特集・逝ける映画人を偲んで 1995-1996

女人哀愁

保守的な家庭の嫁となり、理解のない家人らの中で悩みつつも、ついに独立を 果たす新しい女性を25歳の入江たか子が演じた。入江プロとP.C.L.の提携第一 作。

'37（P.C.L.映画製作所=入江ぷろだくしょん）(出)入江たか子*（河野廣子） (監)(脚)成瀬巳喜男(脚)田中千禾夫(撮)三浦光雄(美)戸塚正夫(音)江口夜詩 (出)堤眞佐子、神田千鶴子、澤蘭子、水上怜子

からゆきさん

入江たか子が南方帰りの女＝母を演じた意欲作品。社会派の木村荘十二監督が、 薄幸の女たちの運命をスクリーンの上に拡げてみせた、戦前版の「からゆきさ ん」である。

'37（P.C.L.映画製作所＝入江ぷろだくしょん）(出)入江たか子*（おゆき） (監)木村荘十二(原)鮫島麟太郎(脚)畑本秋一、東坊城恭長(撮)立花幹也(美)山 崎醇之助(音)紙恭輔(出)清川虹子、清川玉枝、毛利菊枝、島田好乃

ギターを持った渡り鳥

無国籍映画と呼ばれた日活得意のアクション映画。主人公＝小林旭、ライバル ＝宍戸錠、ボス＝金子信雄という布陣が確立された、事実上のシリーズ第一作 である。

'59（日活）(出)金子信雄*（秋津礼三郎）(監)齋藤武市(原)小川英(脚)山崎巖、 原健三郎(撮)高村倉太郎(美)坂口武玄(音)小杉太一郎(出)小林旭、浅丘ルリ子、 中原早苗、渡辺美佐子、宍戸錠

仁義なき戦い　 代理戦争

深作欣二監督、菅原文太主演で大ヒットとなった同名作品の第三作。卑劣な親 分を好演したのは、個性派金子信雄。川谷拓三はこの時初めてポスターにその 名前が掲載された。

'73（東映）(出)川谷拓三*（西条勝治）、金子信雄*（山守義雄）、内田朝雄* （大久保憲一）(監)深作欣二(原)飯干晃一(脚)笠原和夫(撮)吉田貞次(美)雨森 義允(音)佐藤勝(出)菅原文太、渡瀬恒彦、田中邦衛、小林旭、成田三樹夫

あなたと私の合言葉　 さようなら、今日は

大映のオールスター・キャストによる家族劇で、市川崑は小津調を意識したと 後に述べている。野添ひとみと川口浩は、この頃の大映にとって新世代を象徴 する俳優であった。

'59（大映）(出)野添ひとみ*（青田通子）(監)市川崑(原)(脚)久里子亭(撮)小 林節雄(美)下河原友雄(音)塚原晢夫(出)京マチ子、若尾文子、菅原謙二、川口 浩、船越英二、佐分利信、浦辺粂子

越後つついし親不知

水上勉の同名小説の映画化。杜氏として伏見へ働きに出た二人の男と、越後に 残したその妻を描いた悲劇。「武士道残酷物語」に続いて本田延三郎がプロデュー スした今井正作品。

'64（東映）(製)本田延三郎*(出)沢村貞子*（大地主の妻）、北城真記子*（伊 助の妻おいし）(監)今井正(原)水上勉(脚)八木保太郎(撮)中尾駿一郎(美)森幹 男(音)池野成(出)佐久間良子、小沢昭一、三国連太郎

砂の女

昆虫採集のため砂丘に現われた高校教師。彼が泊まった家は、砂の穴の中にあっ た…。原作の安部公房が脚色も担当、また主人公を演じる＜国際派＞岡田英次 は新境地を見せた。

'64（勅使河原プロダクション）(出)岡田英次*（男＝仁木順平）(音)武満徹* (監)勅使河原宏(原)(脚)安部公房(撮)瀬川浩(美)平川透徹、山崎正男(出)岸田 今日子、三井弘次、伊藤弘子、矢野宣

地上

大正期の苦悩する青春の姿を描いた、島田清次郎の同名原作は当時のベストセ ラーであった。野添ひとみは、後に夫となる故川口浩に思いを寄せる女学生に 扮している。

'57（大映）(出)野添ひとみ*（吉倉和歌子）(監)吉村公三郎(原)島田清次郎 (脚)新藤兼人(撮)中川芳久(美)間野重雄(音)伊福部昭(出)川口浩、香川京子、 田中絹代、佐分利信、川崎敬三、入江洋佑

かぶりつき人生

「性」を主題に優れた映像感覚で独自の世界をつくりあげた神代辰巳監督のデ ビュー作。ストリップ界に生きる母とその生き方に反抗する娘の姿を乾いた演 出で描いている。

'68（日活）(監)(脚)神代辰巳*(原)田中小実昌(撮)姫田真左久(美)大鶴泰弘 (音)真鍋理一郎(出)殿岡ハツエ、丹羽志津、玉村駿太郎、花恵博子、中台祥浩、 名取幸政、長瀬正典、水木達夫、和田平助

恋人たちは濡れた

うら寂しい港町に流れつき、映画館で働く謎の青年。日活ロマン・ポルノ初期 の作品だが、むしろ内面的な青春映画の趣きが強い。監督自らが最も気に入っ ていたという一本。

'73（日活）(監)(脚)神代辰巳*(脚)鴨田好史(撮)姫田真左久(美)坂口武玄(音) 大江徹(出)中川梨絵、絵沢萠子、薊千露、大江徹、堀弘一、高橋明、清水国雄、 庄司三郎、佐藤了一、原田千枝子

あなた買います

プロ野球のスカウトたちの新人争奪戦。有望選手の高額な契約金につられて、 さまざまな思惑が渦巻く欲望の世界を、新鋭小林正樹監督が鮮やかな演出で映 画化した。

'56（松竹）(製)小梶正治*(監)小林正樹*(原)小野稔(脚)松山善三(撮)厚田雄 春(美)平高主計(音)木下忠司(出)佐田啓二、水戸光子、伊藤雄之助、岸恵子、 大木実、谷崎純、三井弘次、花沢徳衛

五人の斥候兵

日中戦争の最前線を舞台に、兵士たちの日常生活や戦友同士の助け合いを描い た日活多摩川作品。斥候兵の一人を好演した伊沢一郎は、この作品で世に広く 知られるようになった。

'38（日活）(出)伊沢一郎*（木口一等兵）(監)田坂具隆(原)高重屋四郎（田坂 具隆）(脚)荒牧芳郎(撮)伊佐山三郎(美)松山崇(出)小杉勇、見明凡太郎、井染 四郎、長尾敏之助、星ひかる、井上敏正

我が恋は燃えぬ

自由民権運動の闘士影山英子の自伝より構成された作品。溝口は「女性の勝利」 「女優須磨子の恋」に続いて社会へ進出する女性像を打ち出し、新劇系俳優も 盛んに出演した。

'49（松竹）(出)松本克平*（荒井樟雄）、沢村貞子*（お政）(監)溝口健二(原) 野田高梧(脚)依田義賢、新藤兼人(撮)杉山公平(美)水谷浩(音)伊藤宣二(出)田 中絹代、水戸光子、三宅邦子、菅井一郎

お母さん

女手一つで育て上げた息子の結婚をめぐる母の物語。息子はかつての母と同じ 境遇の娘に心をひかれていく。瑞穂春海監督は長野の生家で住職としてその晩 年を送った。

'40（松竹）(監)瑞穂春海*(原)(脚)斎藤良輔、長瀬喜伴(撮)櫻井清壽(美)周襄 吉(音)篠田謹治(出)吉川満子、徳大寺伸、三宅邦子、斎藤達雄、寺門修、朝霧 鏡子、大塚君代、岡村文子、横山準

法隆寺

国宝の仏像を回転させたといわれるダイナミックな撮影、そして随所に現われ る大胆なカメラ移動により、瀬川順一は法隆寺の立体的な描写に成功した。芸 術祭文部大臣賞を受賞。

'58（岩波映画製作所）(撮)瀬川順一*(監)(脚)羽仁進(解)芥川比呂志

水俣の図・物語

水俣病の過酷な現実を粘り強く映画化してきた土本典昭の水俣シリーズの一篇。 画家丸木夫妻が水俣の惨状を描く姿を、武満徹の音楽、石牟礼道子の詩ととも に見事に捉えている。

'81（青林舎）(撮)瀬川順一*、一之瀬正史(音)武満徹*(監)土本典昭(出)丸木 位里、丸木俊、石牟礼道子(解)伊藤惣一

狼

生活苦のため、ノルマの厳しい保険外交員となった22人。多くが脱落してゆく 中で、最後に残ったのは五人の男女－－そしてふと口にした郵便車襲撃が現実 のものとなってゆく。

'55（近代映画協会）(出)高杉早苗*（藤林富枝）、浜村純*（原島文男）(監) (脚)新藤兼人(撮)伊藤武夫(美)丸茂孝(音)伊福部昭(出)乙羽信子、殿山泰司、 菅井一郎、宇野重吉、小澤榮、東野英治郎、清水将夫

男はつらいよ 寅次郎忘れな草

網走のキャバレー歌手リリーと意気投合した寅次郎。浅丘ルリ子を初めてマド ンナ役に起用したシリーズ第11作。撮影の高羽哲夫もまた、このシリーズの一 つの代名詞であった。

'73（松竹）(撮)高羽哲夫*(出)渥美清*（車寅次郎）(監)(脚)山田洋次(脚)宮 崎晃、朝間義隆(美)佐藤公信(音)山本直純(出)倍賞千恵子、浅丘ルリ子、前田 吟、三崎千恵子、太宰久雄、佐藤蛾次郎

旅の重さ

学校や毎日の生活がイヤになり、遍路姿で旅に出た16歳の少女が遭遇する、奇 妙な体験の数々。少女と夫婦生活を始めてしまう魚の行商人は、高橋悦史の名 演の一つである。

'72（松竹）(製)上村務*（上村力）(出)高橋悦史*（木村大三=魚の行商人） (監)斎藤耕一(原)素九鬼子(脚)石森史郎(撮)坂本典隆(美)芳野尹孝(音)よしだ たくろう(出)高橋洋子、岸田今日子、砂塚秀夫、横山リエ

また逢う日まで

ロマンチックな反戦映画として一時代を画した、この今井正監督作品の主人公、 田島三郎を演じた岡田英次は、ここを出発点に映画俳優としての道を歩みはじ めた。

'50（東宝）(出)岡田英次*（田島三郎）(監)今井正(脚)水木洋子、八住利雄 (撮)中尾駿一郎(美)河東安英(音)大木正夫(出)久我美子、滝沢修、河野秋武、 風見章子、杉村春子、林孝一、芥川比呂志

馬鹿まるだし

「山田洋次=高羽哲夫」のパートナーシップは「男はつらいよ」シリーズ以前 に遡る。またクレージーキャッツの安田伸は、これ以降も「運が良けりゃ」等 の山田作品に顔を出した。 '64（松竹）(撮)高羽哲夫*(出)渥美清*（万やん）、安田伸*（山形）(監)山田 洋次(原)藤原審爾(脚)加藤泰、山田洋次(美)佐藤公信(音)山本直純(出)ハナ肇、 桑野みゆき、桜井センリ、犬塚弘、花沢徳衛、高橋とよ、藤山寛美

朱と緑 前後篇

東京・大阪の二大都市を舞台に描かれる恋愛模様。松竹が得意とする都会劇で ある。高杉早苗は近代的センスで売り出した新進女優、後に梨園に入り現・市 川猿之助の母となった。

'37（松竹）(出)高杉早苗*（松沢千晶）(監)島津保次郎(原)片岡鉄兵(脚)池田 忠雄(撮)生方敏夫(美)金須孝(音)早乙女光(出)上原謙、高峰三枝子、佐分利信、 岡村文子、奈良眞養、東日出子

完全な遊戯

石原慎太郎の同名小説をもとにした作品だが、映画化に際しては変更がつけ加 えられている。不良学生、沖津を演じた武藤章生は日活脇役陣の一人として活 躍した。

'58（日活）(出)武藤章生*（沖津）(監)舛田利雄(原)石原慎太郎(脚)白坂依志 夫(撮)横山実(美)坂口武玄(音)真鍋理一郎、河辺公一(出)小林旭、芦川いづみ、 葉山良二、白木マリ、岡田真澄

日露戦争勝利の秘史 敵中横断三百里

大映の森一生監督に黒澤明と小国英雄が脚本を提供した戦争活劇映画。日露戦 争の奉天会戦を背景に敵陣を突破し、勝利をもたらす日本の騎兵斥候隊の活躍 を描いている。

'57（大映）(脚)小國英雄*、黒澤明(出)伊澤一郎*（田中参謀）(監)森一生(原) 山中峯太郎(撮)高橋通夫(美)下河原友雄(音)鈴木靜一(出)菅原謙二、北原義郎、 高松英郎、根上淳、品川隆二、川崎敬三

待って居た男

マキノ正博と小国英雄の名コンビが生みだした作品の一つで、伊豆の温泉宿で 起きた殺人事件の謎を解く目明かし文吉（長谷川一夫）の捕物帳。上映プリン トは再公開版である。

'42（東宝）(脚)小國英雄*(出)澤村貞子*（照葉）(監)マキノ正博(撮)山崎一 雄(美)中古智(音)鈴木靜一(出)長谷川一夫、山田五十鈴、高峰秀子、榎本健一、 藤原鷄太、大川平八郎、清川莊司

浪人八景

東映の御大の一人、市川右太衛門が出演している唯一の加藤監督作品。偽装夫 婦を依頼された浪人、雪太郎の活躍を描く。美術監督の鈴木孝俊は東映京都時 代劇で活躍した。

'58（東映）(美)鈴木孝俊*(監)加藤泰(原)山手樹一郎(脚)鈴木兵吾(撮)伊藤武 夫(音)高橋半(出)市川右太衛門、長谷川格見子、雪代敬子、勝浦千浪、里見浩 太朗、千秋実、志村喬、進藤英太郎

ひばり・チエミの弥次喜多道中

お君とおとしは芝居小屋に勤める下足番（はきもの係）。小さな事件に巻き込 まれたことから二人は旅に出ることになるが…。芝居小屋の奈落のセットも見 ものである。

'62（東映）(美)鈴木孝俊*(出)山形勲*（和泉屋多左衛門=薬屋）(監)沢島忠 (脚)鷹沢和善、高島貞治(撮)山岸長樹(音)米山正夫(出)美空ひばり、江利チエ ミ、堺駿二、田中春男、千秋実、河野秋武、東千代之介

東京戦争戦後秘話

カメラを借りていったまま、フィルムという遺書を残して自殺した「あいつ」。 ひとつの幻想に取りつかれた映画青年の複雑な内面を、武満徹は静謐なスコア で表現した。

'70（創造社=日本アートシアターギルド）(音)武満徹*(監)大島渚(脚)原正孝、 佐々木守(撮)成島東一郎(美)戸田重昌(出)後藤和夫、福岡杉夫、福田健一、磯 貝浩、橋本和夫、岩崎恵美子、大島ともよ

乾いた湖

60年安保に揺れる大学を背景に、ひとりの学生が殺人を犯す。武満徹はここで 初めて篠田作品の音楽を担当し、以降「写楽」(1995)に至るまで長い信頼関係 を結ぶことになった。

'60（松竹）(音)武満徹*(出)沢村貞子*（桂あき）(監)篠田正浩(原)榛葉英治 (脚)寺山修司(撮)小杉正雄(美)佐藤公信(出)三上真一郎、岩下志麻、炎加世子、 小坂一也、山下洵一郎、鳳八千代、伊藤雄之助

切腹

彦根藩邸で切腹を申し出たある浪人の回想形式で語られる悲劇。橋本忍の緻密 なシナリオが光る。小林正樹にとって、武満徹は10本の音楽を担当した重要な パートナーだった。

'62（松竹）(監)小林正樹*(出)小林昭二*（井伊家使番）(音)武満徹*(原)滝口 康彦(脚)橋本忍(撮)宮島義勇(美)戸田重昌、大角純平(出)仲代達矢、石浜朗、 岩下志麻、丹波哲郎、三島雅夫、佐藤慶、三国連太郎

貸間あり

不思議な住人でごった返す屋敷に、小説・翻訳の代作、コンニャク製造、キャ ベツ巻の大家でもある何でも博士の五郎が住んでいた。フランキー大活躍のエ ネルギッシュな喜劇。

'59（宝塚映画）(出)フランキー堺*（与田五郎）(監)(脚)川島雄三(原)井伏鱒 二(脚)藤本義一(撮)岡崎宏三(美)小島基司(音)真鍋理一郎(出)淡島千景、桂小 金治、浪花千栄子、乙羽信子、市原悦子、小沢昭一

グラマ島の誘惑

敗戦直前、南洋の孤島に漂着した人々を描いた戦争風刺喜劇。宮様の兄弟を演 じた森繁とフランキーが「自治運営委員会」を結成するなど、ある種天皇制批 判の趣向も見られた。

'59（東京映画）(出)フランキー堺*（香椎宮為永陸軍大尉）(監)(脚)川島雄三 (原)飯沢匡(撮)岡崎宏三(音)黛敏郎(出)森繁久弥、桂小金治、浪花千栄子、轟 夕起子、春川ますみ、岸田今日子、宮城まり子、淡路恵子

縞の背広の親分衆

寺の住職仙川浄慈はまたの名をスモーキー・ジョウ、花札を使わせては天下一 だ。フランキー・森繁のコンビを軸に据え、ワンテンポずらした演出が特徴的 な川島流仁侠映画。

'61（東京映画）(出)フランキー堺*（仙川浄慈）、渥美清*（胴脇）(監)川島 雄三(原)八住利雄(脚)柳沢類寿(撮)岡崎宏三(美)小島基司(音)松井八郎(出)森 繁久弥、淡島千景、団令子、田浦正巳、桂小金治

日本のいちばん長い日

1945年 8月15日、終戦の詔勅が放送されるまでの激動の一日を重厚に描いた作 品。青年将校を演じた高橋悦史はこの映画で強い印象を与え岡本喜八作品の常 連となった。

'67（東宝）(出)高橋悦史*（井田中佐）、浜村純*（庶務課長）(監)岡本喜八 (原)大宅壮一(脚)橋本忍(撮)村井博(美)阿久根巌(音)佐藤勝(出)三船敏郎、宮 口精二、戸浦六宏、笠智衆、山村聰、志村喬、香川良介、小林桂樹

ジャコ萬と鉄

北海道の鰊漁場を舞台に男の戦いを力強く描いた深作欣二作品。謎の男=ジャ コ萬は丹波哲郎、山形勲はテツ=高倉健の父である頑固な網元を演じ、作品に 陰影を与えた。

'64（東映）(出)山形勲*（九兵衛）(監)深作欣二(原)梶野悳三(脚)黒沢明、谷 口千吉撮坪井誠(美)近藤照男(音)佐藤勝(出)高倉健、丹波哲郎、江原眞二郎、 高千穂ひづる、南田洋子、入江若葉、大坂志郎

盗まれた恋

職を失ったダンサーと、そのファンの銀行家と、冴えない画家。初期市川崑ら しい軽いタッチの恋愛コメディで、久慈あさみにとって、映画界と初めて契約 した新東宝での4作目にあたる。

'51（新東宝＝青柳プロ）(出)久慈あさみ*（蟹良子）、山形勲*（学芸部長） (監)市川崑(原)鏡二郎脚和田夏十、市川崑(撮)横山實(美)河野鷹思(音)伊福部 昭(出)森雅之、川喜多小六（雄二）、志村喬、加藤道子

ブワナ・トシの歌

ドキュメンタリ－作家である羽仁進のユニークな作品。トシに扮した渥美清は 三ヵ月のオール・アフリカ・ロケで新境地を見いだし、その後のアフリカ贔屓 の原因ともなった。

'65（東京映画＝昭和映画）(出)渥美清*（片岡俊男＝トシ）(音)武満徹*(監) (脚)羽仁進(原)片寄俊秀(脚)清水邦夫(撮)金宇満司(出)ハミシ、下元勉、ハイ ディ、アグネス、サミエル、アレキサンダー、マウルディ、セイハ

遊侠一匹 沓掛時次郎

長谷川伸原作、鈴木尚之脚本、加藤泰監督による股旅映画の傑作。渥美清は身 延の朝吉という好人物のやくざに扮し、やくざ稼業の運命の酷さを見事に表現 してみせた。

'66（東映）(出)渥美清*（身延の朝吉）(監)加藤泰(原)長谷川伸(脚)鈴木尚之、 掛札昌裕(撮)古谷伸(美)井川徳道(音)齊藤一郎(出)中村錦之助、池内淳子、岡 崎二朗、弓恵子、三原葉子、清川虹子、東千代之介

宮本武蔵 第三部 剣心一路

吉川英治原作で映画化された「宮本武蔵」ものの一つ。宝塚歌劇から引き抜か れた宮城千賀子は一途に武蔵を慕うお通に扮してデビュー、その可憐さが好感 をもって迎えられた。

'40（日活）(出)宮城千賀子*（お通）(監)稲垣浩(原)吉川英治(脚)稲垣浩、槙 本宏(撮)宮川一夫(音)西梧郎(出)片岡千恵蔵、月形龍之介、尾上菊太郎、澤村 國太郎、原健作、薄田研二、大倉千代子

股旅 三人やくざ

秋・冬・春の三章からなるオムニバス映画。沢島忠監督の手腕が光る好篇であ る。中年になってから俳優生活に入った内田朝雄は、ここでは秋の章で腹黒い 親分を演じている。

'65（東映）(出)内田朝雄*（麹屋金兵衛）(監)沢島忠(脚)野上龍雄、笠原和夫、 中島貞夫(撮)古谷伸(美)井川徳道(音)佐藤勝(出)中村錦之助、仲代達矢、松方 弘樹、志村喬、桜町弘子、入江若葉、藤純子

野獸の青春

大胆な色彩感覚と画面構成により独特のスタイルを実現した鈴木清順作品。小 林昭二は日活アクションの悪役としても活躍し、この映画では冷酷なボスの役 を好演している。

'63（日活）(出)小林昭二*（野本達雄）、金子信雄*（小沢惣一）(監)鈴木清 順(原)大藪春彦(脚)池田一朗、山崎忠昭(撮)永塚一榮(美)横尾嘉良(音)奥村一 (出)宍戸錠、渡辺美佐子、川地民夫、信欣三

ジャンケン娘

ひばり・チエミ・いずみの三人娘によるミュージカル・コメディ。東宝の初期 カラー作品としても貴重で、様々な色の工夫が見られる。映画ロケのシーンで は杉江監督も登場する。

'55（東宝）(監)杉江敏男*(出)澤村貞子*（おいね）(原)中野実(脚)八田尚之 (撮)完倉泰一(美)村木忍(音)松井八郎(出)美空ひばり、江利チエミ、雪村いず み、山田真二、江原達怡、浪花千栄子

食卓のない家

連合赤軍事件に参加した青年とその家族の苦悩を描いた円地文子の同名小説を、 小林正樹監督が映画化。国家と社会と家族の主題を重厚な演出で堂々と正面か ら描いている。

'85（MARUGENビル）(製)佐藤正之*(監)(脚)小林正樹*(音)武満徹*(原)円地文 子(撮)岡崎宏三(美)戸田重昌(出)仲代達矢、小川真由美、中井貴一、中井貴恵、 竹本孝之、真野あずさ、平幹二朗、岩下志麻

お葬式

妻の父を亡くしたある俳優。葬式を取り仕切るのは初体験、その進行ばかりが 気にかかる。日活出身の細越省吾にとってこの作品は、最も広く世に知られる 仕事となった。

'84（ニュー・センチュリー・プロデューサーズ=伊丹プロダクション）(製)細 越省吾*、玉置泰、岡田裕(監)(脚)伊丹十三(撮)前田米造(美)徳田博(音)湯浅 譲二(出)山崎努、宮本信子、菅井きん、大滝秀治、財津一郎、江戸家猫八、友 里千賀子、尾藤イサオ、岸部一徳、藤原釜足、吉川満子、津川雅彦、小林薫、 笠智衆

サンダカン八番娼館 望郷

かつて「からゆきさん」としてボルネオ島へ売られていった老女と、女性史研 究者との出会い。日本の近代史にひそむ悲劇は、廣澤榮が生涯追い求めてきた テーマでもあった。

'74（東宝=俳優座映画放送）(脚)廣澤榮*(製)佐藤正之*、椎野英之(監)(脚)熊 井啓(原)山崎朋子(撮)金宇満司(美)木村威夫(音)伊福部昭(出)田中絹代、栗原 小巻、高橋洋子、田中健、小沢栄太郎、水の江瀧子

• (監)＝監督・演出　(製)＝製作・企画・プロデューサー　(原) ＝原作・原案　(脚)＝脚本・脚色　(撮)＝撮影　(美)＝美術　(音)＝音楽　 (出)＝出演　(解)＝解説・ナレーション
• * 印を付された人名は今回の上映で追悼する方です（出演者の場合、カッ コ内は映画中の役名です）。
• 記載した上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。