東京国立近代美術館 フィルムセンター

大ホール上映作品

日本映画の発見VI:1960年代(1)

Rediscovering Our National Film Heritage (VI): 1960s - Part 1

上映スケジュール

1996年に始まったフィルムセンターの長期上映企画「日本映画の発見」は、日本の映画遺産をその無声期から現在まで辿り見直そうとするものとして、これまですでに250本あまりの作品を上映し好評を得てきましたが、今年はその第VI期に入り、1960年代の映画を特集します。

 1960年代はわが国が高度経済成長を遂げ、戦後の経済復興を確実なものとした時代ですが、映画産業にとってはまさに劇的な凋落を体験する時代でもありました。新東宝の撤退と日本アート・シアター・ギルドの発足(共に1961年)から旧・大映の製作中止(1971年)までにほぼ重なるその10年の間に、全国の映画館数は7000館超から3000館台へと落ち込み、年間延べ入場者数も10億人超から4分の1の2億5000万人台へと激減し、映画は「娯楽の王者」の座を失います。

 そうした変化に見合う製作本数の激減がなかったのは、サラリーマン喜劇や特撮・怪獣映画から仁侠・ヤクザ映画にまでいたるあまたの“シリーズもの”が量産され、いわゆる“プログラム・ピクチャー”として番線配給されていたからですが、これは結果として、世界映画史にも稀な、きわめてバラエティ豊かな娯楽映画ジャンルの系譜を生み出すことになります。色彩映画が標準化しシネマスコープが全盛期を迎える中で、当時の映画館の一部は、時にリアルな、時にスタイリッシュな性と暴力の刺激で溢れかえることにもなりました。

 11月4日まで2期・144日間にわたって続く大型番組となる本特集では、さまざまな意味で時代を代表する秀作、話題作をでき得るかぎり幅広く選んで96番組に構成していきます。今回の第1期では、10年の前半にあたる1960年から64年までに製作された作品48本を上映いたします。

スクリーンが若者の思想表明や芸術表現の場であることをそれまでになく強く主張し、他の先進映画国の動きに対応するかのように、野心的なフィルム・アーティストたちの新世代が力強く登場して築いていった偉大な60年代映画文化の精華を、同時代に監督としての円熟期を迎えつつあった名匠たちの後期作品とともにお楽しみください。

■(監)=監督 (原)=原作・原案 (脚)=脚本・脚色・潤色 (詞)=作詞 (撮)=撮影 (美)=美術 (音)=音楽 (編)=編集 (出)=出演
■本特集には不完全なプリントが多く含まれています。
■記載した上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。
■作品により開映時間が異なりますのでご注意ください。
■小林正樹、黒澤明、木下惠介監督の作品は、昨年、特集「偉大なる“K”」ですべて上映しましたので、今回は番組に含まれておりません。


A-1 5/15(火)3:00pm 6/16(土)4:00pm 7/12(木)6:30pm

太陽の墓場

(88分・35mm・カラー)
反社会的若者の行動を通じて現代社会を痛烈に描き、大ヒットとなった『青春残酷物語』に続いて作られた大島監督の3作目。大阪のドヤ街を舞台に暴力団同士の抗争を描いたこの作品は、性と暴力を前作以上に際立たせており、強烈な色彩による撮影と新人女優の炎加代子の存在感が印象的である。

'60(松竹大船)(監)(脚)大島渚(脚)石堂淑朗(撮)川又昂(美)宇野耕司(音)真鍋理一郎(編)浦岡敬一(出)津川雅彦、炎加世子、佐々木功、川津祐介、伴淳三郎、渡辺文雄、小沢栄太郎、北林谷栄、清水元、藤原釜足、松崎慎二郎、富永ユキ、中原功二、小池朝雄、浜村純、佐藤慶、永井一郎、田中邦衛


A-2 5/15(火)6:30pm 6/17(日)1:00pm 7/13(金)3:00pm

流転の王妃

(102分・35mm・カラー)
新東宝『恋文』('53)から日活の2作を経て、大映で田中絹代が作った監督第4作。満州国皇帝溥儀の弟溥傑に嫁いだ愛新覚羅浩の波乱に富んだ自伝を、和田夏十が脚色し、京マチ子が主演している(役名は映画用に改変)。原作・脚本・監督がすべて女性という画期的な日本映画として近年、再評価の声が上がっている。

'60(大映東京)(監)田中絹代(原)愛新覚羅浩(脚)和田夏十(撮)渡辺公夫(美)間野重雄(音)木下忠司(出)京マチ子、船越英二、金田一敦子、東山千栄子、沢村貞子


A-3 5/16(水)3:00pm 6/17(日)4:00pm 7/10(火)6:30pm

弥太郎笠

(96分・35mm・白黒)
マキノ雅弘は沢村国太郎('36)、鶴田浩二('52)、小泉博('55)で同じ原作をすでに3度映画化しているが、本作は主演に中村錦之助を得て情感溢れる股旅物の集大成的な作品となった。ひょっとこの面に正体を隠した悪貸元の大八(藤田進)らに弥太郎が命を狙われる、マキノ十八番の祭の場面は、静寂と喧騒が入り交じる幻想的な演出で出色。

'60(東映京都)(監)マキノ雅弘(原)子母沢寛(脚)観世光太、村松道平(撮)三木滋人(美)桂長四郎(音)鈴木静一(編)宮本信太郎(出)中村錦之助、東千代之介、丘さとみ、日高澄子、大河内傳次郎、千秋実、藤田進、田中春男、加賀邦男、富田仲次郎、原健策、中村時之介、尾形伸之介、中村幸吉


A-4 5/16(水)6:30pm 6/16(土)1:00pm 7/12(木)3:00pm

大いなる旅路

(95分・35mm・白黒)
『きけわだつみの声』('50)などで知られる関川秀雄監督の隠れた秀作。三国連太郎演じる国鉄機関士とその家族の、戦争をはさんだ30年にわたる年代記で、北国のロケも効果を挙げ、興行は好調、“東映現代劇攻勢第一弾”とも称された。同年、同スタッフによる『大いなる驀進』は、“国鉄創立88周年”の姉妹篇。

'60(東映東京)(監)関川秀雄(脚)新藤兼人(撮)仲沢半次郎(美)森幹男(音)斉藤一郎(編)長沢嘉樹(出)三国連太郎、高倉健、南廣、梅宮辰夫、中村賀津雄、小宮光江、八代万智子、星美智子、風見章子、東野英治郎、河野秋武、花沢徳衛、長谷部健、神田隆、加藤嘉、山本麟一、明石潮、石島房太郎


A-5 5/17(木)3:00pm 6/13(水)6:30pm 7/14(土)1:00pm

秘密

(83分・35mm・白黒)
今井正作品で主役スターとなった江原真二郎の相手役に、同じ東映で人気上昇中だった佐久間良子を配して製作された家城巳代治監督による正攻法の社会派青春ドラマ。メッキ工場に勤める工員が犯した罪の“秘密”を一人知る保母。二人は惹かれ合い、男は改心して自首を決意するが……。若い主演者が初々しい。

'60(東映東京)(監)(脚)家城巳代治(原)早乙女勝元(脚)内藤保彦(撮)飯村雅彦(美)中村修一郎(音)池野成(編)長沢嘉樹(出)江原眞二郎、佐久間良子、南廣、山田五十鈴、大村文武、小林裕子、花沢徳衛、殿山泰司、春丘典子、曽根晴美、須藤健、戸田春子、利根はる恵、清村耕次、潮健児、岡部正純


A-6 5/17(木)6:30pm 6/15(金)3:00pm 7/15(日)1:00pm

赤い夕陽の渡り鳥

(79分・35mm・カラー)
小林旭主演、斎藤武市監督による“渡り鳥”シリーズの1篇(原型となった『南国土佐を後にして』から数えて第5作。主人公の名が滝伸次になった『ギターを持った渡り鳥』から数えて第4作)。“渡り鳥”旭は、今回、会津磐梯山の麓に現われて、いつもの浅丘ルリ子(マキ)、宍戸錠(ハジキの政)らと事件に巻き込まれる。

'60(日活)(監)齋藤武市(原)原健三郎(脚)山崎巌、大川久男(撮)高村倉太郎(美)中村公彦(音)小杉太一郎(編)近藤光雄(出)小林旭、淺丘ルリ子、宍戸錠、白木マリ、大坂志郎、近藤宏、深江章喜、島津雅彦、河上信夫、楠侑子、青木富夫、紀原耕、黒田剛、神山勝、瀬山孝司、阪井幸一朗、村瀬辰也、光沢でんすけ、荒井岩衛、小林亘、白井鋭、宮川敏彦


A-7 5/18(金)3:00pm 6/14(木)6:30pm 7/14(土)4:00pm

切られ與三郎

(94分・35mm・カラー)
伊藤大輔監督の円熟期の佳品。歌舞伎の名作「与話情浮名横櫛」は、与三郎とお冨が再会する「源氏店の場」が、名台詞「しがねえ恋の情けが仇、命の綱の切れたのを……」とともに親しまれている。伊藤はこの美男と美女の情痴の世界を悠々たる演出で描き出し、艶やかな一篇としている。新内流しの与三郎とお富の出会いの場面は秀逸。カメラは宮川一夫、大映京都時代劇の豊潤さを堪能することができる。

'60(大映京都)(監)(脚)伊藤大輔(撮)宮川一夫(美)西岡善信(音)斉藤一郎(編)宮田味津三(出)市川雷蔵、中村玉緒、富士真奈美、淡路恵子、藤原礼子、村田知栄子、浦辺粂子、潮万太郎、多々良純、山路義人、小沢栄太郎、小堀阿吉雄


A-8 5/18(金)6:30pm 6/14(木)3:00pm 7/15(日)4:00pm

サラリーマン忠臣蔵

(100分・35mm・カラー)
忠臣蔵を現代サラリーマン社会に当てはめ、大石=森繁、吉良=東野、浅野=池部など東宝のオールスター出演で盛り上げた正月興行のパロディ喜劇。“松のロビーの殴打事件”等ひねりが利いている。“討入”は2か月後封切りの続篇に描かれた。『ホープさん』('51)に始まる“東宝サラリーマン映画100本記念”作品。

'60(東宝)(監)杉江敏男(原)井原康男(脚)笠原良三(撮)完倉泰一(美)村木与四郎(音)神津善行(出)森繁久彌、加東大介、宝田明、小林桂樹、司葉子、三船敏郎


A-9 5/19(土)1:00pm 6/15(金)6:30pm 7/17(火)3:00pm

大坂城物語

(95分・35mm・カラー)
関ヶ原の戦いで家族を失った主人公(三船敏郎)が、豊臣家のために活躍する時代劇巨篇。スターとして充実期のただなかにある三船の魅力が発揮されている。大掛かりに組まれたオープン・セットには東宝美術スタッフの力量が示されている。ベテラン稲垣浩監督は、それらを生かした戦闘シーンや馬車を疾走させる敵中突破のスペクタクル演出に力を注いでいる。

'61(東宝)(監)(脚)稲垣浩(原)村上元三(脚)木村武(撮)山田一夫(美)植田寛(音)伊福部昭(編)岩下廣一特技(監)督円谷英二(出)三船敏郎、香川京子、星由里子、久我美子、山田五十鈴、夏木陽介、平田昭彦、志村喬、市川団子、田崎潤、丹波哲郎


A-10 5/19(土)4:00pm 6/12(火)3:00pm 7/13(金)6:30pm

名もなく貧しく美しく

(129分・35mm・白黒)
ろうあ者同士の結婚をテーマに、題名そのままの人生を送る若夫婦を描いた感動作。夫婦の会話は手話で示され、画面にはその日本語字幕が現われる。松山善三は自らの脚本を妻を主演に初監督し、興行的にも成功を収めた。高峰秀子は、サンフランシスコ映画祭主演女優賞ほかを受賞した。ベストテン5位。続篇は6年後に公開。

'61(東京映画)(監)(脚)松山善三(撮)玉井正夫(美)中古智、狩野健(音)林光(編)広瀬千鶴(出)高峰秀子、小林桂樹、原泉、荒木道子、根岸明美、草笛光子、加山雄三、高橋昌也、松本染升、沼田曜一、中北千枝子、南美江、一の宮あつ子


A-11 5/20(日)1:00pm 6/19(火)6:30pm 7/18(水)3:00pm

紅の拳銃

(86分・35mm・カラー)
21歳で事故死をとげた若手スター、赤木圭一郎の遺作。この当時彼は、石原裕次郎、小林旭に次ぐ「第三の男」として、日活ダイヤモンド・ラインの一翼をになっていた。この作品では殺し屋役を演じ、得意のガン・プレーを披露している。次回作の撮影中、ゴーカート事故により劇的な死を迎えるのだが、映画全盛期に流星のように現れ、去っていった夭折のスターとして、伝説の存在となった。

'61(日活)(監)牛原陽一(原)田村泰次郎(脚)松浦健郎(撮)姫田眞佐久(美)木村威夫(音)小杉太一郎(編)辻井正則(出)赤木圭一郎、白木マリ、笹森礼子、芦田伸介、藤村有弘、垂水悟郎、小沢栄太郎、小沢昭一、吉行和子、草薙幸二郎、深江章喜


A-12 5/20(日)4:00pm 6/20(水)3:00pm 7/17(火)6:30pm

甘い夜の果て

(85分・35mm・白黒)
木下惠介の助監督を長年勤めた吉田喜重が、助監督の身分のまま映画化した3作目。貧しさからの脱出のため次々に女達を食い物にし、富豪令嬢と関係したのも束の間、結局は大人たちに踊らされていたと悟る青年の挫折を描いたもの。「アメリカの悲劇」の映画化作品『陽のあたる場所』('51)の日本版といえよう。

'61(松竹大船)(監)(脚)吉田喜重(脚)前田陽一(撮)成島東一郎(美)芳野尹孝(音)林光(編)杉原よし(出)瑳峨三智子、津川雅彦、杉田弘子、瞳麗子、山上輝世、滝沢修、日高澄子、佐々木孝丸、城所英夫、浜村純、佐藤慶、田中美智子、三谷幸子


A-13 5/22(火)3:00pm 6/23(土)4:00pm 7/18(水)6:30pm

みだれ髪

(95分・35mm・カラー)
泉鏡花の「三枚鏡」を映画化した本作は、同原作者・同監督による『湯島の白梅』('55)、『白鷺』('58)『歌行燈』('60)に続くものであり、悲劇のヒロインを一貫して山本富士子が演じている。新派劇団の女形出身である衣笠監督は、時代劇に独自の世界を築いた人物であり、とくに情緒纏綿たる描写の第一人者といえる。

'61(大映東京)(監)(脚)衣笠貞之助(原)泉鏡花(撮)渡辺公夫(美)柴田篤二(音)斎藤一郎(編)名取功男(出)山本富士子、勝新太郎、川崎敬三、中村伸郎、北林谷栄、角梨枝子、西村晃、殿山泰司、花布辰男、佐野浅男、南左斗子、南美江、倉田マユミ、賀原夏子、穂高のり子、市田ひろみ、近江輝子


A-14 5/22(火)6:30pm 6/24(日)1:00pm 7/19(木)3:00pm

不良少年

(89分・35mm・白黒)
短篇記録映画界に新風を巻き起こした岩波映画の逸材、羽仁進による初の長篇劇映画。職業俳優によらず実際に非行歴を持つ少年たちを起用したのをはじめ、即興演出や、テレビ作品での経験から着想を得たという16mmでの撮影(35mmへのブローアップ)によりリアルな描写に成功し、キネマ旬報ベスト・テンでは1位をさらった。

'61(岩波映画)(監)(脚)羽仁進(原)地主愛子(撮)金宇満治(音)武満徹(出)山田幸男、吉武和広、山崎耕一郎、黒川靖男、伊藤正幸


A-15 5/23(水)3:00pm 6/22(金)6:30pm 7/21(土)1:00pm

社長道中記

(90分・35mm・カラー)
『三等重役』('52)で原型ができ、のち東宝のドル箱として“社長シリーズ”と通称された約40本の中の1本で、『用心棒』との2本立て公開で大ヒット。監督は同シリーズ最多演出の松林宗恵。主演の森繁をはじめ「現場ではアドリブの連続」(鈴木斌=撮影)だったという楽しさが画面にみなぎる。続篇は1ヶ月後に封切。

'61(東宝)(監)松林宗恵(原)源氏鶏太(脚)笠原良三(撮)鈴木斌(美)浜上兵衛(音)古関裕而(編)岩下広一(出)森繁久弥、加東大介、小林桂樹、団令子、淡路恵子、新珠三千代、三橋達也、久慈あさみ、浜美枝、飯田蝶子、山茶花究、三木のり平、十朱久雄、英百合子、加藤春哉、左卜全、塩沢とき


A-16 5/23(水)6:30pm 6/21(木)3:00pm 7/22(日)1:00pm

怪談 お岩の亡霊

(94分・35mm・白黒)
鶴屋南北の原作に忠実に(クレジットはなし)、伊右ヱ門をどこまでも冷酷非道の男とし、照りつける夏の日差しや滴る汗で夏の季節感を表現するなど、加藤泰流リアリズムが冴えわたる。お岩が鏡の中に変り果てた自分の顔を見る髪漉きの場をワンカットで見せる趣向は、数ある「四谷怪談」の中でも屈指の名場面。

'61(東映京都)(監)(脚)加藤泰(撮)古谷伸(美)桂長四郎(音)高橋半(編)堀池幸三(出)若山富三郎、近衛十四郎、沢村訥升、伏見扇太郎、桜町弘子、三原有美子、藤代佳子、尾上鯉之助、渡辺篤、伊沢一郎、明石潮、吉川満子、沢村宗之助、坂東好太郎、水野浩、林彰太郎、和崎隆太郎、小森敏


A-17 5/24(木)3:00pm 6/24(日)4:00pm 7/24(火)6:30pm

怪談 蚊喰鳥

(78分・35mm・白黒)
美しい常盤津の師匠菊次(中田康子)、菊次に焦がれて死んだ按摩の辰の市(船越英二)の幽霊、その弟徳の市(船越二役)、菊次のヒモ孝次郎(小林勝彦)が繰り広げる愛と欲にまみれた駆け引きの物語。幽霊はいずれも誰かの擬態と考えられる余地を残す合理的な構成で、同時期封切の『怪談お岩の亡霊』とともに怪談ものの一つの到達点を示す。

'61(大映京都)(監)森一生(原)宇野信夫(脚)国弘威雄(撮)本多省三(美)西岡善信(音)倉島暢(編)谷口孝司(出)船越英二、中田康子、小林勝彦、山本弘子、丹羽又三郎、寺島雄作、水原浩一、村田扶実子、丸凡太、松岡良樹、森宏之、和田房子


A-18 5/24(木)6:30pm 6/22(金)3:00pm 7/21(土)4:00pm

八百万石に挑む男

(95分・35mm・カラー)
将軍吉宗のご落胤騒動として有名な“天一坊と伊賀之亮”の物語を、それぞれ中村賀津雄と市川右太衛門が演じるという定番的内容だが、橋本忍(脚本)と中川信夫(監督)は「最近の東映時代劇の中ではかなり毛色の変わった作品」(福田定良)に仕上げた。二人が対する老中松平伊豆守に山村聰、大岡越前守に河原崎長十郎。

'61(東映京都)(監)中川信夫(脚)橋本忍(撮)三木滋人(美)桂長四郎(音)渡辺宙明(編)宮本信太郎(出)市川右太衛門、中村賀津雄、河原崎長十郎、山村聡、桜町弘子、河原崎長一郎、水島道太郎、仲谷昇、柳永二郎、徳大寺伸、御橋公、松浦築枝、山崎二郎、藤田安男、中村時之介、明石潮、坂本武


A-19 5/25(金)3:00pm 6/21(木)6:30pm 7/22(日)4:00pm

にっぽんのお婆ぁちゃん

(94分・35mm・白黒)
浅草見物を冥土の土産にと心に決めて仲見世にやってきた二人の老婆(北林谷栄とミヤコ蝶々)の出会いと一日を描きながら、老人問題を真摯に見つめた今井正監督の秀作で、主役から脇役にまで大挙出演している名優たちの演技が見もの。M.I.I.プロの名は、脚本・監督・製作の3人の頭文字から取った。ベストテン9位。

'62(M.I.I.プロ)(監)今井正(原)(脚)水木洋子(撮)中尾駿一郎(美)江口準次(音)渡辺宙明(編)河野秋和(出)北林谷栄、ミヤコ蝶々、田村高廣、伴淳三郎、渡辺文雄、渥美清、小沢昭一、三木のり平、木村功、十朱幸代、関千恵子、五月女マリ、市原悦子、沢村貞子、飯田蝶子、浦辺粂子、原泉、村瀬幸子


A-20 5/25(金)6:30pm 6/23(土)1:00pm 7/24(火)3:00pm

人間狩り

(89分・35mm・白黒)
辣腕非情で知られる刑事が、時効寸前となった殺人事件の犯人を追いかける。苦心の末犯人の居場所をつきとめたとき、彼は幸せな家庭をもっていた。時効まではわずかな時間しか残っていない。逮捕をためらう彼に思いがけない真実が??。 石原裕次郎作品などの手堅い演出で、日活アクションをリードした松尾昭典監督の佳作。

'62(日活)(監)松尾昭典(脚)星川清司(撮)岩佐一泉(美)中村公彦(音)鏑木創(編)井上親弥(出)長門裕之、中原早苗、大坂志郎、渡辺美佐子、北林谷栄、菅井一郎、梅野泰靖、小沢栄太郎、高野由美、山岡久乃、高山秀雄、伊藤孝雄、下元勉


A-21 5/26(土)1:00pm 6/20(水)6:30pm 7/26(木)3:00pm

青年の椅子

(91分・35mm・カラー)
裕次郎主演で4本製作された源氏鶏太原作のサラリーマンもの最後の作品で、今回は社内の派閥抗争に巻き込まれる熱血漢の若手社員に扮している。西河克己監督にとっては初の裕次郎映画となった。宇野重吉、滝沢修ら劇団民芸の役者が日活と契約を結び、プログラムピクチャーの配役にも厚みを加えていた。

'62(日活)(監)西河克己(原)源氏鶏太(脚)松浦健郎(撮)岩佐一泉(美)佐谷晃能(音)池田正義(編)鈴木晄(出)石原裕次郎、芦川いづみ、水谷良重、滝沢修、東野英治郎、宇野重吉、藤村有弘、宮城千賀子、小川虎之助、芦田伸介、山田吾一


A-22 5/26(土)4:00pm 6/26(火)6:30pm 7/25(水)3:00pm

座頭市物語

(96分・35mm・白黒)
居合いと壺振りに長けた盲目のやくざ座頭市。胸を病む浪人、平手造酒(天知茂)に深い友情を抱きながらも、斬らざるを得ないやくざの哀しみを、前作『不知火検校』から盲目者の演技を探究していた勝新太郎が身体全体で演じ、以後26作に及ぶシリーズの祖型を築いた。監督の三隅と撮影の牧浦の実質的な初コンビ作でもある。

'62(大映京都)(監)三隅研次(原)子母沢寛(脚)犬塚稔(撮)牧浦地志(美)内藤昭(音)伊福部昭(編)菅沼完二(出)勝新太郎、万里昌代、島田竜三、三田村元、天知茂、南道郎、柳永二郎、千葉敏郎、守田学、山路義人、舟木洋一、尾上栄五郎、毛利郁子、真城千都世、市川謹也、藤川準、堀北幸夫善


A-23 5/27(日)1:00pm 6/26(火)3:00pm 7/19(木)6:30pm

東京湾

(83分・35mm・白黒)
麻薬取締官射殺事件の犯人を追う刑事、その捜査線上に浮かんだ容疑者は、かつて戦場で生死をともにした戦友だった。10年の歳月が2人を刑事と犯人に隔ててしまったのだった。松本清張作品の映画化など推理・サスペンス映画の名作で知られる野村芳太郎監督が、セミドキュメンタリー・タッチで描いた異色作。 俳優の佐田啓二が企画した作品としても記憶される。

'62(松竹大船)(監)野村芳太郎(脚)松山善三、多賀祥介(撮)川又昂(美)宇野耕司(音)芥川也寸志(編)浜村義康(出)石崎二郎、榊ひろみ、葵京子、西村晃、玉川伊佐夫、三井弘次、織田政雄、細川俊夫、加藤嘉、富田仲次郎、高橋とよ


A-24 5/27(日)4:00pm 6/29(金)6:30pm 7/25(水)6:30pm

おとし穴

(97分・35mm・白黒)
安部公房のテレビ・ドラマ原作を安部自身が脚本化、勅使河原宏が初の長篇劇映画として監督した。また、ATGにとっても初配給の日本映画となった。炭鉱で起きた殺人事件をめぐる物語だが、その前衛的表現はまさに60年代芸術の先端を告げていた。「これは新らしい映画である」(戸井田道三)。ベストテン7位。

'62(勅使河原プロ)(監)勅使河原宏(原)(脚)安部公房(撮)瀬川浩(美)山崎正夫(音)武満徹、一柳慧、高橋悠治(編)守随房子(出)井川比佐志、佐々木すみ江、矢野宣、観世栄夫、田中邦衛、佐藤慶、宮原カズオ、奈良あけみ、袋正、金内喜久夫、大宮貫一、松尾茂、島田屯、朝倉三平、松本平九郎


A-25 5/29(火)3:00pm 6/30(土)4:00pm 7/26(木)6:30pm

涙を、獅子のたて髪に

(92分・35mm・白黒)
「松竹ヌーベルバーグ」三羽烏の一人、篠田正浩監督の8作目。2作目の『乾いた湖』でコンビを組んだ新進気鋭の歌人、寺山修司の脚本を映画化したもの。デビュー当時から技巧派、モダニストとして注目されていたが、この作品では耽美的様式が顕著に見られ、以後の作風を決定的なものにした。

'62(松竹大船)(監)(脚)篠田正浩(脚)寺山修司、水沼一郎(撮)小杉正雄(美)梅田千代夫(音)武満徹、八木正生(編)杉原よし(出)藤木孝、早川保、加賀まりこ、南原宏治、岸田今日子、山村聡、丹波哲郎、永田靖、小池朝雄、田中晋二、神山繁、佐々木孝丸、浜村純、十朱久雄、細川俊夫、清村耕次


A-26 5/29(火)6:30pm 7/1(日)1:00pm 7/20(金・祝)4:00pm

若い季節

(88分・35mm・カラー)
高視聴率を誇ったNHKの連続テレビドラマの映画化。<ウワーオ、ウワーオ、お腹の底からウワ?オ>の主題歌で始まる物語の舞台は、美人の女社長が経営するプランタン化粧品。東宝の喜劇人や若手俳優とともに、当時全盛を誇った渡辺プロダクションのタレント集団が出演した喜劇。

'62(東宝)(監)古澤憲吾(原)(脚)小野田勇(脚)田波靖男(撮)飯村正(美)小川一男(音)中村八大、宮川泰(出)団令子、淡路恵子、植木等、ハナ肇、坂本九、ジェリー藤尾、有島一郎、浜美枝、藤山陽子、若林映子、中真千子、田村奈己、佐原健二、谷啓、平田昭彦、沢村貞子、ビンボ・ダナオ、松村達雄


A-27 5/30(水)3:00pm 7/1(日)4:00pm 7/20(金・祝)1:00pm

忍びの者

(104分・35mm・白黒)
村山知義の原作を山本薩夫が監督した大映の娯楽大作で、ヒットを受けて以後シリーズ化され、映画・漫画・テレビなどで忍者ブームを生み出すきっかけともなった。百地三太夫の策略で信長暗殺に走る石川五右衛門を市川雷蔵がクールな魅力で演じている。いわゆる忍術映画でなく「忍術を科学的に解明した異色作」(瓜生忠夫)。

'62(大映京都)(監)山本薩夫(原)村山知義(脚)高岩肇(撮)竹村康和(美)内藤昭(音)渡辺宙明(編)宮田味津三(出)市川雷藏、藤村志保、伊藤雄之助、小林勝彦、城健三朗、浦路洋子、藤原礼子、眞城千都世、岸田今日子、丹羽又三郎、西村晃、中村豊、高見国一、千葉敏郎、沢村宗之助、加藤嘉


A-28 5/30(水)6:30pm 6/28(木)3:00pm 7/28(土)1:00pm

ひばり・チエミのおしどり千両傘

(86分・35mm・カラー)
中村錦之助主演の「一心太助」シリーズや、『ひばり捕物帖 かんざし小判』等のミュージカル時代劇で一躍注目を浴び、<時代劇のヌーベルバーグ>と言われた沢島忠が、年に4~6本のハイペースで撮り続けていた時期の代表作の1本。姫(美空ひばり)と腰元(江利チエミ)が入れ替わっての珍道中を軽やかなテンポで描く。

'63(東映京都)(監)(脚)沢島忠(脚)笠原良三(撮)山岸長樹(美)井川徳道(音)米山正夫(編)宮本信太郎(出)美空ひばり、江利チエミ、水原弘、安井昌二、千秋実、清川虹子、由利徹、夢路いとし、喜味こいし、北龍二、中村時之介、中村錦司


A-29 5/31(木)3:00pm 6/27(水)6:30pm 7/28(土)4:00pm

雪之丞変化

(113分・35mm・カラー)
長谷川一夫300本記念映画として市川崑が監督した大映オールスター出演作品。華やかな色彩に描かれる様式美と新感覚の仇討ち復讐譚で、長谷川は雪之丞と闇太郎に扮している。「何よりの驚きは(同じ役を30年程も前に衣笠版でやっていることを知ればことさらに)長谷川一夫の二役演技」(トニー・レインズ)。

'63(大映京都)(監)市川崑(原)三上於菟吉(脚)伊藤大輔、衣笠貞之助、和田夏十(撮)小林節雄(美)西岡善信(音)芥川也寸志、八木正生(編)西田重雄(出)長谷川一夫、山本富士子、若尾文子、市川雷蔵、勝新太郎、船越英二、林成年、柳永二郎、市川中車、中村鴈治郎、中村豊、真城千都世、千葉敏郎


A-30 5/31(木)6:30pm 6/27(水)3:00pm 7/29(日)1:00pm

非行少女

(114分・35mm・白黒)
『キューポラのある街』('62)でデビューした浦山桐郎監督の第2作。家庭に居場所を失った少女(和泉雅子)の非行と立ち直りを、彼女を励ます青年(浜田光夫)との恋心に絡ませて描く。前作での吉永小百合同様、和泉雅子も浦山演出によってその演技を高く評価された。モスクワ映画祭金メダル賞。ベストテン10位。

'63(日活)(監)(脚)浦山桐郎(原)森山啓(脚)石堂淑朗(撮)高村倉太郎(美)中村公彦(音)黛敏郎(編)丹治睦夫(出)和泉雅子、浜田光夫、香月美奈子、杉山俊夫、高原駿雄、浜村純、小池朝雄、北林谷栄、小林トシ子、沢村貞子、小夜福子、小沢昭一


A-31 6/1(金)3:00pm 7/3(火)6:30pm 7/29(日)4:00pm

白と黒

(113分・35mm・白黒)
『黒い画集』('60)の成功を再びとばかり橋本忍の脚本(今回はオリジナル)を堀川弘通が監督した、緻密で重厚な社会派サスペンス。前作で追われる立場だった小林桂樹が、ここでは検事になって殺人事件の真相を追う。出世欲の塊のようなエリート弁護士を仲代達也がいかにもそれらしく熱演。ベストテン9位。

'63(東京映画)(監)堀川弘通(脚)橋本忍(撮)村井博(美)水谷浩(音)武満徹(編)黒岩義民(出)小林桂樹、仲代達矢、淡島千景、乙羽信子、大空真弓、千田是也、東野英治郎、小沢栄太郎、西村晃、山茶花究、三島雅夫


A-32 6/1(金)6:30pm 7/5(木)3:00pm 8/4(土)1:00pm

手討

(85分・35mm・カラー)
無声時代から何度も映画化がある岡本綺堂原作「番町皿屋敷」の大映・田中徳三監督による色彩シネスコ版作品。ご存じ青山播磨には市川雷蔵、腰元お菊には松竹から移籍した藤由紀子(故田宮二郎夫人)が扮している。なお、大映は田中徳三の師匠の一人、伊藤大輔の演出でこの9年前に『お菊と播磨』('54)を製作。

'63(大映京都)(監)田中徳三(原)岡本綺堂(脚)八尋不二(撮)牧浦地志(美)西岡善信(音)伊福部昭(編)山田弘(出)市川雷蔵、藤由起子、城健三朗、成田純一郎、中村豊、眞城千都世


A-33 6/2(土)1:00pm 7/3(火)3:00pm 7/27(金)6:30pm

昭和侠客伝

(91分・35mm・カラー)
古くから浅草に縄張りをもつ桜一家は、愚連隊あがりの黒帯一家の攻勢にさらされていたが、若頭的存在の重宗が目を光らせている間は、つけいる隙を与えなかった。だが、彼が伊勢に追われた後、事態は大きく変わっていく。やがてプログラム・ピクチャーとして大きな流れを形成する「任侠映画」の先駆的な作品。鶴田浩二は本作と『人生劇場・飛車角』で、任侠映画のスターとしての地歩を占めた。

'63(東映東京)(監)(脚)石井輝男(撮)山沢義一(美)藤田博(音)菊池俊輔(編)鈴木寛(出)鶴田浩二、梅宮辰夫、丘さとみ、三田佳子、大木実、内田良平、嵐寛寿郎、平幹二朗、待田京介、坂本スミ子、芦屋雁之助、三井弘次、山本麟一


A-34 6/2(土)4:00pm 6/13(水)3:00pm 6/28(木)6:30pm

五番町夕霧樓

(137分・35mm・カラー)
娯楽映画の雄として知られる東映は男性スターがひしめく活劇中心の映画製作会社だが、この時期、女優陣を充実させるべく、名匠、田坂具隆監督に托されたのが、新人女優佐久間良子であった。官能的な場面では丁寧なメモ書きを与え、十分に主人公の心理を組み上げ、一つの台詞、しぐさにこだわったその演出はつややかな光沢を放っている。

'63(東映東京)(監)(脚)田坂具隆(原)水上勉(脚)鈴木尚之(撮)飯村雅彦(美)森幹男(音)佐藤勝(編)長沢嘉樹(出)佐久間良子、木暮実千代、丹阿弥谷津子、岩崎加根子、河原崎長一郎、千秋実、進藤英太郎、東野英治郎、宮口精二、織田政雄


A-35 6/3(日)1:00pm 7/4(水)6:30pm 7/27(金)3:00pm

江分利満氏の優雅な生活

(102分・35mm・白黒)
どこにでもいる平均的サラリーマン、江分利満氏(小林桂樹)の日常と感慨を、ユーモアと哀感をにじませながらテンポよく伸びやかに描いた、映画による個性的な日本人論とも言い得る作品。山口瞳の直木賞受賞作となった同名原作の映画化で、軽妙洒脱、融通無碍を旨とする岡本喜八流演出の粋が冴えわたる。

'63(東宝)(監)岡本喜八(原)山口瞳(脚)井手俊郎(撮)村井博(美)浜上兵衛(音)佐藤勝(編)黒岩義民(出)小林桂樹、新珠三千代、東野英治郎、ジェリー伊藤、中丸忠雄、横山道代、平田昭彦、江原達怡、田村奈己、北あけみ、英百合子、太刀川寛


A-36 6/3(日)4:00pm 6/12(火)6:30pm 6/29(金)3:00pm

にっぽん昆虫記

(123分・35mm・白黒)
波乱に満ちた一人の女性の半生を、実在の人物からの徹底した取材にもとづき、わが国の現代史と重ねつつ重層的に描き出した今村昌平監督の代表作の一つ。なかば性の放浪ともいえるその人生航路をみつめる今村の視線には、女性の「生命力」にたいする賛嘆の思いがほの見えている。この後、今村作品は虚構の生産工場であるスタジオの外へ、日本の古層へと向かうことになる。

'63(日活)(監)(脚)今村昌平(脚)長谷部慶次(撮)姫田真左久(美)中村公彦(音)黛敏郎(出)左幸子、吉村実子、長門裕之、北村和夫、河津清三郎、小沢昭一、炎加世子、岸輝子、北林谷栄、小池朝雄、露口茂、殿山泰司


A-37 6/5(火)3:00pm 7/5(木)6:30pm 8/5(日)4:00pm

光る海

(125分・35mm・カラー)
作家志望の少女が恋愛に悩み、友人の出産や母の再婚に揺れながら成長する。アクション路線とならび日活の主要ジャンルを形成していた石坂洋次郎原作の青春ドラマを、中平康がスマートに演出している。若手スターたちの競演に加え高峰三枝子や森雅之、田中絹代といったベテランとの組み合わせも見もの。

'63(日活)(監)中平康(原)石坂洋次郎(脚)池田一朗(撮)山崎善弘(美)松山崇(音)黛敏郎(編)辻井正則(出)吉永小百合、浜田光夫、森雅之、高峰三枝子、田中絹代、和泉雅子、山内賢、十朱幸代、杉山俊夫、和田浩治、宮口精二、ミヤコ蝶々、飯田蝶子、高野由美、小夜福子、清水將夫、佐野浅夫


A-38 6/5(火)6:30pm 7/7(土)1:00pm 8/1(水)3:00pm

赤いハンカチ

(98分・35mm・カラー)
石原裕次郎、浅丘ルリ子主演の64年日活正月映画。誤って殺した容疑者の娘との愛に悩み、彼女と結婚した同僚(二谷英明)の秘密を探る元刑事の物語。主題歌の人気という不可欠の要素も含めて「ムード・アクションの正系」であり、その中でも「最もすぐれている」(渡辺武信)作品。編集の切れ味がまたすばらしい。

'64(日活)(監)(脚)舛田利雄(脚)小川英、山崎巌(撮)間宮義雄(美)千葉和彦(音)伊部晴美(編)辻井正則(出)石原裕次郎、浅丘ルリ子、二谷英明、川地民夫、笹森礼子、金子信雄、森川信、芦田伸介、清水将夫、桂小金治、深江章喜、南寿美子、堀恭子、星ナオミ、杉江弘、木島一郎、河上信夫、宮原徳平


A-39 6/6(水)3:00pm 7/7(土)4:00pm 7/31(火)6:30pm

帝銀事件 死刑囚

(108分・35mm・白黒)
帝銀事件の真相を、綿密な調査にもとづくオリジナル・シナリオで追究した熊井啓監督の第1作。その社会派としてのスタンスは最新作『日本の黒い夏 [冤罪]』まで引き継がれている。銀行や警察署、新聞社など、セットによる現場の再現は、取調室で使われていたテーブルの大きさや椅子の配置といった細部にまで及んだ。

'64(日活)(監)(脚)熊井啓(撮)岩佐一泉(美)千葉和彦(音)伊福部昭(編)丹治睦夫(出)信欽三、内藤武敏、笹森礼子、柳川慶子、井上昭文、北林谷栄、高品格、垂水悟郎、鈴木瑞穂、佐野浅夫、平田大三郎、庄司永建、藤岡重慶、木浦佑三、伊藤寿章、長尾敏之助、草薙幸二郎、宮崎準、雪丘恵介


A-40 6/6(水)6:30pm 6/19(火)3:00pm 6/30(土)1:00pm

君も出世ができる

(100分・35mm・カラー)
フランキー堺、益田喜頓、雪村いずみらの芸達者ぶりに支えられた和製ミュージカル映画の成功例。折からのオリンピック・ブームを背景に、旅行会社に勤めるサラリーマンの仕事や恋を明るく描き出す。快調な笠原良三・井手俊郎脚本をハリウッド映画からよく学んだキャメラワークで巧みに絵にした須川栄三演出は上出来。

'64(東宝)(監)須川榮三(脚)笠原良三、井手俊郎(詞)谷川俊太郎(撮)内海正治(美)村木忍(音)黛敏郎(編)黒岩義民(出)フランキー堺、高嶋忠夫、雪村いづみ、益田喜頓、有島一郎、中尾ミエ、浜美枝、並木一路、中山豊、田中淳一、鈴木和夫


A-41 6/7(木)3:00pm 7/8(日)4:00pm 8/1(水)6:30pm

狼と豚と人間

(95分・35mm・白黒)
貧しさからヤクザ者になった題名そのままのような3兄弟それぞれの生き様を見つめ、ある犯罪をめぐっての3人の交叉と争いを描く。深作欣二監督はこの作品でヒットこそ逃がしたが、批評では「すさまじい暴力描写に組織に飼われることを拒否する主題を盛り込んだ佳作」(佐藤忠男)など、その実力を大いに評価された。

'64(東映東京)(監)(脚)深作欣二(脚)佐藤純弥(撮)星島一郎(美)藤田博(音)富田勲(編)田中修(出)高倉健、三国連太郎、北大路欣也、江原眞二郎、中原早苗、志麻ひろ子、岡崎二朗、春日俊二、沢彰謙、石橋蓮司、泗水誠一、越前谷政二、菅沼正、片山滉、内藤正、ピエール・瀬川、大木史朗、志摩栄


A-42 6/7(木)6:30pm 7/6(金)3:00pm 8/4(土)4:00pm

大喧嘩

(おおでいり)(93分・35mm・カラー)
浅間山の噴煙をのぞむ小田井宿。勝場一家と笹島一家の喧嘩で、親分を斬って名前をあげた榛名の秀次郎は、旅に出て身を隠さざるをえなかった。3年後、帰ってみれば、小田井宿の様子はすっかり変わっており、行く末を誓った女は弟分の女房になっていた。主演の大川橋蔵が山下耕作監督の『関の弥太ツペ』に刺激されて、同監督に依頼した作品とのことである。

'64(東映京都)(監)山下耕作(脚)村尾昭、鈴木則文、中島貞夫(撮)鈴木重平(美)富田次郎(音)木下忠司(編)宮本信太郎(出)大川橋蔵、丹波哲郎、河原崎長一郎、十朱幸代、入江若葉、松浦築枝、加藤嘉、穂高稔、徳大寺伸、片岡栄二郎、藤木錦之助、鈴木金哉、金子信雄、阿波地大輔、川浪公次郎


A-43 6/8(金)3:00pm 7/8(日)1:00pm 8/2(木)6:30pm

甘い汗

(119分・35mm・白黒)
水木洋子がフジテレビのドラマとして書いた脚本を映画用に練り直した豊田四郎監督の秀作。水商売に限界が見えてきた年増女の哀しみとバイタリティ。大映以外の他社初出演の京マチ子は毎日映画コンクール等で主演女優賞を得た。ベストテン8位。「名匠が描くあつい甘いおんなの汗!」と宣伝された佐田啓二の遺作。

'64(東京映画)(監)豊田四郎(原)(脚)水木洋子(撮)岡崎宏三(美)水谷浩(音)林光(編)広瀬千鶴(出)京マチ子、佐田啓二、池内淳子、桑野みゆき、小沢栄太郎、山茶花究、名古屋章、小沢昭一、市原悦子、木村俊恵、桜井浩子、川口敦子


A-44 6/8(金)6:30pm 7/10(火)3:00pm 8/5(日)1:00pm

にっぽんぱらだいす

(92分・35mm・白黒)
敗戦直後から1958年の赤線廃止に至る遊廓の変遷を背景に、消えゆく遊廓に殉じようとする光子(香山良子)と、たくましく生き抜くはるみ(ホキ徳田)を対比させて描く。監督、助監督、キャメラマン、主演女優すべて新人という若さ溢れる青春映画で、本作でデビューした前田陽一にとっては最初で最後の完全オリジナル作品でもある。

'64(松竹大船)(監)(脚)前田陽一(撮)竹村博(美)森田郷平(音)山本直純(編)寺田昭光(出)香山美子、ホキ・徳田、加賀まりこ、加東大介、益田喜頓、勝呂誉、柳沢真一、長門裕之、菅原通済、長門勇、菅原文太、高野真二、早川保、水科慶子


A-45 6/9(土)1:00pm 7/4(水)3:00pm 8/3(金)3:00pm

執炎

(120分・35mm・白黒)
1960年代の日活で次々と話題作を放っていた蔵原惟繕=山田信夫のコンビによる代表作の一つ。蔵原監督のもとで演技派への転身を遂げつつあった浅丘ルリ子は、自らの「百本記念映画」にこの作品を希望。網元の息子と結ばれる貧しい旧家の娘に扮し、戦争で引き裂かれるひたむきな愛の情念を表現している。

'64(日活)(監)蔵原惟繕(原)加茂菖子(脚)山田信夫(撮)間宮義雄(美)松山崇(音)黛敏郎(編)鈴木晄(出)浅丘ルリ子、松尾嘉代、信欣三、細川ちか子、伊丹一三、平田大三郎、奈良岡朋子、芦川いづみ、上野山功一、河上信夫、宇野重吉


A-46 6/9(土)4:00pm 7/11(水)6:30pm 7/31(火)3:00pm

馬鹿が戦車(タンク)でやって来る

(93分・35mm・カラー)
すべて1964年に封切られた山田洋次監督、ハナ肇主演による“馬鹿”3部作の一篇で、団伊玖磨作「日向村物語」を原案に、貧しく愚かな元少年戦車兵サブの悲哀と怒りの爆発が描かれる。前2作の背景、『馬鹿まるだし』の工場地帯、『いいかげん馬鹿』の漁村が、ここでは農村に変わった。戦車は雪上車を改造したものを使用。

'64(松竹大船)(監)(脚)山田洋次(原)(音)團伊玖磨(撮)高羽哲夫(美)佐藤公信(出)ハナ肇、東野英治郎、谷啓、岩下志麻、犬塚弘、小沢昭一、花沢徳衛、飯田蝶子、田武謙三、菅井一郎、松村達雄、穂積隆信、渡辺篤、武智豊子、小桜京子


A-47 6/10(日)1:00pm 7/11(水)3:00pm 8/3(金)6:30pm

若草物語

(85分・35mm・カラー)
日活の四大アイドル女優が競演する1965年の正月映画として公開され、年間を通じて第6位の興行成績をあげた大ヒット作。結婚した長女(芦川いづみ)を頼って上京した次女(浅丘ルリ子)、三女(吉永小百合)、四女(和泉雅子)が織りなす青春恋愛ドラマ。内容はオルコットの同名小説とは無関係。

'64(日活)(監)森永健次郎(脚)三木克己(撮)松橋梅夫(美)横尾嘉良(音)崎出伍一(編)井上治(出)芦川いづみ、浅丘ルリ子、吉永小百合、和泉雅子、浜田光夫、杉山俊夫、和田浩治、山内賢、伊藤雄之助、東恵美子、清水将夫、高野由美、田代みどり、井東柳晴、早川由記、内藤武敏、桂小かん、天坊準


A-48 6/10(日)3:30pm 7/6(金)6:00pm 8/2(木)2:30pm

飢餓海峡

(182分・35mm・白黒)
殺人を犯してしまった男と、ほんの束の間その恩を受けた女、そして姿の見えぬ犯人を追う刑事。終戦直後の社会相を背景に、それぞれの人物が織りなすその後の10年を描いたこのドラマは、ある時代の人間の「宿業」「罪と罰」の物語とみることができるだろう。戦前からの名匠、内田吐夢監督の戦後の代表作であると同時に、戦後日本映画の到達点を示す作品でもある。

'64(東映東京)(監)内田吐夢(原)水上勉(脚)鈴木尚之(撮)仲沢半次郎(美)森幹男(音)富田勲(編)長沢嘉樹(出)三国連太郎、左幸子、高倉健、伴淳三郎、三井弘次、加藤嘉、沢村貞子、藤田進、風見章子、亀石征一郎、曽根秀介、安藤三男