東京国立近代美術館 フィルムセンター

大ホール上映作品

日本映画の発見VII:1970年代(2)

Rediscovering Our National Film Heritage (VII): 1970s - Part 2

 >>>上映スケジュール

フィルムセンターの長期上映企画である「日本映画の発見」は、1910年代の無声映画期から始まり、映画史上に残る名作、話題作、異色作、大ヒット作品など日本映画のもつ豊かでバラエテイに富んだ世界を順次おいながら、今回で第VII期に入り、1970年代にたどりつきました。そして、この1970年代において、日本映画はそれまで経験したことのない困難な状況に直面してゆきます。映画が娯楽産業の中心=王者の位置から滑り落ち、予想の範囲を越えた事態が進行していったからです。これを数字でみてみますと、1970年の映画館入場者数はおよそ2億5,480万人、1980年は1億6,422万人。同じ年で比較すると、映画館数は、3,246館が2,364館へと減じています。

そのような状況の変化が、大手の映画会社に及ぼした影響は深刻でした。1971年末、まず、1942年に設立され、数々の名作を世に問うた名門の大映が倒産します。また1954年に製作事業を再開した「戦後日活」は、1971年、一般映画から成人映画、いわゆる「日活ロマンポルノ」へ路線を転換しました。性表現を伴った新しいジャンルのなかで、活力ある状態が形成されてゆきます。

東映は1960年代半ば以降任侠映画をヒットさせ、従来どおりプログラム・ピクチャーを量産していました。が、この時期に、より現代的でリアルな暴力描写に比重をおいた「実録もの」に中心路線を変更します。老舗の松竹は涙と笑いを基調とする伝統的な製作方針を維持しつつも、倒産や路線変更で所属撮影所を離れたスターやスタッフを起用して新しい「松竹カラー」を模索してゆきます。

経営的な視点で激しい変動期に対処したのが東宝でした。製作体制の合理化をはかり、東宝美術、東宝映画など子会社を設立したのは、やはり1971年のことです。リスクの分散をはかり、経営資源を配給・興行部門に集中させましたが、その反面として、「東宝カラー」といわれる作風の作品が姿を消していきました。また、戦前からのキャリアをもつベテラン監督たちが、最後の作品を発表するのも1970年代の特徴です。

大手製作会社とは、やや異なる地点に映画・映像製作の根拠をおいていた、1960年代半ばに起点をもつ一連の独立プロ作品や自主上映を中心とした個人映画は、それぞれの作家の個性に基づいて独自の世界を深めてゆきました。

10月27日まで2期・118日間にわたって続く本特集は、上記のような映画状況のなか、撮影所の内外の変貌にさらされながら作られた78作品に光を当てます。今回の第2期では1974年から80年までに製作された多彩な44作品を上映いたします。


■監=監督 原=原作・原案 脚=脚本・脚色 撮=撮影 美=美術 音=音楽 出=出演
■本特集には不完全なプリントが含まれています。
■記載した上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。

A-1 8/13(火)3:00pm 9/8(日)1:00pm 10/4(金)7:00pm

竜馬暗殺(118分・35mm・白黒)

激動の幕末を純粋に無軌道に疾走した若者たちの姿を、坂本竜馬が暗殺されるまでの最後の3日間に描きこんだ黒木和雄監督の群像時代劇。竜馬役の原田芳雄をはじめ若い俳優たちの活きがよく、記録映画を思わせるような迫真力を見せた田村正毅の白黒撮影も印象的。キネマ旬報ベストテン第5位。

'74(映画同人社=ATG)(監)黒木和雄(脚)清水邦夫、田辺泰志(撮)田村正毅(美)山下宏(音)松村禎三(出)原田芳雄、石橋蓮司、中川梨絵、松田優作、桃井かおり、田村亮、山谷初男、田中筆子、川村真樹、田中春男、天坊準、野呂圭介、粟津號、秋元健、石井尢宜一、外波山文明、伴勇太郎

A-2 8/13(火)7:00pm 9/7(土)4:00pm 10/3(木)3:00pm

激突!殺人拳(91分・35mm・カラー)

ブルース・リー人気で火のついたカンフー映画ブームを、即座に日本流武道アクション映画に置き換えた千葉真一主演の東映「空手」シリーズ第1作で、この後、千葉は香港ほかでも広く人気を得た。志穂美悦子もこの作品で注目を浴び、女性アクション・スターの先駆けとなっていった。

'74(東映京都)(監)小沢茂弘(脚)高田宏治、鳥居元宏(撮)堀越堅二(美)鈴木孝俊(音)津島利章(出)千葉真一、山田吾一、中島ゆたか、トニー・セテラ、遠藤太津朗、石橋雅史、千葉治郎、志穂美悦子、鈴木正文、川田伸旺、風間健、角友司郎、ユセフ・オスマン、風間千代子、汐路章、大前均、天津敏、渡辺文雄、川谷拓三

A-3 8/14(水)3:00pm 9/8(日)4:00pm 10/3(木)7:00pm

三婆(101分・35mm・カラー)

会社社長が妾宅で急死したことから、その未亡人と妾が遺産争いをしているところへさらに社長の妹が転がり込んで、三つ巴の駆け引きが繰り広げられる。この三人を演じるのが田中、三益、木暮という大女優たち。その芸達者ぶりを遺憾なく発揮して圧倒的な印象を与える。

'74(東京映画)(監)中村登(原)有吉佐和子(脚)井手俊郎(撮)村井博(美)阿久根巌(音)山本直純(出)田中絹代、三益愛子、木暮実千代、有島一郎、小鹿ミキ、長沢純、吉田日出子、名古屋章、村田正雄、佐藤正文、条文子、目黒幸子、谷川修

A-4 8/14(水)7:00pm 9/7(土)1:00pm 10/4(金)3:00pm

(92分・35mm・カラー)

同棲先からひょっこり戻ってきた妹を、戸惑いながらも温かく迎え、恋人のように振る舞う兄。ロマンポルノ時代の日活にあって青春映画で気を吐いた藤田敏八監督の、「赤ちょうちん」に続く秋吉久美子主演作。時代のやるせない雰囲気を体現する、どこか捉えどころのない秋吉の妹役が印象的。

'74(日活)(監)藤田敏八(脚)内田栄一(撮)萩原憲治(美)横尾嘉良(音)木田高介(出)秋吉久美子、林隆三、横山道代、吉田日出子、藤田弓子、片桐夕子、野村武範、伊丹十三、吉田由貴子、沢田みゆき、ひし美ゆり子、久松夕子、榎木兵衛、野村隆、高橋明、雪丘恵介、玉井謙介、桂小かん

A-5 8/15(木)3:00pm 9/11(水)7:00pm 10/6(日)1:00pm

(秘)色情めす市場(83分・35mm・カラー)

大阪の裏町で春をひさぐ娘(芹明香)とその母(花柳幻舟)らの悲惨な暮らしとしぶとい生き様が、日活ロマンポルノの常識を超えた破天荒なモンタージュの中に描かれる野心作。通天閣と鶏と村田英雄の歌声といった特異なイメージと音の連関は、多くの真摯な映画観客をして田中登の豊かな才能に瞠目させた。

'74(日活)(監)田中登(脚)いどあきお(撮)安藤庄平(美)川崎軍二(音)樋口康夫(出)芹明香、花柳幻舟、夢村四郎、岡本彰、宮下順子、萩原朔美、高橋明、絵沢萌子、小泉郁之助、小林旦、庄司三郎、榎木兵衛、坂本長利、萩原実次郎

A-6 8/15(木)7:00pm 9/10(火)3:00pm 10/5(土)4:00pm

砂の器(143分・35mm・カラー)

自らの過去を消し去るため殺人に走ったピアニストと、その犯罪を粘り強く解明しようとする二人の刑事。松本清張作品を大胆に脚色した橋本忍が14年越しで実現させた、野村芳太郎監督渾身の大作推理映画で、記録的なヒットとなった。後半の、父子の放浪の旅をいろどる四季折々の風景を捉えた撮影も見所。

'74(松竹=橋本プロ)(監)野村芳太郎(原)松本清張(脚)橋本忍、山田洋次(撮)川又昂(美)森田郷平(音)芥川也寸志(出)丹波哲郎、加藤剛、森田健作、島田陽子、山口果林、加藤嘉、佐分利信、緒形拳、渥美清、春田和秀、笠智衆、夏純子、松山省三、内藤武敏、春川ますみ、稲葉義男、花沢徳衛

A-7 8/16(金)3:00pm 9/10(火)7:00pm 10/6(日)4:00pm

サンダカン八番娼館 望郷(121分・35mm・カラー)

貧しさゆえに東南アジアに身売りされ、娼婦として生きなければならない女性の存在は、戦前から「からゆきさん」として知られていた。その存在を新たな視点で描いたベストセラー・ノンフィクションの映画化。晩年の主人公を演じた大女優田中絹代の熱演は、ベルリン映画祭の主演女優賞をもたらした。

'74(東宝=俳優座映画放送)(監)(脚)熊井啓(原)山崎朋子(脚)廣澤榮(撮)金宇満司(美)木村威夫(音)伊福部昭(出)田中絹代、栗原小巻、高橋洋子、田中健、水の江瀧子、小沢栄太郎、浜田光夫、砂塚秀夫、中谷一郎、信欣三、梅野泰靖、山谷初男、江幡高志、淺若芳太郎、平田守、清水幹生

A-8 8/16(金)7:00pm 9/11(水)3:00pm 10/5(土)1:00pm

沖田総司(92分・35mm・カラー)

新選組の猛者の中でも一際腕のたつ美剣士、沖田総司。肺病に冒され苛酷な時代に翻弄されながら、25歳の生涯を閉じた青年の一瞬の輝きを描いた青春時代劇の秀作。青年の純粋さゆえの悩みと恋を中心に描いた脚本を、出目監督は初々しい明るさで演出し、ハーフで長身の新人草刈正雄が夭逝した青年像を好演。

'74(東宝映画)(監)出目昌伸(脚)大野靖子(撮)原一民(美)阿久根巌(音)真鍋理一郎(出)草刈正雄、高橋幸治、米倉斉加年、河原崎次郎、大木正司、西田敏行、朝比奈尚行、辻萬長、真野響子、右京ちあき、池波志乃、小松方正、浦山桐郎、荒木一郎、神山繁、広瀬正一、堀江信介、殿山泰司

A-9 8/17(土)1:00pm 9/13(金)7:00pm 10/9(水)3:00pm

伊豆の踊子(82分・35mm・カラー)

あまりにも有名な川端文学の原作は、時代ごとのアイドルがヒロインを演じることでも知られており、田中絹代、美空ひばり、鰐淵晴子、吉永小百合、内藤洋子、そしてこの作品では山口百恵が主演、彼女が三浦友和と出会った作品でもある。無名時代の人気歌手石川さゆりが百恵の幼馴染み役で出演。

'74(ホリ企画制作)(監)西河克己(原)川端康成(脚)若杉光夫(撮)萩原憲治(美)佐谷晃能(音)高田弘(出)山口百恵、三浦友和、一の宮あつ子、中山仁、佐藤友美、四方正美、千家和也、浦辺条子、宗方奈美、有崎由美子、石川さゆり、新保克芳、鈴木ヒロミツ、三遊亭小円遊、榎木兵衛、江戸家猫八

A-10 8/17(土)4:00pm 9/12(木)7:00pm 10/8(火)3:00pm

田園に死す(101分・35mm・カラー)

寺山修司2本目の35mm映画。同名の歌集をもとに下北半島での少年時代に自伝的に言及した代表作。「二十年前の私」と「現在の私」を並べつつ、「家」の中には津軽海峡や恐山を持ち込み「田園」には仏壇や鏡台を持ち出すという仕掛けや、柱時計、わらべ唄、サーカスなどのモチーフを独自の映像世界に凝縮している。

'74(人力飛行機舎=ATG)(監)(原)(脚)寺山修司(撮)鈴木達夫(美)粟津潔(音)J・A・シーザー(出)菅貫太郎、八千草薫、春川ますみ、新高恵子、高野浩幸、斉藤正治、三上寛、原泉、蘭妖子、小野正子、サルバドール・タリ、高山千草、木村功、原田芳雄、粟津潔、ミスター・ポーン、大前均

A-11 8/18(日)4:00pm 9/12(木)3:00pm 10/9(水)7:00pm

実録 阿部定(76分・35mm・カラー)

過剰な愛ゆえに情夫を死に至らしめた有名な「阿部定事件」を、気鋭の監督田中登がほぼ完全な密室劇に構成した日活ロマンポルノ屈指の作品。「四畳半襖の裏張り」シリーズ以来の名コンビである宮下順子と江角英明が、血文字で書かれた「定、吉二人キリ」の濃密な空間を現出させる。

'75(日活)(監)田中登(脚)いどあきお(撮)森勝(美)川崎軍二(音)坂田晃一(出)宮下順子、江角英明、坂本長利、橘田良江、千早蘭、大谷木洋子、水木京一、五條博、小泉郁之助、久松洪介、庄司三郎、花柳幻舟

A-12 8/18(日)0:00pm 9/13(金)3:00pm 10/8(火)6:30pm

青春の門(189分・35mm・カラー)

筑豊炭田で育った一人の少年の成長過程を中心に、大正から昭和にまたがる日本人の群像を描いた五木寛之の大河小説(第一部 筑豊篇)を映画化。当初日活でスタートした企画が5年をかけて東宝で実現し、大ヒットを記録。浦山桐郎監督にとっても5年ぶりの新作となり、新人・大竹しのぶの登場が注目を集めた。

'75(東宝映画)(監)(脚)浦山桐郎(原)五木寛之(脚)早坂暁(撮)村井博(美)村木与四郎(音)真鍋理一郎(出)田中健、田鍋友啓、松田剣、浦山春彦、仲代達矢、吉永小百合、大竹しのぶ、山崎理絵、小林トシエ、小林旭、辻萬長、藤田進、河原崎長一郎、井川比佐志、関根恵子、小沢昭一、加藤武、藤岡重慶

A-13 8/20(火)3:00pm 9/15(日・祝)1:00pm 10/11(金)7:00pm

吶喊(93分・35mm・カラー)

岡本監督自らが「やらずもがなの戦争」と呼ぶ、幕末の戊辰戦争に巻き込まれた若者たちをコミカルに活写した喜八プロ第1回作品。「庶民の、それも若者のエネルギーをニュースの映画のように生き生きと追っかけたい」と語る監督は、撮影界の新鋭木村大作に全篇手持ちキャメラによる撮影を指示した。

'75(喜八プロ=ATG)(監)(脚)岡本喜八(撮)木村大作(美)植田寛(音)佐藤勝(出)伊藤敏孝、岡田裕介、高橋悦史、伊佐山ひろ子、千波恵美子、坂本九、岩崎智江、今福正雄、伊吹新、小川安三、長谷川弘、天本英世、堺左千夫、村松克己、樋浦勉、小野寺昭、岸田森、大木正司、田中邦衛、仲代達矢

A-14 8/20(火)7:00pm 9/14(土)4:00pm 10/10(木)3:00pm

ある映画監督の生涯 私家版(150分・35mm・カラー)

新藤監督がかつて師事した溝口健二監督の創作の秘密に迫った、監督が監督の記録映画を作るという珍しい形式の作品。溝口と仕事を共にした39名の映画人にインタビューする形式で描かれている。出来栄えの素晴らしさは言うまでもないが、いまやほとんどが物故者となった映画人の貴重な記録映像でもある。

'75(近代映画協会)(監)新藤兼人(撮)三宅義行(出)入江たか子、永田雅一、山田五十鈴、三木茂、牛原虚彦、京マチ子、伊藤大輔、宮川一夫、増村保造、絲屋寿雄、香川京子、木暮実千代、山路ふみ子、津村秀夫、岡本健一、坂根田鶴子、乙羽信子、中村鴈治郎、進藤英太郎、小沢栄太郎

A-15 8/21(水)3:00pm 9/15(日・祝)4:00pm 10/10(木)7:00pm

昭和枯れすすき(87分・35mm・カラー)

上京して刑事となった原田は、妹典子が巻き込まれた殺人事件を担当するが…。60年代日活ヒーローの一人高橋秀樹と、日活=藤田敏八作品で人気を得た秋吉久美子とが、野村芳太郎監督のもと、都会に暮らす孤独な兄妹を演じる松竹映画。秋吉は、どの映画にあっても70年代をなにがしか体現するヒロインであった。

'75(松竹)(監)野村芳太郎(原)結城昌治(脚)新藤兼人(撮)川又昂(美)森田郷平(音)菅野光亮(出)高橋英樹、秋吉久美子、鈴木瑞穂、伊佐山ひろ子、池波志乃、松橋登、下條アトム、稲葉義男、浜田寅彦、山谷初男、穂積隆信、長島隆一

A-16 8/21(水)7:00pm 9/14(土)0:00pm 10/11(金)3:00pm

新幹線大爆破(152分・35mm・カラー)

ひかり109号に仕掛けられた爆弾をめぐる、犯人グループと捜査当局の息詰まる攻防を、「スピード」(米、1994)を先取りする卓抜なアイデアと緻密なシナリオで描いた和製パニック映画の傑作。とくに海外への輸出で好成績を上げ、フランスではゴーモン系17館で一斉公開されヒットを記録した。

'75(東映東京)(監)(脚)佐藤純弥(原)加藤阿礼(脚)小野竜之助(撮)飯村雅彦(美)中村修一郎(音)青山八郎(出)高倉健、千葉真一、宇津井健、山本桂、郷治、織田あきら、竜雷太、丹波哲郎、北大路欣也、川地民夫、田中邦衛、志村喬、山内明、永井智雄、鈴木瑞穂

A-17 8/22(木)3:00pm 9/18(水)7:00pm 10/13(日)1:00pm

トラック野郎 御意見無用(98分・35mm・カラー)

“実録”ものの強面(こわもて)で名を売った菅原文太が、純情粗暴な長距離トラック運転手星桃次郎を演じてコミカルな新境地を見せたヒット作。松竹の「男はつらいよ」シリーズを意識しながら、その後、東映のいわゆる盆暮れ興行の目玉として日本各地を舞台に“マドンナ女優”を代えながら全10篇が作られた。

'75(東映東京)(監)(脚)鈴木則文(脚)沢井信一郎(撮)仲沢半次郎(美)桑名忠之(音)木下忠司(出)菅原文太、愛川欽也、中島ゆたか、湯原昌幸、春川ますみ、夏夕介、佐藤晟也、誠直也、祝直人、鈴木ヒロミツ、安岡力也、小林千枝、芹明香

A-18 8/22(木)7:00pm 9/17(火)3:00pm 10/12(土)0:00pm

金環蝕(154分・35mm・カラー)

原作は石川達三の同名小説。巨大ダム建設工事の発注に伴い巨額の政治資金が還流する。この金をめぐる政治家、財界人たちの暗闘に与党の総裁選がからみ、疑獄事件の様相を呈し始めた。甘い蜜に群がる街の金融王、業界新聞の記者、悪徳代議士などを社会派の巨匠、山本薩夫監督が骨太な演出で描きだした。

'75(大映映画)(監)山本薩夫(原)石川達三(脚)田坂啓(撮)小林節雄(美)間野重雄、今井高司(音)佐藤勝(出)仲代達矢、宇野重吉、三国連太郎、京マチ子、中村玉緒、西村晃、高橋悦史、内藤武敏、安田道代、夏純子、大塚道子、中村美代子、長谷川待子、永井智雄、峰岸徹、神山繁、山本学

A-19 8/23(金)3:00pm 9/17(火)7:00pm 10/13(日)4:00pm

さらば夏の光よ(89分・35mm・カラー)

性格は対照的ながらも仲の良い二人の少年と、ハンバーガー・ショップで働く少女が出会う。だがその三人の愛の共同体は、一つの事件から瓦解させられてゆく…。「青春映画の山根成之」の評判を決定づけた秀作であり、アイドル歌手のイメージを払拭する郷ひろみの演技も忘れがたい。

'76(松竹=バーニングプロ)(監)山根成之(原)遠藤周作(脚)ジェームス三木(撮)坂本典隆(美)森田郷平(音)梅垣達志(出)郷ひろみ、秋吉久美子、川口厚、一氏ゆかり、仲谷昇、加藤和夫、佐藤美恵子、進千賀子、愛みどり、木村元、岡崎徹、大貫一孝、島田茂、浅見小四郎、加島潤、小田草之助

A-20 8/23(金)7:00pm 9/18(水)3:00pm 10/12(土)4:00pm

狂った野獣(78分・35mm・カラー)

宝石強盗が逃亡しようと乗ったバスに、別の銀行強盗未遂犯が飛び込んでくる。そして人質となった13人の乗客も、やがてそれぞれのエゴをむき出しにして車内を混乱に陥れる。しかも運転手には心筋梗塞の持病があった…。奇妙なバスジャックの顛末を中島貞夫が切りさばいた痛快なアクション映画。

'76(東映京都)(監)(脚)中島貞夫(脚)大原清秀、関本郁夫(撮)塚越堅二(美)森田和雄(音)広瀬健次郎(出)渡瀬恒彦、星野じゅん、川谷拓三、片桐竜次、白川浩二郎、橘麻紀、荒木雅子、中川美穂子、松本泰郎、野口貴史、三浦徳子、志賀勝

A-21 8/24(土)1:00pm 9/20(金)7:00pm 10/16(水)3:00pm

青春の殺人者(115分・35mm・カラー)

今村プロや日活で助監督経験を積み、「青春の蹉跌」等の脚本で新時代の旗手としての期待を一身に集めていた長谷川和彦が、中上健次の「蛇淫」に材を採った田村孟の脚本をエネルギッシュに演出。キネマ旬報ベストテン1位ほか各賞を総なめにして衝撃的なデビューを飾った。

'76(綜映社=今村プロ=ATG)(監)長谷川和彦(原)中上健次(脚)田村孟(撮)鈴木達夫(美)木村威夫(音)ゴダイゴ(出)水谷豊、内田良平、市原悦子、原田美枝子、白川和子、江藤潤、桃井かおり、地井武男、高山千草、三戸部スエ

A-22 8/24(土)4:00pm 9/19(木)7:00pm 10/15(火)3:00pm

四年三組のはた(86分・35mm・カラー)

この時代の日活がロマンポルノに次いで重点をおいた、児童映画の4作目。学校生活の描写に定評のある宮川ひろの原作をもとに、産休のため補助教員に代わろうとする人気教師をめぐって、子供たちの葛藤と成長が表現された。テヘラン児童映画祭で作品賞等を受賞、その後海外版は東南アジアでも人気を博した。

'76(日活)(監)藤井克彦(原)宮川ひろ(脚)勝目貴久(撮)水野尾信正(美)徳田博(音)石川鷹彦(出)立石凉子、南美江、柿崎澄子、桑山正一、桶浦勉、前田昌明、八木昌子、絵沢萌子、真屋順子

A-23 8/25(日)4:00pm 9/19(木)3:00pm 10/16(水)7:00pm

悲愁物語(93分・35mm・カラー)

女子プロゴルファーの栄光と没落を追いながらも、「誰一人ゴルフそのものに興味がない」(原田芳雄)ことを隠さない異形のゴルフ映画。敵意を抱く近所の主婦たちがゴルファーの家に押しかけるシーンには、10年もの間劇場用映画から遠ざけられていた鈴木清順の実験精神の噴出を見ることもできよう。

'77(三協映画=松竹)(監)鈴木清順(原)梶原一騎(脚)大和屋竺(撮)森勝(美)菊川芳江(音)三保敬太郎、とみたいちろう(出)白木葉子、原田芳雄、岡田真澄、和田浩治、佐野周二、仲谷昇、小池朝雄、宍戸錠、野呂圭介、葦原邦子、玉川伊佐男、水野哲、片岡功、千代恵、左時江、江波杏子

A-24 8/25(日)0:00pm 9/20(金)3:00pm 10/15(火)6:30pm

八甲田山(169分・35mm・カラー)

原作は山岳小説の名手新田次郎の「八甲田山死の彷徨」。日露戦争の開戦間近、ロシア軍との戦いを想定して、二つの連隊が競うかたちで敢行される八甲田山への雪中行軍。大部隊と小部隊、対照的な編成で雪山に挑んだ青森5連隊と弘前31連隊の運命を橋本忍脚本、森谷司郎監督で描いた大作である。

'77(東宝映画=シナノ企画=橋本プロ)(監)森谷司郎(原)新田次郎(脚)橋本忍(撮)木村大作(美)阿久根巌(音)芥川也寸志(出)高倉健、北大路欣也、加山雄三、三国連太郎、丹波哲郎、藤岡琢也、栗原小巻、加賀まりこ、島田正吾、大滝秀治、小林桂樹、森田健作、秋吉久美子、浜田晃、加藤健一

A-25 8/27(火)3:00pm 9/22(日)1:00pm 10/18(金)7:00pm

HOUSE ハウス(88分・35mm・カラー)

夏休みに田舎の伯母を訪ねた7人の少女を次々と餌食にする洋館。テレビCF界の鬼才にして、個人映画作家としても注目を集めていた大林宣彦の劇場用長篇映画デビュー作。書き割り風のセットやオプチカル処理を多用したポップな映像表現が従来の日本映画にはない新しいエンターテインメントの誕生を告げた。

'77(東宝映像)(監)大林宣彦(原)大林千茱叟(脚)桂千穂(撮)阪本善尚(音)小林亜星、ミッキー吉野(出)池上季実子、大場久美子、松原愛、神保美喜、佐藤美恵子、宮子昌代、田中エリ子、尾崎紀世彦、笹沢左保、小林亜星、石上三登志、鰐淵晴子、南田洋子

A-26 8/27(火)7:00pm 9/21(土)4:00pm 10/17(木)3:00pm

新宿乱れ街 いくまで待って(82分・35mm・カラー)

舞台は細い路地に小さな酒場がひしめく新宿ゴールデン街。シナリオライターの夢を抱えながらも厳しい現実の前で苛立つ青年と彼を支えようとする女優志望の女を中心に、映画の助監督、作家志望の男、酒場の女たちの思い惑う青春の姿を哀歓とともに描く。脚本家、荒井晴彦の実質的なデビュー作。

'77(日活)(監)曽根中生(脚)荒井晴彦(撮)水野尾信正(美)徳田博(音)樋口昌之(出)山口美也子、絵沢萌子、中田彩子、日夏たより、青木真知子、あきじゅん、結城マキ、清水浩一、神田橋満、堀礼文、五條博、大矢甫、影山英俊、渡辺護

A-27 8/28(水)3:00pm 9/22(日)4:00pm 10/17(木)7:00pm

はなれ瞽女おりん(118分・35mm・カラー)

水上勉の同名原作を篠田正浩監督が映画化した秀作。男を知って旅廻りの一座を追われ、独り三味線の門付で暮らす「はなれ瞽女」となった女おりんをめぐる悲しくも美しい愛の物語。宮川一夫(撮影)、武満徹(音楽)など、日本映画の至宝ともいうべきスタッフの力が、岩下志麻、原田芳雄らの熱演を盛り立てている。

'77(表現社)(監)(脚)篠田正浩(原)水上勉(脚)長谷部慶次(撮)宮川一夫(美)栗津潔(音)武満徹(出)岩下志麻、原田芳雄、奈良岡朋子、樹木希林、西田敏行、安部徹、横山リエ、神保共子、中村恵子、宮沢亜古、嶺川貴子、原泉、桑山正一、不破万作、山谷初男、加藤嘉、浜村純、殿山泰司、小林薫

A-28 8/28(水)7:00pm 9/21(土)1:00pm 10/18(金)3:00pm

柳生一族の陰謀(130分・35mm・カラー)

徳川二代将軍秀忠の死後、その後継をめぐって幕府内部に長男家光を擁立する勢力と次男忠長を推す勢力の対立がおこった。柳生一族は老中松平伊豆守とともに家光のために朝廷への工作、暗殺、偽装襲撃など策謀をこらす。深作欣二監督初の時代劇。時代劇スター萬屋錦之介の久々の東映出演が話題を呼んだ。

'78(東映京都=東映太秦映画村)(監)(脚)深作欣二(脚)野上龍雄、松田寛夫(撮)中島徹(美)井川徳道(音)津島利章(出)萬屋錦之介、松方弘樹、西郷輝彦、山田五十鈴、千葉真一、矢吹二朗、工藤堅太郎、志穂美悦子、金子信雄、梅津栄、成田三樹夫、中村時之介、高橋悦史、芦田伸介、中原早苗、丹波哲郎、中村米吉、中村富十郎、夏八木勲

A-29 8/29(木)3:00pm 9/25(水)7:00pm 10/20(日)1:00pm

サード(102分・35mm・カラー)

播磨少年院で法務教官を務めた体験に基づく軒上泊の「九月の町」を、寺山修司が自由に脚色。高校野球の三塁手だった「サード」を中心とする4人の青春を、岩波映画出身の東陽一が、同じく記録映画畑出身の川上皓市とともにノー・ライト、オール・シンクロで瑞々しく描き出し、この年の映画賞を総なめにした。

'78(幻燈社=ATG)(監)東陽一(原)軒上泊(脚)寺山修司(撮)川上皓市(美)綾部郁郎(音)田中未知(出)永島敏行、吉田次昭、森下愛子、志方亜紀子、島倉千代子、内藤武敏、片桐夕子、峰岸徹、西塚肇、根本豊、若松武、飯塚正人、池田史比古

A-30 8/29(木)7:00pm 9/24(火)3:00pm 10/19(土)4:00pm

最も危険な遊戯(89分・35mm・カラー)

財界の大物誘拐事件が続くなか、東日電気社長、南条が誘拐された。その救出を依頼された殺し屋鳴海昌平は苦心の末、南条の居所をつきとめ潜入。激しいアクション、銃撃戦が展開する。村川透監督のクールでスタイリッシュな映像のなかで、松田優作がしなやかに躍動し新境地を披露した。

'78(東映セントラルフィルム=東映芸能ビデオ)(監)村川透(脚)永原秀一(撮)仙元誠三(美)小林正義(音)大野雄二(出)松田優作、田坂圭子、荒木一郎、内田朝雄、草野大悟、見明凡太郎、市地洋子、名和宏、入江正徳、片桐竜次、山西道広、榎木兵衛、石橋蓮司、苅屋俊介、大前均、阿藤海、団厳

A-31 8/30(金)3:00pm 9/24(火)7:00pm 10/20(日)4:00pm

曽根崎心中(112分・35mm・カラー)

義理でも人情でもない、女と男の壮烈な「意地」と「誇り」を近松物のうちに凝縮する増村後期の金字塔。梶芽衣子と宇崎竜童という異色のコンビだが、映画初主演の宇崎は増村の注文通り「強く」「あえいで」「死ぬ気で」演じて独特の存在感を示し、音楽も手がけて映画界進出の端緒とした。

'78(行動社=木村プロ=ATG)(監)(脚)増村保造(原)近松門左衛門(脚)白坂依志夫(撮)小林節雄(美)間野重雄(音)宇崎竜童(出)梶芽衣子、宇崎竜童、左幸子、井川比佐志、橋本功、灰地順、目黒幸子、加藤茂雄、伊藤正博、木村元、千葉裕子

A-32 8/30(金)7:00pm 9/25(水)3:00pm 10/19(土)1:00pm

オリオンの殺意より 情事の方程式(73分・35mm・カラー)

一方的に母を捨てた横暴な父に対する反感をつのらせる少年。その父は若く美しい後妻を迎えた。義母に愛人がいることを知った少年は、自分の日記を盗み見る義母を利用して、その愛人に父を殺させようとする。サスペンスタッチの物語のなかに少年の心理を柔らかにとらえた、根岸吉太郎監督のデビュー作。

'78(日活)(監)根岸吉太郎(原)勝目梓(脚)いどあきお(撮)森勝(美)菊川芳江(音)浅岡典史(出)山口美也子、加納省吾、戸浦六宏、亜湖、吉川哲唱、根岸明美、松風敏勝、影山英俊、高橋明、木島一郎

A-33 8/31(土)1:00pm 9/27(金)7:00pm 10/22(火)3:00pm

冬の華(121分・35mm・カラー)

一時代を画した東映仁侠映画の衰退により、大スター高倉健も新しい分野を開拓せざるを得なくなった。刑事、検察、軍人、翳りのある中年男の延長線上に、この刑務所帰りで古風なヤクザ役が連なっている。アメリカの小説「足ながおじさん」を下敷きにした物語は、一本気で耐える男の魅力を切なく描いている。

'78(東映京都)(監)降旗康男(脚)倉本聰(撮)仲沢半次郎(美)井川徳道(音)クロード・チアリ(出)高倉健、北大路欣也、池上季実子、池部良、倍賞美津子、藤田進、田中邦衛、三浦洋一、小池朝雄、夏八木勲、小林亜星、山本麟一、峰岸徹、寺田農、今井健二、天津敏

A-34 8/31(土)4:00pm 9/26(木)7:00pm 10/23(水)3:00pm

帰らざる日々(99分・35mm・カラー)

アリスのヒット曲に乗せて藤田敏八監督が描く青春映画の佳篇。若者たちが通り過ぎた“あの夏の日”の美しくも苦い思い出が、詠嘆となって胸を衝く。中岡京平の城戸賞受賞脚本「夏の栄光」の映画化で、信州飯田の高校生隆三と辰雄を演じた当時売出し中の青春スター、江藤潤と永島敏行が汗にまみれて輝く。

'78(日活)(監)(脚)藤田敏八(原)(脚)中岡京平(撮)前田米造(美)渡辺平八郎(音)アリス(出)江藤潤、永島敏行、朝丘雪路、中村敦夫、浅野真弓、竹田かほり、根岸とし江、吉行和子、中尾彬、草薙幸二郎、加山麗子、丹波義隆、小松方正

A-35 9/1(日)1:00pm 9/26(木)3:00pm 10/22(火)7:00pm

高校大パニック(94分・35mm・カラー)

北九州の名門高校がライフルを持った生徒の乱入でパニックに陥る。石井聰亙が日大芸術学部在学中に設立した狂映舎の同名8mm映画を、日活が劇場作品としてリメイク。石井聰亙は澤田幸弘と共同監督に当たり、大森一樹の「オレンジロード急行(エキスプレス)」(松竹)とともに自主映画作家の台頭を印象づけた。

'78(日活)(監)沢田幸弘(監)(原)石井聰亙(原)大家龍二(脚)神波史男(撮)山崎善弘(美)川船夏夫(音)スペース・サーカス(出)山本茂、浅野温子、遠藤薫、寺尾理恵、桑崎晃男、内田憲一、門間一浩、杉崎和彦、斉藤夕美、小早川晶子、斉藤建夫

A-36 9/1(日)4:00pm 9/27(金)3:00pm 10/23(水)7:00pm

博多っ子純情(94分・35mm・カラー)

長谷川法世の同名ヒット漫画を石森史郎=曽根中生のコンビで映画化した秀作。恋や喧嘩を通して次第に成長していく博多の中学生たちの思春期を痛快に描いて、「アメリカン・グラフィティ」の“日本版純情篇”ともいうべき作品となった。光石研の主演デビュー、松本ちえこ初のヒロイン役という点でも注目。

'78(エル・アイ・エル)(監)曽根中生(原)(脚)長谷川法世(脚)石森史郎(撮)森勝(美)斉藤嘉男(音)服部克久(出)光石研、小屋町英浩、横山司、松本ちえこ、立花美英、赤木良次、小池朝雄、春川ますみ、上月左知子、田崎潤、伊佐山ひろ子、本間進、長谷川法世、佐藤蛾次郎、桂米丸、園佳也子、児島美ゆき、渡辺とく子

A-37 9/3(火)3:00pm 9/29(日)1:00pm 10/25(金)7:00pm

復讐するは我にあり(140分・35mm・カラー)

実際にあった連続殺人事件に基づく直木賞作品の映画化。劇映画としては「神々の深き欲望」以来10年ぶりとなる今村作品で、特異な事件が猟奇的な表現に堕することを避けつつ、深くて重い贖罪意識を描いている。いずれ劣らぬ芸達者の熱演の中で、喜劇女優清川虹子の怪演が大いに注目された。

'79(松竹=今村プロ)(監)今村昌平(原)佐木隆三(脚)馬場当(撮)姫田真左久(美)佐谷晃能(音)池辺晋一郎(出)緒形拳、三国連太郎、ミヤコ蝶々、倍賞美津子、小川真由美、清川虹子、殿山泰司、垂水悟郎、絵沢萌子、白川和子、浜田寅彦、フランキー堺、北村和夫、火野正平、佐木隆三、梅津栄

A-38 9/3(火)7:00pm 9/28(土)4:00pm 10/24(木)3:00pm

太陽を盗んだ男(147分・35mm・カラー)

当初「笑う原爆」と題された長谷川和彦の第2作目は、さえない理科教師(沢田研二)が原爆を手作りして「国家」に挑戦する破天荒な物語。飄然としたユーモアとニヒリズムが同居する中、放射能障害で頭髪が抜ける描写などには広島出身の出自の重さも垣間見える。

'79(キティ・フィルム)(監)(脚)長谷川和彦(原)(脚)レナード・シュレイダー(撮)鈴木達夫(美)横尾嘉良(音)井上堯之(出)沢田研二、菅原文太、池上季実子、北村和夫、神山繁、佐藤慶、伊藤雄之助、風間杜夫、水谷豊、西田敏行、小松方正、汐路章、森大河、江角英明

A-39 9/4(水)3:00pm 9/29(日)4:00pm 10/24(木)7:00pm

遠い明日(95分・35mm・カラー)

ロマンポルノの監督が日活を離れて一般映画を手がける傾向においても神代辰巳は先駆的であったが、本作は過去の犯罪の謎へと溯るミステリー仕立ての異色作。三浦友和と若山富三郎に宮下順子が絡む構成は70年代の混濁した映画状況を反映している。

'79(東宝映画)(監)神代辰巳(原)A・J・クローニン(脚)馬場当(撮)原一民(美)樋口幸男(音)クニ河内(出)三浦友和、いしだあゆみ、若山富三郎、地井武男、宮下順子、金子信雄、神山繁、殿山泰司、森川正太、佐藤蛾次郎、木村理恵、石橋蓮司、浜村純、小松方正、守田学哉、和沢昌治

A-40 9/4(水)7:00pm 9/28(土)1:00pm 10/25(金)3:00pm

Keiko(117分・35mm・カラー)

名前通り、ごく普通のどこにでもいる日本の独身OL“ケイコ”の日常をドキュメンタリー的手法で綴った劇映画。カナダ人監督クロード・ガニオンによって、いわば“外から教えられた”この映画の新鮮なスタイルとリアルな描写は、当時の日本映画界の一部に静かな衝撃を与えた。きたむらあきこの演技も必見。

'79(ヨシムラ・ガニオン・プロ)(監)(脚)クロード・ガニオン(撮)アンドレ・ペルチエ(美)橋本敏夫(音)深町純(出)若芝順子、きたむらあきこ、池内琢磨、橋本敏夫、中西宣夫、中野隆

A-41 9/5(木)3:00pm 10/2(水)7:00pm 10/27(日)1:00pm

十九歳の地図(109分・35mm・カラー)

新聞配達をしながら予備校に通う少年の日々。配達先でのトラブルや同僚の怠惰な中年男、街の娼婦など社会の底辺で生きる人々のなかで鬱屈していくやり場のない怒りを、少年は脅迫電話をかけることで晴らそうとする。中上健次の原作小説をもとにドキュメンタリー出身の柳町光男が初めて監督した長篇劇映画。

'79(プロダクション群狼)(監)(脚)柳町光男(原)中上健次(撮)榊原勝己(美)平賀俊一(音)板橋文夫(出)本間優二、沖山秀子、蟹江敬三、原知佐子、山谷初男、白川和子、津山登志子、竹田かほり、中島葵、松山照夫、柳家小里ん、西塚肇、うみす竜、川島めぐ、友部正人

A-42 9/5(木)7:00pm 10/1(火)3:00pm 10/26(土)4:00pm

神様のくれた赤ん坊(91分・35mm・カラー)

井伏鱒二原作、中村登監督のヒット作「集金旅行」(1958)のリメイク。ヒロイン(桃井かおり)の内面描写で物語に奥行きを持たせた反面、前田喜劇特有の過激な批評性は影をひそめたが、「男はつらいよ 寅次郎春の夢」と併映の小品でありながら高い評価を得て前田陽一の代表作となった。

'79(松竹)(監)(脚)前田陽一(脚)南部英夫、荒井晴彦(撮)坂本典隆(美)森田郷平(音)田辺信一(出)桃井かおり、渡瀬恒彦、河原崎長一郎、吉幾三、樹木希林、曽我廼家明蝶、嵐寛寿郎、吉行和子、泉谷しげる、森本レオ、小松政夫、小島三児、正司歌江、小林トシ江、楠木トシエ、天草四郎、日野道郎

A-43 9/6(金)3:00pm 10/1(火)7:00pm 10/27(日)4:00pm

翔んだカップル(106分・35mm・カラー)

「太陽を盗んだ男」の助監督を務めた直後の相米慎二が、無垢とも奔放ともつかない不思議な高校生の生態を描いたデビュー作。薬師丸ひろ子と石原真理子がはにかんだ表情でもぐら叩きを続ける長廻しの場面は得体の知れない衝撃を呼び、80年代の幕開けを印象づけた。

'80(キティ・フィルム)(監)相米慎二(原)柳沢きみお(脚)丸山昇一(撮)水野尾信正(美)徳田博(音)小林泉美(出)鶴見辰吾、薬師丸ひろ子、尾美としのり、石原真理子、円広志、西田浩、吉見秀幸、酒井康明、斉藤建夫、岡竜也、長谷川純代、石川ルミ、三谷昇、H2O、真田広之、原田美枝子

A-44 9/6(金)7:00pm 10/2(水)3:00pm 10/26(土)1:00pm

ヒポクラテスたち(126分・35mm・カラー)

臨床実習に取り組む医学生たちの日常と悩みをみずみずしく描いた青春群像劇。自らも医学を学んだ大森一樹は、自主映画出身らしい遊び心を随所に散りばめつつ、学生たちが生きたそれぞれの時間を高い鮮度で表現し、新世代の登場を告げた。手塚治虫や鈴木清順など、豪華な脇役陣にも注目。

'80(シネマハウト=ATG)(監)(脚)大森一樹(撮)堀田泰寛(美)大谷和正(音)千野秀一(出)古尾谷雅人、伊藤蘭、光田昌弘、狩場勉、柄本明、西塚肇、真喜志きさ子、小倉一郎、阿藤海、内藤剛志、金子吉延、斉藤洋介、加納省吾、宮崎雄吾、牟田悌三、草薙幸二郎

東京国立近代美術館フィルムセンター
National Film Center
The National Museum of Modern Art, TokyoFC外観