東京国立近代美術館 フィルムセンター

大ホール上映作品

日本映画の発見VI:1960年代(2)

Rediscovering Our National Film Heritage (VI): 1960s - Part 2

上映スケジュール

 1996年に始まったフィルムセンターの長期上映企画「日本映画の発見」は、日本の映画遺産をその無声期から現在まで辿り見直そうとするものとして、これまですでに250本あまりの作品を上映し好評を得てきましたが、今年はその第VI期に入り、1960年代の映画を特集します。

 1960年代はわが国が高度経済成長を遂げ、戦後の経済復興を確実なものとした時代ですが、映画産業にとってはまさに劇的な凋落を体験する時代でもありました。新東宝の撤退と日本アート・シアター・ギルドの発足(共に1961年)から旧・大映の製作中止(1971年)までにほぼ重なるその10年の間に、全国の映画館数は7000館超から3000館台へと落ち込み、年間延べ入場者数も10億人超から4分の1の2億5000万人台へと激減し、映画は「娯楽の王者」の座を失います。

 そうした変化に見合う製作本数の激減がなかったのは、サラリーマン喜劇や特撮・怪獣映画から仁侠・ヤクザ映画にまでいたるあまたの“シリーズもの”が量産され、いわゆる“プログラム・ピクチャー”として番線配給されていたからですが、これは結果として、世界映画史にも稀な、きわめてバラエティ豊かな娯楽映画ジャンルの系譜を生み出すことになります。色彩映画が標準化しシネマスコープが全盛期を迎える中で、当時の映画館の一部は、時にリアルな、時にスタイリッシュな性と暴力の刺激で溢れかえることにもなりました。

 5月15日から2期・144日間にわたって続く大型番組となった本特集では、さまざまな意味で時代を代表する秀作、話題作をでき得るかぎり幅広く選んで96番組に構成していきます。今回の第2期では、10年の後半にあたる1965年から70年までに製作された作品48本を上映いたします。

スクリーンが若者の思想表明や芸術表現の場であることをそれまでになく強く主張し、他の先進映画国の動きに対応するかのように、野心的なフィルム・アーティストたちの新世代が力強く登場して築いていった偉大な60年代映画文化の精華を、同時代に監督としての円熟期を迎えつつあった名匠たちの後期作品とともにお楽しみください。

■(監)=監督 (原)=原作・原案 (脚)=脚本・脚色・潤色 (撮)=撮影 (美)=美術 (音)=音楽 (編)=編集 (解)=ナレーター (出)=出演
■本特集には不完全なプリントが多く含まれています。
■記載した上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。
■作品により開映時間が異なりますのでご注意ください。
■小林正樹、黒澤明、木下惠介監督の作品は、昨年、特集「偉大なる“K”」ですべて上映しましたので、今回は番組に含まれておりません。


A-1 8/14(火)3:00pm 9/13(木)6:30pm 10/13(土)1:00pm

昭和残侠伝

(90分・35mm・カラー)
「網走番外地」と同年にスタートした高倉健主演シリーズ第1作。高倉自身が提案したという主題歌「唐獅子牡丹」もヒットし、最強の興行力を誇った。男同士の友情のために死地に赴く寡黙な侠客に池部良が扮し、4作目以降は花田秀次郎(高倉)・風間重吉(池部)の役名も定着、「花と風」のコンビは東映任侠路線を象徴する存在となった。

'65(東映東京)(監)佐伯清(脚)村尾昭、山本英明、松本功(撮)星島一郎(美)藤田博(音)菊池俊輔(編)長沢嘉樹(出)高倉健、松方弘樹、梅宮辰夫、三田佳子、池部良、江原眞二郎、菅原謙二、三遊亭円生、水島道太郎、山本麟一、潮健児


A-2 8/14(火)6:30pm 9/14(金)3:00pm 10/14(日)1:00pm

色ごと師春団治

(89分・35mm・白黒)
型やぶりの言動で注目をあつめ、一代の人気者として知られる上方の落語家・桂春団治を、新喜劇の申し子とよばれた藤山寛美がマキノ雅弘監督の下でみごとに演じている。松竹新喜劇は春団治の起伏の激しい生涯をすでに1952年に舞台化しており、寛美にとってもレパートリーの一つであった。一種破滅型であった彼と藤山寛美には芸人として共通する匂いがある。

'65(東映京都)(監)マキノ雅弘(原)長谷川幸延(脚)館直志、中島貞夫(撮)鈴木重平(美)矢田精治(音)菊池俊輔(編)堀池幸三(出)藤山寛美、南田洋子、藤純子、丘さとみ、長門裕之、山城新伍、茶川一郎、人見きよし、内田朝雄、天王寺虎之助


A-3 8/15(水)3:00pm 9/14(金)6:30pm 10/13(土)4:00pm

日本列島

(115分・35mm・白黒)
熊井啓が、前作「帝銀事件・死刑囚」(64)に続き、名声を確立した社会派ドラマ。吉原公一郎の同名原作の映画化で、通訳・秋山(宇野重吉)が探る米軍絡みの事件を軸に、日本列島に渦巻く数々の不可解な事件が描かれる。芦川いづみの儚さが、端正なカット割りと相俟って、立ちはだかる対照的な悪の巨魁を際だたせる。ベストテン第3位。

'65(日活)(監)(脚)熊井啓(原)吉原公一郎(撮)姫田真左久(美)千葉和彦(音)伊福部昭(編)丹治睦夫(出)宇野重吉、芦川いづみ、二谷英明、北林谷栄、佐野浅夫、内藤武敏、加藤嘉、鈴木瑞穂、武藤章生、庄司永建、平田守、大滝秀治、下元勉、伊藤寿章、長尾敏之助、紅沢葉子、木村不時子


A-4 8/15(水)6:30pm 9/13(木)3:00pm 10/14(日)4:00pm

恐山の女

(98分・35mm・白黒)
「小説現代」の新人賞を受けた小川元の「霊場の女」を映画化したもの。日中戦争初期の東北の田舎町を舞台に、遊郭に身売りされた薄幸の娘が、偶然にも相手をした男が親とその二人の息子であったことから、不吉な女として恐れられ迫害された。松竹映画を代表する巨匠五所平之助が、ドロドロした人間関係を描いて話題になった。

'65(フレンド・プロ)(監)五所平之助(原)小川元(脚)堀江英雄(撮)篠村荘三郎(美)平川透徹(音)池野成(編)池田貞子(出)吉村実子、川崎敬三、殿山泰司、寺田農、東野英治郎、菅井きん、中北千枝子、富永美沙子、伊藤幸子、浦辺粂子、中村是好


A-5 8/16(木)3:00pm 9/15(土・祝)1:00pm 10/9(火)6:30pm

刺青一代

(87分・35mm・カラー)
「渡世一代」(65)に続き、高橋英樹主演の「一代」シリーズ第2弾として企画された。港町を舞台に、お尋ね者の兄弟、鉄(高橋英樹)と健次(花ノ本寿)が暴れ回る。クライマックスの斬り込みの場面で突然画面が舞台調になる趣向は今では「清順美学」の代名詞だが、公開時は賛否両論であった。

'65(日活)(監)鈴木清順(脚)直居欽哉、服部佳(撮)高村倉太郎(美)木村威夫(音)池田正義(編)鈴木晄(出)高橋秀樹、和泉雅子、河津清三郎、山内明、小高雄二、花ノ本壽、伊藤弘子、松尾嘉代、小松方正、高品格、日野道夫、野呂圭介、河野弘


A-6 8/16(木)6:30pm 9/16(日)1:00pm 10/10(水)3:00pm

水で書かれた物語

(120分・35mm・白黒)
松竹を離れて独立した吉田喜重の第1作で、ニュース映画などで知られる中日映画社と組んだ。石坂洋次郎が書いた愛憎渦巻く母子相姦の世界を、吉田はロール撮影などの実験的な手法も取り入れながら映像化している。撮影界のニューウェイブ鈴木達夫の手になる、岡田茉莉子の肌の質感が艶かしい。

'65(中日映画社)(監)(脚)吉田喜重(原)石坂洋次郎(脚)石堂淑朗、高良留美子(撮)鈴木達夫(美)黒沢治安、平田逸郎(音)一柳慧(編)浅井弘(出)岡田茉莉子、浅丘ルリ子、山形勲、入川保則、弓恵子、桑山正一、岸田森、中村孝雄、益田愛子


A-7 8/17(金)3:00pm 9/15(土・祝)4:00pm 10/10(水)6:30pm

大怪獣 ガメラ

(79分・35mm・白黒)
東宝=円谷英二の「ゴジラ」シリーズに対抗して製作された大映初の特撮怪獣映画。当初村山三男監督で企画されていた「大群獣 ネズラ」の撮影中止を受け、高橋二三が書き上げたプロットの仮題は「火喰い亀東京逆襲」であったといわれるが、ゴジラとならび怪獣映画史上最も愛されるキャラクターが誕生することとなった。

'65(大映東京)(監)湯浅憲明(脚)高橋二三(撮)宗川信夫(美)井上章(音)山内正(編)中静達治(特殊撮影)築地米三郎(出)船越英二、霧立はるみ、姿美千子、山下洵一郎、北原義郎、内田喜郎、浜村純、吉田義男、左卜全、北城寿太郎、藤山浩二


A-8 8/17(金)6:30pm 9/16(日)4:00pm 10/9(火)3:00pm

関東果し状

(90分・35mm・カラー)
土木業界を舞台に関東梅島会傘下の滝井組と神奈川北斗会の阿久津一家の抗争が描かれる。ラスト・シーン、朝もやの六郷河原における両者の死闘はダイナマイトを炸裂させながらの大喧嘩で、集団時代劇を思わせる迫力に満ちている。ほぼこの時期に任侠映画のスターとして地歩を固めた鶴田浩二の立ち振る舞いがひときわ鮮やかである。

'65(東映京都)(監)(脚)小沢茂弘(脚)村尾昭(撮)山岸長樹(美)井川徳道(音)津島利章(編)宮本信太郎(出)鶴田浩二、藤純子、三島ゆり子、長門裕之、大木実、芦屋雁之助、河津清三郎、村田英雄、藤山寛美、山本麟一、山城新伍、遠藤辰雄


A-9 8/18(土)1:00pm 9/11(火)3:00pm 10/11(木)6:30pm

刺青

(86分・35mm・カラー)
白い肌一面に彫られた巨大な女郎蜘蛛に操られるように魔性をあらわにしていく娘、お艶(若尾文子)。増村保造にとっては「卍」(64)に次ぐ谷崎文学の映画化で、「刺青(しせい)」に「お艶殺し」がミックスされている。刺青師に刺され血に染まったお艶の背中に女郎蜘蛛がうごめくクライマックスの迫力は圧倒的。

'66(大映京都)(監)増村保造(原)谷崎潤一郎(脚)新藤兼人(撮)宮川一夫(美)西岡善信(音)鏑木創(編)菅沼完二(出)若尾文子、長谷川明男、山本学、佐藤慶、須賀不二男、内田朝雄、藤原礼子、毛利菊枝、南部彰三、木村玄、藤川準、橘公子


A-10 8/18(土)4:00pm 9/12(水)3:00pm 10/12(金)6:30pm

小判鮫 お役者仁義

(101分・35mm・カラー)
ひばり主演の「雪之丞変化」としては渡辺邦男(監)督の「ひばりの三役 競艶雪之丞変化」前後篇(57)があるが、本作は沢島演出による舞台のヒットを受けた映画化。ひばり・与一のコンビも話題の渦中にあった。やくざ映画全盛の時代に製作された数少ない時代劇の一本だが、題名には「仁義」が付けられた。

'66(東映京都)(監)(脚)沢島忠(原)三上於莵吉(脚)中島信昭(撮)吉田貞次(美)矢田精治(音)米山正夫(編)中山茂二(出)美空ひばり、林与一、黒川弥太郎、長門裕之、香山武彦、進藤英太郎、野川由美子、三島雅夫、徳大寺伸、高松錦之助


A-11 8/19(日)1:00pm 9/11(火)6:30pm 10/12(金)3:00pm

とべない沈黙

(100分・35mm・白黒)
熱帯系の蝶の幼虫が長崎から北海道に到達するまでを追いながら、日本を縦断して展開する7つのエピソード。岩波映画出身の《青の会》メンバーなど非劇映画界のスタッフを集めて製作された黒木和雄監督の劇映画第1作。その後、撮影の鈴木達夫が同時代の若手作家の作品に競って登用されるなど、日本映画にとって一つの転換点となった作品である。

'66(日本映画新社)(監)(脚)(編)黒木和雄(脚)松川八洲雄、岩佐寿彌(撮)鈴木達夫(美)山下宏(音)松村禎三(出)加賀まりこ、長門裕之、小沢昭一、渡辺文雄、山茶花究、平中実、千田是也、東野英治郎、戸浦六宏、木村俊惠、蜷川幸雄


A-12 8/19(日)4:00pm 9/12(水)6:30pm 10/11(木)3:00pm

「エロ事師たち」より 人類学入門

(128分・35mm・白黒)
野坂昭如の処女小説「エロ事師たち」をもとに、今村昌平が映画化した。スブヤンと呼ばれる「性」商品のよろず斡旋販売人、エロ事師を主人公に人間の「生と性」の不可思議を、重厚なユーモアをまじえて描いている。 個性派俳優、小沢昭一の代表作の一つでこの作品で各演技賞を受賞している。スブヤンの内縁の妻を演じる、坂本スミ子の演技も注目された。

'66(今村プロ)(監)(脚)今村昌平(原)野坂昭如(脚)沼田幸二(撮)姫田真左久(美)高田一郎(音)黛敏郎(編)丹治睦夫(出)小沢昭一、坂本スミ子、中村鴈治郎、ミヤコ蝶々、田中春男、佐川啓子、近藤正臣、西村晃、菅井一郎、内田朝雄


A-13 8/21(火)3:00pm 9/20(木)6:30pm 10/20(土)1:00pm

大魔神

(84分・35mm・カラー)
子供たちの絶大な人気を集めていた怪獣映画の亜種でありつつ、むしろ大人の鑑賞にも耐えられる伝奇譚として企画されヒットした大映の特撮時代劇。蘇った伝説の大魔神の変身ぶり破壊ぶりを見所に、直後にシリーズ化された。封切の併映は「ガメラ対バルゴン」で、少年たちには豪華な二本立てとなった。無機質な巨石像から滴る赤い血が印象的。

'66(大映京都)(監)安田公義(脚)吉田哲郎(撮)森田富士郎(美)内藤昭(音)伊福部昭(編)山田弘(出)高田美和、青山良彦、藤巻潤、五味龍太郎、島田竜三、遠藤辰雄、杉山昌三九、橋本力、伊達三郎、月宮於登女、香山恵子、尾上栄五郎


A-14 8/21(火)6:30pm 9/21(金)3:00pm 10/21(日)12:00pm

紀ノ川

(166分・35mm・カラー)
有吉佐和子の同名小説を中村登監督が悠々たるタッチで描いた文芸映画の大作。明治から大正、昭和の大きな世相の動きを背景に、紀州真谷家の三代にわたる女性の生き方を見つめつつ、古い家族制度の崩壊を丁寧に描き出している。22歳から72歳までの人生を演じた司葉子は本作で各主演女優賞を独占した。

'66(松竹)(監)中村登(原)有吉佐和子(脚)久板栄二郎(撮)成島東一郎(美)梅田千代夫(音)武満徹(編)浦岡敬一(出)岩下志麻、司葉子、東山千栄子、有川由紀、早瀬久(美)、沢村貞子、丹波哲郎、田村高廣、岩本多代、北林早苗、柳沢真一、永田靖、菅原通済、岸旗江、野々村潔、穂積隆信、中野誠也、山路義人


A-15 8/22(水)3:00pm 9/21(金)6:30pm 10/20(土)4:00pm

白昼の通り魔

(99分・35mm・白黒)
心中しても犯されても生き残る女シノ――彼女を通した戦後の闇の暗喩が、ハイキーの白黒映像に反転して写し出される大島渚芸術の雄篇。「(主題の扱いのみならず)視覚的なアプローチの点でも、モザイク的である―カメラ・アングルは絶え間なく変化し、それはまるで誰の視点も“真実ではない”ことを強調するかのようだ」(トニー・レインズ)。ベストテン第9位。

'66(創造社)(監)大島渚(原)武田泰淳(脚)田村孟(撮)高田昭(美)戸田重昌(音)林光(編)西崎英雄(出)川口小枝、小山明子、佐藤慶、戸浦六宏、渡辺文雄、殿山泰司、岸輝子、小松方正、矢野宣、茅島成(美)、高原良子、川口秀子、観世栄夫


A-16 8/22(水)6:30pm 9/20(木)3:00pm 10/21(日)4:00pm

あこがれ

(85分・35mm・カラー)
60年代後半の東宝で、酒井和歌子と並んで最大のアイドルスターとなった内藤洋子の記念すべき初主演作。木下恵介・原作、山田太一・脚色による恩地日出男監督の青春純愛映画であり、生みの親の慈しみに恵まれなかったよく似た境涯の二人、一郎(田村亮)と信子(内藤)が年頃になって再会し、愛を育み、恋に悩むようすが鮮やかに描かれる。

'66(東宝)(監)恩地日出夫(原)木下惠介(脚)山田太一(撮)逢沢譲(美)育野重一(音)武満徹(編)岩下広一(出)新珠三千代、内藤洋子、田村亮、小沢昭一、乙羽信子、加東大介、賀原夏子、小夜福子、沢村貞子、林寛子


A-17 8/23(木)3:00pm 9/22(土)1:00pm 10/16(火)6:30pm

私は泣かない

(91分・35mm・白黒)
「非行少女」の和泉雅子が、小児麻痺の少年とふれあう中で少しずつ素直な心を取り戻してゆく。「悪太郎」(63)、「あゝ青春の胸の血は」(64)などで和泉との共演を重ねてきた山内賢が、遠くからヒロインを見守る爽やかな青年を好演。吉田憲二の監督デビュー作で、第1回青少年映画賞文部大臣賞を受賞。

'66(日活)(監)(脚)吉田憲二(脚)石森史郎(撮)姫田真佐久(美)川原資三(音)小杉太一郎(編)古山恒夫(出)和泉雅子、山内賢、芦川いづみ、太田雅子、奈良岡朋子、本郷淳、下條正巳、波多野憲、鈴木瑞穂、佐野浅夫、藤間紫、市川久伸


A-18 8/23(木)6:30pm 9/23(日)1:00pm 10/17(水)3:00pm

裏切りの季節

(77分・35mm・白黒)
大和屋竺が監督デビューを飾ったこの作品は、日活を退社して若松孝二監督のプロデュースを受けてのものだった。ヴェトナム帰りの報道カメラマンを主人公に、当時の「政治の季節」に対する心象風景が耽美的なイメージによって描かれており、作家としての資質がいかんなく発揮されている。ヒロインのSMシーンが強烈な印象を与える。

'66(若松プロ)(監)大和屋竺(脚)(出)大谷義明(撮)伊東英男(音)佐藤充彦(允彦)(編)具流勘助(出)立川雄三、谷口朱里、寺島幹夫、曽根成夫、一の瀬弓子、飛田八郎、森公司、中谷三郎、佐藤重臣、田中文子、藤田光江、萩京子、若原玉美


A-19 8/24(金)3:00pm 9/22(土)4:00pm 10/17(水)6:30pm

網走番外地 大雪原の対決

(90分・35mm・カラー)
シリーズ第7作。納沙布に現われた橘(高倉健)が、油田の利権争いに巻き込まれ暴力団と死闘を繰り広げる。配役の妙は本作でも冴えわたっており、なかでも「鬼寅」の名をかたるボスの権田(上田吉二郎)のもとに正体を隠して潜入する鬼寅親分(嵐寛寿郎)の活躍は見もの。1966年度公開作品中1位の配給収入を記録。

'66(東映東京)(監)(脚)石井輝男(原)伊藤一(脚)松田寛夫、神波史男(撮)稲田喜一(美)藤田博(音)八木正生(編)鈴木寛(出)高倉健、嵐寛寿郎、田中邦衛、大原麗子、吉田輝雄、内田良平、由利徹、上田吉二郎、小松方正、関山耕司、砂塚秀夫


A-20 8/24(金)6:30pm 9/23(日)4:00pm 10/16(火)3:00pm

殺人狂時代

(99分・35mm・カラー)
都筑道夫の「なめくじに聞いてみろ」(旧題「飢えた遺産」)の映画化。「大日本人口調節審議会」なる組織から派遣された殺し屋に命を狙われる犯罪心理学者。実は彼の背中に埋め込まれたダイヤモンド「クレオパトラの涙」を狙ったもので、元ナチス幹部の登場や、「オバQ」「アトム」「ソラン」といった登場人物名の遊び心とともに、ハチャメチャな事件が快調に展開される。

'67(東宝)(監)(脚)岡本喜八(原)都筑道夫(脚)小川英、山崎忠昭(撮)西垣六郎(美)阿久根巌(音)佐藤勝(編)黒岩義民(出)仲代達矢、団令子、砂塚秀夫、天本英世、滝恵一、富永美沙子、久野征四郎、小川安三、江原達怡、川口敦子、二瓶正也


A-21 8/25(土)1:00pm 9/18(火)3:00pm 10/18(木)6:30pm

愛の渇き

(99分・35mm・パートカラー)
三島由紀夫の同名小説を蔵原惟繕がスタイリッシュに映像化し、浅丘ルリ子は老いた義父との関係にはまりながら園丁の若い肉体に魅せられる未亡人に扮し演技派女優の地位を不動のものとした。蔵原=浅丘コンビの頂点をかたちづくる作品となったが、日活は難解を理由に上映を延期し、蔵原が独立するきっかけとなった。

'67(日活)(監)(脚)蔵原惟繕(原)三島由紀夫(脚)藤田繁夫(撮)間宮義雄(美)千葉和彦(音)黛敏郎(編)鈴木晄(出)浅丘ルリ子、山内明、中村伸郎、楠侑子、小園蓉子、紅千登世、石立鉄男、小高雄二、久遠利三、藤井昭雄、志波順香、岩間隆之


A-22 8/25(土)4:00pm 9/19(水)3:00pm 10/19(金)6:30pm

愛の讃歌

(94分・35mm・カラー)
都会に去った恋人(中山仁)の子を宿した娘(倍賞千恵子)を不憫に思い、引き取った医者(有島一郎)の心に芽生え始める新たな愛情。マルセル・パニョル原作の「ファニー」を、瀬戸内の小島に暮らす人々の涙と笑いの人情ものに換骨奪胎した秀作で、後の「幸福の黄色いハンカチ」にも繋がる山田洋次監督の海外小説翻案の才が冴える。

'67(松竹)(監)(脚)山田洋次(原)マルセル・パニョル(撮)高羽哲夫(美)梅田千代夫(音)山本直純(編)浜村義康(出)倍賞千恵子、中山仁、千秋実、北林谷栄、小沢昭一、有島一郎、伴淳三郎、左卜全、渡辺篤、太宰久雄、桜京美、高島稔


A-23 8/26(日)12:00pm 9/18(火)6:30pm 10/19(金)3:00pm

クレージー黄金作戦

(157分・35mm・カラー)
賭博好きの僧侶(植木等)、保守派の代議士(ハナ肇)、アメリカ人の「遺産」を相続する男(谷啓)の珍妙なラスベガス道中が、やがてギャング一味との金貨の争奪戦に発展する。アメリカロケを目玉にした、クレージー・キャッツの人気シリーズの9作目で、この頃には物語は当初のサラリーマン喜劇から積極的に逸脱した。

'67(東宝=渡辺プロ)(監)坪島孝(脚)笠原良三、田波靖男(撮)内海正治(美)竹中和雄(音)宮川泰、荻原哲晶(編)武田うめ(出)植木等、ハナ肇、谷啓、藤田まこと、浜美枝、園まり、犬塚弘、桜井センリ、石橋エータロー、安田伸、有島一郎、藤木悠、石山健二郎、藤岡琢也、飯田蝶子、ザ・ドリフターズ


A-24 8/26(日)4:00pm 9/19(水)6:30pm 10/18(木)3:00pm

喜劇 急行列車

(90分・35mm・カラー)
国鉄とタイアップした喜劇「列車」シリーズの第1作。仕事熱心でお人好しな特急の車掌を演じるのは渥美清で、「寅さん」以前の彼にとっては最大の当たり役と言えよう。監督は、仁侠路線を推進していた東映にあって尖鋭的で歯切れのいいコメディを量産した瀬川昌治。その後、企画・監督とも松竹に移籍して喜劇「旅行」シリーズに発展した。

'67(東映東京)(監)瀬川昌治(脚)舟橋和郎(撮)飯村雅彦(美)北川弘(音)木下忠司(編)祖田冨美夫(出)渥美清、佐久間良子、西村晃、小沢昭一、江原真二郎、大原麗子、根岸明美、桜京美、三原葉子、楠トシエ、鈴木やすし、Wけんじ


A-25 8/28(火)3:00pm 9/27(木)6:30pm 10/27(土)1:00pm

殺しの烙印

(91分・35mm・白黒)
不条理を恐れぬ演出、唐突なユーモアが時の日活社長堀久作を怒らせ、監督の解雇に発展したことでも知られる作品。監督を擁護する「清順共闘」が結成され、この時代の空気を象徴する一本となった。現在は、日本はもちろん、'Branded to Kill'の題で国際的な評価も得ている。

'67(日活)(監)鈴木清順(脚)具流八郎(撮)永塚一栄(美)川原資三(音)山本直純(編)鈴木晄(出)宍戸錠、南原宏治、玉川伊佐男、真理アンヌ、小川万里子、南廣、長弘、大和屋竺、野村隆、宮(原)徳平、緑川宏、久松洪介、荒井岩衛、伊豆見雄


A-26 8/28(火)6:30pm 9/28(金)3:00pm 10/28(日)1:00pm

日本暗黒史 血の抗争

(90分・35mm・カラー)
元組長から映画俳優への転身として当時話題を呼んだ安藤昇の主演作品の一つ。本作品ではあくまでも抗争を通して勢力拡大をはかる武闘派、河上純一に扮し、刑事役のベテラン伴淳三郎とからんでいる。安藤昇には虚構の作品世界に、実在感を与える特徴があった。工藤栄一監督は集団時代劇の名手として知られアクション描写を得意とした。

'67(東映京都)(監)工藤栄一(脚)佐治乾(撮)鈴木重平(美)井川徳道(音)八木正生(編)堀池幸三(出)安藤昇、瑳峨三智子、伴淳三郎、山城新伍、内田良平、永山一夫、潮健児、志賀勝、安部徹、北口千春、原田甲子郎、林彰太郎、松山照夫


A-27 8/29(水)3:00pm 9/28(金)6:30pm 10/27(土)4:00pm

あかね雲

(107分・35mm・パートカラー)
昭和12年、越前輪島。貧しい家計を助けるために働きにでた二木まつのは、缶詰会社の外交員小杉の勧めで仲居として山代温泉で働くようになる。小杉を慕うまつのだったが、彼には隠された秘密があった。水上勉の同名小説を鈴木尚之が脚本化、篠田正浩が自身のプロダクション表現社の第1回作品とした。岩下志麻は本作等により、この年数々の主演女優賞を獲得した。

'67(表現社)(監)篠田正浩(原)水上勉(脚)鈴木尚之(撮)小杉正雄(美)戸田重昌(音)武満徹(編)杉原よ志(出)岩下志麻、山崎努、佐藤慶、小川真由美、日高澄子、花柳喜章、宝生あやこ、信欽三、赤木蘭子、河原崎長一郎、野々村潔、薄田レイ子


A-28 8/29(水)6:30pm 9/27(木)3:00pm 10/28(日)4:00pm

育ちざかり

(88分・35mm・カラー)
恋に目覚めた多感な少女のひと夏を明るく綴った青春映画。一躍「伊豆の踊子」の薫役に抜擢された新人、内藤洋子のイメージ・アップを狙った企画で、前年にデビューした森谷司郎監督が東宝の青春映画路線を支えている。製作の山田順彦は第1回作となる本作で脚本家(小寺朝のペンネーム)デビューも果たしている。

'67(東宝)(監)森谷司郎(脚)小寺朝、井手俊郎(撮)山田一夫(美)村木忍(音)佐藤勝(編)黒岩義民(出)内藤洋子、黒沢年男、十朱幸代、村松英子、小山田宗徳、江原達怡、三宅邦子、中村伸郎、春川ますみ、松永てるほ、沢美奈、高橋厚子


A-29 8/30(木)3:00pm 9/29(土)1:00pm 10/23(火)6:30pm

なみだ川

(79分・35mm・カラー)
山本周五郎の「おたふく物語」を依田義賢がシナリオ化し、三隅研次が監督した好篇。江戸日本橋、はせがわ町に、おしずとおたかという姉妹が病床の父を支えながらつつましく暮らしていた。おたかの結婚話を進めるために、おしずがついた一つの嘘が思わぬ波紋を呼んでいく。対照的な性格の姉妹と周囲の人情がきめ細やかに描かれている。

'67(大映京都)(監)三隅研次(原)山本周五郎(脚)依田義賢(撮)牧浦地志(美)内藤昭(音)小杉太一郎(編)谷口登司夫(出)藤村志保、若柳菊、細川俊之、戸浦六宏、藤原釜足、安部徹、玉川良一、塩崎純男、春本泰男、水原浩一、町田博子


A-30 8/30(木)6:30pm 9/30(日)1:00pm 10/24(水)3:00pm

囁きのジョー

(91分・35mm・白黒)
スチル・カメラマン斎藤耕一が、私財を注ぎ込んで独立プロを興したデビュー作。脚本・撮影・音楽も担当し、オールロケ、即興演出で当時の風俗描写に挑んだ。ブラジル行きを夢見る虚無的な殺し屋に中山仁を充てたほか、ジャズ好きの監督らしく、バンドマンに世良譲、渡辺貞夫らの著名ミュージシャンを配している。

'67(斎藤プロ)(監)(脚)(撮)(音)斎藤耕一(美)安田耕宜(音)(出)世良譲(編)足立律(出)中山仁、麻生れい子、信欣三、金内吉男、富士真奈美、西村晃、笠井紀美子、松川勉、高島稔、杉まり子、森あつ子、江幡高志、栗田八郎、渡辺貞夫


A-31 8/31(金)3:00pm 9/29(土)4:00pm 10/24(水)6:30pm

ゴー!ゴー!若大将

(89分・35mm・カラー)
「レッツゴー!若大将」(67)から「ブラボー!若大将」(70)まで4年連続で正月第1週に封切られるなど、抜群の人気を誇った「若大将」シリーズの第11作。今回の若大将(加山雄三)は陸上選手で、恋とスポーツの両方に勝利するクライマックスの舞台は正月らしく大学対抗駅伝に設定されている。

'67(東宝=宝塚映画)(監)岩内克己(脚)田波靖男(撮)斉藤孝雄(美)松山崇(音)広瀬健次郎(編)小川信夫(出)加山雄三、星由里子、田中邦衛、浜木綿子、有島一郎、江原達怡、飯田蝶子、曽我迺家五郎八、中真千子、北竜二、木崎国嘉


A-32 8/31(金)6:30pm 9/30(日)4:00pm 10/23(火)3:00pm

腹貸し女

(70分・35mm・パートカラー)
《性》と《政治》を武器に、五社体制の外側から日本映画に揺さぶりをかけた若松プロダクション。子孫を残そうと人工受精を企む権力者と、その標的となった姉妹との確執を描くこの作品では、早川義夫率いる伝説のグループ「ジャックス」が音楽と出演をこなし、日本ポップス史においても貴重なドキュメントとなっている。

'68(若松プロ)(監)若松孝二(脚)出口出 (撮)伊東英男(音)(出)ジャックス(出)門麻実、吉沢健、伊地知幸子、津崎公平


A-33 9/1(土)1:00pm 9/25(火)3:00pm 10/25(木)6:30pm

ひとり狼

(83分・35mm・カラー)
腕っ節も強く度胸もあるが、どこか謎めいた影のある渡世人、人斬り伊三蔵。旅暮らしを続ける彼には、三州に心を残した女がいた。苦い思い出でもある、その女の暮らしを見とどけようとしたのだが…。池広一夫監督がスタイリッシュな映像で描き、市川雷蔵がクールに演じてみせた股旅ものの名作。大映京都撮影所の技術陣の力量も見逃せない。

'68(大映京都)(監)池広一夫(原)村上元三(脚)直居欽哉(撮)今井ひろし(美)太田誠一(音)渡辺岳夫(編)菅沼完二(出)市川雷蔵、小川真由美、長門勇、長谷川明男、岩崎加根子、小池朝雄、浜村純、内田朝雄、丹阿弥谷津子、伊達三郎、新田昌玄


A-34 9/1(土)4:00pm 9/26(水)3:00pm 10/26(金)6:30pm

大幹部 無頼

(97分・35mm・カラー)
全部で5作つくられた渡哲也主演の「無頼」シリーズの第2作にあたり、シリーズのなかでも屈指の作品と評されている。肉体をぶつけあう激しいアクションは、従来の裕次郎・旭のそれとは質を異にしており、日活ニューアクションと称された。堅気とやくざの境界を際立たせる小沢啓一監督の演出はラストのバレー・コートの場面に集約されている。

'68(日活)(監)小沢啓一(原)藤田五郎(脚)池上金男、久保田圭司(撮)高村倉太郎(美)木村威夫、川原資三(音)伊部晴(美)(編)辻正則(出)渡哲也、松原智恵子、二谷英明、松尾嘉代、内田良平、芦川いづみ、真屋順子、岡崎二朗、田中邦衛


A-35 9/2(日)1:00pm 9/25(火)6:30pm 10/26(金)3:00pm

初恋・地獄篇

(107分・35mm・パートカラー)
寺山修司(脚本)とのコラボレーションによる羽仁進作品。彫金師見習いの少年シュンとヌードモデルの少女ナナミとの密やかな初恋の物語。プロの役者を使わず、ドキュメンタリーの手法を生かした前衛的なスタイルは、挿入される8ミリ映画の実験的色彩表現とも相俟って、若い二人の記憶と性と孤独を痛切に描き出す。キネマ旬報ベストテン6位。

'68(羽仁プロ=日本アート・シアター・ギルド)(監)(脚)(編)羽仁進(脚)寺山修司(撮)奥村祐治(出)高橋章夫、石井くに子、宮戸美佐子、安田哲男、福田和子、湯浅実、額村キミ子、浅野春男、スージー・トランプル、阿知波信介、前田涼子


A-36 9/2(日)4:00pm 9/26(水)6:30pm 10/25(木)3:00pm

燃えつきた地図[THE MAN WITHOUT A MAP]

(115分・35mm・カラー)
“地図を焼き捨て”蒸発した男を依頼されて探す男が、都会という名の迷宮に入り込んで自らも失踪する。「おとし穴」「砂の女」「他人の顔」と続いた安部公房(脚本)=勅使河原宏(監督)コンビの第4作で、初のカラー作品。主演は勝新太郎で、勝プロとしては「座頭市牢破り」に次ぐ第2作。渥美清から吉田日出子まで配役の妙も楽しめる。ベストテン第8位。

'68(勝プロ)(監)勅使河原宏(原)(脚)安部公房(撮)上原明(美)間野重雄(音)武満徹(編)中静達治(出)勝新太郎、市原悦子、渥美清、中村玉緒、大川修、信欽三、長山藍子、吉田日出子、田中春男、酒井修、小松方正、小笠原章二郎、笠原玲子


A-37 9/4(火)3:00pm 10/4(木)6:30pm 11/3(土・祝)1:00pm

連合艦隊指令長官 山本五十六

(130分・35mm・カラー)
山本五十六の生き様を、太平洋戦争前夜から真珠湾攻撃、ミッドウェイ海戦、ガダルカナル撤退を経て、悲劇的な機上の戦死まで綴った歴史戦争スペクタクル。三船敏郎は、開戦に反対もしたこの“軍神”の朴訥な人情家の側面をよく表現している。前年の「日本のいちばん長い日」に続く東宝“八・一五シリーズ”第2弾。

'68(東宝)(監)(脚)丸山誠治(脚)須崎勝弥(撮)山田一夫(美)北猛夫(音)佐藤勝(編)藤井良平(特技監督)円谷英二(解)仲代達矢(出)三船敏郎、松本幸四郎、森雅之、柳永二郎、宮口精二、藤田進、佐藤允、清水將夫、加山雄三、黒沢年男、加東大介


A-38 9/4(火)6:30pm 10/5(金)3:00pm 11/4(日)4:00pm

白昼堂々

(81分・35mm・カラー)
スリ・万引き集団の鮮やかな手口、固い結束、恋愛や友情などを、渥美清、藤岡琢也、フランキー堺ら芸達者な喜劇人に演じさせた野村芳太郎脚色・監督による笑いと涙の佳作(原作は結城昌治の新聞連載)。倍賞千恵子が美人スリを演じて新鮮なほか、有島一郎と高橋とよ演じる刑事夫妻もほのぼのとしたおかしみをにじませて印象に残る。

'68(松竹)(監)(脚)野村芳太郎(原)結城昌治(脚)吉田剛(撮)川又昂(美)梅田千代夫(音)林光(編)浜村義康(出)渥美清、倍賞千恵子、藤岡琢也、大貫泰子、三原葉子、有島一郎、高橋とよ、生田悦子、桜京美、田中邦衛、佐藤蛾次郎、フランキー堺


A-39 9/5(水)3:00pm 10/5(金)6:30pm 11/3(土・祝)4:00pm

不良番長

(89分・35mm・カラー)
梅宮辰夫を主演に、72年まで全16作が作られた「不良番長」シリーズの記念すべき第1作。梅宮演じる神坂弘に率いられた不良グループが、新宿を根城に悪事の限りを尽くしながら、次第に大きな暴力団組織に戦いを挑んでいく。本作で劇映画デビューをした野田幸男は、若者の“不良性感度”をよく心得た若々しい演出でヒットに結びつけた。

'68(東映東京)(監)野田幸男(脚)松本功、山本英明(撮)山沢義一(美)藤田博(音)八木正生(編)田中修(出)梅宮辰夫、谷隼人、克美しげる、大原麗子、夏珠美、丹波哲郎、渡辺文雄、南原宏治、石山健二郎、藤村有弘、左とん平、沢たまき


A-40 9/5(水)6:30pm 10/4(木)2:30pm 11/4(日)12:00pm

神々の深き欲望

(174分・35mm・カラー)
原始信仰に生きる南の孤島を舞台に、ねじ伏せるようなタッチで日本人の共同体意識を掘り起こそうとした今村イズムの集大成。助演の嵐寛寿郎をして「ほんまの地獄」と言わしめた南大東島での苛酷な長期ロケを通じて、監督の想念の中に生まれた独自の「沖縄」が創り出された。また、「野性」を体現する沖山秀子の登場も型破りなものであった。

'68(今村プロ)(監)(脚)今村昌平(脚)長谷部慶次(撮)栃沢正夫(美)大村武(音)黛敏郎(編)丹治睦夫(出)三國連太郎、沖山秀子、嵐寛寿郎、河原崎長一郎、北村和夫、松井康子、加藤嘉、小松方正、細川ちか子、扇千景、浜村純、殿山泰司


A-41 9/6(木)3:00pm 10/6(土)1:00pm 10/30(火)6:30pm

博徒列伝

(98分・35mm・カラー)
東映任侠映画のスター、鶴田浩二、高倉健、若山富三郎、藤純子たちが一同に会するオールスター作品=「列伝」シリーズの一本。本作では鶴田浩二が主演、高倉健が客演にまわり、藤純子が芸者役で色を添えている。小沢茂弘監督は時代劇、任侠映画、現代劇とジャンルを問わずスター本位の娯楽映画を確かな力量で作りつづけた職人監督である。

'68(東映京都)(監)小沢茂弘(脚)笠原和夫(撮)鈴木重平(美)井川徳道(音)渡辺岳夫(編)堀池幸三(出)鶴田浩二、若山富三郎、藤純子、高倉健、北島三郎、待田京介、菅原文太、河津清三郎、大木実、天津敏、北村英三、名和宏、橘ますみ


A-42 9/6(木)6:30pm 10/7(日)1:00pm 10/31(水)3:00pm

俺たちの荒野

(91分・35mm・カラー)
内藤洋子主演の「年ごろ」(68)で監督デビューした出目昌伸の第2作。黒澤組出身としては異色の、青春ものや女性ものにその才を発揮した同監督であったが、この作品でも、二人の青年と一人の少女をめぐる友情と恋愛、そして青春の夢と挫折が瑞々しく描かれている。男同士の恋愛感情にも似た人間関係など、この作家の資質が十二分に示されている。

'69(東宝映画)(監)出目昌伸(原)中井正(脚)重森孝子(撮)中井朝一(美)竹中和雄(音)真鍋理一郎(編)武田うめ(出)黒沢年男、酒井和歌子、東山敬司、赤座美代子、原知佐子、望月敦子


A-43 9/7(金)3:00pm 10/6(土)4:00pm 10/31(水)6:30pm

日本女侠伝 侠客芸者

(99分・35mm・カラー)
「緋牡丹博徒」の人気にあやかった新シリーズ第1作で、藤純子は男まさりの馬賊芸者に扮する。血みどろの乱闘シーンでは高倉健がヒロインを助けて死に花を添え、全5作のうち3作を担当することになる山下耕作が独特の悲愴美を表現した。この年の藤は4作で主演、6作で助演する活躍ぶり。

'69(東映京都)(監)山下耕作(脚)野上龍雄(撮)鈴木重平(美)雨森義允(音)木下忠司(編)宮本信太郎(出)藤純子、高倉健、若山富三郎、桜町弘子、三島ゆり子、藤山寛美、金子信雄、時美沙、原良子、大里ひろ子、榊浩子、正司花江、利根はる恵


A-44 9/7(金)6:30pm 10/7(日)4:00pm 10/30(火)3:00pm

いそぎんちゃく

(83分・35mm・白黒)
肉体派女優、渥美マリの主演デビュー作。魅惑的な肢体を武器に、男たちを徹底的に利用しながら図太く生きる女性像を示し、当時の男性観客に強いインパクトを与えた。その後の「夜のいそぎんちゃく」や「でんきくらげ」(ともに70)等を含めて「軟体動物」シリーズと呼ばれたが、この路線も末期大映の苦肉の策であった。

'69(大映東京)(監)弓削太郎(脚)石松愛弘(撮)渡辺公夫(美)後藤岱二郎(音)池野成(編)糸井敬男(出)渥美マリ、高原駿雄、大辻伺郎、牟田悌三、目黒幸子、加藤嘉、田中三津子、早川雄三、平泉征、関千恵子、花布辰男、中条静夫


A-45 9/8(土)1:00pm 10/2(火)3:00pm 11/1(木)6:30pm

私が棄てた女

(116分・35mm・パートカラー)
遠藤周作の同名原作を映画化した浦山桐郎監督、渾身の第3作。政治運動に挫折して、今は良家の娘(浅丘ルリ子)との愛のない結婚を選ぼうとしている男(河原崎長一郎)の前に、かつて自分が“棄てた女”ミツが現れる……。新人小林トシ江(当時はトシエ)は、製作当初の題名 “可愛い女” を地でいくように熱演している。ベストテン第2位。

'69(日活)(監)浦山桐郎(原)遠藤周作(脚)山内久(撮)安藤庄平(美)横尾嘉良、深民浩(音)黛敏郎(編)丹治睦夫(出)河原崎長一郎、浅丘ルリ子、小林トシエ、小沢昭一、加藤武、岸輝子、辰巳柳太郎、加藤治子、夏海千佳子、佐野浅夫、露口茂


A-46 9/8(土)4:00pm 10/3(水)3:00pm 11/2(金)6:30pm

日本暗殺秘録

(142分・35mm・カラー)
「やくざ映画全盛のさなか、こんな〈危険〉な企画がどうして生まれたのか、いまもって不思議」(笠原和夫)な異色のオールスター大作。血盟団事件と二・二六事件を主軸に、日本近代100年のテロリストたちをオムニバス形式で描く。衝撃の冒頭シーンから息もつかせぬ怒涛の描写で時代の情念をすくい上げる。

'69(東映京都)(監)(脚)中島貞夫(原)鈴木正(脚)笠原和夫(撮)吉田貞次(美)鈴木孝俊(音)冨田勲(編)神田忠雄(出)片岡千恵藏、千葉真一、田宮二郎、藤純子、若山富三郎、高倉健、鶴田浩二、菅原文太、吉田輝雄、待田京介、桜町弘子


A-47 9/9(日)1:00pm 10/2(火)6:30pm 11/2(金)3:00pm

かげろう

(103分・35mm・白黒)
尾道の海に浮かんだ女の死体。このバーのマダムの殺人事件を担当した刑事が捜査を開始する。20年前にある島で起きた殺人事件にその原因があると判明、複雑な人間関係と女の復讐劇があぶり出される。そして、この一連の事情が女のかつて棄てた息子に対する強い愛情につながっていた、という結末がミステリアスなタッチで描かれている。

'69(近代映画協会)(監)(脚)新藤兼人(脚)関功(撮)黒田清己(美)井川徳道(音)林光(編)丹治光代(出)乙羽信子、戸浦六宏、伊丹十三、殿山泰司、富山真沙子、宇野重吉、小沢栄太郎、吉沢健、明石勤、芦田鉄雄、小川吉信、草野大悟、菅井一郎


A-48 9/9(日)4:00pm 10/3(水)6:30pm 11/1(木)3:00pm

緋牡丹博徒 お竜参上

(100分・35mm・カラー)
同シリーズ「花札勝負」(69)の後日譚で、お竜(藤純子)はかつて関わった女博徒の遺児とその恋人のために母親的な役回りを演じる。お竜が青山(菅原文太)に蜜柑を手渡す雪の今戸橋の場面は、井川徳道によるセットの様式美と果物を活かした叙情的な演出がかみ合った名場面として名高い。

'70(東映京都)(監)(脚)加藤泰(脚)鈴木則文(撮)赤塚滋(美)井川徳道(音)斎藤一郎(編)宮本信太郎(出)藤純子、菅原文太、若山富三郎、安部徹、天津敏、嵐寛寿郎、山城新伍、長谷川明男、夏珠美、山岸映子、近藤洋介、沼田曜一、沢淑子