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大ホール上映作品

日本映画の発見IV:占領下のNIPPON(1)

Rediscovering Our National Film Heritage (IV):
Nihon Eiga under the Occupation - Part 1

4月7日(火)- 5月2日(土)/5月12日(火)- 6月6日(土)

上映スケジュール

 日本の映画遺産をその無声期から現在まで辿ろうとするフィルムセンターの 長期上映企画「日本映画の発見」も、いよいよこの第IV期から戦後の時代へと 入って行くことになります。

 1945年8月15日の終戦から1952年4月29日の対日講和条約の発効まで、 わが国はアメリカを中心とする「連合国」の統治下にありました。戦前、内務 省の検閲を受けていた日本映画は、この新しい時代にあってはGHQ(連合軍総 指令部)の検閲を受けることとなり、いわゆる「民主主義」的な、あるいは「反 軍国主義」的な作品の製作が要請されました。

 こうした「占領下のNIPPON」で、実際にはどのような作品が発表されたのか を、2期・80日間にわたり、50本以上の映画を通じて知ることができる本特集 は、続く「栄光の50年代」を準備した「混乱期」の映画作りを鳥瞰する意味で も、日本の戦後そのものを再考する上でも、きわめて興味深い機会となるでし ょう。

 6月6日までの第1期では、主題歌「りんごの歌」で有名な「そよかぜ」、 初めてのキス・シーンが話題をよんだ「はたちの青春」といった当時のヒット 作から1948年12月公開の「四人目の淑女」まで、間に「女性の勝利」(溝口 健二)、「長屋紳士録」(小津安二郎)のような戦前からの名監督たちの作品 を織り混ぜながら、全27本を連続上映いたします。

*「日本映画の発見IV:占領下のNIPPON」は2部構成となり、今回の第1期に続 いて、第2期は6月16日~7月11日/7月21日~8月15日に開催します。第2期の詳 細は、「NFCカレンダー」6-7-8月号に掲載されます。

■(監)=監督・演出 (原)=原作 (脚)=脚本・脚色 (撮)=撮影  (美)=美術 (音)=音楽 (出)=出演
■本特集には不完全なプリントが含まれています。
■記載した上映分数は、当日のものと多少異なることがあります。
A-1 4/7(火)3:00pm 4/24(金)6:30pm 5/21(木)3:00pm

そよかぜ

(60分・35mm)

8月15日以降に企画製作された戦後映画。劇場で照明係として働いている、歌 手志望の娘(並木路子)が、有名歌手となっていくサクセス・スト-リ-。戦 後最初の流行歌といわれ、劇中でもうたわれる「りんごの歌」は、廃墟となっ た街の風景とともに、敗戦直後のイメ-ジを象徴する歌謡曲となった。

'45(松竹大船)(監)佐々木康(脚)岩澤庸徳(撮)寺尾清(美)本木勇(音)萬城目正 (出)上原謙、佐野周二、齋藤達雄、高倉彰、奈良眞養、伊東光一、加藤清一、 並木路子、波多美喜子、若水絹子、三浦光子、霧島昇、二葉あき子


A-2 4/7(火)6:30pm 4/25(土)1:00pm 5/21(木)6:30pm

狐の呉れた赤ん坊

(85分・35mm)

時代劇スター、阪東妻三郎の戦後第一作。川越し業の暴れん坊が、狐だと思い 捨てられた赤ん坊を連れかえり育てていく。やがて、子供は大名の落としだね とわかり、辛い別れがやってくる。「無法松の一生」や、チャップリンの「キ ッド」を思わせる内容を、丸根賛太郎が軽妙な人情喜劇にまとめあげている。

'45(大映京都)(監)(脚)丸根賛太郎(原)谷田善太郎(撮)石本秀雄(出)阪東妻三 郎、羅門光三郎、原健作、阿部九洲男、見明凡太郎、荒木忍、香川良介、光岡 龍三郎、寺島貢、谷讓二、橘公子、原聖四郎、澤村マサヒコ


A-3 4/8(水)3:00pm 4/25(土)4:00pm 5/22(金)3:00pm

東京五人男

(84分・35mm)

敗戦後の東京を舞台にした喜劇。ロッパ、エンタツ・アチャコ、石田一松など 当時の笑いの名手たちが、戦前と様変わりしてしまった世相をコミカルに、痛 烈に風刺している。松竹時代にはナンセンス喜劇の名監督として知られ、東宝 移籍後もエノケン映画で活躍した斎藤寅次郎の戦後第一作。

'45(東宝)(監)齊藤寅次郎(脚)山下與志一(撮)友成達雄(美)北辰雄(音)鈴木靜 一(出)古川緑波、横山エンタツ、花菱アチャコ、石田一松、柳家權太樓、高勢 實乘、鳥羽陽之助、永井柳筰、高堂國典、小高つとむ、石田守英、大庭六郎、 田中筆子、戸田春子、藤間房子、森川君子


A-4 4/8(水)6:30pm 4/28(火)3:00pm 5/22(金)6:30pm

街の人気者

(87分・35mm)

牛原虚彦監督によれば、企画されたとき「騙された男」の題名であったこの作 品は、民間情報局のD.コンデの指示などをうけ「街の人気者」に改題されたそ うである。牛原虚彦は1920年代、鈴木伝明主演のモダンな青春映画を数多くつ くっているが、その情熱を戦後の青春にあらためて注ぎこもうとしていた。

'46(大映東京)(監)牛原虚彦(脚)小國英雄(撮)相坂操一(美)仲美喜雄(音)服部 正(出)宇佐美淳、浦辺粂子、北龍二、鈴木美智子、相馬千惠子、若原雅夫、見 明凡太郎、大原穰、齋藤紫香、吉川英蘭、山口勇


A-5 4/9(木)3:00pm 4/28(火)6:30pm 5/23(土)1:00pm

女性の勝利

(81分・35mm)

溝口健二監督の戦後第一作。田中絹代の女性弁護士が、義兄でもある封建的な 検事と法廷で対決するという内容だが、どこか新派劇のようで、訴えようとす る新思想と演出や表現が噛みあっていないことがよく分かる。溝口にとっての 「戦後」を明らかにしている作品。

'46(松竹大船)(監)溝口健二(脚)野田高梧、新藤兼人(撮)生方敏夫(美)本木勇 (音)浅井挙曄(出)田中絹代、桑野通子、三浦光子、徳大寺伸、若水絹子、風見 章子、奈良眞養、松本克平、高橋豊子、長尾敏之助、紅澤葉子、内村榮子、久 保田勝巳


A-6 4/9(木)6:30pm 4/29(水・祝)1:00pm

民衆の敵

(83分・16mm)

1950年代に次々と名作を発表していく今井正監督の戦後第一作。ある軍需化学 工場を舞台に、支配層であった財閥や軍閥の悪を、一人の徴用工の戦いを通し て描いている。戦前戦後を通じて変わらない支配層の存在が提示されており、 その意味では占領軍の意向に応えていた。

'46(東宝)(監)今井正(脚)八住利雄、山形雄策(撮)鈴木博(美)松山崇(音)早坂 文雄(出)藤田進、河野秋武、菅井一郎、志村喬、江川宇礼雄、鳥羽陽之助、清 水将夫、田中春男、深見泰三、浅田健三、光一、江見渉、花柳小菊、河野糸子、 浜田百合子、田中筆子、花沢徳衛


A-7 4/10(金)3:00pm 4/29(水・祝)4:00pm 5/23(土)4:00pm

はたちの青春

(72分・35mm)

内容的にはホーム・ドラマを基調にした松竹風の青春映画だが、幾野道子と大 坂志郎のキス・シーンが大きな話題を呼んだ作品。戦前は禁止されていたキス・ シーンを、初めてスクリーンに描きだすことも、女性解放という理念をかかげ た占領政策の一環であり、戦後ならではの開放的な出来事であった。

'46(松竹大船)(監)佐々木康(脚)柳井隆雄、武井韶平(撮)齋藤毅(美)小島基司 (音)萬城目正(出)河村黎吉、高橋豊子、幾野道子、西村青兒、大坂志郎、坂本 武、逢川かほる、高倉彰、三村秀子、桜庭あき、奈良眞養


A-8 4/10(金)6:30pm 4/30(木)3:00pm 5/26(火)3:00pm

象を喰った連中

(84分・35mm)

動物園で病死した象の肉を、空腹に耐えかねて食べてしまった男たち。実はそ の肉は恐ろしいバイ菌に汚染されており、食べた者は24時間後に死ぬことが判 明した。慌てふためく男たち。戦後の食糧難の世相を背景に、人間のエゴの姿 をユーモラスに、同時に風刺をこめて描いた吉村公三郎の戦後第一作。

'47(松竹大船)(監)(脚)吉村公三郎(脚)斎藤良輔、池田忠雄(撮)生方敏夫(美) 小島基司(音)万城目正、仁木他喜雄(出)原保美、日守新一、笠智衆、阿部徹、 神田隆、村田知榮子、空あけみ、朝霧鏡子、奈良真養、横尾泥海男


A-9 4/11(土)1:00pm 4/30(木)6:30pm 5/26(火)6:30pm

四つの恋の物語

(111分・35mm)

社会に注目された「東宝争議」の余波のなかでつくられたオムニバス作品。名 監督たちが限られた範囲のなかで、それぞれの技芸をみせている。脚本の黒澤 明、小国英雄、山崎謙太、八住利雄も豪華メンバ-である。

'47(東宝)第一話「初恋」:(監)豊田四郎(脚)黒沢明(撮)川村清衛(美)松山崇 (出)池部良、久我美子
第二話「別れも愉し」:(監)成瀬巳喜男(脚)小国英雄(撮)木塚誠一(美)江坂実 (出)木暮実千代、沼崎勲
第三話「恋はやさし」:(監)山本嘉次郎(脚)山崎謙太(撮)伊藤武夫(美)北川恵 司(出)榎本健一、若山セツ子、飯田蝶子
第四話「恋のサーカス」:(監)衣笠貞之助(脚)八住利雄(撮)中井朝一(美)平川 透徹(出)浜田百合子、河野秋武


A-10 4/11(土)4:00pm 5/1(金)3:00pm 5/27(水)3:00pm

今ひとたびの

(119分・35mm)

左翼活動、検挙、転向、出征と激しい振幅で昭和の前半を生きた小説家、高見 順。その原作小説を植草圭之助が脚色し、抒情派の五所平之助監督が戦争とい う運命に翻弄された男女の純愛物語として描いている。再開を約束して別れた 恋人を、戦後おなじ場所で待ちつづける男。その回想のなかで過酷だった戦中 の日々が甦っていく。

'47(東宝)(監)五所平之助(原)高見順(脚)植草圭之助(撮)三浦光雄(美)松山崇 (音)服部良一(出)高峰三枝子、龍崎一郎、田中春男、北澤彪、河村弘二、清水 将夫、谷間小百合、一の宮敦子、中北千枝子、出雲八重子


A-11 4/14(火)3:00pm 5/1(金)6:30pm 5/27(水)6:30pm

長屋紳士録

(72分・35mm)

小津安二郎監督の戦後第一作。当時、盛んにつくられた啓蒙映画とは一線を画 して、自らの世界に徹している点が特徴的。長屋にまぎれこんだ子供と、ここ ろならずも、その世話をする破目になった「かあやん」の交流を淡々と描いて いる。無声映画時代の「喜八もの」の延長線上に位置する庶民劇。

'47(松竹大船)(監)(脚)小津安二郎(脚)池田忠雄(撮)厚田雄春(美)浜田辰雄 (音)斎藤一郎(出)飯田蝶子、青木放屁、小澤榮太郎、吉川満子、河村黎吉、三 村秀子、笠智衆、坂本武、高松榮子、殿山泰司、西村青兒


A-12 4/14(火)6:30pm 5/2(土)1:00pm 5/28(木)3:00pm

戰爭と平和

(100分・35mm)

1947年の日本国憲法公布記念映画。戦時中に厭戦映画といわれる「戰ふ兵隊」 を監督し、治安維持法で検挙された経験をもつ記録映画の亀井文夫と、東宝の 中堅であった山本薩夫が共同で監督した作品。復員問題や中国を視野にいれた ドラマの構成や実写ショットの挿入などに、当時の若手の「新時代」にたいす る姿勢を見ることができる。

'47(東宝)(監)亀井文夫、山本薩夫(脚)八住利雄(撮)宮島義勇(美)河東安英(音) 飯田信夫(出)池部良、岸旗江、伊豆肇、菅井一郎、島田敬一、藤間房子、谷間 小百合


A-13 4/15(水)3:00pm 5/2(土)4:00pm 5/28(木)6:30pm

月の出の決斗

(78分・35mm)

江戸末期の農村指導者、大原幽学を襲ったやくざ者がその人物に打たれて改 心。逆に彼のためにやくざ者と闘うという物語。「狐の呉れた赤ん坊」で才気 を示した丸根賛太郎が監督、阪東妻三郎が主演したお盆興行用の作品でヒット した。

'47(大映京都)(監)(脚)丸根賛太郎(撮)中田節三(美)川村鬼世志(音)深井史郎 (出)阪東妻三郎、青山杉作、東野英治郎、羅門光三郎、花井蘭子、尾上菊太郎、 葛木香一、原聖四郎、香住佐代子、上田吉二郎、寺島貢、上田寛、八坂秀彦、 村田宏壽、大隅一郎、清水明、堀北幸夫、伊達三郎、三井龍


A-14 4/15(水)6:30pm 5/12(火)3:00pm 5/29(金)3:00pm

女優須磨子の戀

(96分・35mm)

新劇草創期の大女優、芸術座の松井須磨子を「女性解放」の視点を加味しつつ 描いた溝口作品。妻子ある演出家、島村抱月との積極的な恋愛。病死した彼の あとを追い、自ら死を選ぶ行動など、自由のために闘った女性という意味づけ がなされている。忍従型ではない主人公にこの時期の溝口の志向をみることが できる。

'47(松竹京都)(監)溝口健二(原)長田秀雄(脚)依田義賢(撮)三木滋人(美)本木 勇(音)大澤壽人(出)田中絹代、山村聰、毛利菊江、東山千榮子、朝霧鏡子、東 野英治郎、岸輝子、小澤榮太郎、青山杉作、千田是也


A-15 4/16(木)3:00pm 5/12(火)6:30pm 5/29(金)6:30pm

飛び出したお孃さん

(70分・35mm)

渋谷実が憲法公布記念映画「情炎」の後に監督した作品。飛び出したお嬢さん である、水戸光子を狂言回しに、松竹得意の「長屋もの」の世界が展開される。 団扇職人の河村黎吉と床屋の坂本武が息のあった演技をみせている。儲け話の 失敗や散財、娘の家出など盛り沢山だが、人情ものになりきらない点が渋谷実 の特徴であろう。

'47(松竹大船)(監)澁谷實(脚)齋藤良輔、中山隆三(撮)長岡博之(美)小島基司 (音)服部正(出)上原謙、三浦光子、水戸光子、河村黎吉、坂本武、飯田蝶子、 高橋豊子、増田順二、山路義人、藤輪欣司、村田知英子


A-16 4/16(木)6:30pm 5/13(水)3:00pm 5/30(土)1:00pm

若き日の血は燃えて

(77分・35mm)

戦地から復員してきた学生、戦後の価値観になじめない学生、その二人の友人 だった戦没学生の妹などが登場する、北国の旧制高等学校を舞台にした青春映 画。1944年に監督に昇進した家城巳代治の、戦後第一作でもある。抒情性に富 んだ誠実な作風で知られる、家城監督らしい青春讃歌となっている。

'47(松竹大船)(監)家城巳代治(脚)清島長利(撮)西川亨(美)五所福之助(音)田 代與志(出)山内明、幾野道子、高橋貞二、東野英治郎、大坂志郎、山路義人、 有島一郎、飯田蝶子、杉山繁、諸角敬二郎、永井達郎


A-17 4/17(金)3:00pm 5/13(水)6:30pm 5/30(土)4:00pm

素浪人罷通る

(81分・35mm)

封建思想の温床とみなされ占領軍に制限された時代劇映画。伊藤大輔は殺陣場 面を禁じられながらも、すぐれた活劇として完成し、その醍醐味を堪能させて くれた。八代将軍のご落胤問題として知られる天一坊事件の登場人物、山内伊 賀亮をみごとに演じた阪東妻三郎は、このあと伊藤と「王将」の坂田三吉に挑 むことになる。

'47(大映京都)(監)伊藤大輔(脚)八尋不二(撮)川崎新太郎(美)角井平吉(音)西 梧郎(出)阪東妻三郎、守田勘弥、大友柳太郎、喜多川千鶴、平井岐代子、阿部 九州男、片山明彦、小堀誠、嵐徳三郎、南部章三、光岡龍三郎


A-18 4/17(金)6:30pm 5/14(木)3:00pm 6/2(火)3:00pm

誘惑

(84分・35mm)

亡き恩師の娘で医学生の孝子(原節子)を自宅に引きとった、理想派の代議士 矢島(佐分利信)。彼には二人の子供とサナトリウムで療養中の妻がいた。孝 子と矢島は互いに惹かれあっていく。監督=吉村公三郎、脚本=新藤兼人以下 「安城家の舞踏会」のスタッフが製作した作品で、吉村のフレッシュな演出が 印象に残る作品である。

'48(松竹大船)(監)吉村公三郎(脚)新藤兼人(撮)生方敏夫(美)浜田辰雄(音)木 下忠司(出)原節子、佐分利信、杉村春子、山内明、神田隆、殿山泰司、文谷千 代子、西村青児、芳丘直美、河野祐一、高松栄子、紅澤葉子


A-19 4/18(土)1:00pm 5/14(木)6:30pm 6/2(火)6:30pm

山猫令孃

(86分・35mm)

戦後の母もの映画の第一作。娘(三條美紀)の幸せを祈って身を引いていく母 親を三益愛子が好演し、その後の母ものブームのきっかけとなった作品。多く の女優が母を演じているが、そのなかでも、彼女は抜群の人気を誇り、象徴的 存在であった。戦前新興キネマでも同種の作品があり、新興を継承する大映に とってはお家芸でもあった。

'48(大映京都)(監)森一生(脚)依田義賢(撮)武田千吉郎(美)中村能久(音)伊藤 宣二(出)三益愛子、三條美紀、小林桂樹、羅門光三郎、高田稔、葛木香一、上 田吉二郎、荒木忍、南部章三、上田寛、野々宮由紀、北條みゆき


A-20 4/18(土)4:00pm 5/15(金)3:00pm 6/3(水)3:00pm

手をつなぐ子等

(80分・35mm)

障害児教育の現場を描いた、田村一二の原作を緻密なシナリオに組み立てた伊 丹万作。これは日本映画にユニークな位置を占め、1946年に死去した彼の遺作 脚本でもある。監督の稲垣浩は、距離を保った視線で子供たちの世界を見つめ、 淡々と描写を積みかさねている。無垢な精神の輝きを描いた、稲垣の戦後の新 境地でもあった。

'48(大映京都)(監)稲垣浩(原)田村一二(脚)伊丹万作(撮)宮川一夫(美)角井平 吉(音)大木正夫(出)笠智衆、初山たかし、香川良介、杉村春子、徳川夢聲、泉 田行夫、村田宏壽、島村イツマ、宮田二郎、常盤操子、伊達三郎


A-21 4/21(火)3:00pm 5/15(金)6:30pm 6/3(水)6:30pm

(67分・35mm)

主要な登場人物は、踊子の敏子(水戸光子)と彼女につきまとう町田(小澤栄 太郎)の二人だけ。木下恵介監督は、踊子がやくざな男から逃れて再出発する までを、箱根や熱海のオール・ロケーションのみで描いている。女性の自我の 発見という戦後的な主題を読みとることもできるが、映画技法の挑戦を続けて きた木下にとっては、「実験映画」とみることもできる。

'48(松竹大船)(監)(脚)木下惠介(撮)楠田浩之(美)平高主計(音)木下忠司(出) 水戸光子、小澤栄太郎


A-22 4/21(火)6:30pm 5/16(土)1:00pm 6/4(木)3:00pm

夜の女たち

(73分・35mm)

敗戦後の混乱期、荒廃した街の角々にあらわれた街娼。パンパンとよばれた彼 女たちは、ある意味で戦後を象徴する存在でもあった。女性描写を得意とする 溝口健二が、倫落していく姉妹を通してその世界に迫った作品。田中絹代が汚 れ役に挑戦した。突き放したような溝口の演出は、彼の戦後への復権を告げて いる。

'48(松竹京都)(監)溝口健二(原)久板栄二郎(脚)依田義賢(撮)杉山公平(美)水 谷浩(音)大澤壽人(出)田中絹代、高杉早苗、角田富江、永田光男、村田宏壽、 浦辺粂子、毛利菊枝、富本民平、大林梅子、青山和子


A-23 4/22(水)3:00pm 5/16(土)4:00pm 6/4(木)6:30pm

肖像

(73分・35mm)

黒澤明脚本、木下恵介監督。この当時ライバルと目されていた、気鋭の二人の 協力から生まれた作品である。黒澤の力強さと木下の繊細さの組み合わせが話 題を呼んだ。不動産屋の差しがねで、立ち退きを迫られている一家に送りこま れた女。画家である家の主人のモデルになり、女は自分の生き方を反省し始め る。

'48(松竹大船)(監)木下惠介(脚)黒澤明(撮)楠田浩之(美)小島基司(音)木下忠 司(出)井川邦子、三宅邦子、三浦光子、菅井一郎、東山千栄子、小澤榮太郎、 藤原釜足、佐田啓二、桂木洋子、安部徹、山路義人


A-24 4/22(水)6:30pm 5/19(火)3:00pm 6/5(金)3:00pm

わが生涯のかゞやける日

(101分・35mm)

かつての青年将校が、今は身を持ち崩したやくざ者。かつての大臣の娘が、今 はキャバレ-の歌手。青年将校は平和主義者の大臣を暗殺した過去をもってい た。その二人がめぐり合う。戦前と戦後の落差を、新藤兼人が振幅の大きいド ラマに組み立て、吉村公三郎が思い切りよく演出した。

'48(松竹大船)(監)吉村公三郎(脚)新藤兼人(撮)生方敏夫(美)浜田辰雄(音)木 下忠司、吉沢博(出)山口淑子、井上正夫、滝沢修、森雅之、清水将夫、加藤嘉、 宇野重吉、村田知英子、清水一郎、三井弘次、殿山泰司、逢初夢子、山内光、 長尾寛、国兼久子、白鳥啓子


A-25 4/23(木)3:00pm 5/19(火)6:30pm 6/5(金)6:30pm

生きている画像

(93分・35mm)

瓢人先生と呼ばれる風変わりな画伯を中心に、その弟子や友人たちをユーモラ スに描いた千葉泰樹作品。展覧会に落選し続ける弟子、天才肌だが意志薄弱の 弟子、癖の強い鮨屋の亭主などが暖かい視線でみつめられている。武士や軍人 など、男を演じてきた大河内傳次郎が、酒好きの画家になるところにも戦後が あった。

'48(新東宝)(監)千葉泰樹(原)(脚)八田尚之(撮)河崎喜久三(美)下河原友雄 (音)早坂文雄(出)大河内傳次郎、藤田進、花井蘭子、古川緑波、笠智衆、江川 宇礼雄、杉寛、田中春男、河村黎吉、清川虹子


A-26 4/23(木)6:30pm 5/20(水)3:00pm 6/6(土)1:00pm

鐘の鳴る丘 隆太の巻

(80分・35mm)

当時の社会問題でもあった戦災孤児を扱い、大きな話題を呼んだ菊田一夫の連 続放送劇を映画化した作品。復員した兄が行方不明になった弟を捜すあいだ に、孤児たちの悲惨な暮らしを目にして、その救済施設の建設に力を尽くして いく。佐々木啓祐は松竹キネマ創設期に入社したベテラン監督で多くの作品を 送りだしている。

'48(松竹大船)(監)佐々木啓祐(原)菊田一夫(脚)斎藤良輔(撮)森田俊保(美)森 幹男(音)古関裕而(出)佐田啓二、井上正夫、英百合子、菅井一郎、平野郁子、 高杉妙子、笠智衆、飯田蝶子、山路義人、野坂頼明、本尾正孝


A-27 4/24(金)3:00pm 5/20(水)6:30pm 6/6(土)4:00pm

四人目の淑女

(90分・35mm)

戦前から戦後への時代の変貌を、一人の男をめぐる四人の女たちの変身の物語 として描いた作品。復員した森雅之が、昔の女友達を訪ねていくなかで物語は 展開していく。渋谷実らしい皮肉な視点が特徴的で、変身が変心であることを、 やや誇張をまじえた演出のなかで示している。なかでも仮面舞踏会やキャバレ -の場面は出色である。

'48(松竹大船)(監)澁谷實(脚)新藤兼人(撮)長岡博之(美)濱田辰雄(音)服部良 一(出)濱田百合子、三浦光子、月丘夢路、木暮實千代、森雅之、笠智衆、坪内 美子、望月美恵子、殿山泰司、山路義人、長尾敏之助