www.momat.go.jp

大ホール上映作品

映画女優 高峰秀子(1)
Hideko Takamine Retrospective [Part 1]

9月3日(金)- 10月10日(日)
上映スケジュール

定員=310名(各回入替制)
発券=2階受付
料金=一般500円/高校・大学生・シニア300円/小・中学生100円
・観覧券は当日・当該回にのみ有効です。
・発券・開場は開映の45分前から行ない、定員に達し次第締切となります。
・シニア(65歳以上)の方は、必ず年齢を証明できるものをご提示下さい。

 昭和のただ中を半世紀にわたって駆け抜けた偉大なる映画女優――高峰秀子。

 無声末期に天才子役として松竹映画に登場した彼女は、移籍したPCLとそれに続く東宝にあってはデコちゃんの愛称で親しまれ、特に山本嘉次郎監督の『綴方教室』(1938年)と『馬』(1941年)では等身大の娘役を得て人気を高めました。

 戦後、新東宝時代を経てフリーとなる頃には、20代の輝くばかりの美しさによってスター女優としての地位を確固たるものとし、さらに、おりしも黄金時代を迎えつつあった日本映画界にあって一作ごとに大女優への歩みを進め、小津安二郎、五所平之助、豊田四郎、稲垣浩、野村芳太郎ら時代を代表する名監督の作品に主演を果たしました。

 とりわけ、わが国初の総天然色映画『カルメン故郷に帰る』(1951年)で出会った木下恵介監督の作品では、『二十四の瞳』(1954年)『喜びも悲しみも幾歳月』(1957年)などに主演、その大ヒットにより国民的スターの座を獲得、また、『稲妻』(1952年)で戦後初のコンビを組んだ成瀬巳喜男監督との仕事では、『浮雲』(1955年)、『乱れる』(1964年)などの傑作に、人生と映画の豊かな履歴によって深みを増した演技と存在感を刻印し、まさに稀代の“映画女優”となって、夫・松山善三監督作品への出演を加えつつ、そのさらなる活躍を1960年代以降へと継続していきました。

 今秋フィルムセンターは、日本映画史と昭和史を共に体現したこの不世出の女優を顕彰する大規模な特集を行います。全体をこの第1部と、10月12日から11月19日までの第2部とに分け、160本を越える出演作の中から80本以上の作品を連続上映する本企画には、絢爛たる女優歴を彩る名作はもちろん、初公開以来フィルムで観ることのできなかった作品も多く含まれています。

 ある時は、明朗に快活に、またある時は、苦く切なく悲哀に満ちて、銀幕に女の一生を映し続けた“映画女優 高峰秀子”の芸と仕事の軌跡を存分にご堪能ください。

■(監)=監督・演出 (原)=原作・原案 (脚)=脚本・脚色・構成 (撮)=撮影 (美)=美術・舞台設計・装置・美術監督 (音)=音楽・音楽監督 (出)=出演

■クレジット中の紫字は高峰秀子の役名です。

■本特集には不完全なプリントが含まれています。

■記載した上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。

■高峰秀子出演の成瀬巳喜男監督作品については、来年度に実施予定の同監督生誕百年記念特集で上映されるため、本特集では上映しないものもあります。

1 9/4(土)5:00pm 9/24(金)3:00pm

「十九の春」撮影風景(4分・16mm・白黒・無声・16fps)

1933年の松竹蒲田作品『十九の春』の撮影風景を収めた記録フィルム。主演の伏見信子や五所平之助監督とともに当時9歳だった高峰秀子の素顔を見ることができる(川喜多記念映画文化財団提供)。

麗人(118分・16mm・白黒・無声・24fps)

新聞小説として人気を博した原作の映画化。男友達(奈良)の子を身ごもったものの、男は恩義ある代議士の令嬢と結婚、失意の女(栗島)は自暴自棄の生活を送るが、男の自殺を知って息子の待つ故郷へ帰る。6歳の高峰が男の子に扮した出演4作目で、蒲田のオールスター作品。

’30(松竹蒲田)鞆子の息子・岩夫(監)島津保次郎(原)佐藤紅緑(脚)村上徳三郎(撮)桑原昂(美)脇田世根一(出)栗島すみ子、岩田祐吉、二葉かほる、奈良眞養、山内光、藤野秀夫、鈴木歌子、八雲恵美子、花岡菊子、岡村文子、小林十九二、渡辺篤、伊達里子

2 9/4(土)11:00am 9/28(火)3:00pm

七つの海[前後篇](127分・35mm・白黒・無声・24fps)

婚約者の従兄(岡)に貞操を奪われ、復讐の念を抱きながら彼と結婚するヒロイン(川崎)。贅沢な生活の中で洗練されてゆく彼女は、次第に夫を翻弄するようになる。島津保次郎とともに松竹蒲田のメロドラマを多作していた清水監督の大作。高峰は後篇に出演。

’31-32(松竹蒲田)曽根百代(監)清水宏(原)牧逸馬(脚)野田高梧(撮)佐々木太郎(美)河野鷹思(出)川崎弘子、若水絹子、武田春郎、鈴木歌子、岡譲二、江川宇礼雄、泉博子、宮島健一、高松栄子、野寺正一、坂本武、伊達里子

3 9/4(土)2:00pm 9/29(水)7:00pm

新道[前後篇](133分・35mm・白黒)

評判を呼んだ菊池寛の長篇小説を映画化したもの。両親の反対を押し切って青年(佐野)と結ばれた令嬢(田中)は、青年の事故死を知らされた時すでに身ごもっており、青年の弟(上原)が彼女とその子供のために結婚するというメロドラマ。上原、佐野、佐分利の三羽烏が競演。

’36(松竹大船)子爵の次女・京子(監)(脚)五所平之助(原)菊池寛(脚)野田高梧(撮)小原讓治(美)五所福之助(音)福田幸彦(出)田中絹代、川崎弘子、佐野周二、上原謙、佐分利信、斎藤達雄、吉川満子、岡村文子、山内光、大山健二、笠智衆、出雲八重子

4 9/5(日)11:00am 9/24(金)7:00pm

花籠の歌(69分・35mm・白黒)

東京下町出身の五所監督が取り組んだ人情劇。銀座裏のとんかつ屋を舞台に、看板娘の姉(田中)をめぐる恋の鞘当てがにぎやかに展開される。主演の絹代が片思いを抱く学生に松竹三羽烏のひとり佐野周二が、松竹歌劇団の大スター“ターキー”に憧れる妹に高峰が扮して歌声を聞かせる。

’37(松竹大船)とんかつ屋の次女・浜子(監)(脚)平之助ごしょ(五所平之助)(原)岩崎文隆(脚)野田高梧(撮)斎藤正夫(美)脇田世根一(音)久保田公平(出)田中絹代、佐野周二、徳大寺伸、河村黎吉、岡村文子、谷麗光、出雲八重子、笠智衆

5 9/5(日)2:00pm 9/28(火)7:00pm

綴方教室(86分・35mm・白黒)

当時ベストセラーとなった無名の少女の作文集を映画化した本作は、貧しい生活の中で少女が次第に大人になってゆく様子を丹念に記録している。活躍の場を松竹からP.C.L.に移し、的確な演技力で主役を演じた高峰が、天才子役から女優へと変身するきっかけとなった作品。

’38(東宝東京)娘・正子(監)山本嘉次郎(原)豊田正子(脚)木村千依男(撮)三村明(美)松山崇(出)小高まさる、水谷史郎、徳川夢声、清川虹子、瀧澤修、赤木蘭子、三島雅夫、本間教子、音羽久米子、山形天洋、伊藤智子

6 9/5(日)5:00pm 9/29(水)3:00pm

チョコレートと兵隊(74分・35mm・白黒)

ある日召集令状が届いて、大陸の戦線に送られた釣り好きの印刷工(藤原)。戦地にあっても子供が集めていたチョコレートの包み紙を送るのだが、届くと同時に戦死の報ももたらされる。「銃後の守り」を宣伝する時局映画で、最近アメリカで発見され収蔵フィルムに加わった。

’38(東宝東京)印刷所の娘・田辺茂子(監)佐藤武(原)小林勝(脚)石川秋子(撮)吉野馨治(美)吉松英海(音)伊藤昇(出)藤原釜足、澤村貞子、小まさる、若葉きよ子、霧立のぼる、横山運平、生方賢一郎、若宮金太郎、一の瀬綾子、小西司郎、水谷史郎

7 9/11(土)11:00am

樋口一葉(83分・35mm・白黒)

明治期の女流作家の半生を描いた伝記映画。師と慕う半井桃水(高田)との仲を裂かれた一葉(山田)は、老母と妹を養うため荒物屋を始める。久しぶりに訪ねた桃水は病の床にあり、妻の存在にも愕然とした。吉原の遊郭界隈が見事に再現され、明治情緒たっぷりに描かれている。

’39(東宝東京)大黒屋のみどり(監)並木鏡太郎(原)(脚)八住利雄(撮)町井春美(美)久保一雄(音)菅原明朗(出)山田五十鈴、澤村貞子、堤眞佐子、椿澄江、英百合子、水町庸子、清川虹子、大川平八郎、高田稔、嵯峨善兵、河村弘二

8 9/7(火)3:00pm 9/23(木・祝)5:00pm

その前夜(86分・35mm・白黒)

幕末に起きた新撰組の池田屋襲撃事件を題材にした本作は、近所のしがない宿屋の人々の視点から描かれている。日中戦争で戦病死した山中貞雄原案の「木屋町三条」を“鳴滝組”が脚色し、追悼作品として映画化。山中の遺作『人情紙風船』同様、前進座一党が出演した。

’39(東宝京都)妹娘・おつう(監)萩原遼(原)山中貞雄(脚)梶原金八(撮)河崎喜久三(美)河東安英(音)太田忠(出)河原崎長十郎、中村翫右衛門、千葉早智子、清川玉枝、山田五十鈴、助高屋助藏、中村鶴藏、橘小三郎、山崎進藏、市川莚司、市川扇升、市川進三郎

9 9/7(火)7:00pm 9/25(土)11:00am

新篇 丹下左膳 隻眼の巻(62分・35mm・白黒)

本作はシリーズ4部作の中の第3部。第1部「妖刀の巻」(渡辺邦男監督)で失脚した主人公は「隻手の巻」(山本薩夫監督)で右腕を失い、本作で片目を傷つけられてヒーローが誕生し、「恋車の巻」(萩原遼監督)で完結するが、高峰は後半の2作に出演している。

’39(東宝東京)吉野屋半左衛門の娘・お春(監)中川信夫(原)川口松太郎(脚)貴船八郎(撮)安本淳(美)島康平(音)伊藤昇(出)大河内傳次郎、山田五十鈴、黒川彌太郎、岸井明、澤村貞子、鬼頭善一郎、清川莊司、鳥羽陽之助、永井柳太郎、汐見洋、御橋公、冬木京三、進藤英太郎

10 9/8(水)3:00pm 9/30(木)7:00pm

姉の出征(65分・35mm・白黒)

秀子(高峰)は姉(山根)のように赤十字の看護婦となってお国の役に立ちたいと思っていた。休暇で帰郷した姉に自分の思いを伝えるが、弟や両親の世話をするのもご奉公だと諭される。隣家の青年との結婚話もあった姉だったが、大陸へ渡るため故郷を後にした。

’40(東宝京都)田口秀子(監)近藤勝彦(原)(脚)眞壁博(撮)河崎喜久三(美)北村高敏(音)鈴木靜一(出)山根壽子、小杉義男、藤輪欣司、三田國夫、進藤英太郎、山田長正、森野鍛治哉、伊東薫、小高まさる、山島秀二、對馬和雄、江南通夫、山内八郎、水町庸子、濱路良子、香川澄子

11 9/8(水)7:00pm 9/23(木・祝)2:00pm

孫悟空[前後篇](135分・35mm・白黒)

『エノケンの青春水滸伝』(1934年)以来、音楽喜劇の道を歩んできた山本・エノケンのコンビによる戦前最後の作品。東宝得意の特殊撮影を駆使し、エノケン一座総出演に加え、東宝のスター連、日劇ダンシングチーム、満映から李香蘭らを迎えての豪華な顔ぶれである。

’40(東宝東京)お伽の姫(監)(脚)山本嘉次郎(撮)三村明(美)松山崇(音)鈴木靜一(出)榎本健一、岸井明、金井俊夫、柳田貞一、北村武夫、高勢実乘、中村是好、竹久千惠子、花井蘭子、中村メイコ、李香蘭、汪洋、渡邊はま子、三益愛子、益田隆

12 9/9(木)3:00pm 9/25(土)2:00pm

昨日消えた男(89分・35mm・白黒)

当時人気を博したアメリカ映画の探偵シリーズ「影なき男」からヒントを得て、ご存じ遠山の金さんを登場させた痛快娯楽映画。長谷川・山田の名コンビにアイドルの高峰が参加、正月映画として間に合わせるため、マキノ監督はわずか10日間で仕上げたという。

’41(東宝東京)篠崎お京(監)マキノ正博(脚)小國英雄(撮)伊藤武夫(美)樋野正雄(音)鈴木靜一(出)長谷川一夫、山田五十鈴、川夢声、江川宇禮雄、川田義雄、鳥羽陽之助、川虹子、川莊司、進藤英太郎、鬼頭善一郎、藤田房子、渡辺篤、サトウ・ロクロー、杉寛、澤井三郎、坂東橘之助、藤間房子

13 9/9(木)7:00pm 9/26(日)11:00am

(127分・35mm・白黒)

仔馬の世話を任された少女の数年間の生活と、軍馬として売られてゆくつらい別れを描いた本作では、長期にわたる東北でのロケーションが敢行された。そのほとんどを製作主任の黒澤明が仕切って一躍注目されると同時に、少女スター高峰の演技力が評判となった。

’41(東宝東京=映画科学研究所)農家の娘・小野田いね(監)(脚)山本嘉次郎(撮)唐澤弘光、三村明、鈴木博、伊藤武夫(美)松山崇(音)北村滋章(出)藤原鷄太(釜足)、竹久千惠子、二葉かほる、平田武、細井俊夫、市川せつ子、丸山定夫、澤村貞子、小杉義男、馬野都留子、松岡綾子、清川莊司、眞木順

14 9/10(金)3:00pm 9/25(土)5:00pm

秀子の車掌さん(54分・35mm・白黒)

つぶれかかったバス会社の再建のため、ライバル会社への対抗策として名所案内のアナウンスを練習する少女を高峰が演じる。前年の『秀子の応援団長』同様、芸名を冠した作品が作られるほど彼女の人気は凄まじかった。また、成瀬監督との初のコンビ作である。

’41(南旺映画)バスの車掌・おこまさん(監)(脚)成瀬巳喜男(原)井伏鱒二(撮)東健(美)小池一美(音)飯田信夫(出)藤原鷄太(釜足)、夏川大二郎、清川玉枝、勝見庸太郎、榊田敬治、山川ひろし、松林久晴、林喜美子、馬野都留子

北の三人(40分・35mm・白黒・不完全)

戦争も末期を迎え、「銃後の守り」を主としていた映画の中の女性像も、積極的に戦地で活躍するものへと変わっていた。本作でも原、山根、高峰のスター女優が通信兵として北方の航空基地で働くが、残存フィルムは不完全。1945年8月5日に封切られた戦中最後の作品。

’45(東宝)航空基地の通信兵(監)佐伯清(脚)山形雄策(撮)中井朝一(美)平川透徹(音)早坂文雄(出)原節子、山根壽子、藤田進、河野秋武、佐分利信、志村喬、田中春男、淺田健三、光一、小森敏、羽島敏子、中北千枝子、尾崎幸子

15 9/10(金)7:00pm 9/30(木)3:00pm

武蔵坊辧慶(87分・35mm・白黒)

天下を取った平家一門の驕りは日ごとに激しくなっていった。そんな享楽に明け暮れる一族を懲らしめるため、弁慶(岡)は太刀千本を得ることにした。清盛の館から逃げてきた側女を入水自殺から助けたり、五条大橋で後の主人・牛若丸(高峰)と出会う、若き日の弁慶を描いた一篇。

’42(東宝東京)牛若丸(後に義経)(監)渡邊邦男(原)(脚)比佐芳武(撮)友成達雄(美)島康平(音)服部良一(出)岡讓二、山田五十鈴、黒川彌太郎、小まさる、堂國典、進藤英太郎、佐山亮、小杉義男、岬洋二、清川莊司、石上都、轟美津子

16 9/11(土)2:00pm 10/1(金)3:00pm

待って居た男[再公開版](98分・35mm・白黒)

この当時、マキノ・長谷川・山田は興行成績を保障するゴールデン・トリオであった。前年の『昨日消えた男』の成功により、小国英雄の脚本を得て作られた本作では、南伊豆の温泉宿で次々に起こる怪事件を、江戸から来ていた目明し夫婦が見事に解決してみせる。

’42(東宝映画)お雪(監)マキノ正博(脚)小國英雄(撮)山崎一雄(美)中古智(音)鈴木靜一(出)長谷川一夫、山田五十鈴、榎本健一、藤原鷄太(釜足)、大川平八郎、清川莊司、山本礼三郎、江川宇礼雄、横山運平、中村是好、鳥羽陽之助、柳谷寛、深見泰三、山根壽子、清川玉枝、澤村貞子

17 9/11(土)5:00pm 10/5(火)3:00pm

婦系圖[総集篇・再公開版](108分・35mm・白黒)

スリ稼業の少年(長谷川)が学者の世話を受けて研究者になるが、幼なじみの芸者との仲を引き裂かれ、女は男の出世を願って亡くなるという泉鏡花の悲恋物語。主人公が爆薬の研究に没頭するという設定は、いかにも戦時下の作品だと言えよう。約3時間の大作から短縮された総集篇。

’42(東宝映画)教授の娘・妙子(監)マキノ正博(原)泉鏡花(脚)小國英雄(撮)三浦光雄(美)久保一雄(音)鈴木靜一(出)長谷川一夫、山田五十鈴、古川緑波、山本禮三郎、進藤英太郎、菅井一郎、小杉義男、瀧口新太郎、山根壽子、三谷幸子、田中筆子、澤村貞子、三益愛子、村瀬幸子

18 9/12(日)11:00am 10/1(金)7:00pm

愛の世界 山猫とみの話(93分・35mm・白黒)

幼い頃に両親と別れた少女とみは、売られた曲馬団から助けられて養護院で暮らす。先生(里見)の指導にもかかわらず少女は院を脱走し、空腹のため忍び込んだ農家で幼い兄弟と出会うが、この時から少女の頑なな心が開かれる。高峰は久しぶりの主役を演じている。

’43(東宝映画)山猫と呼ばれる少女・小田切とみ(監)青柳信雄(原)佐藤春夫、坪田讓治、富澤有爲男(脚)如月敏、黒川愼(撮)伊藤武夫(美)中古智(音)鈴木靜一(出)小高つとむ、加藤博司、里見藍子、谷間小百合、田中筆子、一の宮敦子、加藤照子、高津慶子、菅井一郎、進藤英太郎、永井柳作、下田猛、清川莊司

19 9/12(日)2:00pm 10/5(火)7:00pm

阿片戰爭(115分・16mm・白黒)

中国の近代史上あまりにも有名な事件を描いたスペクタクル映画。フランス革命を背景とするD・W・グリフィス監督の大作『嵐の孤児』(1921年)を翻案したもので、妹の眼の病を治そうとする姉という設定が同じである。大スターの原節子と高峰が姉妹を演じた。

’43(東宝映画)広東の少女・麗蘭(監)マキノ正博(原)松崎啓次(脚)小國英雄(撮)小原讓治(美)久保一雄(音)服部良一(出)市川猿之助、原節子、河津清三郎、小杉義男、清川荘司、菅井一郎、進藤英太郎、淺田健三、山本礼三郎、丸山定夫、鈴木傳明、青山杉作、坂東好太郎

20 9/12(日)5:00pm 10/6(水)3:00pm

兵六夢物語(67分・35mm・白黒)

獅子文六の「将軍鮒を釣らず」と、薩摩・島津藩に残る「兵六夢物語」に取材した時代喜劇。エノケンふんする下級侍が母の期待に沿うように仕事に励むが、失敗ばかりを繰り返す。ある日怪童女(高峰)が現れて坊主にされるが、それから兵六に不思議な力が…。

’43(東宝映画)怪童女(監)青柳信雄(原)獅子文六(脚)如月敏、志村敏夫(撮)伊藤武夫(美)安倍輝明(音)栗原重一(出)榎本健一、霧立のぼる、黒川彌太郎、柳田貞一、中村是好、如月寛多、森健二、大江將夫、宏川光子、横尾泥海男

21 9/14(火)3:00pm 9/26(日)5:00pm

四つの結婚(63分・35mm・白黒・不完全)

やもめ暮らしの退職司法官には四人の娘があり、長女の夫は戦死、次女の夫は出征中とあって5人が一緒に暮らしている。応召兵と三女の結婚話が持ち上がった時、婚約者のいる四女と混同してあわてふためくものの、無事に結婚式を迎えるという戦時下のメロドラマ。

’44(東宝)四女・啓子(監)青柳信雄(原)太宰治(脚)八木隆一郎(撮)川村清衛(美)北川惠笥(音)服部正(出)入江たか子、山田五十鈴、山根寿子、河野秋武、清川荘司、江川宇礼雄

22 9/14(火)7:00pm 10/2(土)11:00am

明日を創る人々(83分・35mm・白黒)

終戦後、東宝社内でも激しい争議の続く中、製鋼会社と映画撮影所の労働運動をテーマに企画された一篇。高峰はそのままの役名で出演している。従業員組合の指導のもと3人の監督により演出されたが、生前の黒澤明は、自分の映画とは認められないと自作リストから抹消していた。

’46(東宝)高峰(監)(脚)山本嘉次郎(監)黒澤明、関川秀雄(脚)山形雄策(撮)三浦光雄、伊藤武夫、完倉泰一(美)北猛夫、北川惠司(音)伊藤昇(出)藤田進、薄田研二、森雅之、竹久千惠子、志村喬、鳥羽陽之助、清水將夫、北澤彪、浅田健三、千葉一郎、椿澄枝、谷間小百合、三谷幸子、河野糸平、中北千枝子、浜田百合子

23 9/15(水)3:00pm 9/26(日)2:00pm

或る夜の殿様(112分・35mm・白黒)

明治19年。欲に目のくらんだ人間たちが箱根の旅館に集まり、逓信大臣(大河内)を相手に、鉄道敷設の利権で一儲けをたくらむ。占領軍にチャンバラ映画が禁止され、大河内は明治人の役を余儀なくされたが、代わりに、成金の娘を演じた高峰の華やかなドレス姿が見られる。

’46(東宝)越後屋の娘・妙子(監)衣笠貞之助(脚)小國英雄(撮)河崎喜久三(美)久保一雄(音)鈴木靜一(出)長谷川一夫、藤田進、大河内傳次郎、山田五十鈴、飯田蝶子、吉川満子、志村喬、菅井一郎、清川莊司、進藤英太郎、清水將夫、北澤彪、清川玉枝、花岡菊子

24 9/15(水)7:00pm 10/2(土)2:00pm

大江戸の鬼(99分・35mm・白黒)

高峰は、東宝の大争議の中で社を脱退したスター俳優のグループ「十人の旗の会」に参加した。本作はその旗揚げに続いて新会社・新東宝で作られた犯罪時代劇で、10人のうち、他にも大河内・長谷川・黒川と3人のメンバーが出演し、スターの饗宴を印象づけている。

’47(新東宝映画)おなつ(監)萩原遼(脚)三村伸太郎(撮)安本淳(美)島康平(音)鈴木靜一(出)大河内傳次郎、長谷川一夫、黒川弥太郎、上山草人、汐見洋、田中春男、鬼頭善一郎、清川莊司、宮川五十鈴、勢実乗、伊藤雄之助

25 9/18(土)11:00am

花ひらく 眞知子より(88分・35mm・白黒)

自立した新しい女性像を模索した野上彌生子の小説「眞知子」をもとに、メロドラマ色も加味した市川崑監督の実質的なデビュー作。高峰は、学生運動の活動家(上原)に惹きつけられ、やがて裏切られる名家の娘を演じている。

’48(新東宝映画)曽根眞知子(監)市川崑(原)野上彌生子(脚)八住利雄(撮)小原譲治(美)河野鷹思(音)早坂文雄(出)上原謙、藤田進、吉川満子、三村秀子、田中春男、村田知英子、水原久美子、春山葉子、伊達里子、江見渉

26 9/18(土)2:00pm

三百六十五夜[総集篇](119分・35mm・白黒)

「三百六十五夜」(古賀政男作曲)などの主題歌も流行させたメロドラマの大ヒット作で、高峰は新興成金の娘を演じている。当初は「東京篇」「大阪篇」の2部作だったが、現存するのは公開翌年に作られたこの総集篇のみである。

’48(新東宝)小牧蘭子(監)市川崑(原)小島政二郎(脚)館岡謙之助(撮)三村明(美)進藤誠吾(音)服部正(出)上原謙、山根壽子、大日方傳、堀雄二、田中春男、鳥羽陽之助、清川荘司、河村黎吉、三村秀子、吉川満子、一の宮あつ子、葉村みき子、二葉あき子、江見渉、三原純

27 9/16(木)3:00pm 10/2(土)5:00pm

虹を抱く処女(87分・35mm・白黒)

作曲家・早坂文雄の交響曲「虹」の完成を機会に、それを主題として企画された一本。結核を患う貧しい作曲家(上原)を一途に慕い、献身的に世話をしている看護婦(高峰)のもとへ、ある日求婚者が現れる。本作発表の7年後、早坂もまた結核で逝去している。

’48(新東宝)看護婦・北条あき子(監)佐伯清(脚)八田尚之(撮)小原譲治(美)松山崇(音)早坂文雄(出)上原謙、若原雅夫、宇野重吉、田中春男、水原久美子、落合富子、三村秀子、香山みち子

28 9/16(木)7:00pm 10/3(日)11:00am

春の戯れ(109分・35mm・白黒)

マルセル・パニョルの戯曲「マリウス」を翻案し、南フランスの港を明治の東京品川に置き換えた名匠・山本嘉次郎の一篇。高峰は、外国への航海にあこがれる正吉(宇野)に思いを寄せる幼なじみの娘を好演したが、監督は二人にあえて大げさな新劇調の演技を求めたという。

’49(映画芸術協会=新東宝)お花(監)(脚)山本嘉次郎(撮)山崎一雄(美)松山崇(音)早坂文雄(出)徳川夢声、宇野重吉、飯田蝶子、三島雅夫、鳥羽陽之助、一の宮あつ子

29 9/17(金)3:00pm 10/3(日)2:00pm

グッドバイ(女性操縦法)[改題短縮版](69分・35mm・白黒)

まだまだ長い展開を予想させながら未完に終わった太宰治の遺作を、小国英雄が大胆にも一本のシナリオに書き上げた作品。だらしないプレイボーイの雑誌編集者と東北弁のヤミ屋の女を演じる森・高峰コンビを、後の『浮雲』の二人と対照させるのも面白い。

’49(新東宝)かつぎ屋・永井きぬ子(監)島耕二(原)太宰治(脚)小国英雄(撮)三村明(美)下河原友雄(音)鈴木静一(出)森雅之、若原雅夫、清川玉枝、江川宇礼雄、高田稔、霧立のぼる、三村秀子、藤間紫、一の宮あつ子、清川虹子

30 9/17(金)7:00pm 10/9(土)2:30pm

銀座カンカン娘(67分・35mm・白黒)

ヒット曲「銀座カンカン娘」をフィーチャーした戦後の風俗映画。ブギの女王・笠置シヅ子との共演となったが、高峰は撮影の合間を縫ってたびたび笠置のステージに駆けつけたという。所々に見られるギャグなどにも、かつてのP.C.L.調を思わせる明朗なトーンが認められる。

’49(新東宝)お秋(監)島耕二(脚)中田晴康、山本嘉次郎(撮)三村明(美)河野鷹思(音)服部良一(出)灰田勝彦、笠置シヅ子、古今亭志ん生、岸井明、服部早苗、浦辺粂子、山室耕、松尾文人、三村秀子、中原謙三

31 9/18(土)5:00pm 10/6(水)7:00pm

処女宝(競う美女姉妹)[改題短縮版](66分・35mm・白黒)

愛し合っていた劇作家(上原)との恋を捨て、父の遺言どおり富豪と結婚した女(高杉)。その妹(高峰)は、失意の劇作家への愛情を募らせてゆく。菊池寛を原作に仰いだメロドラマで、上映プリントはテレビ放映用に『競う美女姉妹』と改題されている。

’50(新東宝)立花真金(監)島耕二(原)菊池寛(脚)野村浩将(撮)三村明(美)河野鷹思(音)斎藤一郎(出)上原謙、山村聰、高杉早苗、汐見洋、吉川満子、宮川玲子、青山五郎、若月輝夫、水原通子、鳥羽陽之助、江戸川蘭子、清川玉枝

32 9/19(日)11:00am 10/7(木)3:00pm

細雪(141分・35mm・白黒)

兵庫・芦屋の旧家に暮らす四人姉妹の人生模様をあでやかに綴った谷崎潤一郎作品の初の映画化。高峰は行動的なモダンガールの末娘“こいさん”に扮し、踊りは地唄舞の第一人者・武原はんの指導を仰いだという。谷崎は高峰のファンで、その交流は終生続いた。

’50(新東宝)蒔岡家の四女・妙子(監)阿部豊(原)谷崎潤一郎(脚)八住利雄(撮)山中進(美)進藤誠吾(音)早坂文雄(出)花井蘭子、轟夕起子、山根壽子、伊志井寛、河津清三郎、田中春男、田崎潤、藤田進、堀雄二、鳥羽陽之助、香川京子

33 9/19(日)2:00pm 10/8(金)3:00pm

女の水鏡(90分・35mm・白黒)

舟橋聖一の風俗小説を基にした、1951年の正月映画。ここでの高峰は、検察の追及を逃れようとする父(柳)のために検事(佐分利)の買収役を買って出る社長令嬢を演じている。この時期に新東宝を離れてフリーランスになり、松竹作品にも復帰している。

’51(松竹大船)社長令嬢・皆本苗子(監)原研吉(原)舟橋聖一(脚)斎藤良輔、鈴木兵吾(撮)森田俊保(美)河野鷹思(音)加藤光男(出)柳永二郎、佐分利信、佐野周二、奈良真養、津島恵子、市川春代、東山千栄子、細川俊夫、増田順三、山田英子

34 9/19(日)5:00pm 10/7(木)7:00pm

我が家は樂し(91分・35mm・白黒)

会社勤続25年の報奨金を、帰り道にスリにすられてしまった一家の父親(笠)。そこへ次々と悲しい出来事が重なるが…。大船撮影所の伝統のホームドラマで、高峰は絵画を学んでいる長女を演じたが、その妹に扮したのは本作がデビューとなる岸恵子である。

’51(松竹大船)植村家の長女・朋子(監)中村登(原)(脚)田中澄江(脚)柳井隆雄(撮)厚田雄春(美)熊谷正雄(音)黛敏郎(出)笠智衆、山田五十鈴、佐田啓二、櫻むつ子、堂國典、楠田薫、青山杉作、増田順二、水上令子、奈良眞養、南進一郎、岸惠子

35 9/21(火)3:00pm 10/10(日)5:00pm

カルメン故郷に帰る(86分・35mm・カラー)

高峰は、記念すべき日本初の長篇カラー映画のヒロインに選ばれた。脚本は木下監督が彼女のために書き下ろしたもので、里帰りした芸術家気取りのストリッパーが騒ぎを巻き起こす田園喜劇。撮影は大量の照明に毛髪が焼けるほどだったというが、コメディエンヌとしての彼女はここで見出された。

’51(松竹大船)リリイ・カルメン(監)(脚)木下惠介(撮)楠田浩之(美)小島基司、平高主計(音)木下忠司、黛敏郎(出)佐野周二、笠智衆、井川邦子、坂本武、見明凡太郎、堂國典、小林トシ子、三井弘次、望月美惠子(優子)、山路義人、磯野秋雄、桑原澄江

36 9/21(火)7:00pm 10/10(日)2:00pm

朝の波紋(103分・35mm・白黒)

フランス行からの復帰第1作で、貿易会社に勤める敏腕秘書(高峰)とライバル会社の青年(池部)との交流を爽やかに描く。冒頭から流暢な英語を話すなど、高峰のきびきびした演技が心地よい。撮影中の高峰は相手役よりも、見学に来た原作者・高見順の美男子ぶりに魅了されたという。

’52(スタジオエイトプロ)秘書・瀧本篤子(監)五所平之助(原)見順(脚)館岡謙之助(撮)三浦光雄(美)進藤誠吾(音)齊藤一郎(出)池部良、上原謙、岡田英次、香川京子、三宅邦子、沼田曜一、澤村契惠子、高田稔、滝花久子、吉川満子、浦邊粂子、岡本克政、田中春男、中村是好、清水将夫、汐見洋、大川平八郎、齊藤達雄、信欣三

37 9/22(水)3:00pm 10/9(土)5:00pm

東京のえくぼ(88分・35mm・白黒)

入社試験への道すがら財布をすられた伸子(丹阿弥)は、捕えたスリを警察に突き出すと、立ち会いの警官は友達の京子(高峰)だった。そして驚いたことに、そのスリの正体は…。後の「社長」シリーズで知られる松林宗恵監督のデビュー作となった、都会的な風俗映画。

’52(新東宝)婦人警官・峯京子(監)松林宗恵(脚)小国英雄(撮)小原譲治(美)進藤誠吾(音)服部良一(出)上原謙、丹阿弥谷津子、柳家金語楼、清川虹子、古川緑波、小林桂樹、小倉繁、田中春男、江川宇礼雄

38 9/3(金)7:00pm 10/3(日)5:00pm

稲妻(87分・35mm・白黒)

四人の子がいずれも父親の違う複雑な家庭。その末娘として生まれたバスガイドの清子(高峰)は、家族付き合いの煩わしさに嫌気がさし、自己を見つめ始める。生きることの寂寥感が胸に迫る成瀬巳喜男の演出が絶品。高峰にとって初めての大映作品である。

’52(大映東京)小森清子(監)成瀬巳喜男(原)林芙美子(脚)田中澄江(撮)峰重義(美)仲美喜雄(音)齊藤一郎(出)三浦光子、香川京子、村田知英子、根上淳、小澤榮、浦辺粂子、中北千枝子、瀧花久子、植村謙三郎、杉丘毬子、丸山修、高品格、伊達正

39 9/22(水)7:00pm 10/10(日)11:00am

カルメン純情す(103分・35mm・白黒)

ストリッパーのカルメン(高峰)が怪しげな自称・前衛画家(若原)に惚れてしまうというコメディであるが、『カルメン故郷に帰る』とはタッチが大きく異なり、木下監督による時節への痛烈な批判精神が見える。純真無垢で愛らしいこのキャラクターも、残念ながら本作で終わった。

’52(松竹大船)カルメン(監)(脚)木下惠介(撮)楠田浩之(美)浜田辰雄(音)黛敏郎、木下忠司(出)若原雅夫、淡島千景、小林トシ子、三好榮子、東山千榮子、村瀬幸子、坂本武、日守新一、斎藤達雄、堺駿二、望月優子、多々良純、増田順二、須賀不二夫、高松榮子、北原三枝、高瀬乘二

40 9/23(木・祝)11:00am 10/8(金)7:00pm

明日はどっちだ(97分・35mm・白黒)

野球場での毒殺事件をめぐって展開される犯罪映画で、後に市川崑や今村昌平作品のシナリオライターとしても活躍する長谷部慶治の監督作。高峰は、犯人探しの鍵となる待合の芸妓を演じている。また「演出補導」として五所平之助の名もクレジットされている。

’53(新東宝=スタジオエイトプロ)芸妓・光奴(監)長谷部慶治(原)永井龍男(脚)長谷川公之(撮)鈴木博(美)伊藤寿一(音)原六朗(出)舟橋元、三井弘次、柳永二郎、香川京子、島崎雪子、宇野重吉、池部良、和田孝、潮万太郎、小倉繁

41 9/3(金)3:00pm 10/9(土)11:00am

二十四の瞳(155分・35mm・白黒)

瀬戸内海・小豆島の分校に赴任してきた若い先生と12人の教え子との交流を、戦争という時の推移のうちに描き出し、高峰のまた一つのイメージを築き上げた日本の“国民的映画”。この年は、『女の園』とともに、木下・高峰コンビがベストテンの1位と2位を占めた。

’54(松竹大船)教師・大石久子(監)(脚)木下惠介(原)壺井栄(撮)楠田浩之(美)中村公彦(音)木下忠司(出)月丘夢路、小林トシ子、井川邦子、田村高廣、笠智衆、夏川静江、浦辺粂子、清川虹子、浪花千栄子、明石潮、天本英世、高原駿雄、南眞由美