きん、市原悦子、毛利菊枝、岡村文子、名古屋章、下元勉、浜村純、天本英世

33 10/28(木)3:00pm 11/14(日)2:00pm

六條ゆきやま紬(106分・35mm・白黒)

日本海に面する寒村。豪農の六條家に嫁いだ芸者・いね(高峰)は、当主・久右衛門(神山)亡きあと家人の徹底的ないびりに遭うが、家の伝統である“ゆきやま紬”一筋に生きる。雪深い土地の閉塞した空気を表した岡崎宏三のモノクロ撮影も素晴らしい。

’65(東京映画)六條家の嫁・いね(監)(脚)松山善三(撮)岡崎宏三(美)小島基司(音)佐藤勝(出)神山茂、毛利菊枝、フランキー堺、小林桂樹、大空真弓、杉村春子、佐野周二、石山健二郎、出雲八重子、有馬昌彦、浜村純、小林桂樹、田中筆子、大辻伺郎、宇佐美淳也、菅井きん、名古屋章

34 10/28(木)7:00pm 11/17(水)3:00pm

父と子 続・名もなく貧しく美しく(115分・35mm・白黒)

異色の題材を斬新な演出で見せ、大好評を博した前作を受けての続篇。母亡き後、父(小林)の手により優秀な成績で大学を出た息子(北大路)。恩ある社長の聾者の娘(内藤)との結婚話を機に、同じ苦労をさせまいとする父と、新しい価値観に生きる息子が激しく対立する。

’67(東京映画)片山秋子(監)(脚)松山善三(撮)岡崎宏三(美)小野友滋(音)船村徹(出)小林桂樹、北大路欣也、内藤洋子、田村亮、大空真弓、加東大介、原泉、乙羽信子、稲葉義男、当銀長太郎、丸山謙一郎、木村俊恵、古庄敏行

35 10/29(金)3:00pm 11/17(水)7:00pm

華岡青洲の妻(99分・35mm・白黒)

麻酔の研究に没頭する青洲(市川)のために、人体実験の被験者に志願する妻(若尾)と母(高峰)との葛藤。高峰は、有吉佐和子の小説群を「バズーカ砲の如き強烈な破壊力」と評したが、こうした人間のプライドを賭けた争いは監督の増村保造にも絶好の主題であった。

’67(大映京都)母・於継(監)増村保造(原)有吉佐和子(脚)新藤兼人(撮)小林節雄(美)西岡善信(音)林光(出)市川雷蔵、若尾文子、伊藤雄之助、渡辺美佐子、丹阿弥谷津子、原知佐子、浪花千栄子、内藤武敏、伊達三郎、田武謙三、木村玄、南部彰三、舟木洋一

36 10/29(金)7:00pm 11/14(日)5:00pm

鬼の棲む館(76分・35mm・カラー)

高峰が敬愛する文豪・谷崎潤一郎の戯曲「無明と愛染」の翻案。南北朝時代、情人(新珠)と荒れ寺でただれた生活を送る盗賊(勝)のもとへ、妻(高峰)が訪れる。やがて高野山の上人(佐藤)も入り乱れて、嫉妬と誘惑の黒々とした人間絵巻が繰り広げられる。

’69(大映京都)盗賊の妻・楓(監)三隅研次(原)谷崎潤一郎(脚)新藤兼人(撮)宮川一夫(美)内藤昭(音)伊福部昭(出)勝新太郎、新珠三千代、佐藤慶、五味竜太郎、木村元、伊達岳志、伴勇太郎、松田剛武、黒木現

37 10/30(土)11:00am 11/16(火)7:00pm

恍惚の人(100分・35mm・白黒)

有吉佐和子の同名小説はベストセラーとなり、題名は痴呆老人を示す流行語となった。介護される老人と世話する嫁を演じたのはベテランの森繁と高峰で、『渡り鳥いつ帰る』以来10数年ぶりの共演である。壮絶な日常の戦いの中にも人間讃歌が満ちている秀作。

’73(芸苑社)立花昭子(監)豊田四郎(原)有吉佐和子(脚)松山善三(撮)岡崎宏三(美)小島基司(音)佐藤勝(出)森繁久彌、田村高廣、乙羽信子、中村伸郎、杉葉子、篠ヒロコ、伊藤高、市川泉、吉田日出子、神保共子、野村昭子、浦辺粂子

38 10/30(土)2:00pm 11/18(木)7:00pm

スリランカの愛と別れ(116分・35mm・カラー)

スリランカとモルディヴを舞台に、工場設立のためにやってきた水産会社の社員(北大路)と宝石の買い付けに来た女(栗原)との恋愛を綴る。行方不明となった夫の遺産を守ってスリランカで暮らす日本人女性という役柄は、高峰にとっても異色のものであった。

’76(東宝映画=俳優座映画放送)ジャカランタ夫人(監)(原)(脚)木下惠介(撮)中井朝一(美)村木与四郎(音)木下忠司(出)北大路欣也、栗原小巻、小林桂樹、津島恵子、小野川公三郎、片桐新、太田博之、ニランジャン・ペレラ、スレン・サアヴァンドー、カビンダ・ワァニーアラッチィ、アータ・デ・シルヴァ

39 10/30(土)5:00pm 11/19(金)3:00pm

ふたりのイーダ(110分・35mm・カラー)

幼い兄妹が、ある日“しゃべる椅子”(声:宇野)に出会う。椅子は「イーダ」という少女の帰りを待ち続けているが、彼女ははるか昔に原爆で命を落としていた。松谷みよ子の戦争児童文学の映画化で、高峰は森繁久彌とともに田舎の祖父母を演じている。

’76(ふたりのイーダプロ)広島の祖母(監)(脚)松山善三(原)松谷みよ子(撮)中川芳久(美)村木忍(音)木下忠司(出)倍賞千恵子、上屋健一、原口祐子、山口崇、宇野重吉、森繁久彌、田中筆子、砂塚英夫

40 10/31(日)11:00am 11/19(金)7:00pm

衝動殺人 息子よ(130分・35mm・カラー)

高峰秀子最後の出演作。一人息子(田中)を通り魔に殺害された父親(若山)が、被害者の遺族を保護する法の制定へと奔走し、苦闘を重ねる姿を追う。当初、母親役の女優がどうしても決まらず、「とっくに引退してるつもり」という高峰を監督が説得して出演させたという。

’79(松竹=東京放送)川瀬雪枝(監)(脚)木下惠介(原)佐藤秀郎(脚)砂田量爾(撮)岡崎宏三(美)重田重盛(音)木下忠司(出)若山富三郎、田中健、大竹しのぶ、尾藤イサオ、高岡健二、田村高廣、中村玉緒、近藤正臣、藤田まこと、吉永小百合、加藤剛、大地康雄